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恋じゃない、この気持ちは……3
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声が聞こえた方角に皆が不思議顔で振り返った。
温和な談笑中に、いきなり割り込んできた女性に驚いた感じだ。が直後、葵をはじめ、伊織と木村は見覚えあるその顔に呆気にとられた。
「池杉さん……?」
「せっかくの土曜ですし、これから一緒に出かけませんか? やっぱり私、諦めないことに決めました。なんなら私とそちらの恋人さんを比べてもらって構いません」
華やかなワンピース姿はよほど自信があるのか、伊織のそばまでつかつか歩いてくると「負けませんから」と葵を勝気な目で見てくる。……周りを一切無視と言った感じで、そんな女性にその場にいた人々は戸惑いの目を向けている。
厳しい顔をした伊織は、コリンズ夫妻に丁寧に挨拶をしてから一同と距離を取りつつ大きなため息をついた。
「……ここは会員制のクラブだ。どうやって入ったんだい? それに、そんな話は子供の前でするものじゃない」
「でも、こうでもしないと、鳳条さんは会ってくれないじゃないですか」
木村も状況を素早く読むと、夫妻と子供たちを遠ざけ挨拶を交わした。美沙は『セキュリティーを呼んでくるわ』と一家と共にそこを離れる。葵はもちろん、伊織の援護のためその横に付き添った。
「君とは食事をしただけだ。それにキッパリ断ったよ」
「たった一回会っただけで、何が分かるというんです? 私はこんなに好きなんです。だから私をもっと知って欲しいし、会って欲しいんです。どうして分かってくれないんですか?」
まともに聞こえる彼女の言い分だが、相手の迷惑を顧みないにもほどがある。池杉のあまりにも自分本位な言動にさすがの伊織も紳士的な態度を改めた。
「分かった、ならはっきり言おう。君はもう少し相手の立場に立って物事を考えてから、人の話を聞いたほうがいい。僕は自分の行動に責任を持てない君とは、絶対に付き合えない。ましてや僕には大切な恋人がいるから迷惑だ。二度と僕の前に現れないでくれ」
荒々しくはないが、氷点下の声音ではっきり拒絶を告げる。
「でも……、その人ってただの恋人でしょう? 婚約しているわけでも、結婚しているわけでもない。なら諦める理由になりません」
本当に伊織の話なぞ、ぜんぜん聞いていない。
伊織が彼女に向かって冷たい目で何かを言いかけた時だ。警備員が二人、慌ただしく近づいてきた。
『ああ、ここにいた! お嬢さん! この建物はプライベート敷地ですので、会員以外は立ち入り禁止だと言ったでしょう。勝手に入ってもらっては困ります』
「私は彼に用があって……」
けれど体躯のいい警備員に取り囲まれては、池杉もどうしようもなかった。鳳条が首を振って関与を否定すると、唇を噛んで警備員に連れられていく。
「何ともすごい女性だな……。今回はまた、厄介な感じに好かれたねえ」
「ここまでついてくるとは、さすがに思わなかったよ」
重いため息をつく伊織を見る木村の目は、同情いっぱいだ。
「彼女、例の会社の令嬢だろう? 一見分別ある女性なのにな……本当、人は見かけによらないってか」
「ああ。すまない、コリンズ氏は?」
「また来週に会うってことで、話はついてる」
「ありがとう。まいったな、仕事先にまで現れるとはね」
「週末だから仕事とは思わなかったんだろう。役員と言っても、サラリーマン家庭のお嬢さんだしねえ」
さり気なく慰めてくれる木村夫婦とはそこで別れて、池杉が警備に尋問されている間に伊織たちは早々に帰ることにした。
呼んでもらったタクシーに乗り込むと、葵は珍しく憂い顔の伊織が心配でそっとその腕に触れる。
「伊織さん……大丈夫ですか?」
「ああ、心配ないよ。それよりせっかく出かけてきたのに、こんなことになってしまって。本当にーーすまない」
「伊織さんのせいじゃあ、ないですよ」
いつも通りに振る舞う伊織だが、彼のムードを読めるようになってきたからこそ分かる。かなり沈んでいるーーそんなようすに、葵の心も痛くなった。
もちろんだが、葵も相手の話に同情したことならいくらでもある。けど、これは…………
彼がつらそうだと、自分もつらくなる。彼には楽しそうに笑って欲しい。
(ーーただの”知り合い”では……ううん、”親しい友達”でも、こんな気持ちにはならない。よね……)
心に感じる痛みは深く大きく、どうにかして気持ちを軽くしてあげたい。そのためなら何でもするとさえ思ってしまう。
ーーこんな感情は、今まで感じたことがない。同情の枠などとっくに超えて、彼への想いが友情や親愛以上であることをもう認めないわけにはいかなかった。
運転手にカフェの住所を告げた伊織に、葵は決心して家に寄っても良いかと聞いてみる。
