<完結>追放された。おじさま執事長は元SSS冒険者。新しい仕事先で波乱の人生を送る。

書くこと大好きな水銀党員

文字の大きさ
3 / 14
執事長の復讐

お嬢様旅に出る

しおりを挟む

 空間が歪み中から緑の髪をした綺麗な人が現れる。場所は屋敷のバラ園。その女性……魔王はガセボと言う中庭にあるベンチのような場所に向かい座る。


「早くついちゃった」


 鼻を掻きながら魔王は赤いバラ園を眺める。その中で……ふと存在が感じられて背後を見た。すると……眼鏡をかけた魔法使いが明るい表情で魔王を見た。


「そっちは大丈夫でしたか?」

「はい……大丈夫でした。あなたは?」

「なんとかなったよ」


 魔法使いは魔王の隣に座る。すると……時計の針が動く音が聞こえ。最初からその場に居合わせたかのように執事長が現れる。


 執事長が現れると同時にガセボのテーブルの上に紅茶とカップケーキが現れ。二人は驚いた。


「流石ですね……美味しそう。いただいても?」

「見事な転移です」

「ありがとうございます。どうぞお召し上がりください」

「あなた……アーン」

「人前でするものではないですよ。執事長……ありがとう。いつも」

「ありがたきお言葉です」


 陛下が紅茶を啜り。深いため息を吐いた。


「はぁ……なんとかなった。執事長はこれからの事は予測済みかい?」

「お贈りしました書面が予想でございます」

「すまない……確認不足だった。後で読ませていただくよ。でっ……君からなにかあったよね」

「うん……執事長。王国へ娘と一緒に旅をしてください」


 執事長は目を細めた。


「わかります。何故という表情でしょう。理由は簡単です。ね? あなた」

「そうですね。早く……」

「孫が見たい」

「婚約者を決め。内政に尽力し……」

「……」

「あのね。わかるかい?」

「ごめんなさい。でも……見たくないですか?」

「まだ若いので流石に……」

「私は8年で出産しました。大丈夫です」

「君は人では無かった」


 執事長は静かに二人の仲を微笑ましく見守る。戦場では敵をも泣かせるほどの猛将の二人だが……いたって普通な所もあるのだ。


「かしこまりました。婚約者探しを行います。確かに……私が用意した婚約者候補は全てダメでした。そこは……やはり。自分の足でということなのでしょう」

「婚約者の事になると饒舌ね。執事長」

「……申し訳ありません。夢ですから」

「夢ですか? どのような夢ですか?」


 執事長は銀時計を見て時間を伺いながら話を始める。


「お嬢様の晴れ姿を見たいと思っております。拾っていただいた恩を返すために……その瞬間まで信じて働いております。泣く用のハンカチもオーダーメイドで作り保管し……お嬢様用のドレスもお作りしております」

「私たちより……ちょっと期待してない?」

「……お恥ずかしながら」


 クスクスと笑い会う3人。もし、側近オオコとお嬢様アモンが居れば執事長が笑っていると驚いただろう。


「では……内政は私が引き継ぎますので執事長はお願いします」

「可愛い子には旅をさせろと言います。執事長……2度目の旅ですのでそう手はかからないでしょう」

「かしこまりました。では任務を拝命させていただきます」


 執事長は頭を下げて皿と飲み干したカップとともに消える。そして……残された二人は二人だけの時間を過ごす。


「娘は彼の事がいいらしいのですが……勇気が出ないそうですね。誰に似たのでしょうか?」

「ふふ、あなたです。私は好意をはっきり見せてました。執事長はあんな見た目ですが若いですし大丈夫でしょう」

「そうですか……私に似ですか。それよりも……姿を変えて仕えている。いい人ですね本当に」

「はい。だから……娘にチャンスをあげたんです。どっちに転ぶにしても大きく成長するでしょう」


 魔王は陛下の肩に顔を寄せる。昔からそうしていたように。








「お嬢様。お嬢様の母上がお会いしたいと申しております」

「お、おう……いいですよ。いれて……」

「こんにちはーアモンちゃんんんんん!!」


ムギュウウウ


 執務室で内職している時に背後から強く掴まれる。やわらかな母の匂いに本物であることがわかった。


「お母様!?」

「本当に可愛くなって……ふふ」

「あ、暑いですお母様!!」

「お嬢様、魔王様。私はこれで失礼します。なにかありましたらベルでお呼びください」


 おじさまは親子仲を見届けて部屋を出た。出た先で伺っていた側近と出くわして二人で何処かへ行ってしまう。色々な話し合いだろう。羨ましい……


「アモン。執事長に迷惑かけてませんか?」

「か、かけては……」

「執事長が嘆いてました。婚約者を見つけず。仕事も手が疎かにしていると」

「あ、ああ~」


 執事長が報告しているのを失念していた。


「なので……状況も落ち着きました。執事長とともに婚約者探しの旅をしなさい。王国で」

「へっ?」

「執事長には話したわ。一度行ってる国でしょ? 安心して送れるし……アモン」

「は、はい。お母様」


 私はピンッと背筋を伸ばす。


「二人きりで旅をする事ができるの……内職は私がするから。アモンちゃんは楽しんできなさい。ごめんね……色々と無理させちゃって。大丈夫……アモンちゃんは私たちの子。冒険者として名を馳せた私たちの子だから遊びに行けるのも簡単です」


 お母様がウィンクし、歳よりの幼げな表情で私を見た。お姉さんのような容姿なお母様の願ってもない提案に何度も何度も頷く。


「いく!! いく!!」

「一応王国偵察もお願いね」

「うん!! いく!!」


 語彙力が無くなりそうなほどに行く行くと言葉を口にし。私は母に頭を下げた。絶対に頭が上がらない程の出来事だ。


「では、二人でお願いね」


 お母様は笑顔で手を振り。空間の歪みから別の場所へ向かうのだった。


「…………んんんんんん!!」


 私は一人になった瞬間に両手を挙げて嬉しさのあまりに叫ぶの我慢しtたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...