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王子たちの育母

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 バルバロッサ皇帝に抱かれ続け。1月がたった。残念なことに私は生き長らえている。惨めに……しかし。気分は晴れやかだった。


 理由は単純明解。普通に衣食住があること。バルバロッサと話す内容はそこそこ有意義。王国にない本もあることや……底辺で自害してやろうと思っていたが予想よりも悪運が強く。貴族の生活が出来ている。


 子が出来るまでの間かも知れないが……それもまた一興。10代そこらの女が子を産んで世界に私の居た証拠が残るのなら。悪くもないだろう。


 だから……私の興味があることをする。


「メアリーさま……皇帝陛下の息子達です」


「はいはい」


「……では失礼します」


 興味と言うのは皇帝が殺した母親3人の残した子たち。一人はすでに3才であり、他は1才、0才と歳が違う。


 ただ……3才の子は綺麗な金髪で父親とは似ても似てかなかった。しかも、大人しく……なんとも言い難いほどに冷たい。


「あーあー……乳母は?」


「一応、いらっしゃりますが……」


「ふーん」


 乳母はただの飼育するだけのようだ。まぁ予想通りでもある。あんな糞父親がそこまで気がまわる訳がない。メイドにつれられた3才に私は抱き寄せる。


「ウリエル。こんにちは」


「………?」


「今まで一人でゴメンね……今日からやっと一緒に住めるわ」


「??」


「私はメアリー………名前はどうでもいいわね。ママと呼びなさい」


「……う、うん。でも、僕のママは……」


「そうね。でも大丈夫。私があなたのママになる……ね?」


「………」


 反応が薄い。仕方がないと思う。全く……育児教育もできないのか? 帝国は? 王国以下である。


 令嬢教育で培った知恵を駆使し私は彼女を抱き締める。


「大丈夫。絶対にママって言わせてやる」


 私の計画のために。









 3才は全く大人しすぎて私は最初に外へ一人連れ出した。1才、0才は乳母に任せてだ。


 それに週間で行い。下町を巡った。帝国は帝国色の商店街などを巡り。心を開いてもらおうと私はとにかく気を引き続けた。


 それから数週間……


「……………ママ」


 恥ずかしそうにウリエルがママと言ったのだ。その瞬間……何故か涙が出てしまったが気にせずに過ごす。嬉しく一緒に寝るだけではなく……それからは一緒に剣を稽古もするようになった。


 着々と染み渡るようにあのアマを観察し培った力を使っていく。


 そんな事をしていたあり日の夜。


 バルバロッサ皇帝陛下に抱かれた夜の事だ。ソファーに座って二人で笑顔で談笑している時だった。


「お前……何をたくらんでる?」


「何をとは?」


「息子達にママと呼ばせて……何をしようとしている? 剣の稽古も一緒にしていると聞く」


「稽古は私があのアマに負けたのは取り押さえられたからです。体を鍛えて剣を鍛えて……復讐できる日を目指し鍛練することの何がいけないのでしょうか?」


「息子を巻き込むのか?」


「……いいえ。最初は息子たちを使い。王国の学園に送り込んであのアマの娘でも出来た暁に寝取りや暗殺などを考えましたが!!」


「考えたが?」


「私の手で嫌がらせをし続けて苦しめる方がいいと思い。それが出来るために頑張っていますわ」


「……他にやることがないのか?」


「復讐できる機会を夢見てる乙女ですわー。まぁ時間制限ありますがね。孕んで死ねば終わり。だけど……まぁそれも復讐心に苦しまなくていいと思ってるわ」


「物騒な……死にたいのか? 行為は全力だが?」


「死にたくない。復讐できない。だけど苦しい、死にたい。でも………わからないわね。そんときはその時よ。王国の国外追放で私は変わったの。まぁ~今はすっごく楽しいわ。ありがとう」


 バルバロッサが私を見つめる。


「わからん女だな」


「わかりやすい女よ……バルバロッサ陛下が鈍感なだけ」


「鈍感だと?」


「そうよ。膝の上に乗りたがってるのよ?」


「乗ればいい」


「はい……」


 私は彼の膝の上に乗る。アゴヒゲを触り剃ればいいのにと思った。


「うーん。剃ればいいのに」


「………お前は恐怖心を持ちにくいな」


「そうね。ああ………厚い胸板」


「……」


 匂いを嗅ぐ。男の匂いだ……これは逞しい匂いがする。


「…………お前は俺の事が好きなのか?」


「大好きですよ。最初はまぁ~知らなかったですから。嘘だと思うのなら……好きにしていいわ。安心して殺せばいい」


「……お前は優秀な雌だ。雌にしておくには勿体ない。その胆力は素晴らしい。まぁ……一つ許せんのがあるがな」


「何?」


「鈍感を訂正しろ。ベットの上でお前はずっと囁いてるじゃないか?」


「………」プイ


「なんだぁ? 照れか?」


「な、なにも」


 私は行為中。全く自制が効かないらしい。知っている知っているからこそ忘れているふりをする。


「ふぅ、メアリー……俺をロイドと言え」


「あなたではダメ?」


「好きにしろ」


「ありがとう……ん」


 私はどうやら。若い王子よりもだいぶ年上が大好きな変態だったらしい。どうりで王国では全く気がつかなかったわけだ。まぁ……もう。死ぬ運命だろう。


「……孕ませるのはお前が最後だ。あとは殺しもしない」


「は?」


「意外そうな顔をするな」


「は?」


「……………」


 ロイドは何故か苦笑いをした。まぁ~私はまた生き長らえたらしい。悪運が強い……本当に。








「父さんこのときから改心したのですね。母上流石です。あと最初はやはり復讐のためだったのですね………育てられたのは」


「母上……どうやって改心を?」


「ウリエル……改心? 改心してる?」


「すまない。誤解した」


「さぁ? 私はウリエルに情がうつったのよ……あなたどうして?」


「愛を知らなかったからな……甘美だった。それだけだ」


「……ミカエル。らしいわ。甘美よ。美味しいよ? いただかない?」


「ガブ姉……いちいちこっちに振らないでくれない?」



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