「帰ってしまうのかい?」
ますます気落ちした声に思わず手を伸ばし、その大きな手を握った。
「違いますよ。お泊まりの用意をしに帰るんです」
「……ひょっとして、今日も泊まってくれる?」
「こんなに落ち込んだ伊織さんを、ほっておけるわけないでしょう」
伊織にそばにいてもらったことで自分が元気になれたように、葵がそばにいることで、少しでも彼の気がまぎれるならーー
「……こんなめんどくさい男、僕が君ならとっくに見放してるよ」
珍しく自虐的な伊織を葵は見上げた。
「めんどくさいなんて、思ったことありませんから」
最初に恋人になってほしいと頼まれた時から、本気で嫌だとは思わなかった。
「ーーありがとう、葵」
ふわりと笑った後、伊織は瞳を真っ直ぐ見つめてくる。そしておもむろに手を強く握り返された。驚いたことに、さらに指と指を絡め握りこんでくる。
「今さらだけど。ーーこれからは、君を傷つける行動は絶対に取らないから」
やたら真剣で、神聖な誓約だと言わんばかりだ。
「僕は君には常に誠実である。そう誓うよ」
「ーーっ何をしおらしいこと、言ってるんですか。これくらい……今までお世話になったお返しにもなりませんよ」
言ってから、照れくさくて葵は思わず目を逸らした。すると肩にコツンと伊織の頭が乗った。髪から漂うシャンプーと、爽やかな香水の匂い。二人はそのまま黙って手をついないだまま、葵のマンションでタクシーを降りた。
いつもの癖で誰もいない部屋に向かって「ただいま」と挨拶をすると、後ろから穏やかな声が「おかえり」と応えてくれる。
「すぐに用意しますから、上がって待ってて下さい」
ソファーに黙って座った姿を見て、手早くカバンに荷物を詰めはじめた。
(化粧品、歯ブラシ……あ、でも、今朝使ったのがあるから)
少し迷ったが、寝間着と一緒に下着類も忍ばせた。お風呂はやはり欠かせない。
それに……せっかくだからと思いつきで、ベーキングパウダーやハーブなどを袋に詰めていると、それまで黙っていた伊織が声をかけてきた。
「葵。どうせなら、予備の服も何着か持ってきて欲しいな。そうそう、スーツもついでに」
「ーーす、スーツって……一体何日、泊まらせる気ですか……」
「だけど僕が今日中に回復しなかったら、当然もっと泊まってくれるだろう?」
「っ! ……分かりましたよ。持っていきます……」
こんな時に子犬のように見上げてくるなんて、ほんっとずるい。断れるわけがない。
だがそうなると靴も用意しないと……などと考えていると、膨れ上がった荷物がカバンに入りきらないことが判明。葵は仕方なくスーツケースを出してきての詰め直しをはじめた。しばらくして、やっと用意が整う。
「お待たせしました」
「じゃあ、行こう」
小雨の中、大きな旅行かばんを軽々と運ぶ伊織は、とても楽しそうだ。いつもと変わりない様子に、少しは気が晴れたかなと胸を撫で下ろした。それに葵自身もなんだか楽しくなってきた。まるで小旅行に出かける気分だ。傘を持つ手を目一杯伸ばして、伊織が濡れないようにと彼と歩調を合わせる。
「さあ、着いた。ただいま」
葵を真似てわざわざ挨拶する彼に、笑いが漏れた。
「お邪魔します」
彼が運び込んでくれたものを、さてどこに置こうと思案していると、伊織はそのままどんどん階段を上がっていく。
「伊織さんっ、重いから荷物はここで……」
「着替えるのに不便だろう」
「でも、お風呂はこっちですし」
「シャワーは上にもある」
そう言ってベッドルームに消えてしまったから、慌てて後を追いかけた。伊織の部屋はとても広いが、自分の荷物をそこに置くなんて、そんな図々しいことをする気はなかった。
「あの、ご迷惑をかけるつもりでは……」
部屋に足を一歩踏み入れて、伊織の姿を探す。
(あれ? いない)
確かこっちに来たはずと頭を傾げたら、後ろから声がした。
「ここのスペースを空けるから」
まさかーー?と半信半疑で部屋のバスルームの手前にあるウォークインクローゼットを覗く。と、伊織がせっせと自分のスーツを移動させて場所を作っていた。
「いや、あの、そこまでしてもらわなくても」
「スーツがシワになるよ」
「う、そうですね……ありがとうございます」
手際良く1段まるまる葵のために明け渡してくれた彼に、これ以上言い返す気も失せた。大人しくハンガーにスーツを収める葵を見た伊織は、手元の時計で時間をチラリと確かめる。
「僕はこれから少し、仕事を片付けるから。好きに過ごしてくれるかい?」
「あ、はい。頑張ってください」
上機嫌で立ち去る姿を見送った葵は、残りの服の整理をはじめながらも考えずにはいられない。
(私……来てよかったのかな? 伊織さん、思ったよりずっと元気だし……)
週末も仕事に励む伊織に自分から泊まると言い出すなんてーー、もしかすると早まっただろうか……?
