彼と私と甘い月

藤谷藍

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初めてのお出かけ

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彼から連絡が来たのは次の日の夜だった。
夕ご飯を終えて、のんびりテレビを見ながら、そろそろお風呂に入ろうかなーと考えていた花蓮の携帯から呼び出し音が鳴る。
こんな時間に誰だろう?と、画面を確かめると昨日登録したばかりの彼だった。
昨日の夜、花蓮は家に帰ってから携帯を見つめて、思った以上に連絡の有無を気にしている自分に気づいた。花蓮にしては珍しく、一目で好感が持てた男性。
言葉を交わしても、最初に抱いたその好印象は崩れなかった、どころか、一層興味が増した。彼の容姿はもちろん花蓮の好みだったが、それ以上に彼の持つ雰囲気、落ち着いた態度、話し方、短い会話から垣間見えた彼の為人に惹かれていた。
花蓮は、たまに無理やり数合わせに引っ張っていかれる飲み会=合コンでも、話しかけられることは多かったが、花蓮自身が相手に興味をそそられる事が滅多に無かった為、連絡先を交換することはほぼなかった。
花蓮の容姿は普通より可愛い気味で、特別綺麗でも可愛いわけでもないが、辛口の友人に容姿判定では ’C+’ を、甘口の方からは ’B-’ を評価して貰っていた。
友人たちの総評として、「花蓮は親しみやすい雰囲気を醸し出しており、よく見ればそれなりに可愛いので、本命の滑り止めに都合よく利用される可能性が多い、ので気をつけるよう」 と注意されていた。
恋人と呼べる人を待たなくて結構な月日どころか年月が経っていたが、花蓮自身はそのうち出会いがあればいいなーとのんびりだ。
呑気な花蓮を周りは心配してくれるが、人事部にいるせいか、見かけが性格に反比例している例も多々みてきており、一目惚れはない、と思いつつももう少し彼とは話をしてみたいと思う。が、彼はきっとモテるだろう。
あれだけの容姿に物腰もどこか優雅だった。恋人もきっといるだろうし、そう意味では過多な期待はしないほうがいい、と思い直し、(うん、半分以上社交辞令かもしれないから、とりあえず一週間待ってみて、連絡がない場合は流そう)、と決めていた。
なので昨日の今日のコールに、つい嬉しくて、
「はい、もしもし」と弾んだ声で応答していた。
すると彼の方も、
「もしもし、昨日連絡先をいただいた橘です。いまお時間よろしいですか?」といささか緊張気味な声で花蓮の都合を聞いてきた。
そして日程の会う来週の火曜日、お昼をご馳走してもらうことになり、案外早くに再び会えることに花蓮は密かに喜んだ。いい店を知ってるからと相手のチョイスで食事に誘われることが多い中、彼が花蓮に何を食べたいのか、どこか行きたい店はあるか、など聞いてきてくれたことも嬉しくて、その夜はそのまま幸せな気分でベットに入った。

