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嘘つきは泥棒(初恋)の始まり⑨

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 学校はリモート授業になった。理由はもちろん目の前のお嬢様のせいである。制服を一応着ながら、朝食を彼女らに用意する。

「なんで交通機関ばかり狙うの?」

「ふふ、多くの社会人が『理由があって休みたい』と思ってるから叶えてあげたの、また今年は怪人の損害が大きく。建築補強、建築費、再建費など出費が多い。建築業界好調。逆に怪人に襲撃された会社などは下がり値。仕込むならここ」

「最悪なマッチポンプですね。ドラゴン」

「ふふ、そこのマインドも同じようにしてるわ」

 リモート授業を私はサボる。先生の授業中の記憶を奪い続けて私を認識させない。サボっていると言う記憶が生まれない。そんな中で私の部屋に訪れた二人は何処からか持ち出したノートpcで仕事をする。

「そんな、お金何処に?」

「総統。そして、あなたが稼いでる」

「稼いでますか? 記憶にない……」

「あの人も悪い人ですわ。メール内容を読ませていただきましたが、あれ宗教ですわ。『苦しい、悲しい』事を忘れさせる治療で儲けてる宗教ですわ。あなたもわかって仕事をしてんじゃないのですの?」

「それマインドがしてることじゃ……」

「オブリビオン言うとおり……私がそうしてる。ただ、それでもフラッシュバックなどはオブリビオンに喰ってもらってる」

「なんでそんなわかりやすい嘘をついたのですの?」

「………私は私の能力があまり好ましく思ってない」

 私の言葉にお嬢様は高笑いする。そして、指を差して彼女なりの言葉をぶつけた。

「好ましく思ってないのは普通よ。自信なくって当たり前。『思い出』を越える事が出来る子なんて怪人でも人間でも少数よ。皆、強くないの。だから負けるの。私たちは弱いから気にしない方がいいわ」

「私がオブリビオンは強い。力に溺れずにいる」

 二人とも違う意見に私は頷き。そして、授業に戻ろうとしたとき。彼女らの笑みが悪い物になる。 

「オブリビオン、あなた。ヒーローと付き合ってるの?」

「付き合ってますわね、その顔は」

「顔がどうしたの、二人とも」

「顔が真っ赤ですわぁ~ほほほ、あのオブリビオンがねぇ~怪人としても古く強いあなたがねぇ~面白いですわぁ~何処まで行ったのぉ?」

「夜伽?」

「ドラゴン、マインドのお二人に告ぐ。記憶を喰うぞ。キスがやっとなのに夜伽なんて……」

「まぁああああああああ、キスですのぉ!? 熱いですわぁ!!」

「ふふ、夜伽もすぐですね」

「はぁあああ、記憶を消すの嫌なのに消そうかな」

 私は顔を抑える。そのまま二人に言葉攻めを受け続ける。そして、落ち着いた時に二人が今度はしんみりした空気で話をする。

「これでわかったわ。あなたが『やる気』がない理由わ、今の生活を壊したくないからね」

「気持ち、わかる」

「その通り。チクってもいい、そんときは記憶を喰うから。全力で相手する」

「ヤらないわよ。私はあなたに負けてるもの」

「勝てない、二人でもきっと無理」

「え、どうして? 具体的に聞いても?」

 二人の私に対する殊勝な態度に疑問を持つ。二人はノートパソコンを畳み、お茶を含んで真面目に答えた。

「戦う理由と言う『記憶』がなくなるわ。理由なく戦えないわ」

「戦っても、何も考えれなくなる。それは勝負にならない。魅了も、意識を乗っ取りも行動前に忘れる」

「そうですね。マインドとは早打ち勝負ですね」

 予想出来る範囲である。

「ふふ、まぁそれよりも……数字と遊ぶのつかれたわ。ねぇ、そこの電子ピアノで何か弾いてくださいません?」

「私も聞きたい」

「授業中……」

「サボってる方がなにを仰ってるのかしら? 早くしなさい。それ総統からの贈り物でしょ」

「わかりました」

 私は大きく溜め息を吐き電子ピアノに電源を入れる。非常に高価な贈り物で私は音から鍵盤の当たりなど、非常に気に入っている。椅子に座り深呼吸する。

「選曲はいつもの自分が描く流れでいいですか?」

「いいわ、好きにして」

「では……」

 怪人である私に宿った他人の才。しかし、それでも私にある技術を披露する。最初はだれでも知っている国歌を引き、後ろで不満顔が想像できた。

「そんな簡単なの聞きたいんじゃないわよ」

「ドラゴン静かに……オブリビオンはもう、入ってる」

 静かになり、私はメロディーが美しいなど、聞き心地の良い曲を選ぶ。ゆったりとしたそれでいてピアノに翼が生える曲を弾き。ピアノのすばらしさを演じた。消えた彼、ピアノの神様の好きな曲を弾き終え、余韻を作る。

「………ん」

 曲を弾き終えると後ろでは息をのむ音が聞こえる。その心に対し今度は強弱や緩急があり、テンポが速く、非常に難易度が高い曲を感情を込めて鍵盤を叩く。転調で叩く力も弱め、命を題材にした名曲に浸る。そして、そのまま落ち着き。最後にもう一度、終わりとして国家を弾いて10分越えの演奏を終えた。