だけど彼は嬉しそうだったし……、今さら帰ると言えば拗ねる気もする。
それに、予備の服まで詰めさせたのは伊織なのだからと考え直した葵は、彼の言葉通り気楽に過ごすことにした。
家から持ってきたハーブやら小麦粉やらをスーツケースから取り出す。
結構な場所を取ったけど、持ってきてよかった。
「伊織さんーー、台所お借りしますね~」
両手いっぱいにそれらを抱えて階下に降りると、オーブンの吟味に取り掛かった。棚にあった説明書を熱心に読むと、早速材料を混ぜるべくボウルをキッチンの棚の奥から探し出す。
(待ってーー。もしかして……ベーキングペーパーとか、ない……よね)
うっかりしていた。
伊織はそんな台所用品など持っていないだろう。家に帰ってとも思ったが、泡立て器や木べらもいるからと、いっそ買い足すことにした。伊織には服をプレゼントされたし、食事も奢ってもらっている。お礼に葵が台所用品を揃えてあげるのも、いい考えに思えた。だって、なんでも持っていそうな伊織に、他に買ってあげられるモノなど何も思いつかない。
「ーーちょっと、買い物に出てきます」
「ああ、予備の鍵がキッチンにあるから、忘れずに持って出るんだよ。行ってらっしゃい」
上階の書斎らしき部屋でノートパソコンに向かっている姿に、一声かけてから駅の商店街に向かった。
小一時間ほどで必要なものを揃え帰ってきた葵が玄関で「お邪魔します」と小さく口の中で挨拶をすると、上階からかすかなマシン音が聞こえてくる。
これはきっと……さっき見かけたランニングマシンに違いない。そんなモノが書斎にあるのを意外に思ったが、よく食べる伊織があの体型を保っている秘密を知った気がして、葵の口元がクスリと緩む。
さあ、材料も器具も揃ったし、早速始めよう。
スマホで音楽を流すと、慣れた手つきで調理を始める。完成したボウルの中身をオーブンで焼いている間にも、香ばしい香りが部屋中に立ち広がってきた。
(はあ~、いい香りー!)
部屋に漂う刺激あるスパイスと爽快なハーブの芳香に癒されていると、不意に後ろから腰に手が回ってきた。
「いい匂いだね。何を作っているの?」
ドキン。鼓動が一瞬跳ねた次の瞬間、ときめきにも似た温かい感情が胸に溢れてきた。
「スコーンと骨付き肉の野菜煮込みです。スコーンはもう直ぐ焼けますよ」
「ものすごく美味しそうな香りだ。食欲をそそられるな」
「走ったら、お腹が空きました?」
背中にあたる体温に少し寄りかかる格好で、シャワー上がりらしい姿に笑いかける。するとタイミングよく、オーブンのタイマーが鳴りだした。
「あ、ちょうど焼けたみたいです」
出来立てが一番美味しいからと、焼き立てのスコーンをお皿に並べる。
「いろんな種類があるんだ……」
「ハーブ入りと、チーズとトマトなんかの野菜と、あと冷蔵庫にあったベーコンが入ったスコーンです」
「へえ、家で手作りなんて、初めてだよ」
嬉しそうに笑う顔を見て、作ってよかったと心から思えた。
「時間も中途半端ですし、ちょっと早めの夕食ですけど」
伊織がお腹いっぱいになるようにと作った具沢山のスープをスープ皿によそって、テーブルへと運んでいく。向かい合って座った二人は、早速ほかほかのスコーンに手を伸ばし「熱っ」と手のひらで転がしはしゃいだ。
「いつも食事を奢ってもらってばっかりなので、たまにはと思いまして」
「ーーすごい隠れスキルだな。葵がこんなに料理が上手だなんて」
スコーンをちぎると美味しそうな香りが熱気と共に匂い立つ。ふんわりした塊にふうふうと息を吹きかける伊織の瞳が踊った。
「あ~、オーブンを使った料理が得意なだけですよ。えっと、お惣菜系なんかはまだまだです」
「十分だと思うけど? 僕はトマト煮込みなんかを作るよ。でも家庭料理は壊滅なんだ」
「……そういうことでしたか。いつも朝比奈さんが和食を作るわけは」
カフェで伊織が食べるのは、一般的な家庭料理が圧倒的に多い。
「そうなんだよ。僕が作るよりよっぽど美味しいからね」と笑う顔を見ていると、葵も偏った料理分野をもうちょっとがんばって開拓しようかな……という気持ちになってきた。
「キッチンが広くて使いやすいので、料理するのが楽しいです」
「へえ? じゃあ、いつでも好きに使ったらいい」
「ふふ、ありがとうございます。ーーせっかく、これだけ整ったキッチンがあるんですから、もっと使ってあげないと」
彼の親切な言葉には、イエスともノーとも答えず誤魔化した。伊織は気にしないみたいだが、人様の台所を勝手に使うなんて、葵にはやはり厚かましいことのような気がしたから。
料理したものすべてをたいらげた伊織が「風呂が沸いてるから、入ってきたら?」と勧めてきたので、つっこまれないうちに「ごちそうさま」と手をあわせその場を離れた。
(あれ? でも、伊織さんの家でお風呂ってーー?)
