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第5章 交易都市ソレイユ
第135話 同じ言葉でも意味が違う……
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ズイの街を出発してから3週間後、ようやく俺たちは、お昼頃に目的地である【ミヤジノフ】へと到着した。
ここの名物は、“焼きルドーヌ”と言うらしく、ルドーヌを焼いたもので、どんな物かは食べてみないことにはわからないが、ガルフさん曰く、とてもオススメらしい。
料金も安くて、屋台によってそこそこ味が違うらしく、その中で自分好みの味を探すのだそうだ。
料理屋でも出されているそうだが、その時々で味が微妙に変わってしまう屋台の方が、楽しみ甲斐があるそうなので、俺も屋台を中心に巡ることにした。
宿屋で部屋の手配をした後は、早速屋台巡りの話になり、俺はティナさんとニーナさんの3人で回ることになった。
「それにしても、3人で回る必要があったんですか?」
「いいじゃない。食べ歩きデートみたいなものよ」
「デート」
食べ歩きがデートに入るのかどうかは疑問だが、とりあえず最初の屋台へと向かい、焼きルドーヌを注文した。
目の前で調理されていく様を見ていると、材料を取り出したので、それを見てある点に気づいた。
そう……それは麺だ。野菜や肉を焼きながらそこへ麺を投入して、更に焼き上げていく。
仕上げにソースを絡ませて、出来上がったそれは、誰がどう見ても焼きそばだった。
まさか異世界に、焼きそばがあるとは思いもしなかった。出来上がったものは、木皿に乗せられて渡された。屋台食いのルールとして、この木皿は買ったお店に返却するのだそうだ。
それにより容器の消費を抑えて、コストダウンを図っているらしい。まぁ、この世界に消費しても痛くない、安いプラ容器なんてないから、当然といえば当然の判断だった。
銅貨で3人分の支払いを済ませたら、近くのベンチに座り、早速焼きルドーヌを食べてみる。
懐かしい味だ……ソースのコクが麺や具に絡み合い、少しピリッとした香辛料の隠し味も中々にいいものだ。
「美味しいですね……」
「そうね。ちょっと、お酒が欲しくなってくるかも」
「ピリッとしたのが苦手」
どうやらニーナさんは、辛い物が苦手らしい。ティナさんは、このピリッと感がお酒に合うと思ったのだろう。
俺としてはピリッとしたのよりも、甘みのある方が好みだが、ここに滞在している期間中に、是非とも自分好みの味に巡り会いたいものだ。
それからもう1軒屋台を巡ると、さすがに腹が膨れたので、今日の屋台巡りは終了となる。
「時間が余りましたが、どうするんですか?」
「んー……前に言ってた、私たちのステータスでも見に行こうか?」
「俺は見なくてもいいのですが」
「興味ない?」
不安げにケンの様子を窺ってくるニーナに対して、ティナは特に気にした風でもなく話を進める。
「ケン君が興味なくても、見せるつもりだよ。これは、私たちからの誠意ってところかしら」
「何に対しての誠意なんですか?」
「ケン君の強さを暴いたことよ。普通ならいくらパーティーといえど、根掘り葉掘り聞くのは、マナー違反なんだよ。仲がいいなら別だけどね」
「でも、行動を共にする以上、相手の実力は、知っておかないといけないのでは?」
「それでも、“このくらいならできるよ”って、程度で終わらせるのよ。それに対してケン君は、ほとんど話しちゃったでしょ? だからよ」
「俺としては、質問されたから返答しただけなんですけど」
「もう、相変わらず強情ね。いいから行くわよ」
ティナから強引に手を引っ張られると、ケンは教会へと連れていかれた。教会に到着したら、寄付金を渡し3人で別室へと入る。