次週の火曜日、花蓮は朝からお昼の約束のせいで気分が良かった。
今日の花蓮の店のチョイスは、評判はすこぶるいいが、少し値段が張るので昼食よりは夜のデートにいい、と噂の店だった。デートの予定など、ここ何年もない花蓮が、一度は行ってみたい、と思っていた店で、花蓮は他にも何件か候補をあげたのだが、彼もこの店の評判を聞いていて、行ってみたいと言ってくれたのだ。
約束の時間に店に着くと、彼はすでにきていて、ウエイターに案内されてきた花蓮にこちらだと軽く手をあげた。
花蓮が笑顔で「こんにちは、お待たせしましたか?」と向かい合わせに座りながらと聞くと 
「大丈夫ですよ、さあどうぞ、今日はお好きなものを頼んでください。」と笑ってくれた。
メニューに記された値段に、(なるほど、これは滅多に来れないわ。)と花蓮は変に納得しながら、一方で失礼にならないよう、気になる料理を彼とお互い話しあいながらメニューを決めていく。
美味しい昼食を食べながら、彼が31歳の弁護士で、国際商取引、契約など国際法分野を得意としており、仕事は国内外出張も多く、この後もクライアントとの打ち合わせがある、と話すと、花蓮も、自分は26歳のOLで、人事部勤務、勤務時間は9時5時だが、会社はフレキシブル制をとっており比較的昼食や夜の時間は自由になる、と彼に話した。互いの仕事の話だけでなく、プライベートの話も交えて、楽しく語らいながら過ごしたその日のランチはとても楽しい時間となり、少し緊張気味だった二人の間の空気も、食べ終わる頃には気のおけないものになっていた。
ランチの一時間などあっという間に過ぎてしまい、気がつけば花蓮も彼もそれぞれの仕事に戻らなければならない時間だ。
彼は腕時計が指した時刻を見て、残念そうに、そろそろ行かなければならない、と告げ、花蓮も、自分も会社に戻る時間なので、と二人して席を立った。
レストランを出て、花蓮が「今日は本当にご馳走様でした。」とお礼を述べると、彼は「どういたしまして、僕も今日は久々に楽しかったです。また機会があれば食事をご一緒してよろしいですか?」 と再度誘ってくれた。
花蓮が「私も楽しかったです。ぜひまた誘ってください」 と嬉しそうに微笑むと、彼は破顔して、「次はプライベートでお誘いしますので。また連絡します。」と言って、一礼してタクシーに乗り込んだ。

次の彼からの連絡は、翌日の夜だった。忙しい、と言っていたのに大丈夫なのかと花蓮が聞くと、彼曰く、「今はちょうど調整期間で時間が取りやすく、修羅場はもう少し後日に控えている」らしい。
「それに、あらかじめ動かせない予定を先に決めておく方が却ってスケジュールが組みやすいのです。食事に出かけるのはいい気分転換になるし。」
「ああ、なるほど。それで橘さんの都合としてはいつが良いですか?」
「時間を気にせず、ゆっくり楽しみたいので、週末がいいのですが、今週末の土曜日夜は空いていますか? それとも急すぎるのでしたら来週末は?」 
「週末ですか?ふむ・・・」と、 てっきりまたランチのお誘いだと思っていた花蓮は、予期していなかったお誘いに、
(えっ、もしかして、彼女はいないの?)と胸が騒ぐ。確かに次はプライベートで、と言われたが、忙しい彼の土曜の夜なんてゴールデンタイム、彼女がいれば一も二もなく埋まるだろう。なのに花蓮を誘うということは、
(えーと可能性としては遠恋?冷却期間中?いやいや、そもそも彼女がいるのなら他の人を誘っちゃいかんだろう。うーん、当て馬は勘弁して欲しいしなー・・・ここははっきり聞いておこう。)
花蓮は後にトラブルになるよりはと、少し考えて、
「私は大丈夫ですが、せっかくのお休みなのに橘さんは良いのですか? えっと彼女さんとかいらっしゃるのなら申し訳ないのですが・・・」
と探りをいれると、
「彼女さんはいらっしゃらないので是非一緒に出かけましょう」とキッパリ言われた。うんナルホドいないのかあ。なら問題ないかな。
「なるほど、それなら問題ないです。今週末ですね?」
「ええ、今度はどこにしますか?」と店と時間を決め、週末に会うことになった。

土曜日の約束の一時間前、花蓮の携帯に彼から電話がかかってきた。
何かトラブルかと思い電話に出ると、週末出勤の仕事が急に入り、時間が圧して持ち合わせ場所に間に合いそうにない、ので場所を変更して良いかときかれた。まだ時間はあるし遠くでなければokだ、と伝えると花蓮の自宅の最寄りの駅名をあげられ、行き方はわかるかと聞かれた。
花蓮は知り合ったばかりの男性に最寄りの駅を教えていいものか、と一瞬迷ったが、花蓮の女の勘は、彼はストーカーやサイコパス、逆恨みタイプではないと告げていた。まあジギルやハイドのような二重人格なら察知は難しいが、前向きにそうでないことを願って、自宅の最寄りの駅なので心配ないと伝えた。
「え?そうなんですか、実は僕の家もその近くなんですよ。」 と嬉しそうにびっくりされ、お互い住所を告げると、なんと駅を挟んで反対側の地区に彼の家はあった。
彼の家がある側は区画開発が進んでおり公園や学校、スーパー、本屋などが大通りに面して並んでいる。花蓮のマンションがある辺りはまだ古い町並みを残しておりアパートなども多かった。
この大都会で偶然にもお互いの家が歩いて徒歩圏内。これはラッキーな偶然なのよね?と花蓮は何となく今年の初詣に(今年こそはいい出会いがありますように。)と神頼みしたことを思い出しながら、お賽銭を500円と奮発したかいがあったのかもと嬉しくなった。そして、彼が、それなら車を出すので、花蓮の家まで迎えに行くというのはどうか?との提案に二つ返事で頷いた。