けれども身体を洗った後、のんびり風呂に浸かっていると、ようやくズレた現実に葵の頭が追いつきはじめる。
先ほどは、伊織の申し出はどこまでが本気?とドキッとしてしまい、風呂を勧める言葉に躊躇せず飛びついたが……ひょっとして自分は今、キッチンを使わせてもらうより、さらにもっと大胆なことをしているのではーー?
落ち込んでいる独身男性の家で風呂に入っている意味が、いまさらながらじわじわとお湯の温度と共に全身に染みこむ。
葵の頭が一気にのぼせそうになった。
(これって、okサインを出したも同然のーーいや待って。相手はあの伊織さんだし)
女性遍歴は豊富だが、割り切った付き合いをする彼だ。そうと決まった訳では……
けど。もしもだけど。……今夜彼に求められたら?
ーー伊織は目に見えて弱っている様子を見せないが、タクシーの中では沈んでいた。健全な男性ならこんな時、慰めて欲しいと思っても不思議ではない。ましてや、伊織の場合ーー
(一晩だけも多いって……)
火照った顔を思わず、両手ですくったお湯でぬぐう。
彼のお付き合い期間は長くない。その上、葵とはそんな関係ではない。以前にそうハッキリ伊織から言われてもいる。となれば自分も一晩限りになる可能性が大だ。
……もし、そうなったらーー……?
葵が伊織に感じているこの気持ちを、事後に上手くごまかせるだろうか。
そこまで考えた時点で気づいてしまった。自分の思考のその前提が何であるのかに。
(うわぁ、私ってば嫌じゃないってーー違う。そうじゃなくて)
本当は抱いて欲しい。ーーそう思ってる……
女性関係がお盛んな不実な紳士ーーそれが伊織だ。本気になるには厄介な人だと、よくよく分かっていて。だけどそんな彼のすべてが愛おしい。帰りのタクシーでも落ち込んでる彼のそばで、実は彼を抱きしめたくてしかたなかった。これが葵の正直な気持ちだ。
ーー……ならばもういっそ。割り切れると思い込もう。
そもそも、今は恋愛など考えられないと言ったのは、葵だ。
焦りのような落ち着かない気分に囚われた葵は、突如湯船から立ち上がった。
ざばあと派手な水音がした後、クラリと立ちくらみが襲ってくる。……どうやら、思ったよりずいぶん長い時間お湯に浸かっていたらしい。
湯栓を引っ張りお湯がみるみる減っていくのを、ぼんやり眺めつつ湯船の縁に手をかけ、ゆっくり風呂を後にした。
ドキドキする胸を抱えて葵が居間に戻ってみれば、音楽が流れてくる。
「伊織さん、お風呂いただき……あれ? この曲ってーー」
これはーー初めて伊織に出会った晩に、彼がピアノで弾いていた曲だ。
……もしかすると、これがオリジナルなのだろうか? ギターとピアノが奏でるメロディーが部屋いっぱいに溢れて、思い出すのも切ない旋律に葵の胸がキュウンと締め付けられた。
みれば伊織はソファーでうたた寝をしている。艶やかな黒髪が少し乱れて額にかかり、まつげを閉じたそのあまりにも無防備な姿に見惚れる葵の鼓動も乱れてきた。
静かに深呼吸をすると、その肩に手を掛ける。
「伊織さん。疲れているならーーベッドへ行った方がよくありませんか?」
「ん~、風呂は済んだかい?」
「はい。いただきました」
伊織は寝起きでぼんやりした様子だ。
「寝るなら、ちゃんとベッドに入らないと。体調を崩しますよ。二階へ上がりますか?」
このビルは三階建てだが、玄関と居間のあるこの階は大きな引き戸からテラスへと出れるようになっている。そのせいか、感覚的につい一戸建てにいるような気がする葵は、上階を知らず知らず二階と呼んでいた。
音楽を止めた伊織が窓を見上げる。
「……そうだね。時間的には早いけど、上ろうか?」
夕焼けが消えて、暗い紺色に染まっているのを認めた伊織は瞬きを数回するとゆっくり頷いた。
温和な談笑中に、いきなり割り込んできた女性に驚いた感じだ。が直後、葵をはじめ、伊織と木村は見覚えあるその顔に呆気にとられた。
「池杉さん……?」
「せっかくの土曜ですし、これから一緒に出かけませんか? やっぱり私、諦めないことに決めました。なんなら私とそちらの恋人さんを比べてもらって構いません」
華やかなワンピース姿はよほど自信があるのか、伊織のそばまでつかつか歩いてくると「負けませんから」と葵を勝気な目で見てくる。……周りを一切無視と言った感じで、そんな女性にその場にいた人々は戸惑いの目を向けている。