「ティナさんとニーナさんは、別々じゃないんですか?」
「こっちの方が手っ取り早いでしょ? それに私たちは、将来ケン君のお嫁さんになるつもりなんだから、いわば家族予備群よ。家族に隠し事はいけないわ」
「それって暴論じゃないですか。ニーナさんはいいんですか?」
「ティナになら構わない」
「それじゃあ、私からね」
ティナが魔導具に触れると、正面にステータスが表示された。
ティナ
女性 17歳 種族:エルフ
職業:Bランク冒険者
状態:恋煩い(初恋)
Lv.38
HP:360
MP:270
筋力:320
耐久:300
魔力:230
精神:210
敏捷:190
スキル
【身体強化 Lv.3】【弓術 Lv.5】
【気配探知 Lv.4】【気配隠蔽 Lv.3】
【魔力操作 Lv.1】
魔法系統
【風魔法 Lv.3】【光魔法 Lv.5】
加護
世界樹の加護
称号
森の守護者
慈愛
エロテロリスト
ティナさんのステータスを覗くと、加護に凄いものを発見したが、それよりも、見過ごせないものがあるのに気づいた。
「ティナさん……」
「何かしら?」
「この【エロテロリスト】って、嫌な予感しかしないんですけど」
「それはねぇ、ケン君にエッチなイタズラをしてたらついてたみたい。効果はね、それに準ずる行動をすると、ケン君がムラムラしちゃうの」
「――!」
もしかしてタミア以降のムラムラは、ティナさんが原因だったのか!? てっきり自分の欲望が制御できていなくて、戒めなければと思っていたのに。
「あと、【慈愛】もケン君に対してだよ。ケン君と出会うまでは、称号は1つしかなかったの」
「まぁ、それについては、何となく予想はつきましたので」
ティナとケンがステータスについて話していると、ニーナが前へ出てきて自己主張する。
「次は私の番」
ティナが魔導具から離れ、代わりにニーナがそこに手を乗せた。
ニーナ
女性 17歳 種族:人間
職業:Bランク冒険者
状態:恋煩い(初恋)
Lv.36
HP:260
MP:340
筋力:220
耐久:200
魔力:300
精神:280
敏捷:120
スキル
【杖術 Lv.2】【魔力探知 Lv.3】
【魔力操作 Lv.1】
魔法系統
【火魔法 Lv.4】【水魔法 Lv.4】【土魔法 Lv.4】
加護
なし
称号
人見知り
片言の使い手
ギャップ萌え
ニーナさんのステータスには、明らかに俺が原因と思われるものがあった。
「ニーナさん……」
「何?」
「この【ギャップ萌え】は、多分俺のせいです……」
「ケンが私を好きになった証。逆に嬉しい」
あの出来事は、2人だけの秘密なので、明らかに俺が原因だろう。申し訳なくもあるが、ニーナさんが嬉しいならそれで良しとしよう。
「そういえば、ニーナさんは【魔力操作】のスキル覚えたんですね。何故か教えていない、ティナさんも持っていましたけど」
「頑張った」
「私はニーナが面白いことしてるから、教えて貰っただけよ」
「Lv.1なら効果は微々たる程度ですけど、めげずに頑張ってください」
「頑張ってレベル上げる」
「私もニーナに負けないように頑張るわね。暇な時とか、結構時間潰せたりするし」
「それでは、外に出ましょうか?」
ステータス確認という一大イベントが終わり、ケンたちは教会の外へと出て行ったのだった。
宿屋に戻ってきて部屋へ入ると、ニーナさんがおもむろに話しかけてきた。
「次は何をすればいい?」
「次とは?」
「【魔力操作】の修行」
その言葉にティナも反応し、ケンのところへと寄ってくる。
「あっ、私もそれを知りたい。魔力が流れているところまでは、わかるようになったんだけど、ここから先は、どうしたらいいのかわからなかったのよね」
「魔力がわかるようになったなら、次はその魔力の移動ですね」
「移動?」