「ブラボーですわぁあああああ!!」

 その瞬間、後ろの二人は拍手し、私に飛びかかる。お嬢様は私を撫で、感情を昂らせたままに話し込む。

「素晴らしいですわ!! すばらしい!! 2曲目の強い、まるで歌詞があって歌っているようなメロディの錯覚!! 芯の所に力を感じますわ~、今から暴れたいです」

「やめて、ドラゴン。この都市で暴れないで」

「そんなことはいいですわ!! あなた、そんな良いものをお持ちなのにどうしてデビューしないのですぅ? 私のツテでデビューしませんこと?」

「ドラゴン、落ち着いて。私は怪人。目立ってどうするの? 天使に見つかり、英雄に殺されるわ」

「お金になるのに黙って見過ごせませんわ!! ドラゴンでこの都市攻撃をするか、私のために稼ぐか決めなさい」

「逆に問うけど、今の演奏に一時間前の記憶を失う事と諦める二つの選択を提示する。5秒、4、3」

「ごめんなさいですわ……失いたくないですもの」

 ドラゴンは残念そうに首を振る、記憶を失う恐ろしさを彼女は許容出来なかったようだ。

「仕方ないですわ、今の録音した物を動画にしますわ。データがないですわ!? あれ、録音ってしましたっけ? ああ、録音すればよかったですわ」

「残念だったね。ドラゴン」

 マインドが私を見て微かに震えた。私はウィンクしながら彼女に言い放つ。

「消されたくなかったら、変なことしないように」

 何度も何度も彼女は頷き、ドラゴンの頭を叩く。

「ドラゴン共々、お許しください」

「え、なんで私は叩かれて頭を下げないと行けないの!!」

「ドラゴン、今のあなたは一回記憶を失ってるわ」

「何を言ってますの? 演奏聞いたじゃないですか? 交渉も断られましたわ。録音忘れましたけど」

「あなたは確かに録音ボタンを押した。けど、データも録音した時の記憶が抹消されてる」

 ドラゴンは青ざめ、私とマインドを見比べる。だが、彼女は強かった。

「マインド、信じませんわよ」

「何を信じないの? 演奏に一時間前の記憶を消される事?」
 
「え、今さっき。『録音ボタンを押した。けど、データも録音した時の記憶が抹消されてる』なんて、あなたが言い出したのですわ?」

 二人が私を見る。私はその二人に伝えた。

「私の力をおわかりしましたか? 立場を確定する必要ありそうなら……お相手します。ドラゴンちゃん、マインドちゃん」

 戦々恐々とする彼女らに私は見せつけた。

「素直にオブリビオン、あなたは恐ろしさを見たわ」

「ドラゴン、だから私は『相手が悪すぎる』と忠告したの。私の勝ち、お金ちょうだい」

 ドラゴンは財布から万札を取り出してマインドに渡す。それはどういう事かを理解し、そして溜め息を吐く。

「仲いいですね」

「ほほほ、同じ投資家ですから。では、お昼は私が出前を取りましょう。『出○館』で!!」

「そこ、滅茶苦茶ニッチな所を選ぶんだ……」

 ドラゴンお嬢様の空気に私は乗せられてそのまま、授業をサボり。お昼時になるのだった。





 最悪な事が起きる。私の家に対して「お酒」を注文してたらしく。ドラゴンとマインドが酒盛りしてしまい。抑えられなくなって家を出た。そして、私は彼の家に逃げ込む。

「授業中に来て驚いた」

「授業中に抜け出さないといけない事になるなんて思いもしなかった」

「何があった?」

「家にお金を入れてくれてる大人たちが酒盛りしてる」

「うわぁ……最悪。ん、お母さん?」

「知り合いのお姉さんたち。一人身だから………」

「文句言ったりしないのか?」

「大人はね……辛い時にストロングで記憶をゼロにするの」

「あれ、危ないんじゃ……」

「いいの、それよりも泊めてくれない?」

「いいけど、授業は?」

「リビング借りる」

「わかった。休憩終わるから早く席につかないとね」

「うん、ちょっとお泊まり……何回もしてるけど……彼氏の家に泊まるの初めてだね」

 私はお姉さん方の理由でお泊まりに喜ぶ。素直に恥ずかしいが、いい想い出になりそうだ。






「総統、いいピアノ演奏でした。お聞きになってどうでしたか?」

「オブリビオンのピアノ、昔に比べ非常によくなっている。生で聞いてみたいものだ。私はジャズがすきでね……弾いてくれるだろうか? どう思う、マインド君」

「命令すればよろしいかと」

「それでは……命令された演奏しか出来ない。彼女の感情を乗せたメロディーが聞きたいのだよ」

「総統……面倒臭いです」

「すまないね。そして君たちは気がついたかい? オブリビオンについて」

「はい、ドラゴンと確認出来ました」

「よろしい……ではもしもの時は……」

「はい……」

 静かにスマホの電源を落とし、タバコを取り出して吸う。煙で目の前を曇らせながら。


 



 





 
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