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新たな悪役令嬢の誕生~終演~

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 結局ミェースチが王国から何事もなく帰宅、それから1年がたった。その間に連合軍が結成されたが王国は騎士を裂ける人員が少なく。ミェースチの虚報などで諸外国の仲がチグハグになり。結成されたが数個の砦を落とすだけ大戦果とはならならない1年になる。そして2年目に突入した瞬間に王国は連合軍から抜けた。理由はある者が成長し一瞬で王国を変えてしまい。戦っている暇ではなくなったからだ。


「お義母さん。ただいま戻りました」


「お帰り。レイチェル」


 王の間に騎士の鎧を身に包んだレイチェルは可愛らしくお辞儀をする。大きな大きな剣を背負いながら。


「お義母さんにおみあげです」


 そう言うレイチェルは笑顔で騎士に小さな木の箱を持って来させ。用意されたテーブルに置く。中を開けると小さな布で括られた物が入っており。騎士がそれを丁寧に開いた。


「あら。久しぶりね。寝ちゃってる?」


「すいません。お義母さん。父はもう首だけになり。反応がありません。歯も全部抜かれたのでありません。首しか……残らなかったと伝えた方がよろしいですか?」


「中々エグい。知ってるわ」


 丁寧に開かれた物は目を閉じたクレートの白くなった頭であり。それをレイチェルはミェースチに献上したのだ。


「これで。レイチェル・バルバロッサと名乗っても問題ないですね? 2つ名はそう……【第二の令嬢】がいいですね」


「ええ、問題ないわ。にしても本当に親を殺すなんて……歪んでるわね……」


「お義母さん。鏡がございます。お使いになられますか? 私の知る人で同じような人をご存知あげております」


「いいえ。結構よ」


 ミェースチはその首を下げるように騎士に言う。騎士は箱に入れ直し。火葬場へ持っていった。レイチェルは可愛らしくその首に手を振る。


「ばいばい。お父様。息子がしっかりと後を継げればいいですね。継げればいいですね」


「……王国は? どうなったの?」


「お母様か第一王子か第二第三に王子かで争ってます。政権争いが起こり戦争どころではない状態ですね。まぁここに私が入ります」


「シャルティエ女王の勝算は?」


「私ではなく母上なんですね。お母さんは頑張ってます。娘が殺した事は秘匿にしているようですが~まぁ公開してもいいと思います。だってお義母さんの後ろ盾がございますから」


「やっと表へ出れるわね。シャルティエ女王も……ふふふ。期待しましょうか? だって……ボソッと言っちゃったんですものねぇー。復讐したいのは彼だって」


 ミェースチの耳に届いた声はクレートと言う名前だった。


「はい。まぁ~いい最後でした。3日間」


「3日間生かしたのね……」


 レイチェルは恍惚にそう言う。そう、ミェースチはレイチェル姫を刺客として育て。クレートを暗殺させた。レイチェル姫は愛を注がず、母上を苦しめ、お義母さんの復讐相手でもあり。レイチェルを簡単に捨てた者として恨み復讐を成したのである。


 皮肉にもシャルティエの子が、誰よりもミェースチの娘のように毒を持つようになったのだった。


「レイチェル。今さっきラファエルは寝室で縛ってるわ」


「ありがとうございます。わーい。楽しんできます」


 レイチェルは屈託ない笑みでラファエルの元へ行く。ラファエルはこの前の浮気がバレたばかりであり。国外逃亡を企てていたがミェースチ以下、家族に取り押さえられたのだ。罰である。


「……ふぅ。これで貴重な謁見は終わりね」


 そう言い。ミェースチは空席のある。王の間から屋敷に帰るのだった。ロイドは戦場にずっと駐留しているがミェースチが代理を勤める。なお、遊びにも行くので家には帰ってこない。


