桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

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極悪令嬢に堕ちる

銀髪の薬術師

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 路地裏の奥に小さな小さな店のような扉があり、薬剤師と書かれた看板が飾ってあり、店に案内してくれる。

「ようこそ。私の工房兼店へ」

 誘われるまま、彼女のついていき。扉を潜ると魔法のカンテラが店を照らし。多くの飾ってある薬の入った瓶を輝かせている。赤青緑や、名称が書かれている箱などがあり……中には紅茶葉や茶葉などもある。普通のお店のような店内に丸テーブルと椅子が置いてあった。

「その椅子に座ってて。お茶淹れるから」

「はい……薬剤師ですか?」

「薬剤師でもあり、錬金術師のはしくれでもあり、商品を置いているだけでもあり、魔術師でもある」

 店の奥へと彼女は入って行き、次に現れたときはポットとカップを持って現れ、その中に入っているだろう紅茶をポットに注いでくれる。店の中は暖色の灯りで彩られており、のんびりした空気を感じる。香水の匂いもどこか優しい。そんな事を考えながら彼女が私の目の前に座る。

「そろそろ、お名前いいます。初めましてエルヴィス。私は魔法名リビア・グレイライトです」

「ライト……」

 ライトと言う髪の色で判別できる家の者たちの貴族名である。大体は騎士家や政治家が多い。

「そう、シルバーライトの家でした。今は絶縁してる。だからグレイライトと名乗ってるわ。家出したの」

「そ、そうなのですか」

「だって……あの家が嫌だったから。それに、自由も女にもなれないなんて嫌でしょ」

「女にも?」

「ふふ、私も元男です。そういう薬を作って研究しています。あなたが10人目の実験成功例です」

「なるほど。それで声をかけた。売った方なら別るのですね」

「わかる。女になる人は本当に努力が見て取れる。しっかりと化粧もするしね。自身に満ちた表情もしてるし……直感。まぁあなたの場合は肖像画もあったからね。弟さん元気?」

「元気です。『聖女』のおもりで忙しいですね」

「あら、一緒じゃないの?」

「一旦別れました。また、付き合います」

「そう、何か事情があるのね。その『聖女』っていうのと関係もありそう。あなたのこの夜へ来た理由はなに」

「エーデンベルグ公に弟を返してくださいと交渉するためにその材料探しと弱者である私を鍛えるためです」

「エーデンベルグ公? 最前線の領主様に直々に?」

「はい。しかし、行っても返されるのがオチ。交渉の席に立たないといけない理由が欲しい。魔法使いになれば自ずとそういった物が見えればと思いまして」

 私は今の状況全てを彼女に説明する。まぁ、何も考えず世間話をするように初対面に話をした。今回は考えがあって隠す事はしない。もちろん、彼女も面白いと思ってか、多くの質問があった。一通り話を終えると彼女は笑みを浮かべて『少し待ってと』店の奥へと向かい何かを持ってくる。それは……瓶に入った青い薬である。

「それは?」

「あなた用の男に戻るための薬。あなた用」

「あったんですか……」

「一応ね。クラスト君には渡しそびれた。話を聞くとどうも、もうこの薬はいらないわね」

「そうですね」

 1ヶ月前なら飲んでいただろう薬を眺める。たった1ヶ月でこうも変わるほど。私には大きい事件だったのだ。

「せっかく作ってあったのに……処分しなくちゃいけないわ。受け取って貰える?」

「他の効能あるんですか?」

「ないかも」

「では、受け取りは拒否ですが。これをどうぞ」

 私は私で2枚の鉄プレートの文字が掘られた名刺を置く。一つは私とアントニオ商会の名刺だ。簡単な話、商売どうでしょうかと聞く。

「これも何かの縁。そして……無駄になったお薬代にはなるでしょう」

「ふふ、ありがとう。話が早くていいわ。小さい店で中々お客様居なかったの。営業もちょっとね」

「まぁ、商品どんなのがあるかわかりませんがね。また来ます。今日は顔見せだけですね」

 私は私で彼女が私に気付き近付いた理由を知る。ただ実験結果と言ってるのも何処まで真意かは読み取れない。まぁ、私も魔法使いの薬は凄く気になる所である。

「化粧品あるの?」

「もちろん、素肌がハリが出るぐらいに。魔法使いって若い人多いんじゃないのよ」

「手入れ用品がいいんですね」

「ご正解~」

「じゃぁ……試薬品をください」

「まいどあり……あとさぁ~私も一枚噛ませてよ」

「何をですか?」

「『聖女』に喧嘩売るんでしょ……やっぱり、鼻につく女は嫌いなの」

「人が悪いですね。もちろん、私も悪いです。あなたがどういった方か測らせてもらいたいですが。そうも言ってられません」

「ふふ、ありがとう。見習い魔法使いさん」

 いい縁を私は手に入れたと思う。セシルさん以外の魔法使い。一人一人縁を大切にしたい。ただ、気を付けていかないといけないのは……彼女は商売人であること。お金の切れ目が縁の切れ目である。そこだけは注意しよう。

 だが、私はクラスト……ヒナトの置き土産のような気がして応援されているような気持ちになるのだった。

 本当にそう、思うのだった。






 早朝、学園をサボる事を決め。バーディス嬢に使用人に伝える事をお願いした。最近、バーディス嬢もベッタリということはなく。個別で何かをしているのが雰囲気でわかった。それはまだ彼女の口からは聞かせて貰ってないが……時がくれば語ってくれるだろう。

「お嬢様。どちらへ?」

 母上の屋敷で雇った彼女が私の支度を手伝ってくれる。屋敷からこちらに転属してもらったのだ。理由はもちろん私には家事をする時間がなくなる事を見越して。

「アントニオ商会へ出向きます。彼と午前中は打ち合わせです」

「お嬢様のデザインされた服に関してですか? 非常に好調とお聞きしております」

「そうね、そのお金を貰うことも。無理難題を頼んでいたの。それの打ち合わせです」

「かしこまりました。お嬢様……変わられましたね……」

「そう? 変わったかしら?」

「はい……前は余裕があったように見えました。やはりヒナト様が……」

「そうですね。ヒナトが居ないとダメな子です」

 自身がデザインした服に着替え、ブーツを履きマントを羽織る。そして胸に剣のお守りをつけて胸の谷間に隠した。

「お嬢様……お嬢様はヒナト様の事を……」

 使用人は見ていただろう、私たち兄弟を。だから答えを聞きたがっている事を私は察することができた。彼女は女性であり、やはり気になると言うことだ。いや、男性もそこそこ気になるだろう。

「ええ、愛してますわ」

 私は堂々とそう答えて屋敷を出る。すると目の前に飄々とした男性が微笑みを浮かべて立っており、馬車を用意していてくださっていた。

「あら、お迎え来てたんですね」

「今々、お迎えに上がりましたエルヴィス嬢。馬車でお話をしましょう」

 そう、正装で登場した彼はアントニオと言う商人であり。私の父上の『自称』部下である。借金はほんの少し残しており……毎年、少ない利子を払い続けていた。独立後も縁は持ち続けており。私も彼から商品を買い込んでいる。

「ええ、そうしましょう。身のある話を聞きたいわ」

「もちろん、取り揃えて……います」

 含んだ言い方に私は笑みを溢した。

「あら、嬉しい」

 作り笑いで、穏やかな心を装いながら。









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