天使ムニエル

真田奈依

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3 智子の仕事

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 介護福祉士の私は特別養護老人ホームに入所しているお年寄りの排泄、着替え、入浴、食事などの介助や日常生活の支援をしている。世話とは言わない。
 80人ほどの利用者がいて、日中は2人か3人の職員で10人の利用者さんの支援をしている。
 勤務はシフト制で、早番が 7:00~16:00(8時間勤務、1時間休憩)。日勤が9:00~18:00(8時間勤務、1時間休憩)。遅番が10:00~19:00(8時間勤務、1時間休憩)。夜勤は17:00~翌11:00(16時間勤務、1時間休憩)となっている。
 今日は早番なので出勤後の朝6時45分にタイムカードを押して、ロッカーで着替え、事務室へ行く。夜勤担当者から昨夜の様子を聞き、夜勤担当者とともに利用者さんの部屋を訪れる。
「おはようございます」
 笑顔であいさつをしながら、利用者さんがいつもと同じか、表情や反応を確認しながら、カーテンを開け、モーニングケアと呼ばれる、トイレ・着替え・洗面・整容などの手伝をする。
 それから夜勤担当者とともに朝食の配膳。服薬の確認、食後の片付け、トイレ誘導、口腔ケア、食事量を記録という流れ。
 オムツ交換もあり。
「朝子さん、下着を交換しますね」
 そう声をかけながら、朝子さんのオムツを交換する。オムツとは言わない。と言う。
 
 昼食後、康男さんはリビングルームの椅子に座って読書していた。
「あぁ、今日は何食べようかな~」
 康男さんの頭の上で、遠藤さんが脈絡もなく発する。毎日のように言っている。日勤専門の遠藤さんは仕事中、自分の家の夕食のことばかり考えていて、仕事がおそまつ。仕事中にそんなことを言う人を、私は嫌悪する。
 遠藤さんは介護福祉士の資格は持っていない。だが、負けず嫌いのようで8歳年下の私にマウントを取ってくる。私にケチをつけてばかり。今日だって入浴介助に時間をかけすぎるとケチをつけてきた。遠藤さんが雑すぎるのだ。偉そうなのでにはベテランに見えるけれど、キャリアもスキルもない。
 利用者さんの午後のお茶の時間が終わった。その後はトイレコールに対応し、介護記録を書き、仲間の介護職に引き継いで仕事が終わり。
 大変で忙しいけれど、お年寄りが幸せに暮らせるようにお手伝いする仕事は好きだった。
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