「決着は……息子たちに任せましょう。復讐も全部」


 ミェースチはそう言い。前線から身を引いたのだ。









 屋敷に帰ってきたミェースチは育母から、子の話を聞く。子にはなにも変わりがないと聞き安心しながらも。複雑な心境で寝室に入る。


 揺りかごが一つあり。その中に新しい命が生まれている。


 誰の子かは……ミェースチや家族は知っており。まぁそうなるよねと言う空気が流れて結局そのまま殺せずに生んでしまう。生まれると同時にボロスは騎士団長となりウリエルは1番隊長となった。


「……不義の子ではあるからどうしようか……」


「たぁ~」


「……可愛いわね。小さい手~」


 ミェースチは悩む。生まれたばかりで孤児院に入れるかと……だが考え直す。この子が居なければ結局まだ。復讐などに躍起になり。多くの迷惑をかけていただろうと。シャルティエを殺す発作が続いてただろうと。


「……名前どうしよう」


 ミェースチはその女の子に対して名前を悩む。しかし……ミェースチ気が付いた。すでに名前を書かれた鉄板と手紙が入っている。そう、登録されているのだ。帝国名簿に。


「……メアリーかぁ……ウリエル。あの子は本当に……名付ける権利があるけれど……その名前にするなんて。本当に許せませんね」


 名前を悩む必要がなくなり。プリプリと長兄に怒りを現す。しかし……心の奥底で、許してしまった結果が目の前の状況にミェースチは頭を抱えた。これではシャルティエ女王と同じように流された女の子だと。憎むべき女と同じだと思い唇を噛む。


「はぁ……どうしてこんな変な家族に……ウリエルめぇ……」


 ガブリエルはミカエルと婚姻。ウリエルはボロスと婚姻したがミェースチと関係を持ち。ロイドは全部容認。結局、一番普通なのが浮気癖のラファエルとレイチェルなのだ。ミェースチも変だが皆も変だ。


「はぁ……メアリーもどう思う?」


 そう思いながら鏡を見ると優しい笑みをした女性がミェースチを見ている。


「うーん……メアリー……あなたは母なんですから。責任とらないと行けませんわね」


 ミェースチはその不義の我が子を捨てる事はせず。4人と同じように育てる事を決意する。決意し、英才教育をどうしようかと考えた時。ある事実を思い出す。


「メアリー……あれ? そういえば……」


 ミェースチはあることを思い出し、メアリーを持ち上げて確認する。


「………………………」


 メアリーは男の子だった。


「ウリエル。戦場から帰ったら折檻ね」


 ウリエルの減棒処罰はこの日決まるのだった。






 それから数ヵ月後、シャルティエ女王は女王の座を剥奪される。理由はレイチェルとラファエルがその玉座に収まった。


 結果、王国は消え去り帝国地方国となる。帝国の傘下の属国へと内側から変わってしまった。


 なぜこうなってしまったかは単純。今までに貴族がやって来た汚職が発表され。帝国に編入の方がいいのではと世論を変えさせ。クレートの親族は国民によって全て殺されるか奴隷落ち。追放される結果となった。


 そして……レイチェルは父を殺し、国を奪うことに成功してしまう。レイチェル姫反対の運動もあったが。ラファエル王の方が良さそうだと思われたため運動は消極的になりつつある。結局、国民は適当なのだ。


 そんな中で、ミェースチはシャルティエが謝りたい事とレイチェルが見せたい物があると伝えられ王国まで足を運ぶ。新しい王の戴冠式の冠を授ける儀式にも出席するためでもある。


 そして……その前にそしてシャルティエに出会う。レイチェルから報告書を渡されたミェースチはあった瞬間に顔が青くなる。そうあの……シャルティエの大きいお腹に嫌な予感がよぎったのだ。


