悪魔と契約した少年は、王太子殿下に恋をする

翡翠蓮

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※R-18 第二十六話 怒気

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 柔らかい殿下の唇が、啄むように俺の唇に触れてくる。 
 ……怒ってる? 
 ジェラートを食べたときのことを思い出した。 
 そうだ、あのときだって、突然キスをしてきた。ほんのりミルクティーの味がして、ちょっと冷たかったのに、今はミルクティーの味もしないし、殿下の唇は熱い。 
 一瞬じゃなくて、長い口づけ。 
 これは、怒りから? それとも……と、殿下の熱い体温で勘違いしてしまう。 
「で、でんか、ちょっと待って……んっ……」 
「待たない」 

 息ができなくて苦しいのに、殿下は何度も口づけを交わしてくる。 
 手で殿下の胸板を押しても、ぴくりとも動かなくて全然意味がなかった。 
 何度も柔らかいものが重なってきて、唇が溶けてしまいそうだ。 
 次第に深い口づけに変わっていって、俺の口内に殿下の舌が入り込んでくる。 

 殿下!? どうしてこんなことを!? 
 口に出したくても息をするのに精一杯で全然言えない。 

「ん、んん……っ、んぅ……」 

 自分の知らない声が出て、恥ずかしさに耳をふさぎたくなった。
 歯列や上顎、舌、全てを蹂躙されて、だんだん身体が熱くなってくる。 
 苦しいのに、気持ちよさの方が勝ってしまって本気で抵抗することを忘れてしまう。 
 俺の顎から唾液が一筋垂れる。でも、全然殿下は気にしないでずっと俺に口づけていた。 

 少しだけ目を開くと、欲を孕んだ殿下の眸が見えた。 
 銀色の睫毛が今まで長くて綺麗だとだけ思っていたのに、色気が滲み出ているように感じてしまう。 

 ぼうっとしながらキスをしていると、いつの間にか自分の服を脱がされていることに気づいた。 

「殿下! 何して……」 
「これから何をするかくらいわかっているだろう」 

 何をするかくらいわかっているだろうって……。 
 殿下はいいのか!? こんなことをしても! 

「同性同士で、こんなことしたら……大変なことになりますよ」 

 俺たちは悪魔契約者同士じゃない。 
 なのに繋がってしまうなんて、バレたら間違いなく俺は離島行きだし、殿下だって継承者の位を下げられるだろう。 

「別に誰にも見つからなければいいだろう」 
「で、でも……あ……っやだ……!」 

 はだけた服から覗く胸に、殿下の指先がそっと触れる。 
 転がされたり摘ままれたりして、そこから電流みたいに快感が走ってくる。 
 もう片方の胸は口に含まれて、湿った舌で転がされ、温かさと気持ちよさでどうにかなりそうだ。 
 だけど胸の飾りだけでは体内に快感がたまっていくだけで、それを放出することができない。 
 もどかしくて足を擦り合わせたとき、殿下が俺の口にもう一度キスをした。 

 殿下は口づけているうちに、俺のズボンを下着ごと下ろす。 
 露わになった俺のものは既に先走りを零していて、シーツにぽたりと落ちた。 

「痛かったら言え」 

 そう言って殿下は髪を耳にかけ、自分の下着も下ろした。 
 反り立つ殿下のものは、俺の中に無事入るとは思いにくい。 
 潤滑剤を塗ったあと、後孔にぴたりとあてられたとき、俺の心は恐怖と幸せとこの後の絶望を予想してぐちゃぐちゃになった。 

 本当に自分の中に入るのだろうかという恐怖。 
 殿下と繋がれる幸せ。 
 そして、これが世間にバレたらおしまいだという絶望。 

 繋がりたい。でも繋がりたくない。 
 そんな俺の想いは殿下には伝わらなくて、ゆっくりと自分の中に殿下のものが入ってきた。 

「うっ……」 

 中を押し広げられる違和感に俺が呻き声を上げると、殿下の動きが止まる。 
 そのまま俺に覆いかぶさり、一瞬だけ唇が重なった。 

「ゆっくり息をしろ」 
「あ、……っ、はい……」 

 殿下に言われたとおりゆっくり息を吸って吐いていたら、幾分か楽になった。 
 そのまま少しずつ殿下の腰は進んでいく。中の違和感も徐々に消えていって、やがて全て入った。 

 ……俺、本当に殿下と繋がってる。 

「……動くぞ」 
「わか、りました……んっ、あ、はぁ……っ」 

 緩慢な抽挿が続いて、殿下が我慢しているのが伝わってくる。 
 気遣ってくれているのだろうか。さっきまで、強引だったのに。殿下の考えていることがわからない。 

 殿下はどんな気持ちで俺と繋がっているのだろう。 
 俺に嫌なことを言われたから、その怒りで? 俺のことがあまり好きじゃないから? 単純な性欲処理? 

 眉を寄せて息を零す殿下の眸は、少し揺れていて、蝋燭の灯りで煌めいて綺麗だ。 
 だけど、何かに怒っているような、何かにひどく機嫌を悪くされたような色が滲んでいる。 
 やっぱり、これは八つ当たりなのだろうか。 

 ……当然か。四大精霊契約者の継承者の殿下が、同性愛者なわけがない。

「んっ、ん……んぁ!?」 

 不意に、身体全てに快感が走った。 

「ここか……?」 
「え……っ、あっん……やっ、で、でんか……、ああぁっ!」 

 あるところを殿下に突かれるたびに、今までにない快楽が全身を駆け巡る。 
 ずんずんと少し奥を擦られて、気持ちよさで目尻に涙が滲んだ。 

「でんか……っ、でん……んんっ」 

 快さにわけがわからなくなって殿下の名前を呼ぶと、応じるようにキスをしてくれた。 
 唇を舌でノックされ、開くと舌が入ってくる。 
 舌を舌で絡めとられて、中をかき回すように突かれて、息ができない。 
 とんとんと殿下の背中を叩いて息ができないことを知らせると、すぐに離してくれた。 
 殿下も短く息をしていて、切なく眉を寄せている。 

「いいか……俺の幸せは、他人が決めることじゃない」 
「え……?」 
「俺が決めることだ」 

 吐息混じりで言った殿下の言葉は、ずんと胸奥深くに刺さった。 
 俺が、勝手に殿下の幸せを決めつけるような真似をしたから、怒っているんだ。 
 理由がなんとも殿下らしくて、胸が高鳴った。 

 初めて殿下に会ったときもそうだった。 

 ――見事な黒髪をしているな。 
 ――俺が誰と話そうと、勝手だろう。 

 そうだ、あのときからずっと、まっすぐで、自分の意志が強くて……。 
 面倒くさがりで、仕事もサボってばかりだけど、俺は殿下のそういう芯の強いところが好きなんだ。 

「あぁっ……んっ、あっ! はぁ……っ」 

 再び抽挿が繰り返される。 
 だんだんと快感が迫りあがってきて、もう我慢ができそうにない。 

「殿下、もう……っ、い、いっちゃいます……っ」 
「ああ。いいよ。俺ももうすぐ……」 
「んっ……あっあっあっ……ああぁぁ……っ!」 

 果てることにしか集中できなくて、殿下の顔をあまり見れなかったけど、少しだけ微笑んでいるのが見えた気がした。 
 精液が自分の腹に飛び散ったときには、殿下も中に放っていた。 
 温かいものが自分の中にあるのがわかる。 

 ああ……俺たちが、男と女だったら良かったのに。 
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