「流れてるから、移動してるんじゃないの?」
「えぇーと、意図的にタンクから取り出した魔力を、どこかに移動させるんです」
「難しい……」
「どこかってどこ?」
ティナとニーナは理解が追いつかず、ケンは実演することにした。
「お手本を見せますので、ここをちょっと見ていてください」
ケンは人差し指を立てると、そこへ魔力が行くように操作する。すると、次第に人差し指の先が、淡く光り出して魔力が可視化出来るようになった。
「ケン君、すごーい!」
「初めて見た」
「これは2人にも目に見えてわかるように、魔力を可視化させるために魔力密度を上げていますので、2人にはまだ出来ませんが、体内の魔力を感知できるようになっていますので、目には見えなくとも感じることはできると思います。とりあえず、手のひらに魔力が移動できるように、頑張ってみてください」
「やってみるわ!」
「頑張る」
2人は、それから手のひらを見つめて、唸りながら一所懸命に移動させようとしていたが、中々上手くはいかないようであった。
「ケン君、これってコツとかないの?」
「コツですか? 人に対して教示したのは初めてなので、自分のコツが他の人にもコツとなるのかわかりません」
「ちなみにケン君のコツは?」
「シュッと取り出して、ギューンとします」
「それって、天才肌の人が言うセリフよね?」
「凡人には辛い」
「“考えるな、感じろ!”です」
「「無理!」」
2人が即否定した事で、今まで感覚的に、魔法の修練をしてきたケンにとって、初めて人にものを教える難しさを理解した。
「うーん……ちょっと試してみますか?」
「何を試すの?」
「魔力移動です」
「さっきやったじゃない」
「ティナさんの体を使って、俺が出来るか試すんです。とりあえず、ベッドに横になって楽にしてください。」
ティナは言われた通りベッドに横になり、ケンはティナの鳩尾に手を当てると、その行為にティナが反応した。
「痛くしないでよ?」
「魔力を移動させるだけなので、痛みはないですよ」
ケンはティナの体越しに、魔力を感知するため意識を集中させた。すると、ティナの体内にある魔力の塊を見つける。
「これかな?」
「何かわかったの?」
「ティナさんの魔力タンクですよ」
「凄い」
「ちょっと、俺の魔力を混ぜつつ移動させてみますので、ティナさんは魔力をちゃんと感じててくださいね」
そこからケンは、ティナのタンクから魔力を取り出し、自分の魔力を混ぜ合わせながら、意図的に移動させ始める。
「……あっ……」
ティナは体を襲う初めての感覚に身悶え始めるが、ケンは失敗しないように集中しているため、気づかずに魔力移動を続けた。
「ん……ダメ……」
「……ちょ……」
「待って……」
「やっ……」
「……ィ……クッ――!」
ケンはティナの魔力を一通り体内循環させると移動をやめた。一方ティナは頬を染め、体を上気させており呼吸を荒くしていた。
2人の様子を見ていたニーナは、ティナと同様に頬を染めて俯いていた。
「ティナさん、ちゃんと感じましたか?」
ケンの言葉に、呼吸を整えたティナは、ジト目を向けて答えた。
「感じるの意味が違ったわ……」
「えっ? 感じませんでした?」
「別の意味では、しっかりと感じさせられたわね」
「別の意味?」
ケンは、ティナが言わんとしていることが理解できないために、聞き返していた。
「さぁ、次はニーナの番よ」
ケンの疑問に答えるでもなく、ティナはニーナの手を引き、ベッドに寝かせる。
「わ……私は……」
ニーナは先程の惨状(?)を目の当たりにしているので、断ろうとしたのだが、ティナがそれを許さなかった。
「ニーナ、たっぷりと可愛がってもらいなさい」
ティナの有無を言わせぬ言動に、ニーナは諦めの境地に入った。
「さ、ケン君。ニーナにもしてあげて」
