4 / 14
執事長の復讐
執事長の休暇申請
しおりを挟む揺れる馬車の中で私は窓の外を見た。道行く風景に懐かしさを覚えながら私は対面に座る執事長に声をかける。
「懐かしいわね……こうやって昔を思い出しながら旅の醍醐味ね」
「……ええ」
「どう? 祖国は」
「祖国はお嬢様の国でございます。それに国外退去の身……今さら未練などございません」
「そう……」
いい感じに会話ができている。私は側近が剣を抜いてまでの憤りを退け二人で王国まで出払っている。過去の父上母上が住んでいた屋敷に私たちは1月住み。婚約者を探すと言う任務がある。
「側近とそういえば何かを賭けたと聞いたけど……なに?」
「申し訳ありません。二人の秘密でございます」
側近は何か手を打ったらしい。さすがはライバル。
「にしても賭け事するのですね。意外」
「そうですね。昔からの褒められない趣味ですが……側近とはよくしております」
ギャンブラーはイメージが悪い事を執事長は知っていた。私は何故楽しいかを聞く。
「楽しい理由は自分の力ではなく運や予想外、予想できる事が混ざり合い。操作が出来ないことが素晴らしく楽しいですね。私の運は能力に比べ非力であり勝率も高くない。だからこそ勝ったときは嬉しいのです」
なんとなく趣味な理由がわかった。絶対に勝てるのはつまらないと彼は思っているのだろう。強者の悩みとは変なものだと思った。
「最初から強いと努力はしないもんな」
「そうです。お嬢様」
執事長は銀時計を見て時間を計算する。黒い炎を纏った馬が走り抜ける。そして、同じように馬が並走しだす。
「あと1日と15時間後ですね」
「……めんどくさく。なんで空間魔法使わないのよ」
「祖国には道しるべがありますし。王国に潜入で大規模な魔法はバレてしまいます」
「それでもいいから……時間かかりすぎ」
「お嬢様……醍醐味と……」
「飽きた」
「仕方ないですね。30分後に開けます」
「やった~」
「お嬢様……堪え性がないのは如何なものかと思います。30分苦言をお聞きください」
「………」
30分間。偉大な母上と父上の良いところを語られ。それに比べお嬢様はと精神的に来る的確な攻めに私は……泣きそうになったのだった。
親出したら………なにも言えないじゃんか!!
*
30分後。空間が歪みそのまま王国の目の前に飛んだ。悪魔の馬は大人しくそのまま王国内の屋敷に入った。
屋敷には冒険者兼使用人の方たちに出迎えられた。
冒険者兼使用人な理由は冒険者として屋敷に泊まり込んで稼ぎ、時たま私のような人が来たときに使用人として振る舞う上級使用人達が在住している。
スパイと言えばそうだが……執事長が選んだ精鋭のみの使用人達が集っている。
故に……
「お荷物はすでに移動させました。長い旅路でしたでしょう。お風呂とお夕食をご用意させていただいております」
「お風呂先で」
「かしこまりました」
若い青い髪をした顔も格好いい青年の執事に案内される。執事長は使用人達一人一人に声をかけに勤しむため後は彼に任せるらしい。任された執事も空間魔法を使える魔法使いだ。
「………」
最近言われている。兵士〈騎士、魔法使い〈使用人、執事という並びが全く間違いじゃないような気がした。しかし、それも我が国の人的資源の低さ故に起きている現象だろう。
とにかく国土のわりに人がいないのだ。
「お嬢様。どうされましたか?」
「いや……いつも遠くの地で苦労をかけている。ありがとう」
「……滅相もございません。嬉しいお言葉をかけていただきありがとうございます」
青年がおじさまのような暖かい笑みを向ける。まだ若いが……中々、調教された感じがしてあと何十年たてば……美味しい人になる気がした。
おじさまのせいで……おじさまのような。大の大人の人しか……興味が出なくなってしまった。
*
「執事長!! お久し振りです」
「ここの執事長は君です。アレンさん」
屋敷の小さな庭に咲く青い薔薇に感激していた執事長は青年の執事に向く。
「いえ、私にとっては師匠である執事長は何年経っても執事長でございます」
「そうか……ククク」
執事長は荒い手付きで執事アレンの頭を撫でる。
「執事長!? もう私は大人です!!」
「まだ若い。何年経っても弟子は弟子です。しかし……流石にその魔法は驚きました」
「体を二つに分ける魔法ですね。便利です……いいえ……執事長のように空間移動回数があり。手が行き届きにくいために苦肉で影を実体化させての魔法です」
「………私には扱いそうもないですね」
「!?」
青年が驚いた顔をする。
「固有魔法な匂いです。ここまで出来るとは………恐ろしい」
「褒めていただきありがとうございます」
「……ふぅ。よかったです。では……私の出る幕はないようですね」
「かしこまりました。お嬢様滞在の間はお任せください」
執事長はそのまま銀時計をみる。執事アレンも同じように金時計を見た。
チッチッチッチッチッチッカチッ
「そろそろ姫様が風呂から上がりますね」
「ええ、では行きましょう」
執事長は銀時計閉じ。同じように執事アレンも時計を閉じた。
*
「お嬢様……お暇をいただいてもよろしいでしょうか?」
「ん?」
夕食後の紅茶を飲んでいる中で執事長が私の背後に立つ。
「ここの執事長アレンに全てを任そうと思います」
「なるほど……教育か」
私はあの青年の事を思い出す。執事長に徹底的に叩かれ鍛えられた執事だ。何処にでも居そうな平凡な彼だったが。執事長のようになりたい一心で駆け上がって今ではここの執事長を勤めているらしい。
敵情視察兼執事長兼冒険者。非常におじさまにような万能な人材に育ち。国の宝とも言える。
「ふむ」
おじさまと離れるのは嫌だが……ここはやはり。家主と言う立場で考えると休みは必要だ。
「何日?」
「5日ほど」
「短いね」
「それ以上は体が鈍ってしまいます」
「わかった。許可しよう。書面は休んだ後で」
「はい。ありがとうございます。お嬢様」
「いや……おじさま。ありがとうなのは私の方ですよ?」
私は振り返り。日頃の感謝をたくさん述べてポイントを稼ぐのだった。
0
あなたにおすすめの小説
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる