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第12章 イグドラ亜人集合国
第361話 クエスト達成報告
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翌日になるとケビンはクエスト達成報告の条件を満たすために、クズミを連れてゴワンの元を訪れる。
「本当に終わったのか? 昨日受注したとしてもまだ2日目だぞ?」
「終わりましたよ。ドラゴンはもういませんし、火山活動も休止しています」
「にわかには信じられんが……」
「そう思われても仕方がないので、達成条件である現地確認を今日はお願いします。ゴワンさんが認めないとクエストの達成になりませんので」
「わかった。出かける準備をしよう」
ケビンはそれからゴワンを引き連れて馬車で現地へと向かう。
馬車は家族用のではなく新たに追加で部外者用を作っておいたので、それにゴワンを乗せてバイコーンに引いてもらうことにした。
バイコーンを見た時のゴワンの驚きは言うまでもないが、ギルドへちゃんと登録してあることを伝えて馬車に乗り込んでもらったのだ。
普通の馬車とは引いている馬が違うので、現地へは通常の馬車よりも早く、さほど時間をかけずに到着することになる。
道中で遠目から空を飛ぶドラゴンがいなくなっていることを見たゴワンは信じられないとばかりに感じてしまうが、ドラゴンが地に降りている場合もあるので安易に安堵することはしなかった。
やがて到着した現地でゴワンが馬車をおりると、辺りにドラゴンが1匹もいないことを改めて知ることとなる。
「火山活動は自然に任せても良かったのですが、すぐに鉱山が使えるように休止状態にしました」
ドワンが一際高い山へ視線を向けると、ケビンが告げたように火山から立ち上っていた煙はなく、傍から見ればただの山としか思えない状態であった。
ここまで証拠を突きつけられてはゴワンも認めるしかなく、帰りしなに冒険者ギルドへ一緒に赴いたら、クズミが代表でクランのクエスト達成の手続きをしてゴワンとともにその場をあとにする。
ケビンたちがゴワンを家に送り届けたあとはクズミ邸に戻ると、その場所から帝城へと転移した。
帝城へと転移したあとは待たせていた嫁たちを連れて、今度はアリシテア王国のカロトバウン家別宅へと転移して冒険者ギルドへ向かうのだった。
久しぶりに来た王都支部でカーバインへ面会を求めるとギルド長室へ迎え入れられて、ゾロゾロと大人数でやって来たケビンたちを見たカーバインは面倒くさそうな表情を浮かべる。
「今度は何の厄介事だ」
「嫁たちがドラゴンを討伐しまして、素材を卸す見返りにランクアップ申請をしようかと」
「そんなの地元ですればいいだろう? って、そこにいるのは帝都のギルドマスターじゃねぇか」
「はい。アビーも倒したので身内が手続きするよりも第3者へ手続きをしてもらった方が、あとから不正だのなんだのと疑われずに済みますので」
「……は? アビゲイルは元受付嬢でBランクだろ? パーティーに組み込んだのか?」
それからケビンはどういう経緯でドラゴンを討伐することになったのかイグドラで受けた依頼内容を説明していると、カーバインが頭を抱えながら深い溜息をつくのである。
「それでそんな大勢で押し寄せてきたのか……それにしてもピクニックって……お前くらいだぞ、遊び感覚でドラゴンを討伐するのは」
「いやぁ、嫁たちにもたまには外の空気を吸わせてリフレッシュしてもらおうかと」
「で、パーティーで何匹狩ったんだ?」
ケビンが絡んでいる以上、絶対1匹では済まされないと予測したカーバインは事前に驚かないように心構えをしっかりするのだった。
「パーティーもありますが、個人討伐もありまして……」
「お前の分か。お前はもうランクアップしないし、パーティー分だけでいいだろ」
「いえ、俺以外の個人討伐が……」
申し訳なさそうに告げるケビンを見たカーバインは、とてつもなく嫌な予感が頭をよぎる。
「……おい……まさかとは思うが……」
「ニーナ以外はドラゴンを1人で倒せちゃいました……」
「はぁぁ……お前、2Sランク冒険者を量産したのか……」
「あの……大変申し訳ないのですが……1人当たり2匹討伐させたので3Sランクになるかと……」
「……」
ケビンから告げられた内容にカーバインの瞳はハイライトを失い、呆然とするのであった。
そのまま回復を待っても良かったケビンであるが、カーバインの姿がいたたまれなくなり回復魔法をかけて強制的に再起動をさせる。
