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母の新たな悩み
しおりを挟むソファーでミェースチは足を組み、外でダンゴムシと戯れている声を聞きながら。つい口に出す。
「ウリエル……口寂しいからチーズを……」
「はい。母上」
「いえ、私が自分で取りに行くわ座ってなさい」
「母上。ご用意いたしますが?」
「いい……私がやる」
息子にすぐ頼りそうになったのをミェースチはいさめる。二人きりのこの状況もよくないと思いミェースチは厨房へ逃げる。もちろん厨房の扉には鍵をかけ、冷暗庫から、チーズ取り切り分ける。
「はぁ……全く。なに私が逃げるように動いてるのよ。これでも……大陸に恐怖を陥れようと努力したのに……血が足りないか。ワインワインっと」
少し、弱さを見せてしまった事を悔いるが。あれのお陰で踏ん切りがついたとミェースチは思う。目指すは復讐。ウリエルの行動で息子たちを信じ全て払い除ける事や……ウリエルの異常な行動で嫌われる方がいいとミェースチは思ってしまったのだ。
「泣いていたのがバカみたい。ワインどこかしら? ワインセラーに置いてないわ」
「母上、ワインは既にリビングに。後ですね。母上の涙は綺麗でした」
「!?」
ミェースチは驚き後ろを向く。そこにはウリエルが鍵をかける姿が見える。
「母上……爪の甘さは流石です」
「な、なんで鍵をかけたのに!?」
「秘密です」(マスターキーは持ってます。母上……生活に少し頓着ですからね……)
ミェースチはジリジリ後ろに下がる。ウリエルは両手を開き……笑みを向けた。
「母上? 怯えてどうされました?」
「ち、近づいてはだめ。ウリエル!! 5メートル離れなさい!!」
「何もしません。ちょっと警戒しすぎではないでしょうか?」
「私を抱くという禁忌を犯している癖に!! はぁ……ボロスにチクるわよ」
「まぁ……チクっていただいて結構です。彼女も共犯ですから……どちらかと言えば母上とっても悪い話ではないでしょうか?」
「な、何を悪い話ではないのか!!」
「絶対に一人にしません。復讐に身を燃やしたとしても。僕は母上と共に断頭台に上がる覚悟は持っております」
「……」
ウリエル、真っ直ぐ私を見る。その正直に胸の内を打ち明け堂々とし、自信に満ちた顔に……ミェースチは言葉を失う。
ミェースチの思い描く、完璧な騎士がいたのだ。そう……完璧な騎士である事を強き。ミェースチのような娘を出してはいけないと教え。誰よりも男はこうであるべきと理想の相手となって。ミェースチに迫る。
「過去、母上がいる学園に僕がいれば今の母上を救えたのにと。思っておりました」
「……あれがあったから。あなた立ちに会えたわ。それにそれは過去でありあり得ない話よ。あの場にウリエルは居なかった」
「そうですね。今は今です……」
ウリエルが近づく。ミェースチは後ろに下がり包丁を向ける。
「息子でも刺すわよ」
「刺せるならどうぞ。簡単に刺せると思いでしたら……僕の勝ちです」
「……うぐ」
ミェースチは悩む。これほどの強敵はそういない。ミェースチも剣の腕に自信があるが……それを越えて来ると勘がするのだ。
「………包丁を向けるとはそういう覚悟がおありですね」
「!?」
ウリエルが近づき。包丁の手を掴む。全く動かなくなりミェースチは……そのまま。
「ングッ!?」
また唇を奪われる。
「母上の魅力は……その獣のような闘争心。捻りたくなります」
「ウリエル!? あっ!? やめ!!」
「母上、剣を抜いたのです。覚悟は出来てますね」
「ちょ!? えっまって!! ウリエル!?」
ミェースチは包丁を奪われ、用意されていた紐で縛られる。そして台の上に置かれ……ミェースチは理解した。
「敗残兵の拷問は母上はご存知で?」
「待ちなさい!! た、す!? もごっ!?」
ウリエルは再度キスをする。そして……ミェースチは少しづつ力が抜け。また息子の好きにだれるのだった。
*
リビングでミカエルとガブリエルがダンゴムシを部屋に入れ戻ってきた時。ウリエルは質問した。
「ミカエル、ガブリエル」
「ウリエル兄ちゃんどうしたの?」
「妹か弟。欲しいのはどっちだ?」
「えっ?……ええ?」
「ウリエルお兄様?」
「ウリエル!! ミカエルとガブリエルはあっちへ行ってなさい。説教します。ウリエルを」
「わかった。行こうミカエル」
「う、うん……ガブ姉さん」
二人はミェースチの険悪な表情に危機を感じそそくさと外へ遊びに行く。ラファエルもレイチェルに自由をと言いながらデートを誘って遊びに出掛けた。ミェースチは……4人がいないことを確認し話をする。
「……ウリエル。ダメよ」
「母上、わかってます。だけど……いつかは察するでしょう」
「…………家庭崩壊だわ」
「そういう母上も諦めたでしょう?」
「復讐終わってから考えるわ。ウリエル頑張りなさい」
「わかりました。王国を滅ぼせればいいですね」
ウリエルは簡単そうにそう言い。春先の騎士団の動きをミェースチと打ち合わせるのだった。
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