厳しい顔をした伊織は、コリンズ夫妻に丁寧に挨拶をしてから一同と距離を取りつつ大きなため息をついた。
「……ここは会員制のクラブだ。どうやって入ったんだい? それに、そんな話は子供の前でするものじゃない」
「でも、こうでもしないと、鳳条さんは会ってくれないじゃないですか」
木村も状況を素早く読むと、夫妻と子供たちを遠ざけ挨拶を交わした。美沙は『セキュリティーを呼んでくるわ』と一家と共にそこを離れる。葵はもちろん、伊織の援護のためその横に付き添った。
「君とは食事をしただけだ。それにキッパリ断ったよ」
「たった一回会っただけで、何が分かるというんです? 私はこんなに好きなんです。だから私をもっと知って欲しいし、会って欲しいんです。どうして分かってくれないんですか?」
まともに聞こえる彼女の言い分だが、相手の迷惑を顧みないにもほどがある。池杉のあまりにも自分本位な言動にさすがの伊織も紳士的な態度を改めた。
「分かった、ならはっきり言おう。君はもう少し相手の立場に立って物事を考えてから、人の話を聞いたほうがいい。僕は自分の行動に責任を持てない君とは、絶対に付き合えない。ましてや僕には大切な恋人がいるから迷惑だ。二度と僕の前に現れないでくれ」
荒々しくはないが、氷点下の声音ではっきり拒絶を告げる。
「でも……、その人ってただの恋人でしょう? 婚約しているわけでも、結婚しているわけでもない。なら諦める理由になりません」
本当に伊織の話なぞ、ぜんぜん聞いていない。
伊織が彼女に向かって冷たい目で何かを言いかけた時だ。警備員が二人、慌ただしく近づいてきた。
『ああ、ここにいた! お嬢さん! この建物はプライベート敷地ですので、会員以外は立ち入り禁止だと言ったでしょう。勝手に入ってもらっては困ります』
「私は彼に用があって……」
けれど体躯のいい警備員に取り囲まれては、池杉もどうしようもなかった。鳳条が首を振って関与を否定すると、唇を噛んで警備員に連れられていく。
「何ともすごい女性だな……。今回はまた、厄介な感じに好かれたねえ」
「ここまでついてくるとは、さすがに思わなかったよ」
重いため息をつく伊織を見る木村の目は、同情いっぱいだ。
「彼女、例の会社の令嬢だろう? 一見分別ある女性なのにな……本当、人は見かけによらないってか」
「ああ。すまない、コリンズ氏は?」
「また来週に会うってことで、話はついてる」
「ありがとう。まいったな、仕事先にまで現れるとはね」
「週末だから仕事とは思わなかったんだろう。役員と言っても、サラリーマン家庭のお嬢さんだしねえ」
さり気なく慰めてくれる木村夫婦とはそこで別れて、池杉が警備に尋問されている間に伊織たちは早々に帰ることにした。
呼んでもらったタクシーに乗り込むと、葵は珍しく憂い顔の伊織が心配でそっとその腕に触れる。
「伊織さん……大丈夫ですか?」
「ああ、心配ないよ。それよりせっかく出かけてきたのに、こんなことになってしまって。本当にーーすまない」
「伊織さんのせいじゃあ、ないですよ」
いつも通りに振る舞う伊織だが、彼のムードを読めるようになってきたからこそ分かる。かなり沈んでいるーーそんなようすに、葵の心も痛くなった。
もちろんだが、葵も相手の話に同情したことならいくらでもある。けど、これは…………
彼がつらそうだと、自分もつらくなる。彼には楽しそうに笑って欲しい。
(ーーただの”知り合い”では……ううん、”親しい友達”でも、こんな気持ちにはならない。よね……)
心に感じる痛みは深く大きく、どうにかして気持ちを軽くしてあげたい。そのためなら何でもするとさえ思ってしまう。
ーーこんな感情は、今まで感じたことがない。同情の枠などとっくに超えて、彼への想いが友情や親愛以上であることをもう認めないわけにはいかなかった。
運転手にカフェの住所を告げた伊織に、葵は決心して家に寄っても良いかと聞いてみる。
「帰ってしまうのかい?」
ますます気落ちした声に思わず手を伸ばし、その大きな手を握った。
「違いますよ。お泊まりの用意をしに帰るんです」
「……ひょっとして、今日も泊まってくれる?」
「こんなに落ち込んだ伊織さんを、ほっておけるわけないでしょう」
伊織にそばにいてもらったことで自分が元気になれたように、葵がそばにいることで、少しでも彼の気がまぎれるならーー