「お前を相手にすると現実逃避も許されないのか……そもそも何でそんなに狩れるほどドラゴンがいる? 元は鉱山なんだろ?」
「赤龍を統べる長がいまして、そいつが縄張りにして集落化していたんですよ」
「……おい、赤龍を統べる長って何だ? 嫌な予感しかしないぞ」
「カラードラゴンにはそれぞれ長が頂点にいまして、統率しているみたいです」
「お前……まさか……そいつに喧嘩を売ったのか?」
ただでさえ災厄認定のドラゴンであるのに、そのドラゴンを統率する長がいると聞かされてカーバインは気が気ではなかった。
「いえいえ、喧嘩を売ってきたのは向こうですよ」
「いえいえじゃねぇだろうが! 何処だ!? 何処にドラゴンの大群が飛来する!?」
長と呼ばれているドラゴンが怒り狂って手下のドラゴンたちを引き連れては、人間の国に襲撃してくると勘違いをしているカーバインへケビンは更に驚愕の事実を告げる。
「きっちり教育をしましたから襲ってきても今後は俺限定ですよ。今頃は巣で療養していると思いますしね」
「……は? 教育……?」
「ボコボコにしてやりましたから」
「お前……ドラゴンの長をボコボコにしたのか?」
「はい。そいつを殺しては赤龍を統率する長がいなくなり、種の中からバカが次の長の座に就くらしくて殺せなかったんですよ。古代龍がせっかく手に入ると思ってたのに」
「こ……古代龍……? お前……それ、お伽噺に出てくる龍だぞ……?」
「そうなんですか? でも実際にいますよ。数千年は生きられるみたいですから」
「嘘だろ……」
「少なくとも俺が知っているのは3人ですね」
「3人……? 3匹の間違いだろ?」
「ドラゴンの中には人に姿を変えられるやつがいるみたいですよ? 人の言葉も喋りますし」
「は? 人になる……? お前とうとう頭がおかしくなったのか?」
「いえいえ、【人化】っていうスキルで人になれるんですよ。現に紅の長は人化して襲ってきましたからね」
「おい! それがもし本当なら、そこら辺の人の中にドラゴンが紛れ込んでいるってことだぞ!」
「そうなりますね」
「『そうなりますね』じゃねぇだろ! 一刻も早く陛下に知らせなきゃいけねぇじゃねぇか。陛下だけじゃねぇ、各ギルドにも通達しねぇと大変なことになるぞ」
「知らせた方が大変な騒ぎになりますよ? 今までだって街中でドラゴンが現れたことはないでしょう? もしくはドラゴン並の力を持った人間が暴れたとか」
「確かに俺がここに住んでいる間は、そういった内容の話を耳にしたことはないが……」
「つまり下手に騒ぎ立てて人化したドラゴンを刺激するよりも、現状のままでいた方が得策なんですよ。基本的に人化して人里にいるドラゴンは情報収集が目的みたいですから」
「……わかった。だが一応陛下にだけは伝えておく。何かあってからでは遅いからな。それで3人と言っていたが、1人は赤龍の長なんだろ? あと2人は何者だ?」
「1人は紅の長が言っていた蒼の長で会ったことはありません。もう1人は俺の嫁で白の長です」
「待て待て待て待て……嫁? お前今、嫁って言ったのか?」
「はい、そうですよ。クララ」
ケビンの呼びかけで立っていたクララが1歩前へ出てきた。
「俺の嫁で白種のドラゴンを統べているクララです」
「主殿に従属して嫁となったクララだ。ドラゴン界隈では白の長と呼ばれておるの」
「え……いや……えっ!? このべっぴんさんが古代龍なのかっ!?」
「そうですよ。こう見えて何千年も生きているみたいです」
「もう無理だ……俺のキャパを超えすぎている……」
「ちなみにクララがドラゴンだってことは内密にお願いします。変に騒ぎ立てられても困りますので」
「いや……それを話した時点で俺の頭がおかしくなったとしか思われん。どこの世界に人がドラゴンの嫁をもらうってんだ。酒の肴にもなりゃしねぇ」
「ということで、ランクアップの件をお願いします」
「……はぁぁ……受付に行くとするか……今日は早退だな……」
こうして1人では到底処理しきれない情報を与えられてしまったカーバインは、ケビンたちのランクアップ手続きを済ませるために受付へと向かうのであった。
受付に辿りついたカーバインへ嫁たちがギルドカードを提出すると、討伐履歴を見たカーバインや受付嬢が放心してしまう。
それを見た他の受付嬢も駆け寄ってきて中身を見ると同じく放心してしまい、その気苦労を理解できるのは同じギルド職員でギルドマスターであるアビゲイルだけだった。
「申し訳ありません、カーバイン。旦那様に関してはもう諦めていただくとしか……」
