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嘘つきは泥棒(初恋)の始まり⑩

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 付き合ってはじめての初夜。私は彼が定期的に行っている報告会の邪魔をしないようにテレビで動画を再生していた。「怪人の人権を認めろ」と言うデモ。「裏で繋がっていた証拠」からの陰謀論。犬、猫、蛇の動物動画。ゲーム実況。Aiによるアイドル活動が盛んである。

 非常に多くのバラエティーに富んだ動画投稿サイトは本当に面白い。テレビ局が大手とは言わなくなって久しい世の中。選択の自由度は高い。

「授業もこれでいいですよね? 現状、教科書は大人が書くため。面白くない。大人が楽しむ書になっている」

「偏見だぞ」

「ん、終わったんだね」

「終わった。ちょっとコンビニいってくる。ないか買ってくるけど……」

「ん、なんでいくの?」

「オヤツ買いに」

「オヤツ? あるよね? キノコ、タケノコ、コンソメ、堅あげ。飲み物もあるし、行く必要ある?」

「いや、普通のアイスほしいじゃん」

「じゃぁ……一緒に行く。一緒に歩きたい」

「えっと」

「手を繋ぐのもいいよね?」

「一緒に出よう」

「うん」

 私は私服に着替える。化粧はせず、荷物も軽くに留める。クレジットカードを手に、彼に手を引いて貰う。

 夜は涼しく、空気が軽く。世の中で怪人が暴れている事が全く感じさせない夜である。素直に私から手を絡めて、彼の硬い手を味わう。

「かたぁい」

「……痛いなら離していいよ」

「この手すきだよ。努力しないとならない。豆が潰れて何度も何度も皮膚が硬くなった手。私の手もちょっとあれだからちょうどいいよ。指太いし……」

「綺麗な手だよ。小指は力強さを感じる。まぁ、二人ともいい手だなっと言うことだ」

 顔を見つめあい、私はニヘっと笑ってしまう。

「ごめん、顔が……」

「いや、可愛かったからいいよ。何度も見せて」

「ああ、だめ。緩む」

 手を離して顔の頬をムニムニする。

「そんなに俺の事を好きだと思わなかった」

「こんなに好きだと思わなかった」

「「……」」

 気恥ずかしく。会話が続かない。意識してこなかったからこそ、喋れた事もある。ただ、沈黙でも心地いい。

 静かなまま、コンビニつくと手を離して商品を物色する。彼はチラチラと私を見ながら伺い。浮き立つ姿に首をかしげる。

「トイレ?」

「違う……いや……その……」

 歯切れの悪い話し方に私はおでこに指を差して考える。そして、気付いて店を移動。一個だけ箱を掴んだ。私の「察し方」の悪さで彼に迷惑をかけたらしい。だが、心で彼の焦りがわかり。ちょっと悪戯を考える。

「これ、必要?」

 もう、正直に見せて聞く。凄く恥ずかしいがそれ以上に彼が狼狽えるのが面白い。

「いや、その……」

「買わないなら、いいよ?」

「え、いや、それは……」

「公安実動部隊法律、第1条。所属部隊員は成人として扱う。また、青少年保護外とする。犯罪だね。でも、『親しい仲での関係は不問』とする。合法だね。グレーゾーンだけど『恋人の仲、または婚約者』としての証拠、発言で注意だけで終わるから……大丈夫だよ」

「なんか、やりたいの?」

「夢を聞いてる癖に質問返すの?」

 追い込む感じが素晴らしい。目を閉じて悩み、苦しみ、男として深く欲と向き合っていた。

「一応、買っておこうね」

「うぐ、なんで余裕そうに……しかも、詳しいし」

「私は賢いのです」

 一騎当千のヒーロー様の情けない姿に私は満足する。ただ、私は情けない事に帰りは手も繋げなくなってしまったが。







 私は朝イチ、爆音で起こされる。慌てて玄関を飛び出た時、多くの人が同じようにしており煙の方向を探し、そして見つけたあとに頭を抱えた。

「私の家!?」

 マンションの一角からモクモクと煙が登り、そのまま数発の爆発が起き続け、私は頭を抑え家に入り、スマホもって電話する。電話先では欠伸の声にイラッとしながら声を荒げる。

「ドラゴン、大丈夫!!」

「ふぁああああん、どうしたのよ? 声を荒げて……工事? 悲鳴? 怪人でも現れたの?」

「正解かも!! そこ爆発してる!! 逃げて!! 窓の外に避難梯子ある!!」

 とにかくわからないが逃げる事が一番であり、私は叫ぶ。彼が起きてこないのも変だが、今はありがたい。

「わかったわ」

 連絡を終えて、私は彼を起こしに行く。全く反応のない彼を叩き起こす。ここから見るに熟睡していた事で非常に疲れている事がわかる。だが、今は関係ない。

「ああ、その……おはよう」

「おはよう、大変だけど……落ち着いて私の話を聞いて」

「眠い」

「怪人の襲撃っぽいのが私の家で起きてる」

「……は?」

 流石彼である。一瞬で顔を起こし、私をはね除けてパソコン起動とスマホの画面を操作する。そのまま、私を見たあとに情報をまとめたのか喋り出す。

「状況は不明だけど……確実に公安員を狙った襲撃なのは確実。あのマンションは非常に厳重な警備をしていたけど……公安員に安否確認と緊急メールが来てる」

「なんでそんな緊急なのに寝てたの?」

「眠りが深いんだよ……俺」

「学校どうする?」

「リモートだろうけど、それよりも……家は?」

「姉さんに連絡済み。逃げてる。君が寝てた間に終わったの。大人だから大丈夫、とにかく今はテレビで情報を集めよ」

「そうだね」

 私はスマホからメッセージで「避難する」と連絡があり、ドラゴンとマインドの言葉を信じる。

 二人で情報を集めると「怪人の犯行声明」と複数の「公安員」が亡くなった事が報じられる。それを見ながら私は彼に抱き締められる。

「どうしたの?」

「たまたま家に来たけどよかった」

「……そうだね」

 私はその暖かさが嬉しい。しかし、逆に苦しくなる。怪人としていつかバレるその日。これが一瞬で亡くなるのだ。だからこそ、「今を大切に」と思うが。「失うのが怖い」とも思う。複雑な気持ちが周り、私は彼の手をはね除けてキスをする。

 無理矢理だった。無理矢理に私からして、忘れないように刻むようにする。

「その気持ち、私も感じてる事だからね。だから絶対に『生き残って』ほしい」

「わかった。無茶苦茶しない。でも、無理かもしれない……」

「ええ、ヒーロー。本当に私だけのヒーローになってほしいのに……『それは違うよ』と言う私もいるの」

「独占欲じゃないか?」

「そう、さぁ制服着替えよ。着替えるのさ、別室じゃなくていいよね」

「それは……」

「付き合ってるんだからいいでしょ」

 私の押しの強さに彼はタジタジになる。そのまま、リモートの授業が始まる中で大事件が起きても進む日常に「歪んでるなぁ」と私は思うのだった。










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