ケンはどこか腑に落ちないが、やり方はさっきティナで試したので、問題ないと割り切り、作業を開始することにした。
「わかりました」
ケンがニーナの鳩尾に手を当てると、ニーナはビクッと体を震わせた。
「ニーナさん、痛くないから大丈夫ですよ。それでは始めますので、ちゃんと感じてくださいね」
ティナの時同様、ニーナの魔力タンクを感知すると、ケンは移動を開始した。
「ッ――!」
ニーナも体を襲う初めての感覚に身悶え始めるが、ケンは先程と同様に集中しているため、そのまま魔力移動を続けた。
「……っ……」
「がまん……」
「……でき……ない」
「……あっ……あっ……」
「……ンン――!」
ケンは、ニーナの魔力を一通り体内循環させると移動をやめた。ニーナは、体を上気させて頬を染めており、呼吸が荒くなっていた。
2人の様子を見ていたティナは、ニーナに対して、してやったりとニヤニヤしているのだった。
「どうでしたか? 感じました?」
呼吸を整えたニーナは静かに答えた。
「……感じすぎた」
「ティナさんの時は、何か腑に落ちない感じがしましたが、ニーナさんはちゃんと感じたんですね」
「ティナと同じ」
「えっ? 同じ……?」
その言葉にケンは混乱するのだった。そんなケンに後ろからティナが声をかける。
「私もニーナも気持ちよくなったことだし、お風呂に行かせてもらうわね」
「ん? 気持ちよく……?」
「ケン君、1回じゃまだ感覚が掴めないから、また今度同じ様にしてね。その時はニーナも一緒よ?」
「うぅ……」
ケンが未だに状況が掴めていない中、2人は入浴へと向かった。残されたケンは、やはり腑に落ちない感じがしたが、1回で掴めなかったのなら仕方がないかと、次に頼まれた時も、同様にしてあげようと思うのであった。
かくして、ケンからされる魔力移動という、新たな快感を覚えたティナとニーナは、これから先も何かとケンにオネダリして、やってもらうのだった。
ケンがこの行為の副次的作用で、相手に快感を感じさせていることに気づくのは、まだ先のことである。
ここの名物は、“焼きルドーヌ”と言うらしく、ルドーヌを焼いたもので、どんな物かは食べてみないことにはわからないが、ガルフさん曰く、とてもオススメらしい。
料金も安くて、屋台によってそこそこ味が違うらしく、その中で自分好みの味を探すのだそうだ。
料理屋でも出されているそうだが、その時々で味が微妙に変わってしまう屋台の方が、楽しみ甲斐があるそうなので、俺も屋台を中心に巡ることにした。
宿屋で部屋の手配をした後は、早速屋台巡りの話になり、俺はティナさんとニーナさんの3人で回ることになった。
「それにしても、3人で回る必要があったんですか?」
「いいじゃない。食べ歩きデートみたいなものよ」
「デート」
食べ歩きがデートに入るのかどうかは疑問だが、とりあえず最初の屋台へと向かい、焼きルドーヌを注文した。
目の前で調理されていく様を見ていると、材料を取り出したので、それを見てある点に気づいた。
そう……それは麺だ。野菜や肉を焼きながらそこへ麺を投入して、更に焼き上げていく。
仕上げにソースを絡ませて、出来上がったそれは、誰がどう見ても焼きそばだった。
まさか異世界に、焼きそばがあるとは思いもしなかった。出来上がったものは、木皿に乗せられて渡された。屋台食いのルールとして、この木皿は買ったお店に返却するのだそうだ。
それにより容器の消費を抑えて、コストダウンを図っているらしい。まぁ、この世界に消費しても痛くない、安いプラ容器なんてないから、当然といえば当然の判断だった。
銅貨で3人分の支払いを済ませたら、近くのベンチに座り、早速焼きルドーヌを食べてみる。
懐かしい味だ……ソースのコクが麺や具に絡み合い、少しピリッとした香辛料の隠し味も中々にいいものだ。