「どうぞ乗ってください」 という言葉に甘えて、時間どうりに迎えに来てくれた彼のスポーツタイプの国産車に乗り込む。慣れた動作でナビにも頼らず目的地に向かう彼に、花蓮は思わず、
「運転、お好きなんですか?」 と聞いていた。
彼は頷きながら 「毎日乗っていますしね。実は普段は車通勤なんですよ。移動に便利ですし、少し離れたクライアントへの面会も電車より速いですしね。」 
「あれっでも最初にお会いした時は駅でしたよね?」
「ああ、あの日は丁度、これをメンテに出していましたので。夕方には引き取りましたよ。」とメンテの手軽さから、国産車が気に入っていると話してくれた。
花蓮は(どうりで駅で見かけたことがないわけだ、こんな好みの人がいたら絶対気づいていたはず。ある意味、案外この人にめぐり合える確率は超低いのかも。車通勤と多忙なスケジュールじゃあ、勤め先が一緒とか取引相手でないと出会えないよね。)と考えていると、
「あの日は、朝一にクライアントとのアポがあって事務所に帰る途中で、久々の満員電車にちょっとまいっていたんですが、たまには電車通勤もいいものですね」 と花蓮の方を向いて微笑んだ。
彼が自分との出会いを好ましく思ってくれているのがわかり、花蓮もはにかみながら、「私も、たまには遅刻ギリギリ出勤も悪くない、と思いました。」と返した。
花蓮の言葉に、彼は面白そうに笑ってくれて、彼も出張先で寝過ごして飛行機を逃した失敗談など話してくれた。
そして予約の時間より随分早くにレストランへついた二人は、時間までぶらぶらとウインドウショッピングをして過ごし、レストランではデザートとコーヒーまできっちり堪能して満足そうに帰路についた。
帰りのドライブで今日のレストランの感想などを述べあっていると、彼の携帯の呼び出し音が鳴り出した。
車を路肩に止めて応答した彼は、電話が終わった後、申し訳なさそうに、この後花蓮を送って行く途中で、彼のマンションに事務所の鍵を取りに寄っていいか?と聞いてきた。花蓮を送った後、仕事に引き返さなければならなくなったが、帰りに彼の家の近くを通るのでついでに、ということらしい。
もちろん花蓮の都合が悪ければ先に送って行く、とも言われたが、土曜の夜10時に用事などあるわけもなく快く承諾した。

彼の住まいは、きれいに手入れされた公園のようなロータリーがある10階建程のデザイナーズマンションだった。入口のロータリー脇のスペースに車を止めた彼は、車の中で待っていようとした花蓮に、一人にするのは心配だからよかったら自分と一緒に来てくれないかと頼んだ。それから、
「そうですね、警戒されるのも当たり前なので、ちょっと待ってくださいね。」 と言ったかと思うとマンションの入口付近にいた警備員を手で呼び寄せた。
警備員が寄って来て 「お帰りなさい。」 と挨拶してくるのに 「前川さん、すまないがすぐにまた出るので、車をここに止めていいですか?」と確認してみせ、相手が 「もちろんですよ」 と答えるのを待って、花蓮を’合格しましたか?’と、問うように見つめて来た。花蓮が笑いながら 「わかりました」 とドアハンドルに手をかけると、ホッとしたように彼も車を降り、警備人に頷いて、マンションの中を案内していった。

