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第二十二話 本
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歩いていくと、書斎室が見つかった。
金色に輝くドアプレートにアイヴァン殿下の名前が彫られている。殿下の書斎室だ。
何度かノックすると、「入れ」といういつもの低い声が聞こえた。
「失礼します」
中に入ると、まぁ殿下の書斎室だなぁというように書類が散らばりまくっていた。飾られている時計や調度品にも埃がかかっている。
殿下は正面の椅子に座って、机にシルフ地区の地図を広げていた。
銀色の睫毛が伏せられて、眸が地図を追っている。
それだけで俺の胸が高鳴るのは、少しおかしいだろうか。
「なんの用だ?」
殿下が顔を上げずに言った。
正直殿下に会いたかっただけで、何をしにきたわけでもない。
答えに迷っていると、ちょうど本棚が目に止まった。
「えーっと、本を読みたくて」
「そうか。好きなものを読め」
高価な本でも、殿下は躊躇いなく俺に貸してしまうんだな……。
本棚は左右天井ギリギリまで置かれていて、ぎっしり本が詰まっていた。
時々空いている場所にランプが置かれている。
「あれ……?」
左の本棚を見て、ある違和感に気づいた。
右にある本棚に行って違和感を確かめてみると、やっぱりそうだ。
この書斎室には、どれも四大精霊契約者の祖先の本や、セルヴ殿下たちが出した本しかない。
本が高価なもので読んだことがないからわからなかったけど、もしかしてこれって……。
「殿下、一般の方が書いた書物はないんですか?」
「一般? 本は高価なものだから、四大精霊契約者しか書くことはできないが」
……文化が進んでいないのって、これじゃないか?
差別があるのも、これが原因じゃないんだろうか。
一般の人たちが差別に訴えたり何かを発明した本を出せば、国は変わっていくんじゃないか?
俺が、『日本』にあった文化を取り入れていけば……もしかしたら……。
「殿下!」
「なんだ。いきなり大声を出すな」
「俺、この国に伝えたいことがあるんです。本を書くことはできませんか?」
殿下がは? というように呆然と目を見開いた。
「どうした。何かとんでもないことでも思いついたのか」
「い、いや、その……夢で見たんです。それで、こういうのがあれば便利だなって思って」
「例えば」
「例えば……電気や化学製品で乗り物が作れたら面白くないですか? きっと馬車より便利なはずです。あとスマホ……は難しいよな……料理でも、魚を捌いて生で食べるのも美味しいと思うんですよ。それから今起きてる時事問題とかを報道するために、新聞だけじゃなくてみんなに伝えられる機械を作ったりとか……」
「ふむ……」
殿下は地図から目を離して俺を見る。
俺の説明が下手だったから、多分二割も伝わっていないと思う。だけど殿下は真剣に顎に手をあて唸りながら考えている。
「本を作りたいなら、四大精霊契約者に許可を取らなければいけないはずだ。最も、取れた者はいないが」
「え、いいんですか」
「もう一度言う。許可を取れた者はいない。だが、頼んでみるだけ価値はあるだろう」
「……ありがとうございます!」
俺はすぐに書斎室を飛び出し、王宮を早足で歩き回った。
金色に輝くドアプレートにアイヴァン殿下の名前が彫られている。殿下の書斎室だ。
何度かノックすると、「入れ」といういつもの低い声が聞こえた。
「失礼します」
中に入ると、まぁ殿下の書斎室だなぁというように書類が散らばりまくっていた。飾られている時計や調度品にも埃がかかっている。
殿下は正面の椅子に座って、机にシルフ地区の地図を広げていた。
銀色の睫毛が伏せられて、眸が地図を追っている。
それだけで俺の胸が高鳴るのは、少しおかしいだろうか。
「なんの用だ?」
殿下が顔を上げずに言った。
正直殿下に会いたかっただけで、何をしにきたわけでもない。
答えに迷っていると、ちょうど本棚が目に止まった。
「えーっと、本を読みたくて」
「そうか。好きなものを読め」
高価な本でも、殿下は躊躇いなく俺に貸してしまうんだな……。
本棚は左右天井ギリギリまで置かれていて、ぎっしり本が詰まっていた。
時々空いている場所にランプが置かれている。
「あれ……?」
左の本棚を見て、ある違和感に気づいた。
右にある本棚に行って違和感を確かめてみると、やっぱりそうだ。
この書斎室には、どれも四大精霊契約者の祖先の本や、セルヴ殿下たちが出した本しかない。
本が高価なもので読んだことがないからわからなかったけど、もしかしてこれって……。
「殿下、一般の方が書いた書物はないんですか?」
「一般? 本は高価なものだから、四大精霊契約者しか書くことはできないが」
……文化が進んでいないのって、これじゃないか?
差別があるのも、これが原因じゃないんだろうか。
一般の人たちが差別に訴えたり何かを発明した本を出せば、国は変わっていくんじゃないか?
俺が、『日本』にあった文化を取り入れていけば……もしかしたら……。
「殿下!」
「なんだ。いきなり大声を出すな」
「俺、この国に伝えたいことがあるんです。本を書くことはできませんか?」
殿下がは? というように呆然と目を見開いた。
「どうした。何かとんでもないことでも思いついたのか」
「い、いや、その……夢で見たんです。それで、こういうのがあれば便利だなって思って」
「例えば」
「例えば……電気や化学製品で乗り物が作れたら面白くないですか? きっと馬車より便利なはずです。あとスマホ……は難しいよな……料理でも、魚を捌いて生で食べるのも美味しいと思うんですよ。それから今起きてる時事問題とかを報道するために、新聞だけじゃなくてみんなに伝えられる機械を作ったりとか……」
「ふむ……」
殿下は地図から目を離して俺を見る。
俺の説明が下手だったから、多分二割も伝わっていないと思う。だけど殿下は真剣に顎に手をあて唸りながら考えている。
「本を作りたいなら、四大精霊契約者に許可を取らなければいけないはずだ。最も、取れた者はいないが」
「え、いいんですか」
「もう一度言う。許可を取れた者はいない。だが、頼んでみるだけ価値はあるだろう」
「……ありがとうございます!」
俺はすぐに書斎室を飛び出し、王宮を早足で歩き回った。
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