「美味しいですね……」
「そうね。ちょっと、お酒が欲しくなってくるかも」
「ピリッとしたのが苦手」
どうやらニーナさんは、辛い物が苦手らしい。ティナさんは、このピリッと感がお酒に合うと思ったのだろう。
俺としてはピリッとしたのよりも、甘みのある方が好みだが、ここに滞在している期間中に、是非とも自分好みの味に巡り会いたいものだ。
それからもう1軒屋台を巡ると、さすがに腹が膨れたので、今日の屋台巡りは終了となる。
「時間が余りましたが、どうするんですか?」
「んー……前に言ってた、私たちのステータスでも見に行こうか?」
「俺は見なくてもいいのですが」
「興味ない?」
不安げにケンの様子を窺ってくるニーナに対して、ティナは特に気にした風でもなく話を進める。
「ケン君が興味なくても、見せるつもりだよ。これは、私たちからの誠意ってところかしら」
「何に対しての誠意なんですか?」
「ケン君の強さを暴いたことよ。普通ならいくらパーティーといえど、根掘り葉掘り聞くのは、マナー違反なんだよ。仲がいいなら別だけどね」
「でも、行動を共にする以上、相手の実力は、知っておかないといけないのでは?」
「それでも、“このくらいならできるよ”って、程度で終わらせるのよ。それに対してケン君は、ほとんど話しちゃったでしょ? だからよ」
「俺としては、質問されたから返答しただけなんですけど」
「もう、相変わらず強情ね。いいから行くわよ」
ティナから強引に手を引っ張られると、ケンは教会へと連れていかれた。教会に到着したら、寄付金を渡し3人で別室へと入る。
「ティナさんとニーナさんは、別々じゃないんですか?」
「こっちの方が手っ取り早いでしょ? それに私たちは、将来ケン君のお嫁さんになるつもりなんだから、いわば家族予備群よ。家族に隠し事はいけないわ」
「それって暴論じゃないですか。ニーナさんはいいんですか?」
「ティナになら構わない」
「それじゃあ、私からね」
ティナが魔導具に触れると、正面にステータスが表示された。
ティナ
女性 17歳 種族:エルフ
職業:Bランク冒険者
状態:恋煩い(初恋)
Lv.38
HP:360
MP:270
筋力:320
耐久:300
魔力:230
精神:210
敏捷:190
スキル
【身体強化 Lv.3】【弓術 Lv.5】
【気配探知 Lv.4】【気配隠蔽 Lv.3】
【魔力操作 Lv.1】
魔法系統
【風魔法 Lv.3】【光魔法 Lv.5】
加護
世界樹の加護
称号
森の守護者
慈愛
エロテロリスト
ティナさんのステータスを覗くと、加護に凄いものを発見したが、それよりも、見過ごせないものがあるのに気づいた。
「ティナさん……」
「何かしら?」
「この【エロテロリスト】って、嫌な予感しかしないんですけど」
「それはねぇ、ケン君にエッチなイタズラをしてたらついてたみたい。効果はね、それに準ずる行動をすると、ケン君がムラムラしちゃうの」
「――!」
もしかしてタミア以降のムラムラは、ティナさんが原因だったのか!? てっきり自分の欲望が制御できていなくて、戒めなければと思っていたのに。
「あと、【慈愛】もケン君に対してだよ。ケン君と出会うまでは、称号は1つしかなかったの」
「まぁ、それについては、何となく予想はつきましたので」
ティナとケンがステータスについて話していると、ニーナが前へ出てきて自己主張する。
「次は私の番」
ティナが魔導具から離れ、代わりにニーナがそこに手を乗せた。
ニーナ
女性 17歳 種族:人間
職業:Bランク冒険者
状態:恋煩い(初恋)
Lv.36
HP:260
MP:340
筋力:220
耐久:200
魔力:300
精神:280
敏捷:120
スキル
【杖術 Lv.2】【魔力探知 Lv.3】
【魔力操作 Lv.1】