花蓮は彼がエレベータでカードキーを使って最上階のボタンを押すのを見て、感心して思わず、
「最上階なんですね。うちは3階なんですけど、入居する際に防音の有無を聞いたらしっかりしてる、って言われたんですけど、やっぱり上から多少の生活音はするんですよね。」とコメントすると、
彼は、何が可笑しかったのか笑い出して 「失礼、確かに最上階だと上からの音はないですよ。」と言いながら、まだ笑っていた。
笑うと彼の精悍な印象が途端に柔らかく優しいものになるので、花蓮は密かに彼の笑顔を気に入っていた。今、目の前でその効果を遺憾無く発揮され、5歳も年上の彼に対してなぜか’ 可愛い’ と思ってしまった。彼の方も思い出し笑いの様な笑いから一転、何か愛しいもの愛でる優しい目で花蓮を見ていて、花蓮はなんとなくどぎまぎしてしまう。
エレベーターが止まり、静かにドアが開いたので、花蓮がいまだ上機嫌の彼を見上げると、目でお先にどうぞと促されたので先に出る。
二人が降りた階は床が大理石のちょっとした踊り場があり、玄関アプローチのような作りになっていて、奥に大きなドアが一つある。非常階段と書かれた扉、ゴミのダストシュート、採光窓がある以外、ドアらしきものはその一つしかなかった。
普通より大きなドアを鍵で開けながら、彼は花蓮に 「すごく散らかってますが、男の一人暮らしということで勘弁してください。」と忠告して電気のスイッチを押した。
中に入った花蓮の目に先ず映ったのは、至る所にある本と書類の山でも、脱ぎ捨ててあるスーツの丘でも、軽く30畳以上あるリビングダイニングでもなかった。
玄関の真正面にあるリビングの窓は一面いくつものフレンチドアになっていて格子状のガラスの向こうに大きなテラスがあった。
テラスの向こうに街の灯りが散らばっており、夜にもかかわらずやさしい光を投げ掛けていた。
花蓮は思わず 「わあ、綺麗ー」 と歓声をあげながら広い上がり框で靴を揃えて脱ぎ、彼を見上げて、「窓の近くまで行っていいですか?」とワクワクしながら聞いてみた。
「もちろんですよ。テラスに出てみますか?」
「ぜひぜひ、出てみたいです!」
「それでは、そのまま出てもいいですけど、足下の汚れが気になるようでしたら靴を持ってきてください。」と言ってフレンチドアの鍵を開けてくれた。
春の夜にふさわしい月明かりの中、花蓮は彼と二人で広いテラスに出て新鮮な空気を味わった。そしてテラスに置いてあった小さなテーブルセットの椅子に二人で座り、しばらく黙って夜景を楽しんだ。
テラスは三方をガラス戸で囲まれており、風も思ったほど強くなく穏やかだった。家の構造はペントハウスに相応しい贅沢な設計で、玄関を正面に両側にウィング状に部屋があるらしくコの字をしていた。
しばらくして花蓮が満足そうに溜め息をつくと、彼が、「コーヒーでも入れましょうか?」と聞いてきた。それを聞いて、本来の目的をようやく思い出した花蓮は慌てて、「すいません。橘さんお急ぎでしたよね。すぐにお暇しますからお構いなく。」と言うと彼は笑った。
「ご心配なく、10分や20分でかたずく案件ではないので構いませんよ。この書類の山からちょっと探したいものもありますし、どうぞ座っててください。」
「それなら、橘さんが書類を探している間、私が飲み物を用意しましょう。何が飲みたいですか?コーヒー?紅茶?」
「ではコーヒーをブラックでお願いできますか?白河さんは何を飲まれます?確か紅茶と日本茶とほうじ茶もあったと思いますが。キッチンはこっちです」
リビングを通り抜けてそのままオープンに続いているダイニングとキッチンにたどり着く。ここも洗い物がたまっており、いかにも忙しい彼の生活が垣間見れた。意外にも鍋などの洗い物もあって、彼が自炊していることが伺える。
「もしかしてご自分で料理とか為さります?」
「料理は嫌いではない程度ですよ。夜食とか作れないと不便ですし。毎日外食だと飽きてしまって、体にもよくありませんしね。まあ材料を買いに行く時間がなかなか無くて、あまり出来ないんですが。」
