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いい匂いの弟君
しおりを挟む休日前の深夜は遊ぶためにあるそれは帝国民の常識だった。いつもの家族会議後飲みは無かった。皆は用事があるといい。いつものように家族飲みもいいが。夜中の令嬢や貴族。平民と一緒に飲む酒も良いものとラファエルは思い出掛ける。
無駄に一人でも要られるほどに治安がよく。王子は自由に出歩けた。
そして……ラファエルは舞踏会場にお金を払い足を踏み入れる。それはお金さえあれば全ての民が平等に踊れる場所であり。身分は関係ない。そんな舞踏会にラファエルは顔を出していた。
ラファエルは近々、王国と帝国のやり取りに危機感を覚える。そう……まだあの人に出会えていないのだ。心残りで挑みたくはないと思い焦っている。だからこそ会場に入った。あの人を探すために。
「ラファエルさん。こんばんは」
「あら、ラファエルさん」
未亡人や人妻などがラファエルを見つけ声をかける。一人一人の名前を覚えており。問いに答えていくラファエルは蒼い髪を見せ、優しく微笑む。
もちろん……冗談で婚約者をオススメもされる。
「私の娘とかどうですか?」
「ラファエルさん。私の娘。見ませんか?」
「……申し訳ないのですが。今すごく気になる令嬢がいます」
「あら。もしかして……まだお探し?」
「ふふふ……甘いお話ですね。求めても見つからないなんて。物語のよう」
娘をオススメされて断りを入れても貴婦人達は美しい笑みを向けてくださった。ラファエルの母上のような人ばかりと思いつつ。実際そうなのだからラファエルは子供なのかと悩んでしまった。
皆に子供と思われているなと。だが……だからこそ貴婦人にはモテるのだろうと納得している。若さは男女共に人気なのだ。
貴婦人の話を聞きに徹し。ラファエルがその情報知りませんと言われるまで話を会わせる。噂話などをあげると皆が喜んで聞いてくれる。
そして……そんなときだった。
「ん?」
フワッと甘い薔薇の匂いが鼻をくすぐった。少しきつめな匂いに他の貴婦人か平民かと目線を移す。貴婦人たちに失礼といいその場を去り、匂いの主へと向かった。
綺麗な子だった。目はパッチリとし赤い色の目、長い睫毛に艶のある母上のような赤い長髪に優しい声。その子は料理を食べて冒険者仲間や色んな人としゃべり。冒険者に尻も触られナンパもされていた。観察を済ますと……スッと近付く。近くによく知っている。よく知りすぎている知り合いが見えたので余計に気になってしまったのだ。
「お料理お取りしましょうか?」
「あっ……大丈夫です。ありがとうございます」(えっ!? ラファエル兄さん!? どうしてここに!? ここ平民とか冒険者が半数以上だよ!?)
「お綺麗ですね。その赤い髪」
赤い髪は珍しくない。ミェースチのドレスは赤い髪に似合うように作られている。そう……赤い髪色で似合う服を着たり。赤い髪で強い女性を演じたり勇ましく魅せるお洒落でもあり。珍しい訳ではない。魔法の粉一つで綺麗に彩れるのだ。
「あ……はい……」
そして、長くすることも出来る。だからこそ……その髪に触れて。頭も撫でる。確認するように。
「あっ……あっ………」
「ふむ。ふむ……この感触」
ガシッ!!
「すいません。嫌がってるじゃないですか?」(おい、ラファエル。なに唾つけようとしてるの? 処すよ?)
「……ガブリエル。君が動くと言うことは。この可愛い可愛い中性的な子はミカエルだな。どうして女装を……」
「はは……バレちゃった。女なら半額だからだよ。よくわかったね?」
冒険者仲間は知っているのだろうと思われる。
「いや。気になってね。目につくなら……よーく見てみるとわかったね」
「ふーん」(ウリエル兄さんの事わからなかったのにね)
「いや、一番はガブリエルが見えたから。もしやと思ったんだよ。ガブリエルがいなかったらわからなかったのにな」
「ガブ姉さん。猛省して」
「ごめん。ミカエル……可愛いから。ついね」
「距離を離してもね。見てたらわかるから気を付けること。ミカエル。ずるはいけない。半額でもしっかり払いなさい」
「ごめんなさい。ラファエルお兄さん」
しょぼーんとするミカエルの少年のような女の子のような姿にラファエルはつい頭を撫でてしまう。こっそりと流行りを見せている少年愛はこういうことかとラファエルは理解を示し。ミカエルは焦りだしてしまう。
(や、ヤバイ。ラファエル兄さんの目が真面目だ。どうしよう!! このまま邪推されたら……兄さんに通じてしまう)
「ラファエルお兄様。ミカエルを触りすぎです」
「ああ、すまないね。ミカエル……君以外に女装して忍び込む者もいるのか? 居るんでしょうね。わかったら教えて欲しい気を付けるからね。自分は普通だから」
「ええっと……はい……」(普通?)
(ラファエルお兄様……普通?)
ミカエルとガブリエルは心で普通と言う言葉に引っ掛かりを覚えた。そして……ラファエルはミカエルの手袋を手を掴み。匂いを嗅ぐ。
「えっ!? ラファエル兄さん!?」(な、何を!?)
「うん……ガブリエル。手の甲を嗅がして貰えないか?」
「き、きもちわるい」
「ミカエルには嗅がせるのにか?」
「それは……ミカエルはその……違って……まぁ……その。ちょ!? いきなり手を!?」
ラファエルはガブリエルの手を強引に嗅ぐ。そして……手を離しミカエルの肩を強く掴んだ。よくマジマジと見て、化粧の仕方などを見る。ガブリエルがもしかしてミカエルに恋をと焦りだしたその時。
「……ラファエル兄さん?」
「この香水。誰かに貸した覚えはないか? 化粧の仕方も教えた事もないか?」
「!?」(ふぁああああああああああああ!?)
「!?」(えっ……えええええええええええ!?)
「二人とも……逃げるなよ。兄弟のその驚いた顔は何かを隠している顔だ。わかる」
ラファエルが短く、魔法を詠唱し。ミカエルはその本気に逃げられない事を悟るのだった。
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