魔法系統
【火魔法 Lv.4】【水魔法 Lv.4】【土魔法 Lv.4】
加護
なし
称号
人見知り
片言の使い手
ギャップ萌え
ニーナさんのステータスには、明らかに俺が原因と思われるものがあった。
「ニーナさん……」
「何?」
「この【ギャップ萌え】は、多分俺のせいです……」
「ケンが私を好きになった証。逆に嬉しい」
あの出来事は、2人だけの秘密なので、明らかに俺が原因だろう。申し訳なくもあるが、ニーナさんが嬉しいならそれで良しとしよう。
「そういえば、ニーナさんは【魔力操作】のスキル覚えたんですね。何故か教えていない、ティナさんも持っていましたけど」
「頑張った」
「私はニーナが面白いことしてるから、教えて貰っただけよ」
「Lv.1なら効果は微々たる程度ですけど、めげずに頑張ってください」
「頑張ってレベル上げる」
「私もニーナに負けないように頑張るわね。暇な時とか、結構時間潰せたりするし」
「それでは、外に出ましょうか?」
ステータス確認という一大イベントが終わり、ケンたちは教会の外へと出て行ったのだった。
宿屋に戻ってきて部屋へ入ると、ニーナさんがおもむろに話しかけてきた。
「次は何をすればいい?」
「次とは?」
「【魔力操作】の修行」
その言葉にティナも反応し、ケンのところへと寄ってくる。
「あっ、私もそれを知りたい。魔力が流れているところまでは、わかるようになったんだけど、ここから先は、どうしたらいいのかわからなかったのよね」
「魔力がわかるようになったなら、次はその魔力の移動ですね」
「移動?」
「流れてるから、移動してるんじゃないの?」
「えぇーと、意図的にタンクから取り出した魔力を、どこかに移動させるんです」
「難しい……」
「どこかってどこ?」
ティナとニーナは理解が追いつかず、ケンは実演することにした。
「お手本を見せますので、ここをちょっと見ていてください」
ケンは人差し指を立てると、そこへ魔力が行くように操作する。すると、次第に人差し指の先が、淡く光り出して魔力が可視化出来るようになった。
「ケン君、すごーい!」
「初めて見た」
「これは2人にも目に見えてわかるように、魔力を可視化させるために魔力密度を上げていますので、2人にはまだ出来ませんが、体内の魔力を感知できるようになっていますので、目には見えなくとも感じることはできると思います。とりあえず、手のひらに魔力が移動できるように、頑張ってみてください」
「やってみるわ!」
「頑張る」
2人は、それから手のひらを見つめて、唸りながら一所懸命に移動させようとしていたが、中々上手くはいかないようであった。
「ケン君、これってコツとかないの?」
「コツですか? 人に対して教示したのは初めてなので、自分のコツが他の人にもコツとなるのかわかりません」
「ちなみにケン君のコツは?」
「シュッと取り出して、ギューンとします」
「それって、天才肌の人が言うセリフよね?」
「凡人には辛い」
「“考えるな、感じろ!”です」
「「無理!」」
2人が即否定した事で、今まで感覚的に、魔法の修練をしてきたケンにとって、初めて人にものを教える難しさを理解した。
「うーん……ちょっと試してみますか?」
「何を試すの?」
「魔力移動です」
「さっきやったじゃない」
「ティナさんの体を使って、俺が出来るか試すんです。とりあえず、ベッドに横になって楽にしてください。」
ティナは言われた通りベッドに横になり、ケンはティナの鳩尾に手を当てると、その行為にティナが反応した。
「痛くしないでよ?」
「魔力を移動させるだけなので、痛みはないですよ」
ケンはティナの体越しに、魔力を感知するため意識を集中させた。すると、ティナの体内にある魔力の塊を見つける。
「これかな?」
「何かわかったの?」
