婚約破棄されて田舎に飛ばされたのでモフモフと一緒にショコラカフェを開きました

翡翠蓮

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第2話 婚約破棄されて万々歳です

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  お母様が亡くなり、私に残されたのはお父様とメイド、ターメルク殿下だけ。
  お父様はいつもむすっとして口を真一文字に結び、非常に口数が少ない人だった。
  私と食事をしているときも、
 
「……」
 
  ターメルク殿下が私たちの邸宅に来てくださったときも、
 
「……」
 
  休日の日も、
 
「……」
 
  という感じで、全然喋ってくれない。
    メイドもマナーの指摘ばかりで最低限の会話しかしてくれず、殿下も殿下で自慢話ばかりだった。
    例えば。
 
「俺は乗馬が上手いんだ。お前なんかすぐに振り落とされる」
 
    とか、
 
「俺の魔術はトップクラスレベルだ。お前のゴミみたいな魔力とはわけが違う」
 
    とか、
 
「お前の文字は汚いな。俺の文字を真似して書いてみろ」
 
    とか。
    自分がいかに私よりすごいかの自慢話ばかり。殿下の言うことなのだから、ちゃんと聞いてあげないと、と最初は思っていたが、どうやら話を聞かなくても「まぁ、それはすごいですね」と適当に褒めておけば殿下は機嫌を取り戻してくれるらしく、私は殿下をたくさん褒めていた。
 殿下は私を下に見ていたが、他の令嬢と話したところは見たことがなかった。
 
 でも、シュメード学院の高等部に上がったとき。
 私たちのクラスに男爵令嬢のベルローズが現れた。
 
 今まで同じクラスにならなかったため知らない令嬢だったが、授業でもツンとした態度を取っていて、特に私に冷たい。
 私に冷たいというか、殿下と話しているときの私への視線が痛い。
    氷のような視線で私を見ているのが、振り向かなくてもわかるのだ。
 
 そして、いつしかベルローズは殿下に近づくようになった。
 殿下と話すときは満面の笑み。口元に手を添えて、殿下の言うことになんでもふふふと笑っている。
 
 ベルローズは暇があれば殿下と話していた。
 昼休みも殿下、授業の休み時間も殿下、授業が始まる前の朝の時間も殿下。
 私が話しかけようとすると、ドン! と肩をぶつけてよろめいた隙に「殿下~♡」と話しかけにいく。
 
 ああ、なるほどね、と思った。
 
 ベルローズは殿下を私から取り上げたいんだ。
 そして、殿下の婚約者になりたいんだ。
 でもそれを察することができたとき、私はなんにも思わなかった。
 
 だって殿下だってまんざらでもない顔してるから。
 
 しかも、ベルローズと殿下の会話が聞こえてくる。ほとんど私の悪口なのだ。
 
「ベルローズは品があって優しい! なんで俺はあんな婚約者がいるんのか、不思議でたまらない。ああ、ベルローズが婚約者だったら……」
 
 なんて言葉、何度聞いたことか。
 その言葉にベルローズは、私に聞こえるようにわざと大きな声で「シェイラ様ってそんなお方でしたの? これではターメルク殿下がおかわいそう……」と答えている。
 それが繰り返されるうちに、思った。
 
 あんな頭が回らない馬鹿殿下には、あなたのような馬鹿令嬢の方がお似合いですけど?
 
 
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