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僕のために…。

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僕は、部屋にはいった。

洋は、どんな時でも僕を守って支えてくれた。

指についた跡、まだ残ってる。

ここに来ると、拜島さんとの事も洋との事も昨日の事みたいに思い出せる。

洋は、僕の為ならどんな事もしてくれた。

洋とちゃんとお別れをした日、僕は少しだけ嫌だったんだよ。

僕に注がれた愛が、亜香里にいってしまうのが…。

でも、今日洋と話してわかった。

形はかわってしまったけれど、洋が僕を思ってくれる気持ちにかわりはなかった。

洋と的井さんが、お互いを必要としてるのは見ていてわかった。

でも、またやきもちやいてた。

僕と過ごした日々は、何の役にも立たなかったのかと思った。

でも、誰にも話すつもりはないと言ってくれた時

すごく、嬉しかった。

形はかわっても、洋が僕を見てくれてる事、愛してくれてる事は変わらないんだ。

洋は、僕達を支えたいと言った。また、自分を犠牲にさせてしまうって思ったけど…。
的井さんが必要だって言われて、一緒に住むべきだと強く思った。

的井さんは、今の洋には必要な存在。

そして、僕と拜島さんと亜香里には洋が必要な存在であるのもちゃんとわかってる。

今の洋の心が壊れないようにしっかり支えてくれるのは、的井さんしかいない。

ブーブー  拜島さんだ。

拜島「まだ?」

時計を見たら、五時だった。

れん「まだだよ。」

拜島「灰谷さんといるの、飽きた」

れん「二人なの?」

拜島「的井と拓人は、さっききたよ。」

れん「もうすぐ、いくよ」

拜島「れんが、いなきゃ嫌だ。」

「うっせーな。ガキが」

拜島「今、電話中だ。拓人」

「迷惑かけんなよ。大人には色々あるんだ。」

拜島「うるさいな。」

「おっさん、黙ってろよ。」

その言葉聞いてたら、笑ってた。

拜島「れん、早くね。うるさいから、きるね」拜島さんは、急いで電話を切った。

さっきの萩原さんと的井さんのやり取りを聞いていたら、的井さんの心を支えてるのは萩原さんなんだとわかる。

そう言えば、あの人達はみんな支え合ってるんだよね。

僕と洋も、そうなりたい。

なれるかな?もっと時間を重ねたら、これを乗り越えたら…。

そう言えば、母さんがくれた袋を開けた。花柄のストールがはいってる。僕は服を着替えて、ストールを持って部屋を出た。

洋「なんか、着せられてる感あるよな?これだと」

れん「新郎なの?それ」

洋「ハハハ、何かさ、奥底にあったんだけど。これって新郎だよな?」

れん「白だもんね。そのスーツ。冷やかされない?」

洋「冷やかされる方がいい。」

れん「何で?」

洋「拜島さんが、気にしなくなるだろ」

洋って何でこんなに優しいの?

洋「これで、行こう。決めた。王子様みたいだろ」洋が笑う。

れん「僕は、恥ずかしくないからいいよ。」

洋「それなら、決まりだな。タクシー呼ぶな」
そう言って、洋はタクシーを呼んでる。

本当に、優しいよね。白いスーツなんかあったんだね。

洋「五分ぐらいで、これるって。いつ、こんなの買ったんだろうな?ハハハ」

れん「覚えてないの?」

洋「覚えてない。何する為に買ったのかな?」

れん「ハハハ。」

洋「それは?」

れん「あの日、母さんがくれたの」

洋「あっ、バタバタして中身見てなかったんだな。可愛いなそれ、れんにピッタリだ。」

れん「ありがとう。今日から、お店で使おうと思って」

洋「餃子屋、手伝ってくれるの?」

れん「拜島さんといれるから、それに拜島さんやきもち酷いよ。ずっと店で働いてたら…」

洋「そうだよな。まだ、15歳だしな。」

れん「うん、無理だよ。受け入れるの」

洋「そうだよな。やきもちやきすぎて、大変そうだな。」

れん「ハハハ、降りようか」

洋「うん。行こうか、お姫様」

れん「懐かしいね。」

洋「でしょ?」

洋が、久しぶりに手を繋いでくれた。

れん「友達は、これする?」

洋「10年友達だった時もしてたでしょ?」

れん「そうだね。」

洋の手は、暖かくて優しくて心地いい。

僕と洋は、タクシーに乗り込んだ。

みんなが、待つ所まで行った。

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