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6 伝説は続く
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8月10日。
よその図書室の本を森村が返却したが、汚れた状態で配送したので連絡が来た。
最近返却された修理が必要な本も、そのまま配架していた。返却された際やることになっている検品をしていないということ。
8月17日。
OPAC(資料検索端末)が森村のシフトの時に故障。パソコンの故障も奴が入るようになってからだった。偶然かもしれないが。
利用者の個人情報をプリントアウトした[利用者詳細]がそのままゴミ箱に捨ててあった。プリントアウトする必要のない、それどころかプリントアウトしてはいけないものだった。
8月18日。
[利用者詳細]をプリントアウトしたことを問い質した。「間違って出してしまった」と言う。奴は「間違って○○してしまった」というパターンが多いが、[利用者詳細]は間違って出せるものではない。なんらかの意図があったとしか思えない。必要な書類に変な×印を書いたことも。
8月24日。
確認したいことがあって【利用者通知】を入れていた利用者が14日に来たのに、森村は確認しなかった。「スルー」したと言う。
森村は【利用者通知】を見落とすことが多かったが、めんどくさくてスルーしたこともあったのではという気がしてきた。
ミスを指摘しても他人事のようだと葉山さんが言っていた。当事者意識がないのだ。
8月25日。
働き始めて一年になるのにあいかわらず同じミスを繰り返す。そればかりか精神状態が疑わしいし、個人情報をプリントアウトしてゴミ箱に捨てていたこともあり、奴が個人情報を扱う仕事をしていくことが不安。
8月30日に派遣元に報告し相談することにした。奴はクビになるだろう。それだけのことはしでかしてきた。
8月29日。
永久保存する【図書台帳】を裏紙にして、印刷用紙に使っていた。裏紙に使う紙は他にもあるのに、【図書台帳】をわざわざ取り出してプリンターにセットして印刷した。よりによってというか、やってはいけないことをわざわざする。一体何なんだろう。
むかむかしていたら、休みの森村が「個人的な話がある」と図書室に来た(私も話があるよ!)。
別の仕事が決まったので、9月15日で仕事を辞めることにしたと言う。コンビニのほうも半年で辞めていた。「夜勤で体調が悪くなった」と言っていたが、クビになったのではないだろうか。
最近の奴のやらかしは特に酷かった。精神状態が変だと感じていた。奴は「ウップンなんかない」と否定したが、ウップンでないにしても、就活で気持ちが乱れていたのだろう。
わざとやらかして、引き止められないようにしていたわけではないだろう。
今後もとんでもないことをしでかしかねない奴なので、自分から辞めてくれることになってよかった。
新しい職場でもいろいろやらかしそう。そこで𠮟られれば奴も、ボーっと生きるのが直るかな。
8月30日。
派遣元と話をする。森村が利用者にかけてきた迷惑を報告した。
「自分から辞めるから、ほっとしているのよ。次の仕事も続かないと思うけどね」
派遣元の事務員さんが言う。
「私もそう思います」
「お父さんから会社に電話がかかって来たことがあるの」
大事な一人息子をこき使うなというクレームだろうかと思った。
「家では手が付けられなくて、親の言うことを聞かないらしいの」
以前森村は、父親に叩かれて育ったと言っていたが、今は立場が逆転したのか。親は年を取ったし、森村は巨漢だ。あるいは力で押さえつけなければいけなかった子どもだったのか。
中学生の職場体験のことで家電で話をした時、ずいぶん横柄で感じが悪いと思ったけれど、家の中ではいつもあんなふうなのだろう。
仕事ができないポンコツだけど、家では暴君か。
9月3日。
個人情報をプリントアウトした日。貸出もれもあった。
「モリリン、仕事辞めるんだって?
最初からおかしかったよな。ななめのメガネかけてくるなんて」
堂本さんが言った。
9月11日。
配架ミス。
週に3回、4時間勤務で、1年以上毎回何かしらやらかしている。
9月14日
配送本を別の所に送ろうとしていた。
ブックラリーのハンコについて、数日前にも聞いたのに、また同じことを聞く。半年前もブックラリーをやっていた。
しなくていいプリントアウトをして、紙とインクの無駄遣い。
9月15日、最終日。
「1年間お世話になりました(1年以上だよ!)がんばってください」と言われたので、「森村さんもね」と言った。
こいつほんとに、私に迷惑をかけて世話になったと思ってないな。
ポンコツから解放された。1年以上ポンコツの尻拭いをやり遂げた自分をねぎらわなくてはと思った。
かくして、失敗しやすい特性があるという自覚がなく、自分を過信して失敗の多い男は去っていった。
9月17日。
14日に、予約本の受け取り場所を間違えて予約していたことが発覚。尻拭いした。
奴が辞めたあとも、いろいろ出てくると思っていたが、案の定。
9月21日。
辞めて一週間もしないのに午後二時十五分ごろ、図書室に利用者として来た。
奥の方の閲覧席に座って、三十分ほどして帰って行った。意味不明。本を読むだけなら、奴の自宅の近くに図書室があるから、もう来ることはないと思っていた。わざわざ遠くに来るなんて。まだ終わりではなかった。
里心がついたのかな。ここがいかに働きやすい場所だったか思い知ったのかも。
終わり?
