嘘つきの怪人は記憶泥棒(初恋)の始まり

書くこと大好きな水銀党員

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正直者は英雄(失恋)の始まり⑥

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 最近、ヒムは変わって来ていた。感情が薄く、不思議で変な価値観と考え方が変わり、感情的で何処かよく世界を見ているような雰囲気を感じるようになった。

 具体的にはPC画面にある、ある世界の写真をランダムで見せてくれる。それをあろうことか数分眺めてたりする。理由を聞いたとき「私の知らない世界を見ている」といい。「知らない世界は美しい」「どこか、ある美しい世界を私は知らない」とサービスを絶賛していた。

 また、小さい物から大きい物。いろんな物を興味を持って目を輝かして見ていた。

 それは、非常に愛らしいと共に。どこか、いつか、消えてしまうためにいっぱい思い出を作ろうとしているようで俺の心中は穏やかではなかった。

「うーん、なんか生き焦ってる気がする」

「おうおう、なーに湿気た面してるんだぁ」

「ヤマダさん? なんでこんな所に? 部活は?」

「ああ、今日は休んだ。まぁ……球が握れないんだよ」

「それ、イップスじゃないですか? アスリートでもなりますよね」

「……なんで知ってる?」

「ヒムの知識の暴力です。彼女は野球観戦大好きで、知識をひらかすんですよ」

「チッ、あいつの入れ知恵か」

 このヤマダと言う生徒は何故かヒムと知り合いなのか喧嘩しているのをよく見る。ヒムは彼女を邪険に扱う。故に女の子同士なのに拳を握り合うほどに仲が悪い。

 そんな彼女らはそれでも一緒に居ることが多い。何処か切っても切れない縁があるようで、だからこそ仲違いしているようだった。しかし、最近はヒムは大人になったようでヤマダはこの通り不調である。

「ああ、こっそり陰ながら見ていて不安になってる」

「チッ、余計なお世話だ」

「……なぁ、何を悩んでるんだ? なんでヒムに当たりが強いんだ? ちょっとそこのベンチで聞かせてくれよ」

「……」

 一瞬、彼女は眉を寄せて悩んだ後に俺と共にベンチに座る。そのまま手を合わせて悩みを溢した。

「野球……上手くなりたい……でも……ヒムのように……変化球も、綺麗な球も投げられない。あいつはそれでいて……部活もしてない。毎日毎日、お前と一緒だ。なんであいつに出来て私に出来なんだ……」

「自分自身が嫌になる。ヒムの才能が妬ましい。ヒムより上手くなりたい」

「よく分かったな、お前……」

「わかる」

 ヒムに「悩みの話はオウム返しした方がいい」と教えてもらっている。何故なら聞いているように聞こえるからだ。なお、ヒムの名前は伏せる。地雷だろうから。

「だけど、それを解決する方法を俺は持っていない。自分自身を嫌いにならず。とにかく満足するまで練習しかない。忘れるぐらいにヘトヘトになりながらも、ずっと、ずっと」

「……脳筋」

「難しい事を色々考えたってヒムの才能はお前にないし、手に入らない。不平等なんだよ。世の中はな、全員活躍なんて夢のまた……夢だろう。くっそ苛立つけどな!! ヒム、俺に当たらんでほしい」

「ああ、そうだな。そうだよな……わかった。ちょっとヒムの所に文句をつけてくる。最近サボり癖があって注意しないといけない」

「ほどほどに……正論しか言わない変人の阿呆だから彼女。気をつけてな」

「変わった男だな。お前……怪人のスパイか?」

「公安員は怪人ではなれない、人間だよ。それよりもヒムとなんでつるんでるんだ? それはサボり癖となんか関係あるのか? 関係なさそうな二人なのに……何か二人で秘密を持ってるよね?」

「それ、答えたらさぁ~満足する?」

 雰囲気、殺気、戦場のような生暖かい風がおれを撫でた。彼女の瞳は悩んでいる少女のではない。

「ありがとう。大丈夫……ちょっと気になっただけだから」

「ヒムがしつこく私に絡んでくるだけさ……腐れ縁の幼馴染みって奴」

「やっぱ、そうか。幼馴染みよなぁ」

 彼女の背を見ながら俺自身、大きいため息を吐く。

「怪人……とかじゃぁ……ないよな?」

 疑問ではあったが、すぐにその疑問は忘れる。

「あれ……なんか悩んでたけど忘れたや」

 何かを悩んでいたが俺は「どうせ、どうでも良いことだろう」と思い出そうとせずにメッセージを打ち込み校門前まで移動するのだった。


 
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