嘘つきの怪人は記憶泥棒(初恋)の始まり

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正直者は英雄(失恋)の始まり⑤

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 ヒムと出会ったのは公安活動中の出来事だった。元々俺は「怪人に殺されそうになった瞬間に他の公安者」に助けられた事がある。その公安者は異形の姿だったが胸や尻尾、長い白い髪から女性である事が分かる。その姿を探して俺は公安員へ志願した。改造された結果得た力で活動して居るときに白い髪の彼女、ヒムを見て、俺は心当たりから近付いたのだ。

 あまりに危険な怪人を相手にしているのにそれを静観していた彼女はグレーゾーンな存在である。不思議で「学生らしくない」彼女に俺は過去に出会った怪人のようなヒーローと重ねる。

 問いかけても「知らない」と言い張る彼女をそのまま恐ろしい怪人から守り、今に至る。そして、彼女とは幾度も戦場で出会う。言い訳はヒーローの観察。怪しい不思議ちゃんだが、俺は彼女を監視目的で一緒になり仲良くなったのだった。

 そんなヒムは今日も俺のとなりに居る。君の存在を聞けずにただただ一緒にいる。だが、最近はド直球な言葉が多い。

「ねぇ、マサキ。下心ってあるの?」

「ぶふぅううう!?」

「あるんだ。ふーん、男だもんね」

「げほげほ……」

「はい、ティッシュ」

 1日の野菜と言うジュースを盛大に俺は吹き出してしまう。ティッシュを受け取り拭った後に落ち着いて聞き返した。なんと言う事を聞くんだ。

「なんでそんな事を聞くんだよ……」

「ん、体育の時に皆の視線を感じてる。特に胸とか。声も聞こえる。『だれがいいか?』『あのこかわいい』と言う声ね。逆に女生徒も同じ事を言ってる。『誰々が付き合い出した、先生いいよね?』なんて。マサキもかなって思った」

 俺は心当たりを感じている。3人組の彼らの顔を思い出すが、自分も言ってた気がして返答に困る。ヒムは確かに美少女と言っていい。白い髪の毛は艶があり、肢体も非常に魅力的で、胸に関しては成長しているとの事。思春期の俺には毒が強い。

 家に彼女の下着があるが、更新頻度から察する物があるし、ヒムは下着を俺のベットの上に投げている事も多い。考えるとやっぱり普通でない不思議ちゃんである。

「ええと、どうすればいい? 納得行く返答が想像出来なくて……エッチなイメージしか」

「いいよそれで。ありがとう褒めてくれて」

 滅茶苦茶不満そうである。

「あああ、もう。不満そうにするな……考えるから、良いところを」

 具体的な事を褒めて欲しいらしい。悩み、そして口にする。彼女がいつのしている事の恩返しだ。

「待ってる。早くして」

「優しい」

「具体的には?」

「家で洗濯や料理、アイロンかけなどしてくれる」

「それは優しい?」

「すごい助かってる。忙しい時はヘトヘトになるから」

 夜に出動と言う事もある。その時は本当に疲れる。だから本当に感謝してる。

「それ以外は?」

「今日はすごい聞いてくるな。何かあった?」

「あった……で?」

 押しが強い。真っ直ぐ覗き込んでくるその視線に変な事が言えない。だから、正直者になる。

「そうだなぁ。見た目でない所でなら、可愛い所ある。苺が好きで、飲み物が苺ミルクを良く飲んで品評してる。一番怒りは果肉入りを偽装してた奴はすっごく怒ってた。コンビニ行くとチョコレートも甘いものも良く買ってるな」

「そういうのが可愛いなんだ。ありがとう、元気でた。タカナシの所に行ってくるね」

「もういいのか?」

「ありがとう、『私』の自信でた」

 ヒムはヒメと言う名の友へ向かう。おれは後ろからついていき、タカナシさんに会いに行く。

「あっ!! また二人でいる。マサキ君も友達いないの?」

「いる、こいつが連絡寄越したんだ」

 居るが、一緒に居たいのは彼女だ。

「まぁた。マサキ君に迷惑かけて……ヒムちゃん、マサキ君離れしないと大変よ?」

「ヒメちゃん。離れたら私はどうなるの?」

「えっと、ヒメちゃん。めんへらってる?」

「てる。メンヘラ講座を見ちゃった。『自分が嫌いなんだ』って……私は」

 俺は驚く。自信満々に見えた彼女は全くそんなことはなく虚勢だったことに、そして気付いてあげれなかった事に傷付いた。

「ヒムちゃんが悩んでいるのはわかるけど……口に出さないとわからないぞ。あなたがいつも言ってるでしょ? 『具体的』にって」

「え、私……そんな嫌な奴だったの?」

「「……」」

 俺とヒメは黙って頷き。ヒムはショックを受ける。昔は本当にクソガキではないが、正論、論理的で攻撃が多かった。

「昔はもっと感情が薄かった気がする。私の家でバイトしてる時はもう、機械みたいだった」

「そう、歳不相応だった。どこか変わった視点もってて、時に勘が鋭い。ポケーとしてると思ったら、鋭い姿勢で……ヒーロー見てたな」

 だからこそ、本当にヒーロー好きな子なのだと思っていた。鋭い弱点を指摘されて俺は自分の体を鍛える事にしたのだから。

「私、ヤバナイ?」

 二人でヒムを見ながら笑い、ヒムもゆっくり一緒に笑う。気付いてくれたのだからヒムが少し大人になった気がした。

 ピピピピ!!

 そんな中だった。俺のスマホが鳴り響く。それに対して彼女たちは声を沈める。真面目な表情で状況を聞く。

「怪人ですか。わかりました向かいます」

 スマホをしまい、俺は安心させるように笑顔になる。

「ちょっと行ってくる。先生に言っておいてくれ」

「マサキが行く必要ある? 学徒だよ」

「同じ事で大人たちが喧嘩してる。お前は言ったじゃないか? 『大人が決めるまで子供は振り回される』ってな。大人の尻拭いを大人がするんだからいいだろ?」

「マサキも歳に似合わないね」

「早く大人になりたいからな」

 目の前にいる少女においてかれたくない。

「いってらっしゃい」

 俺は二人から去り、皮の手袋をつける。

「午後、授業ないな」

 ここから先は血ミドロの怪人殺し。非常に恐ろしい世界が広がっている。

「……」

 そこでまた気付かされる。ヒムの「血慣れ」が変であることに。

「学生は内臓、血なんて見たら怖がって普通なのに……」

 本当に彼女は何者なのだろうか。











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