「ミェースチ姉さん。ごめんなさい……ごめんなさい……」


 出会い。寝室で対面し、ミェースチは慌てて報告書を読む。何があったかを時系列で書かれていた。


「ああ……奴隷落ちはまぁいいんじゃない。あなたが無理矢理に犯されるのも味わってよかったわ。子供が生まれる場合に死ぬかもしれないなんてたまらないカウントダウンは面白いわね!! でもね!! なんで相手がラファエルなのよ!! あの子だけはあの子だけはまともだと思ったのに!!」


「……ごめんなさい。本当に……」


「謝んないで……複雑すぎるわ!! くっ……面白い物と聞いて。凌辱されて。孕まされてるのを指を差して喜ぼうとした瞬間に水をかけられた気分だわ!!」


 ミェースチはシャルティエの娘のレイチェル姫が思いの外、動いた事でおそろしい結果を生んでしまう結果に驚く。報告書の内容はシャルティエ女王への十数年ぶりの罰だった。


 クレート王の大切にしていたであろうシャルティエ女王を復讐の方が大事と言うことで利用したのだ。ラファエルに無理矢理何回も抱かせ。殺す前に捕まえたクレートの目の前で大きな腹を見せて誰の子かをしっかりと説明し、寝取った事を見せつけたらしい。


 死ななければいいと割り切っての行動に……ミェースチは背筋が冷える。私じゃないかと。


「歪んでいるわ……本当に歪んでいるわ。誰に似たのかしら……」


 ミェースチが身震いする。なお、本人も同じように歪んでいる事は説明せずともわかるだろう。レイチェルはミェースチに喜んでもらえればと最愛の母を売ったのだ。


「……ごめんなさい」


 お腹は非常に大きくなり。メアリーと同じこの年にそろそろ生まれるだろう事はわかってしまう。気にせずにいたら大変な事になっていたミェースチは怪訝な目でシャルティエを見た。


「……どうするのよ」


 報告書には四肢を縛り無理矢理と書かれてある。それも何をどうしたかを事細かに見てきたかにように書かれていた。そう……レイチェルはその場でこれを書いているのだ。どれだけシャルティエを冒涜したのか分かり。ミェースチはゾクゾクしながらもこの先どうするか問う。


「私は復讐で死ぬことはわかってました。でも……こんな事になるなんて……レイチェルが昔と変わらない笑みを向けるんです。だけどその笑みがミェースチ姉さんによく似てるんです……どうしたらいいの……」


「……ごめんなさい。わ、わたしもこんなに恐ろしい復讐は思い付かなかったわ。実父に対しても実母に対しても簡単に出来ることじゃない……殺せば終わりじゃな分。ごめんなさい……めっちゃ今、楽しいわ」


「…………」


 シャルティエは泣きながらもお腹に触れる。


「……この子をお願いします」


「いい子に育たないわよ……シャルティエ」


「……この子に罪はないです。お願いします」


 ミェースチは後半の報告書を見て慌てて魔法で燃やし捨てる。そして……空を見上げ。これからのことに頭を抱えるのだった。


「結局、罰は受けるものなのね……予想よりも……遥かに愛した子達がここまで……きついわ。それよりもシャルティエ!!」


「……はい」


「ラファエルに体を許す関係となったと報告書にはあったわ!! どういうことよ!!」


「気の迷いです。優しい彼に……昔の若い時を思い出して……つい」


「まーたあなたはそれでミスを!! いったいいくつになったらそういう姫様やめるの!!」


 なお、ウリエルにも同じように負けたミェースチは自分自身をも攻める。


「………ごめんなさい。でも……この子は……何も悪くないです。私が悪いのです」


「……はぁ。責任もって9才まで面倒見なさい。あなたが出産後に生きてたらね。そこからは私が面倒を見ます。それから会いたいなら帝国に来い」


 ミェースチは深く溜め息を吐きながら。歳を思い出す。いい歳の二人が何をやっているだと思いつつも……次の世代としてミェースチは不義の子がちょうどいい年で王になれるだろう事と大陸の覇権がもう目の前の事を考え……もう一度非道になろうと考えた。


 ミェースチたちはまた……悪役を産むのである。

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