12 / 71
悪役令嬢になる前の兄上
赤い髪の二人
しおりを挟む「はぁ……やっとこの部屋にこれましたわぁ」
「「「……」」」
「はい、クローディア。薔薇の紅茶です」
「ありがとう。エルヴィス」
放課後、訓練で満身創痍で部屋に帰って来た3人は目の前の赤い髪のクローディアと言う名の女性が待ち受けており。3人は状況確認のために魔法の力で意志疎通ができるアイコンタクトをする。
(誰だよ。レッドライトよんだやつは!!)
(……僕じゃない)
(兄上です……クラスで色々あったみたいです。同じクラスなんです……)
(くぅっ)
エルヴィスはそのまま無言の3人が座るだろう席に氷の入ったコップを置き紅茶を注ぐ。
「訓練、お疲れ様。ヒナト、立派に汗を洗い流してますね。そうです、それが大切です」
「はい。よく言われてましたので……清潔感は大切です」
「そ、そうだな。でっ……なんでこいつが?」
「あらぁ~こいつ呼ばわりですかぁ? 遠い親族のグリーンライトの赤髪さん」
「……黙れ。紅茶やろう」
「あらぁ。腐った緑茶さん……髪が赤いわよ」
ピリッとした睨み合い。その空気の中で……ヒナトは兄上に近付き。尻を触る。
「ひっ!? ヒナト!!」
パンッ!!
「勝手に何する!!」
ヒナトの頬に一発いい音が鳴り響く。驚いたバーディスとハルトは視線を外しその事件を見る。
「ただ、触れただけじゃないですか?」
「……尻を掴んでおいてか? 鷲掴みだったぞ?」
「なぜ、怒るんです? 昔は普通に触っても怒りませんでしたよ? ハルト!! さっき君のも触りましたよね?」
「触ったな。筋肉見せ合いでな……」
「あっ……いや」
エルヴィスは何かヤバいと感じ口がどもる。
「兄上……男同士なら。相手の体を褒め合うのは普通ですよ? ということは……女として自覚しているのですか?」
悪い笑みを向けるヒナトにエルヴィスは少し焦ったが……その問いに対する批判は無理だと考えてから口にする。
「……では、それを肯定したら……お前は他の女性にもするのか? ヒナト……俺はそういうの良くないと思う」
「……少し品位に欠ける行いでした。ごめんなさい」
ヒナトがしゅんと落ち込む。ちょっと羽目を外し過ぎたかと。そして、エルヴィスは手を叩きそして……
「これでこの話は終わりだ。すまないが触られるのに嫌悪感がある。以上」
「わかりました、兄上。でっ……バーディス嬢について紹介されてませんよ?」
「そうだな。俺のクラスの友達バーディス嬢です。ボッチになりそうなのでかまってあげてください」
「ボッチ!? エルヴィス!! 聞き捨てならないわ!!」
バーディスがハルトとの睨み合いなんということ忘れエルヴィスに詰め寄る。エルヴィスは笑みを浮かべて答えた。
「クラスで見てましたが、名家を盾にし、高圧的でちょっと怖さを武器に人と付き合う節が目立つ。誰もいないここで言うが……それでは誰も振り向いてくれない」
「そんなことないわ!! クラスでの輪を知ってる? 私が中心でしょ?」
「もちろん、だが……今あなたに問います。クラスでナイフが突き刺された場合に心配する人居ますと心の底から言えますか? 今の所は俺以外いないと考える」
「俺以外? エルヴィスはもし刺されたら助けてくれるの?」
「刺される前に庇う」
ヒナトに少し視線を流して答える。
「それが令嬢を御守りする騎士でしょう? だから心配する。尖ったバーディスさんに」
「……」
バーディスが耳が真っ赤になりながら、椅子に座る。そして……エルヴィスに伝える。
「……わかったわよ」
「ありがとう……」
そんなバーディスにエルヴィスはちょっと照れくさそうに笑い隣に座る。それにセシルが声をかける。
「……落ち着いた所すいませんが。本を読んでもいいですか?」
「勝手にしなさい」
「バーディスさん、そこは……はいと言う二文字でいいと思います。どうぞ、セシルさん。紅茶のおかわりどうですか?」
「……はい、今度は暖かいのをお願いします」
「はぁ、じゃ俺も頼むわ」
「兄上、私のも」
「……エルヴィス。私も、新しいのを頂戴」
「わかりました」
あの切り詰めた雰囲気が砕け、落ち着いた空間でただ放課後を同じ空間で5人は過ごすのだった。
*
エルヴィスとヒナトは二人で家に帰る。その途中……
「ありがとう。ヒナト」
エルヴィスがヒナトに唐突にお礼を言う。
「何ですか? 兄上」
「わざとだろう。尻を触ったのは」
「……あの空気を変えたくありませんでしたか?」
「もっと他に手を考えて欲しかった。つい手が出てしまったじゃないか」
「そうですね。いい一発でした」
「……結構、ピリッと電気が走ったみたいになって驚いた」
「そうですか。言うこと聞きました」
「酷い話だな。尻だけでああも……取り乱す」
「柔らかかったです兄上」
「二度目は取り乱さないぞ……すごく気味が悪い」
「ははは、可愛かったのに残念ですね。まぁ……それにしても。あの二人は何かあるので気をつけてください。兄上」
「わかってる。髪色でああもなるのだからな……俺と同じようにコンプレックスあるのだろうな」
「コンプレックスですか?」
「ああ、こんな母上と同じ、ピンク色……あまり好きではない。男らしい色がよかった」
「そうですか、私はその桜色は本当にいとおしく思います。万年咲く、綺麗な花のようで」
「お世辞をありがとう」
「……はぁ、カッコいいですよ」
「ありがとう!!」
「……」(くっ、私が取り乱す)
エルヴィスとヒナトは会話をしながら帰り、途中ヒナトが黙る。そのヒナトがエルヴィスの手を優しく掴み。エルヴィスはため息を吐きながら仕方なく黙って握り返して黙って帰るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる