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悪役令嬢になる前の兄上
イジメを気にしない兄上
しおりを挟む私の婚約者の噂はすぐに広まる。それは止めどなく川の流れのように流れ続け。いつしか濁流となって学校を支配する。
一番話題の一番今面白い話なのだ。だが……非常に難しい状況でもある。
そう、私は確実に3人に好意を寄せられたのだ。それがどう意味するかは……クラスに入ってわかる。
「おはようございます」
「「「「……」」」」
そう、私が挨拶をしても帰ってくる声は……
「おはよう!! エルヴィス!! 今日は逃がさないわよ!!」
バーティス嬢だけである。私はキョトンとして鞄を置き席に座るとちくっと痛みがして針が刺さる。
「痛い!?」
「あっエルヴィス。針あるよ」
「バーティス!? もっと早く言ってよ!!」
「いやぁ~魔法使いでしょ? 回復できるでしょ? 絶対にヒナトさんが怪我したら治してた筈」
「くっ……そうです。治してました。あたた……」
私は針を取り、持ってきたゴミ袋に入れる。回復をしてから目の前でニコニコするバーティスに怪訝な顔をする。
「苛めですね。バーティスもですか?」
「苛めを静観する事を頼まれたの。静観はする」
「バーティス……あなたも一緒に苛められるぞ。離れた方がいい」
「嫌、私の親友と一緒に苛められる事を選ぶわ。これも実体験になるし、それに……」
バーティスは私の顔を覗きこみ、屈託ない笑みを向ける。
「エルヴィス一人占め。あなたは結構、八方美人で柔らかい物腰。意志疎通を簡単に出来るから。私みたいに我が強いのと比べてすぐに他人と仲良くなって……一人にさせられるから。願ったり叶ったり」
「バーティス……ありがとう。はは……なんだろう。イジメぐらい全然大丈夫と思ってたけど。バーティスがいると本当に心強い」
「エルヴィスが私を護る言ってたのにぃねぇ~」
「バーティスのがイジメられると思った」
「はぁ!? この!! この口が悪いのか?」
「あたた」
頬をつねられて私は痛みを我慢する。やさしめのつねりであり。冗談、罵りあえる仲なんだなと嬉しく思った。
「痛い!! なんでまだつねるの!!」
「頬、やわらかい。頬……すべすべ……憎たらしい!!」
「あだだだ!? それだめぇ!!」
バーティスの手を叩き落とす。危うく千切られるかと感じたのだ。
「あら、ごめんなさい……にしても本当に肌綺麗ね。何してるの?」
「何もしてない。と言えば嘘になるんですけど……」
バーティスが興味津々なので私は鞄から、小さな瓶を取り出す。それを机に置き……説明をした。
「寝る前にこれをつけると!! みずみずしいお肌が!! 油と水を混ぜ、魔法を使い拡散。分離せずしっかりと保湿も出来る商品です。試供品で、まだ作りの段階ですがどうぞ」
「へぇ~これ、あなたが作ったの?」
「もちろん、肌の手入れをしないといけないのを知っているし。これは儲かるとわかったらつい実験を……自分で」
「貰うわ。本当に男だったのかしらね」
「男だから、ちょっと強いですよ」
「ふーん。そうね、イジメられてギャーピーギャーピー言わないもんね。立派立派」
「へへへ……なんか褒められると照れ臭いですね」
「エルヴィス。かわいい~」
「それは本当に恥ずかしいからやめて」
「ふふふ」「ははは」
二人で談笑し、明るく楽しくする。すると、周りのクラスの子も陰口をチクチクと大きい声で言うが気にせず。反応も見せない。
「そうそう、そういえば……あなたのこの前着てきた服。あれってまだ非売品? なんか結構話題で冒険者の方々から欲しい声もあるし、私も着てみたい」
「着てみたいですか? あれ、まだ量産も何も考えてないんです。ですが!! そんな声もあると噂で聞いたので持ってきました」
「何を?」
私は鞄から、一冊の本を取り出す。それを広げてバーティスに見せた。
「カタログ作って来ました!!」
「鞄の中の教科書は?」
「家に置いてきました」
「エルヴィス!?」
「商人では教科書よりも必要なのは商品リストのカタログです。さぁ、バーティス嬢!! これの事ですね」
私は広げたカタログに書き込まれた衣装の絵を見せる。隣に四角いカラーバリエーションの絵も用意して。
「量産ではなくオーダーメイドです。ですが、色も決められるのです」
「……白だけど?」
「バーティスさん……ここにカラーパレットがあります。この小さな魔法杖でここに触れて。衣装に当てると……」
私は筆の魔法杖を使い、カラーパレットから色を覚えさして筆で衣装に色を塗る。すると衣装に色がのり。淡い黒色で染め、刺繍は金色で装飾する。
そう、目の前で絵を描くように色を足していく。
「ふぁあああ!? すごい!? 黒だとかっこいいのね」