よその図書室の本を森村が返却したが、汚れた状態で配送したので連絡が来た。
最近返却された修理が必要な本も、そのまま配架していた。返却された際やることになっている検品をしていないということ。
8月17日。
OPAC(資料検索端末)が森村のシフトの時に故障。パソコンの故障も奴が入るようになってからだった。偶然かもしれないが。
利用者の個人情報をプリントアウトした[利用者詳細]がそのままゴミ箱に捨ててあった。プリントアウトする必要のない、それどころかプリントアウトしてはいけないものだった。
8月18日。
[利用者詳細]をプリントアウトしたことを問い質した。「間違って出してしまった」と言う。奴は「間違って○○してしまった」というパターンが多いが、[利用者詳細]は間違って出せるものではない。なんらかの意図があったとしか思えない。必要な書類に変な×印を書いたことも。
8月24日。
確認したいことがあって【利用者通知】を入れていた利用者が14日に来たのに、森村は確認しなかった。「スルー」したと言う。
森村は【利用者通知】を見落とすことが多かったが、めんどくさくてスルーしたこともあったのではという気がしてきた。
ミスを指摘しても他人事のようだと葉山さんが言っていた。当事者意識がないのだ。
8月25日。
働き始めて一年になるのにあいかわらず同じミスを繰り返す。そればかりか精神状態が疑わしいし、個人情報をプリントアウトしてゴミ箱に捨てていたこともあり、奴が個人情報を扱う仕事をしていくことが不安。
8月30日に派遣元に報告し相談することにした。奴はクビになるだろう。それだけのことはしでかしてきた。
8月29日。
永久保存する【図書台帳】を裏紙にして、印刷用紙に使っていた。裏紙に使う紙は他にもあるのに、【図書台帳】をわざわざ取り出してプリンターにセットして印刷した。よりによってというか、やってはいけないことをわざわざする。一体何なんだろう。
むかむかしていたら、休みの森村が「個人的な話がある」と図書室に来た(私も話があるよ!)。
別の仕事が決まったので、9月15日で仕事を辞めることにしたと言う。コンビニのほうも半年で辞めていた。「夜勤で体調が悪くなった」と言っていたが、クビになったのではないだろうか。
最近の奴のやらかしは特に酷かった。精神状態が変だと感じていた。奴は「ウップンなんかない」と否定したが、ウップンでないにしても、就活で気持ちが乱れていたのだろう。
わざとやらかして、引き止められないようにしていたわけではないだろう。
今後もとんでもないことをしでかしかねない奴なので、自分から辞めてくれることになってよかった。
新しい職場でもいろいろやらかしそう。そこで𠮟られれば奴も、ボーっと生きるのが直るかな。
8月30日。
派遣元と話をする。森村が利用者にかけてきた迷惑を報告した。
「自分から辞めるから、ほっとしているのよ。次の仕事も続かないと思うけどね」
派遣元の事務員さんが言う。
「私もそう思います」
「お父さんから会社に電話がかかって来たことがあるの」
大事な一人息子をこき使うなというクレームだろうかと思った。
「家では手が付けられなくて、親の言うことを聞かないらしいの」
以前森村は、父親に叩かれて育ったと言っていたが、今は立場が逆転したのか。親は年を取ったし、森村は巨漢だ。あるいは力で押さえつけなければいけなかった子どもだったのか。
中学生の職場体験のことで家電で話をした時、ずいぶん横柄で感じが悪いと思ったけれど、家の中ではいつもあんなふうなのだろう。
仕事ができないポンコツだけど、家では暴君か。
9月3日。
個人情報をプリントアウトした日。貸出もれもあった。
「モリリン、仕事辞めるんだって?
最初からおかしかったよな。ななめのメガネかけてくるなんて」
堂本さんが言った。
9月11日。
配架ミス。
週に3回、4時間勤務で、1年以上毎回何かしらやらかしている。
9月14日
配送本を別の所に送ろうとしていた。
ブックラリーのハンコについて、数日前にも聞いたのに、また同じことを聞く。半年前もブックラリーをやっていた。
しなくていいプリントアウトをして、紙とインクの無駄遣い。
9月15日、最終日。
「1年間お世話になりました(1年以上だよ!)がんばってください」と言われたので、「森村さんもね」と言った。
こいつほんとに、私に迷惑をかけて世話になったと思ってないな。
ポンコツから解放された。1年以上ポンコツの尻拭いをやり遂げた自分をねぎらわなくてはと思った。
かくして、失敗しやすい特性があるという自覚がなく、自分を過信して失敗の多い男は去っていった。
9月17日。
14日に、予約本の受け取り場所を間違えて予約していたことが発覚。尻拭いした。
奴が辞めたあとも、いろいろ出てくると思っていたが、案の定。
9月21日。
辞めて一週間もしないのに午後二時十五分ごろ、図書室に利用者として来た。
奥の方の閲覧席に座って、三十分ほどして帰って行った。意味不明。本を読むだけなら、奴の自宅の近くに図書室があるから、もう来ることはないと思っていた。わざわざ遠くに来るなんて。まだ終わりではなかった。
里心がついたのかな。ここがいかに働きやすい場所だったか思い知ったのかも。
終わり?
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