嘘つきの怪人は記憶泥棒(初恋)の始まり

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正直者は英雄(失恋)の始まり④

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 早朝、眠いながらも俺は公安同級生の3人と共に登校していた。何故かと言うとタカナシ、ヒムとの登校は3人に取って怪人の行為に値するらしい。だが、そんな3人に俺は質問攻めを受ける。

「お前、『付き合ってなかった』のかよ!!」

「なんで!? あんなに好意が見えてるのに!?」

「ヘタレ、ヘタレ」

 3人にボコボコに文句を言われながらも俺は正直な話をする。

「近しすぎて言うタイミング逃がした。今の関係性で十分すぎるほど幸せに感じて……」

「ああ、俺。わかるわその気持ち。『別れるの怖いもん』な。振られるかもしれないし」

「リーダーわかってくれるのか!!」

「ああ、わかるが。だからと言って『許す』とは言わないがな。ヒムちゃんは俺の初恋だった……最悪だぞ」

「うぐぅ、それを言われると申し訳ない」

 悪い笑みで俺をいじる。そして、俺はそんな彼らに爆弾を投下する。苦し紛れに矛先を変えるように。

「そういえばキノシタ……いや。カバーさぁ~なんでタカナシとの連絡先知ってるの?」

「「「!?!?!?」」」

 3人の動きは良かった。カバーは逃げようとし、リーダーは手を掴み動きを止めさせ、サブは前をふさぎ。俺も背後を取り、手錠を嵌めさせる。

「裏切ったなぁ!! ブレード!!」

「焦ったら公安名で呼ぶのな。元々お前もおれを弄ってた仲間だろ。レムからの情報だぞ」

「後でお前も処刑する」

「死なばもろとも、サブ、支援してほしくば俺につけ、手錠の鍵は俺だ」

「男に二言はないな」

「タカナシのスリサイズ……バストサイズを知ってる。どうだ?」

 俺の一言に場が静まる。

「俺もそっちつく」

「リーダー、俺も俺も」

「お前ら……誇りはなんか」

「スリーサイズ把握してるお前に言われたくない」

「ぐぅ……」

 言い返せず、手錠を外し、皆が俺に耳を向けた瞬間に大音響でスマホが鳴り3人は耳を塞ぎ絶叫する。俺も耳を押さえて怪人登場した事を告げるアナウンスに背筋が冷えた。

「ちくしょ!! 後で聞くからな!!」

「わかってる。行くぞリーダー」

 学校へ急いで移動する。公安として学校を安城とし、襲撃など備えないといけない。向こうは「目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」を主としており、人質脅迫なども簡単にしてくるのだ。

 学校につくと既に先生たちが門番をしており、鋭い瞳で前だけを見ていた。俺たちもそこに加わり死守を決意する。

「生き残ったら、タカナシに告白するんだ」

「縁起の悪いこと言うなよ」

「生き残らず、登校した瞬間に言いなよ」

 冗談なのか本気なのかわからない状態で警戒していると走り込んでくる二人を見つける。走りながら学校の校門を潜り、息を荒らしているタカナシに息も全然上がっていないヒムがおれを見つけて近づく。

「ヒム、大丈夫か? また、ヒーロー眺めに行ってないかヒヤヒヤした」

 趣味なのかよく俺のいる所にこいつは居るのだ。それが「ヒーローを見ている」と言い訳するもんだから困る。

「友達を置いて行かないよ。だから今から行くよ。学校お休みでしょ?」

「行くな、お前はヒーローじゃないから邪魔になる。人質に取られたら一緒に殺されるんだぞ?」

「それをするヒーローは少数。それに……戦ってる彼らを私は目に焼き付けたい」

 不思議な事を言うヒムに俺は目を細める。だが、彼女はそれに反応したのか逡巡し、結局先生に怒られる。

「ほら、生徒は危険だから校舎に」

「はーい」

 ヒムはそのまま従い校舎へと消えた。俺らは校門に現れた教頭先生から情報を貰う

「今回は『怪人解放軍』の行動です。もちろん、ここも襲撃される危険性はありますが、今は大丈夫でしょう。様子見て午後授業再開です」

 教頭の言うように先生たちは情報を集める。俺たちは下がれと言われ、3人と共に校舎へ入る。すると3人から詰め寄られる。

「スリーサイズ」

「口頭で」

「データに残すと危ない」

「お前ら……そういうとこすき」

 俺はアホな同級生の肩を組み、こっそりタカナシの写真を送る。

「簡単に言うのは面白くない。俺にメッセージ遅れよ。正答したら○つけてやる。ミスは3回まで」

「マサキ……」

「そそるじゃん」

「お前も悪よな。3人で別々を区分しよう、俺尻」

 悪友のゲスな笑いに俺はメッセージを待とうとした瞬間に電話がかかる。それはヒムであり、あわてて出た。背後に痛い殺意の姿勢を感じながらも。

「もしもし、私だよ。ヒムだよ」

「なんだ? お前、教室いるんじゃないのか? どこに居るんだよ」

「屋上で空を見てる。今日は一段と空が綺麗なの。飛べそうな空」

 俺は血の気が下がる。どこか、不思議と飛んでしまいそうな声音に心臓が跳ねる。後ろの視線も不安な視線へとかわり、俺はスピーカーにして叫んだ。

「ヒム!? 待て行くから!! 通話そのままで!!」

「ん?」

 全速力で走る。ピアノの時に泣いた日を思い出す。ヒムはきれいだが、何処か人形のようで壊れてしまいそうな雰囲気をちらつかせている。「消えてしまう」と漠然ながら感じて慌てて屋上へ向かった。

 屋上には誰もいない。目を擦り、頭を振って再度目を開ける。「いるはずなんだ」「いわないわけがない」「彼女は『居る』」と言い聞かせる。

 結果、ヒムが一人で空を見ているのが目に映り安心する。今さっきのは見間違いだと俺は納得した。

「なんで急いでるの?」

「お前、今、『飛ぼう』としただろ?」

「………ああ、それもいいね」

 「その発想はいいな」と思っていそうな雰囲気に対して怒気を孕んだ声で言う。

「やめろよ。自殺なんて」

 昔からそうだ。何処が浮世離れした雰囲気を持っているのだ。

「しないよ。でも、嬉しい。不安になって走って来たんだ……嬉しいよ。凄く。嬉しいよ、『私は愛されてる』ってわかるから」

「はぁ、ヒム。最近また、なんかあった?」

「あった。答えのない悩み事が多くて、それも君の焦った顔を見たら『馬鹿馬鹿しくなった』よ」

「はぁ……もう!!」

 俺は苛立ちながらヒムの隣に座る。

「午前中は授業ない。先生たちが身構えてる。銃を取り出して構えてる」

 銀弾が詰め込まれた最悪な物を。

「午後も無さそうだね。行かなくていいの?」

「俺は予備。そう、予備なんだ」

「……悔しい?」

「ああ、悔しい。でも、向かって行くほど子供じゃない。我慢する」

 違う、今はこいつを見失いたくない。

「偉い、『邪魔』だもんね」

「そう、邪魔なんだよ。でも、必要。もしもの時は皆の盾になるよ」

「カッコいい。応援してるよ、隠れたヒーロー」

「……」

 透き通る、青のような緑のような瞳でおれを見ている。その瞳に写った俺は難しそうな表情をしていた。

「ああ、賢くなったのはお前のお陰だよ。覚えてるか? 色々なこと」

「……なに?」

 彼女は焦り出す。忘れているような気もする。

「お前、結構具体的にアドバイスくれるじゃんか。特に敵側の思考を読め。敵側の嫌がる事を考える。あと『◯非子』だっけ? 必要な人材、ダメな人材とか……その年ですげぇ詳しいの。で、それを実施すると本当にまぁうまく行くわけよ」

「やっぱ組織に属するからね。処世術だよ。普通に勉強不足だったでしょ」

「まぁ……はい」

 照れ隠しなのな顔を背けられた、その行為は非常に愛くるしい。そのまま彼女は好意を示す。

「頑張れ、私のヒーロー。私はあなたの事を見ているから」

「……本当にお前ってやつは」

 俺は「ずるい」と言う言葉を飲み込む。「俺はお前に一切の好意を見せれないのに」と苦しくなる。

「なに?」

「恥ずかしくないのか?」

「ない」

 胸を張って言われた。俺はそれに対して眩しく感じる。正直者の彼女はなんと美しいのかと。









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