「そうです!! 黒だとかっこいいです。黒大好きです。バーティスさんの髪はちょっと黒よりの赤なので……白色などの光色。明るめの色にするとすごくいいと思います。白一色ではなく……このように淡い灰色など加えてもいいですね。刺繍は黒にしてもいいかな?」
目の前で、バーティスに似合いそうな色を足し、描き。一つの衣装を作る。刺繍の柄はバーティスの家紋とする剣を用いる。
「はぇ~エルヴィス。本当に多芸ね」
「それはもちろん。売上のために……オーダーメイドで高くなります。こちらが値段です」
「わぁ!? やっぱ高い!?」
「ですね。ですがこれは定価。取引のないお客様用です。バーティスなら……」
私は金額にかけ算に少数点の数字を入れる。
「取引がある感じで値段を落とせます。友達ですしね」
「あっ……安い」
「元値がちょっと高めなんです。オーダーメイドは……ここまで落とせると思う。絵もあるし、納期は10日ほどで」
「待ちなさい……今の手持ちとを考えるわ」
バーティスが鞄から硬貨を数えていく。そして……悩みながら。うーんと唸る。きっとお小遣いが少ないのだろうと察し。ある提案をした。
「今回、私から母上に言い。広報資金で落ちないかを相談します。もし、落ちる場合。試着品としてご提供させていただきます。変わりに必ず。ヴェイス家で買ったとお伝えください」
「えっ!? 本当に!?」
「はい。一応、契約書に明記します。サインください」
私は魔法筆を取り出し、バーティスに手渡した。バーティスはすらすらと名前を書き込み。それを受けとる。
「契約ありがとう、バーティス。これから服の綿密に決めましょ」
「ええ!! 赤一色にしよ!!」
「赤を基調としてですね。はい」
私はバーティスと衣装の色を決めていくのだった。
*
用意された優等生隔離部屋に俺達は顔を合わせる。兄上から教わったお湯の入れ方。紅茶の作り方をそのまま実践し、二人にもてなす。
兄上は魔力も勝手に込められるし、妖精が勝手に祝福するからほんの少し違うが……あまり分かりにくい変化なので俺は気にしない。
「今日はエルヴィス来ないのか? ヒナト」
「……ヒナト。エルヴィス嬢は?」
「……いや。わからないです。私が入れた紅茶に不服ですか?」
「いや……別に……」
二人はそわそわしているのを眺めながら俺は俺で伝える。
「兄上はバーティス嬢から衣装の購入の依頼があり、忙しいらしいです」
「あのアマ……」
「……商魂逞しいですね本当に」
「二人とも。商家の出なんですから認めてあげてください。婚約者のそんな所も嫌と思うぐらいなら取り下げを推奨します」
「ヒナト……別に嫌いじゃないがなぁ……こう。関われないとなぁ」
「……そうですね。魔法の話もしたいです。あそこまでしっかりと勉強している令嬢は早々いません。便利な物しか思ってないのが多いです」
「ヒナト。エルヴィス連れてくるわ」
「……はぁ。ダメです。ハルト……バーティス嬢に兄上の過去を話をするといってました。秘密にしたくないと」
二人はそれを聞き、立ち上がろうとして俺は扉に仁王立つ。
「……ばれないように盗み聞ける魔法を試したい」
「ヒナト、お前との異常な関係知るいい機会だ。エルヴィスは話したがらない。お前を想ってな」
「知ってます。知ってますよ……安心してください。お話……してもいいですよ?」
「ヒナト。お前?」
「……ヒナト?」
「兄上を奪おうとする親友に私からのお話です。これを聞いて……越えれるか見ます」
俺は二人に着席を促し、二人は渋々といった表情で座る。そして俺は……席につき。過去の事を話をする。その前に……
「隠し事でしたが。私の背中の傷や体の傷は訓練でついた物は少ないです。それに……」
一緒に水浴びする二人は俺の傷を見ている。だからこそ答える。
「兄上とは半分しか血は繋がっていません」
「「!?」」
二人は驚いた顔をしたあと。俺は過去を話始めた……兄上と会う前の頃からを……
*
私は覚えた魔法陣を使い。防音室を作りバーティス嬢をそこへ招き入れる。秘密にしていた事を話すために。
「エルヴィス、教えてくれると言うけど。本当に念入りね」
「……ヒナトの不利益になる。もしも……バラすなら。許さないから。俺はな」
「不利益になるほどそんな凄い話なの?」
「ヒナトは腹違いの子」
「……あら、よくある話じゃない? 愛人の子? 使用人? この業界よくあるわ」
「なんでしょうね。何の子なのか……お話します。色々あったんです……ヒナトは」
「まぁ、腹違いなら色々あるわね。静かに聞いてるわ」
「……はい」
私は座るバーティスに向き直り。小さな声で語りだす。昔話を……ヒナトと私の過去を。
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