「……こんなめんどくさい男、僕が君ならとっくに見放してるよ」
珍しく自虐的な伊織を葵は見上げた。
「めんどくさいなんて、思ったことありませんから」
最初に恋人になってほしいと頼まれた時から、本気で嫌だとは思わなかった。
「ーーありがとう、葵」
ふわりと笑った後、伊織は瞳を真っ直ぐ見つめてくる。そしておもむろに手を強く握り返された。驚いたことに、さらに指と指を絡め握りこんでくる。
「今さらだけど。ーーこれからは、君を傷つける行動は絶対に取らないから」
やたら真剣で、神聖な誓約だと言わんばかりだ。
「僕は君には常に誠実である。そう誓うよ」
「ーーっ何をしおらしいこと、言ってるんですか。これくらい……今までお世話になったお返しにもなりませんよ」
言ってから、照れくさくて葵は思わず目を逸らした。すると肩にコツンと伊織の頭が乗った。髪から漂うシャンプーと、爽やかな香水の匂い。二人はそのまま黙って手をついないだまま、葵のマンションでタクシーを降りた。
いつもの癖で誰もいない部屋に向かって「ただいま」と挨拶をすると、後ろから穏やかな声が「おかえり」と応えてくれる。
「すぐに用意しますから、上がって待ってて下さい」
ソファーに黙って座った姿を見て、手早くカバンに荷物を詰めはじめた。
(化粧品、歯ブラシ……あ、でも、今朝使ったのがあるから)
少し迷ったが、寝間着と一緒に下着類も忍ばせた。お風呂はやはり欠かせない。
それに……せっかくだからと思いつきで、ベーキングパウダーやハーブなどを袋に詰めていると、それまで黙っていた伊織が声をかけてきた。
「葵。どうせなら、予備の服も何着か持ってきて欲しいな。そうそう、スーツもついでに」
「ーーす、スーツって……一体何日、泊まらせる気ですか……」
「だけど僕が今日中に回復しなかったら、当然もっと泊まってくれるだろう?」
「っ! ……分かりましたよ。持っていきます……」
こんな時に子犬のように見上げてくるなんて、ほんっとずるい。断れるわけがない。
だがそうなると靴も用意しないと……などと考えていると、膨れ上がった荷物がカバンに入りきらないことが判明。葵は仕方なくスーツケースを出してきての詰め直しをはじめた。しばらくして、やっと用意が整う。
「お待たせしました」
「じゃあ、行こう」
小雨の中、大きな旅行かばんを軽々と運ぶ伊織は、とても楽しそうだ。いつもと変わりない様子に、少しは気が晴れたかなと胸を撫で下ろした。それに葵自身もなんだか楽しくなってきた。まるで小旅行に出かける気分だ。傘を持つ手を目一杯伸ばして、伊織が濡れないようにと彼と歩調を合わせる。
「さあ、着いた。ただいま」
葵を真似てわざわざ挨拶する彼に、笑いが漏れた。
「お邪魔します」
彼が運び込んでくれたものを、さてどこに置こうと思案していると、伊織はそのままどんどん階段を上がっていく。
「伊織さんっ、重いから荷物はここで……」
「着替えるのに不便だろう」
「でも、お風呂はこっちですし」
「シャワーは上にもある」
そう言ってベッドルームに消えてしまったから、慌てて後を追いかけた。伊織の部屋はとても広いが、自分の荷物をそこに置くなんて、そんな図々しいことをする気はなかった。
「あの、ご迷惑をかけるつもりでは……」
部屋に足を一歩踏み入れて、伊織の姿を探す。
(あれ? いない)
確かこっちに来たはずと頭を傾げたら、後ろから声がした。
「ここのスペースを空けるから」
まさかーー?と半信半疑で部屋のバスルームの手前にあるウォークインクローゼットを覗く。と、伊織がせっせと自分のスーツを移動させて場所を作っていた。
「いや、あの、そこまでしてもらわなくても」
「スーツがシワになるよ」
「う、そうですね……ありがとうございます」
手際良く1段まるまる葵のために明け渡してくれた彼に、これ以上言い返す気も失せた。大人しくハンガーにスーツを収める葵を見た伊織は、手元の時計で時間をチラリと確かめる。
「僕はこれから少し、仕事を片付けるから。好きに過ごしてくれるかい?」
「あ、はい。頑張ってください」
上機嫌で立ち去る姿を見送った葵は、残りの服の整理をはじめながらも考えずにはいられない。
(私……来てよかったのかな? 伊織さん、思ったよりずっと元気だし……)
週末も仕事に励む伊織に自分から泊まると言い出すなんてーー、もしかすると早まっただろうか……?
