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極悪令嬢に堕ちる

悪女の妹

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 賑わう商店街の一つの喫茶に、学園の令嬢二人がおやつと共に紅茶を嗜んでいた。服装はピシッと貼り付いたスカートに生肌を見せないように長い黒いソックスを履き。腰には魔方陣がかかれたカードをつけ、小指にプラチナの指輪をはめ、笑顔を見せながら、ただ談笑するために足を組んで座っていた。

 彼女らは、エルヴィスの教え子であり。仲のいい人と遊びに来ている。

「お姉さまにおこづかいおいただきましたので、今日はケーキを2つ食べる?」

「やめましょう。太って醜くなったら嫌でしょ。この前、このソックスとスカートの間に肉ついちゃうでしょ。今日は自習で穏やかだったから」

「運動すればいいの」

「運動がなかったじゃない」

「……せっかく。姉さんが金をくれたのに? 贅沢しましょ。私の家では味わえない物ですし。『美味しい物でも食べなさい』と、バーディスお姉さまは言ってましたわ」

「……まぁね。ねぇ最近、現れた姉さんの下ってどう?」

「メグル姉さんの事? すごい人ですね……」

「パッと出の令嬢だと思ったけど……私たちより全然強いわね。嫉妬しちゃうわ。ルルはそういうのないの?」

「わからないでもないですけど……エルヴィス姉さんに一番仕置きがキツいし、同情しますね。ダリアもあの3人に並びたいなら……エルヴィス姉さんの蹴りを耐えないとね」

「骨折れる……かも」

「訓練見てたら、怖くなるわよ~」

 二人は定員に注文を既に済ませており、ここ最近の事を話をする。3人の姉。バーディス、ルビア、メグルに日ごとでそれぞれ教えられており。エルヴィスは全く手を貸しては居なかった。エルヴィスが教えるのは3人だけである。

 そんな中で、ふと店の中が騒がしくなる。空気が変わった瞬間を令嬢の二人は感じ取った。

「ん?」

「何かしら?」

 二人が見つめる先の扉に3人の男が扉を閉めて道を塞ぎ、4人の男が剣を抜き。大きく叫ぶ。異様な光景に店は静まりかえる。

「今から!! 店を制圧した。外には仲間もいる!! 金目の物を出せさもなくば殺す!! 机の下に頭を押さえて待ってろ!!」

 静まった空間に悲鳴が上がり、4人がテーブルで身を丸くする客一人一人の財布を奪っていく。店員も、店主も震え出す。剣を持ってる客もいるがそれを抜かずに手放していた。ただの飾りの剣らしく、二人はテーブルの下で様子を伺う。

「ねぇ、どうする? ナナ」

「8人。4人は逃げないように扉で、2人は怪しい動きを監視。2人は財布などを奪い袋に詰めてるね。ダリア……私は戦おうと思う」

「わかった。よかった同意見で……もし逃げる言ったら。二度とエルヴィス姉さんに顔向けできなくなって小指落とすところだった」

「怖い怖い。だけど、逃げたらもっと怖い。エルヴィス姉さんたちに顔向け出来ないわ」

 二人は……今の状況に恐れを感じずにいた。多くの事を学んだ。鍛えられた精神。訓練したり知識として手にいれていた事とエルヴィスのスパルタの訓練によって余裕が生まれていたのだ。

「どうする? 幸い私たちの所までくるのに時間がかかるから打ち合わせれるけど」

 二人は盗みをする袋に入れている手間の僅かな時間で意見を交わす。そして、どうするかを決めた時にホルダーの魔法の鍵を開け、臨戦体勢を取る。二人の金を奪いに来るその時までまつ。

 若い女性は男達がいやらしい手付きで撫でるのを眺めており、警戒心なく近づくのを二人はわかっていた。

 待つ時間で深呼吸。浅く、深くと呼吸を変えて気を引き締める。ゆっくりとゆっくりと毒針を研ぐように。

「おう、お前も金目の物を出せ」

 そして、その時は来た。二人が近づき財布を盗もうとしたその瞬間に腰から魔法陣を抜き取り……超常現象を発現させる。抜き出された氷の刺剣を手に、立ち上がり男の体に突き刺す。

 シャァン!!

 突き刺した瞬間に男たちは驚き、痛みで倒れる中。氷剣を手放す。氷の剣は維持する力を失い、大きな傷口を生み出して血沼を作り、店の中で甲高い悲鳴を響かせた。

「何!?」

「殺せ!!」

「……剣を抜いているから遠慮なしよ!!」

 様子を伺っていた二人が剣を持って二人のエルヴィスの妹分に近寄る。立ち上がって次の手のために氷の刃を生み出して二人は邪魔をしないように距離を放し、それぞれ横から男たちに迫った。目的は数減らしであり、門番の4人の戦線参加の前に数を減らそうと言う算段だ。

 氷の刃は長く、凪払うように振る。机の下で丸まっている人の上を通り立っている男の体に当たる瞬間に剣で防がれる。

「ブレイク!!」

 防がれた瞬間。氷の剣が砕けちり、男の腹部に針のような氷が刺さる。痛みで身が揺るいだ瞬間に氷の剣を捨て。二人は男の顔に炎の魔法札を貼り、顔を焦がした。絶叫と共に悶え苦しむ男に新たな氷の鋭利なレイピアを差し込み命を奪い去る。

「4枚つかちゃった」

「はい、あと。6枚ですね」

 二人は離れた位置でそう口に出し、扉の4人を見続ける。倒れていた人々も突如現れた救世主の姿を机の影から見続けていた。救われると言う希望を持って。

「くっ……何処の精鋭か……畜生!! 逃げるぞ!!」

「ああ!!」

 扉の4人はそのまま死んだ仲間を見捨てて立ち去る。二人の令嬢は追いかける事もせず、本当に逃げたのか確認後。扉に居続けた。客人が彼女らに近づくと、手で制止する。

「潔く逃げたので外にお仲間がいるかもしれません。まだ出るのは早いです」

「逆襲もあるかもしれません。騎士が騒ぎを聞きつけて来るまでの辛抱です。席でお待ち下さい。ご安心を、喧嘩買いましたので」

 二人は強い口調で大人たちを従わせた。店内は静まりからゆっくりと緊張が解かれ話を始める。そして、騒ぎを聞きつけたのか騎士が顔を出した瞬間に騎士に対して不満不平が起こり。助けに来た騎士が怒られる状況になるが二人は静かにと言って氷の刃を見せて黙らせる。

「騎士様、遅くてあくびが出ましたよ。状況は店主からお聞きください」

「店主さん、ごちそうさま。店を汚してごめんなさい。これは気持ちです置いておいて」

 ナナが金貨の入った袋を机に置き。何事もなかったように彼女は後の事を騎士に任せて立ち去るのだった。

「はぁ、とんだ日ね。ナナ」

「そうね。でも……いいんじゃない? たまには」

 令嬢二人は若く。そして……異常に騒ぎを楽しむほどに余裕を見せたのだった。

「ねぇ、どうする? 報告したら怒られるかな」

「無闇やたらに魔法を使うなってお姉さま言ってたよね。どうしよ……」

「せ、説明しよう。正統性を示せば……」

「「……」」

 余裕がなくなるのだった。


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