そして彼は上の棚を開けて飲み物とコップの場所を示すと、書類を探しにリビングに戻った。花蓮が飲み物を持ってリビングに戻ると彼は順調に書類の発掘作業を進めていた。  
「どうぞコーヒーが入りましたよ。」
「ありがとうございます。ちょっと休憩しますか。この書類たちも整理しなくてはならないのですが、どうも捗らなくて。」
「何かお手伝いしましょうか?」
「目当てのものは見つかったので大丈夫です。ついでにと整理をしていたのですが一人では効率が悪いんですよね。」
彼はちょっと眉を寄せて何かを考えていたが、花蓮が「指示を出して頂ければお手伝いしますよ」と言うと
「白河さん、明日は何かご予定がおありですか?」と聞いてきた。
「?いえ、特にはありませんが?」
「英語はどの程度読めますか?」
「??医学や機械の専門書などは難しいですが、普通の一般書やフィクション程度なら大丈夫です」
「それは、結構すごいですね! もしかして、英文科出身ですか?」
「はい、そうです。」
「ますます好都合です。もし白河さんさえよければなのですが、僕の家でバイトをしませんか?書類の整理を手伝って頂きたいのです。一人でだと, どうしてもすぐ他のことに気を取られて中々進まないですけど、白河さんに監督していただけたら、効率よく作業できると思うんです。どうでしょう?」
思いがけない話に花蓮はちょっとびっくりして、
「あの、お手伝いするのは全然構わないのですが、バイト、というのはどういうことですか?」
「ご覧の通りの書類の山は1日2日の作業で片付く量ではありません。家で仕事することも多いので書斎もここと同じ、いえ、もう少し散らかってるような状態です。書類の中身は社外秘の案件も多くて、全て過去のものですが、誰にでも手伝いを頼むわけにもいかないのです。その点、白河さんなら、勤務会社もはっきりしていて安心して頼めます。僕との出会いも偶然の賜物ですしね。言い難いのですが職業柄、僕に近づいてくる人の中には企業スパイのような方も結構いるのですよ。ですので、滅多に知らない人を家に入れることもありません。車通勤も書類盗難の予防処置の一環なのです。」
それを聞いて花蓮は、(彼の仕事はやり甲斐はあるかも知れないけど、忙しいだけじゃなく、機密性も高くていろいろ大変なのね。)と思った。
その彼が花蓮を頼ってくれたのだ。これは名誉なことではないだろうか。
「わかりました。そういうことなら頼って頂いて嬉しいです。喜んでお手伝いしますよ。でもバイト代とかは気になさらなくても結構ですよ。」
「いえいえ、僕の思惑は、明日手伝って頂いて、白河さんが次も手伝ってもいいと思って下さったらいいなと。この際、家の全面書類整理を企てているのですよ。そうなると何週間かもかかるでしょうし、白河さんの時間もかなり拘束してしまいます。明日来て頂いて、やっぱり無理だと思ったらそこまでで、手伝って頂いた時間分バイト代をお支払いしたいのですよ。書類整理、といっても案件ごとにファイルして、資料室行きにできるようラベル作成までして頂きます。英語の書類も多いですし、事務仕事レベル以上のバイトだと思って頂きたいのです。」
「ふーむ、成る程、それなら確かにバイトと割り切った方が、橘さんも指示が出しやすいでしょう。了解しました。それでは明日、何時にお訪ねすればいいですか?」
「承知して頂けるのですね、有難うございます。あしたは昼からなら何時に来て頂いても構いません。今夜これからちょっと仕事にでますので明日の朝は遅くなると思いますから。バイト代の希望額はありますか?」
「金額に関しては明日のバイトが終わってから交渉しましょう。もしかして短時間で私が音を上げるかもしれませんし。」
「あはは、なるほど。ではそろそろ出ましょうか? ちょっとお待ち頂けますか、鍵を取ってきますから。」
「ああそれなら、橘さんは出る準備をして来て下さい。その間私はコップを洗っておきます。」
彼は花蓮のその言葉を聞いて頷くと、
「是非、バイトの件、長期契約を前向きにご検討ください。」と花蓮に真面目な顔をして告げた。
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