だけど彼は嬉しそうだったし……、今さら帰ると言えば拗ねる気もする。
それに、予備の服まで詰めさせたのは伊織なのだからと考え直した葵は、彼の言葉通り気楽に過ごすことにした。
家から持ってきたハーブやら小麦粉やらをスーツケースから取り出す。
結構な場所を取ったけど、持ってきてよかった。
「伊織さんーー、台所お借りしますね~」
両手いっぱいにそれらを抱えて階下に降りると、オーブンの吟味に取り掛かった。棚にあった説明書を熱心に読むと、早速材料を混ぜるべくボウルをキッチンの棚の奥から探し出す。
(待ってーー。もしかして……ベーキングペーパーとか、ない……よね)
うっかりしていた。
伊織はそんな台所用品など持っていないだろう。家に帰ってとも思ったが、泡立て器や木べらもいるからと、いっそ買い足すことにした。伊織には服をプレゼントされたし、食事も奢ってもらっている。お礼に葵が台所用品を揃えてあげるのも、いい考えに思えた。だって、なんでも持っていそうな伊織に、他に買ってあげられるモノなど何も思いつかない。
「ーーちょっと、買い物に出てきます」
「ああ、予備の鍵がキッチンにあるから、忘れずに持って出るんだよ。行ってらっしゃい」
上階の書斎らしき部屋でノートパソコンに向かっている姿に、一声かけてから駅の商店街に向かった。
小一時間ほどで必要なものを揃え帰ってきた葵が玄関で「お邪魔します」と小さく口の中で挨拶をすると、上階からかすかなマシン音が聞こえてくる。
これはきっと……さっき見かけたランニングマシンに違いない。そんなモノが書斎にあるのを意外に思ったが、よく食べる伊織があの体型を保っている秘密を知った気がして、葵の口元がクスリと緩む。
さあ、材料も器具も揃ったし、早速始めよう。
スマホで音楽を流すと、慣れた手つきで調理を始める。完成したボウルの中身をオーブンで焼いている間にも、香ばしい香りが部屋中に立ち広がってきた。
(はあ~、いい香りー!)
部屋に漂う刺激あるスパイスと爽快なハーブの芳香に癒されていると、不意に後ろから腰に手が回ってきた。
「いい匂いだね。何を作っているの?」
ドキン。鼓動が一瞬跳ねた次の瞬間、ときめきにも似た温かい感情が胸に溢れてきた。
「スコーンと骨付き肉の野菜煮込みです。スコーンはもう直ぐ焼けますよ」
「ものすごく美味しそうな香りだ。食欲をそそられるな」
「走ったら、お腹が空きました?」
背中にあたる体温に少し寄りかかる格好で、シャワー上がりらしい姿に笑いかける。するとタイミングよく、オーブンのタイマーが鳴りだした。
「あ、ちょうど焼けたみたいです」
出来立てが一番美味しいからと、焼き立てのスコーンをお皿に並べる。
「いろんな種類があるんだ……」
「ハーブ入りと、チーズとトマトなんかの野菜と、あと冷蔵庫にあったベーコンが入ったスコーンです」
「へえ、家で手作りなんて、初めてだよ」
嬉しそうに笑う顔を見て、作ってよかったと心から思えた。
「時間も中途半端ですし、ちょっと早めの夕食ですけど」
伊織がお腹いっぱいになるようにと作った具沢山のスープをスープ皿によそって、テーブルへと運んでいく。向かい合って座った二人は、早速ほかほかのスコーンに手を伸ばし「熱っ」と手のひらで転がしはしゃいだ。
「いつも食事を奢ってもらってばっかりなので、たまにはと思いまして」
「ーーすごい隠れスキルだな。葵がこんなに料理が上手だなんて」
スコーンをちぎると美味しそうな香りが熱気と共に匂い立つ。ふんわりした塊にふうふうと息を吹きかける伊織の瞳が踊った。
「あ~、オーブンを使った料理が得意なだけですよ。えっと、お惣菜系なんかはまだまだです」
「十分だと思うけど? 僕はトマト煮込みなんかを作るよ。でも家庭料理は壊滅なんだ」
「……そういうことでしたか。いつも朝比奈さんが和食を作るわけは」
カフェで伊織が食べるのは、一般的な家庭料理が圧倒的に多い。
「そうなんだよ。僕が作るよりよっぽど美味しいからね」と笑う顔を見ていると、葵も偏った料理分野をもうちょっとがんばって開拓しようかな……という気持ちになってきた。
「キッチンが広くて使いやすいので、料理するのが楽しいです」
「へえ? じゃあ、いつでも好きに使ったらいい」
「ふふ、ありがとうございます。ーーせっかく、これだけ整ったキッチンがあるんですから、もっと使ってあげないと」
彼の親切な言葉には、イエスともノーとも答えず誤魔化した。伊織は気にしないみたいだが、人様の台所を勝手に使うなんて、葵にはやはり厚かましいことのような気がしたから。
料理したものすべてをたいらげた伊織が「風呂が沸いてるから、入ってきたら?」と勧めてきたので、つっこまれないうちに「ごちそうさま」と手をあわせその場を離れた。
(あれ? でも、伊織さんの家でお風呂ってーー?)
