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彼と彼の話

繋がる想い

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「お願いします」

「はい」

「ただいまー」

「葵が、帰ってきたわ」

お義母さんは、そう言ってキッチンに行った。

「お義父さん、これからもよろしくお願いします」

「千秋君、よろしくな!」

俺は、お義父さんと握手をした。

「千秋、帰ろう」

「うん」

「じゃあ、またね」

「気を付けてね」

「お邪魔しました」

俺と葵は、帰る。俺は、葵の両親に入れ替わってるのを伝えた。

「千秋のお義母さんち」

「少しだけ、寄っていいかな?」

「うん」

俺は、その帰りに磯部千秋の母親の家に寄っていた。

「いらっしゃい」

「母さん、これを読んで欲しい」

俺は、手紙を渡した。磯部千秋の母親は、それを読んで泣いていた。

「私、お義父さんに手を合わせてくるね」

「うん」

葵は、気を遣って隣の部屋に行った。

「千秋が言いたい事は、わかったわ!本当に、いいの?」

「はい」

「お墓で会った瞬間から、わかったわ!だって私は、千秋の母親だから…。でも、貴方も千秋だから…。私は、貴方も大切にしたい」

「ありがとうございます」

「千秋は、貴方の事を嫌いじゃないのよね」

「はい!そうだと思います」

「敬語はやめて!今さらよそよそしくしたら葵さんが、不思議がるわ」

「そうですね」

「貴方も私の息子よ!千秋」

そう言って磯部千秋の母親は、俺を抱き締めてくれる。

「その手紙に書いた話が、真実です。磯部千秋さんの体と変わってすみませんでした」

「謝らないで、千秋が生きているだけで私は充分だから」

「ありがとうございます」

俺は、磯部千秋の母親に泣きながら抱きついていた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

それから、3か月後ー

「せつなね!ピンクがいい!」

俺達5人は、雪那のランドセルを選びに田辺家の近くに来ていた!

「ありがとう、千秋さん」

「誠さん、すみません。勝手な事をしてしまって」

「いいんだよ!成長を見たくなる気持ちは親ならわかるから」

「本当にありがとう」

「俺も感謝してるよ!母さんや葵の両親にも会えたわけだし!」

「葵のお義父さんは、最近車椅子に乗れるようになったんですよ」

「凄いね!」

「孫に会いたいからって理由ですよ」

「凄いね!孫の力って」

「そうだね」

俺と千秋さんは、皆を見つめていた。きっと、この先も変わらないのがわかる。皆で、こうやって過ごす日を1日でも多く重ねていきたい。

「せつなね!これか、これがいい?じぃじとばぁばとばぁばはどれがいい?」

「そうだね」

千秋さんは、その姿を見ながら笑っていた。

「何か凄く嬉しいよ!本当にありがとう」

俺も千秋さんの笑顔を見ていると嬉しくて堪らなかった。
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