「ティナさんの魔力タンクですよ」
「凄い」
「ちょっと、俺の魔力を混ぜつつ移動させてみますので、ティナさんは魔力をちゃんと感じててくださいね」
そこからケンは、ティナのタンクから魔力を取り出し、自分の魔力を混ぜ合わせながら、意図的に移動させ始める。
「……あっ……」
ティナは体を襲う初めての感覚に身悶え始めるが、ケンは失敗しないように集中しているため、気づかずに魔力移動を続けた。
「ん……ダメ……」
「……ちょ……」
「待って……」
「やっ……」
「……ィ……クッ――!」
ケンはティナの魔力を一通り体内循環させると移動をやめた。一方ティナは頬を染め、体を上気させており呼吸を荒くしていた。
2人の様子を見ていたニーナは、ティナと同様に頬を染めて俯いていた。
「ティナさん、ちゃんと感じましたか?」
ケンの言葉に、呼吸を整えたティナは、ジト目を向けて答えた。
「感じるの意味が違ったわ……」
「えっ? 感じませんでした?」
「別の意味では、しっかりと感じさせられたわね」
「別の意味?」
ケンは、ティナが言わんとしていることが理解できないために、聞き返していた。
「さぁ、次はニーナの番よ」
ケンの疑問に答えるでもなく、ティナはニーナの手を引き、ベッドに寝かせる。
「わ……私は……」
ニーナは先程の惨状(?)を目の当たりにしているので、断ろうとしたのだが、ティナがそれを許さなかった。
「ニーナ、たっぷりと可愛がってもらいなさい」
ティナの有無を言わせぬ言動に、ニーナは諦めの境地に入った。
「さ、ケン君。ニーナにもしてあげて」
ケンはどこか腑に落ちないが、やり方はさっきティナで試したので、問題ないと割り切り、作業を開始することにした。
「わかりました」
ケンがニーナの鳩尾に手を当てると、ニーナはビクッと体を震わせた。
「ニーナさん、痛くないから大丈夫ですよ。それでは始めますので、ちゃんと感じてくださいね」
ティナの時同様、ニーナの魔力タンクを感知すると、ケンは移動を開始した。
「ッ――!」
ニーナも体を襲う初めての感覚に身悶え始めるが、ケンは先程と同様に集中しているため、そのまま魔力移動を続けた。
「……っ……」
「がまん……」
「……でき……ない」
「……あっ……あっ……」
「……ンン――!」
ケンは、ニーナの魔力を一通り体内循環させると移動をやめた。ニーナは、体を上気させて頬を染めており、呼吸が荒くなっていた。
2人の様子を見ていたティナは、ニーナに対して、してやったりとニヤニヤしているのだった。
「どうでしたか? 感じました?」
呼吸を整えたニーナは静かに答えた。
「……感じすぎた」
「ティナさんの時は、何か腑に落ちない感じがしましたが、ニーナさんはちゃんと感じたんですね」
「ティナと同じ」
「えっ? 同じ……?」
その言葉にケンは混乱するのだった。そんなケンに後ろからティナが声をかける。
「私もニーナも気持ちよくなったことだし、お風呂に行かせてもらうわね」
「ん? 気持ちよく……?」
「ケン君、1回じゃまだ感覚が掴めないから、また今度同じ様にしてね。その時はニーナも一緒よ?」
「うぅ……」
ケンが未だに状況が掴めていない中、2人は入浴へと向かった。残されたケンは、やはり腑に落ちない感じがしたが、1回で掴めなかったのなら仕方がないかと、次に頼まれた時も、同様にしてあげようと思うのであった。
かくして、ケンからされる魔力移動という、新たな快感を覚えたティナとニーナは、これから先も何かとケンにオネダリして、やってもらうのだった。
ケンがこの行為の副次的作用で、相手に快感を感じさせていることに気づくのは、まだ先のことである。
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