けれども身体を洗った後、のんびり風呂に浸かっていると、ようやくズレた現実に葵の頭が追いつきはじめる。
先ほどは、伊織の申し出はどこまでが本気?とドキッとしてしまい、風呂を勧める言葉に躊躇せず飛びついたが……ひょっとして自分は今、キッチンを使わせてもらうより、さらにもっと大胆なことをしているのではーー?
落ち込んでいる独身男性の家で風呂に入っている意味が、いまさらながらじわじわとお湯の温度と共に全身に染みこむ。
葵の頭が一気にのぼせそうになった。
(これって、okサインを出したも同然のーーいや待って。相手はあの伊織さんだし)
女性遍歴は豊富だが、割り切った付き合いをする彼だ。そうと決まった訳では……
けど。もしもだけど。……今夜彼に求められたら?
ーー伊織は目に見えて弱っている様子を見せないが、タクシーの中では沈んでいた。健全な男性ならこんな時、慰めて欲しいと思っても不思議ではない。ましてや、伊織の場合ーー
(一晩だけも多いって……)
火照った顔を思わず、両手ですくったお湯でぬぐう。
彼のお付き合い期間は長くない。その上、葵とはそんな関係ではない。以前にそうハッキリ伊織から言われてもいる。となれば自分も一晩限りになる可能性が大だ。
……もし、そうなったらーー……?
葵が伊織に感じているこの気持ちを、事後に上手くごまかせるだろうか。
そこまで考えた時点で気づいてしまった。自分の思考のその前提が何であるのかに。
(うわぁ、私ってば嫌じゃないってーー違う。そうじゃなくて)
本当は抱いて欲しい。ーーそう思ってる……
女性関係がお盛んな不実な紳士ーーそれが伊織だ。本気になるには厄介な人だと、よくよく分かっていて。だけどそんな彼のすべてが愛おしい。帰りのタクシーでも落ち込んでる彼のそばで、実は彼を抱きしめたくてしかたなかった。これが葵の正直な気持ちだ。
ーー……ならばもういっそ。割り切れると思い込もう。
そもそも、今は恋愛など考えられないと言ったのは、葵だ。
焦りのような落ち着かない気分に囚われた葵は、突如湯船から立ち上がった。
ざばあと派手な水音がした後、クラリと立ちくらみが襲ってくる。……どうやら、思ったよりずいぶん長い時間お湯に浸かっていたらしい。
湯栓を引っ張りお湯がみるみる減っていくのを、ぼんやり眺めつつ湯船の縁に手をかけ、ゆっくり風呂を後にした。
ドキドキする胸を抱えて葵が居間に戻ってみれば、音楽が流れてくる。
「伊織さん、お風呂いただき……あれ? この曲ってーー」
これはーー初めて伊織に出会った晩に、彼がピアノで弾いていた曲だ。
……もしかすると、これがオリジナルなのだろうか? ギターとピアノが奏でるメロディーが部屋いっぱいに溢れて、思い出すのも切ない旋律に葵の胸がキュウンと締め付けられた。
みれば伊織はソファーでうたた寝をしている。艶やかな黒髪が少し乱れて額にかかり、まつげを閉じたそのあまりにも無防備な姿に見惚れる葵の鼓動も乱れてきた。
静かに深呼吸をすると、その肩に手を掛ける。
「伊織さん。疲れているならーーベッドへ行った方がよくありませんか?」
「ん~、風呂は済んだかい?」
「はい。いただきました」
伊織は寝起きでぼんやりした様子だ。
「寝るなら、ちゃんとベッドに入らないと。体調を崩しますよ。二階へ上がりますか?」
このビルは三階建てだが、玄関と居間のあるこの階は大きな引き戸からテラスへと出れるようになっている。そのせいか、感覚的につい一戸建てにいるような気がする葵は、上階を知らず知らず二階と呼んでいた。
音楽を止めた伊織が窓を見上げる。
「……そうだね。時間的には早いけど、上ろうか?」
夕焼けが消えて、暗い紺色に染まっているのを認めた伊織は瞬きを数回するとゆっくり頷いた。
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