「いや……お前自身も充分おかしな討伐をしているからな? Bランク冒険者の単独討伐欄にドラゴンが2匹入っているんだぞ?」
「できれば見なかったことに……」
「できるわけねぇだろ。お前はもう規格外の仲間入りだ」
「当初はこのようなはずでは……」
こうなることがわかっていたのにドラゴン討伐戦において楽しくなってしまい、自分の実力を試したく1人で戦ってしまったことを後悔するアビゲイルであった。
その後、手続きは終わってニーナ以外は条件を満たしたということで3Sランクに昇格して、そのニーナはパーティーでドラゴンの討伐を成し遂げた冒険者としてSランクへ昇格する。
そしてウロボロスのクランランクとパーティーランクはともに3Sへと昇格して、前代未聞で初の3Sクランとして冒険者たちの話題となり、彼方此方でケビンたちを盗み見ながら規格外集団として認知されていくのである。
「ニーナも詠唱省略を覚えたらドラゴン討伐を単独で達成しような?」
「私は別にいいよ。今のままでもSランクには昇格したし」
「1人だけ仲間はずれなのはダメだ」
「ふふっ、じゃあケビン君がまた先生をしてくれたら私は頑張れるよ」
受付での用事を済ませたケビンたちは解体場まで足を運んで、ライアットとゴブゾウへ挨拶すると、ゴブゾウを見た嫁たちが「ブサかわいい」と言って以前のゴブりっちを知っている面々は驚くのであった。
だが、アリス的にはまだ欲しくなるレベルの可愛さではなく、アリス基準の審査を合格することはなかった。
それからライアットへドラゴンの素材を数匹卸すと呆れた表情をされてしまい、それが腑に落ちないケビンは意趣返しという名のお土産として赤龍を1匹、解体場にあるゴブゾウの家の隣へ飾ってしまうのである。
「これはお土産です。もちろんお土産なので解体不可で壊すことはできませんよ」
「ケビンの寄付する標本はアント以来だな……まぁ、邪魔だがありがたく受け取っておこう。他の冒険者たちも本物を1度は見てみたかっただろうしな」
こうして用事を済ませたケビンたちは、カロトバウン家の別宅経由で帝城へと帰るのであった。
「本当に終わったのか? 昨日受注したとしてもまだ2日目だぞ?」
「終わりましたよ。ドラゴンはもういませんし、火山活動も休止しています」
「にわかには信じられんが……」
「そう思われても仕方がないので、達成条件である現地確認を今日はお願いします。ゴワンさんが認めないとクエストの達成になりませんので」
「わかった。出かける準備をしよう」
ケビンはそれからゴワンを引き連れて馬車で現地へと向かう。
馬車は家族用のではなく新たに追加で部外者用を作っておいたので、それにゴワンを乗せてバイコーンに引いてもらうことにした。
バイコーンを見た時のゴワンの驚きは言うまでもないが、ギルドへちゃんと登録してあることを伝えて馬車に乗り込んでもらったのだ。
普通の馬車とは引いている馬が違うので、現地へは通常の馬車よりも早く、さほど時間をかけずに到着することになる。
道中で遠目から空を飛ぶドラゴンがいなくなっていることを見たゴワンは信じられないとばかりに感じてしまうが、ドラゴンが地に降りている場合もあるので安易に安堵することはしなかった。
やがて到着した現地でゴワンが馬車をおりると、辺りにドラゴンが1匹もいないことを改めて知ることとなる。
「火山活動は自然に任せても良かったのですが、すぐに鉱山が使えるように休止状態にしました」
ドワンが一際高い山へ視線を向けると、ケビンが告げたように火山から立ち上っていた煙はなく、傍から見ればただの山としか思えない状態であった。
ここまで証拠を突きつけられてはゴワンも認めるしかなく、帰りしなに冒険者ギルドへ一緒に赴いたら、クズミが代表でクランのクエスト達成の手続きをしてゴワンとともにその場をあとにする。
ケビンたちがゴワンを家に送り届けたあとはクズミ邸に戻ると、その場所から帝城へと転移した。
帝城へと転移したあとは待たせていた嫁たちを連れて、今度はアリシテア王国のカロトバウン家別宅へと転移して冒険者ギルドへ向かうのだった。
久しぶりに来た王都支部でカーバインへ面会を求めるとギルド長室へ迎え入れられて、ゾロゾロと大人数でやって来たケビンたちを見たカーバインは面倒くさそうな表情を浮かべる。
「今度は何の厄介事だ」
「嫁たちがドラゴンを討伐しまして、素材を卸す見返りにランクアップ申請をしようかと」
「そんなの地元ですればいいだろう? って、そこにいるのは帝都のギルドマスターじゃねぇか」
「はい。アビーも倒したので身内が手続きするよりも第3者へ手続きをしてもらった方が、あとから不正だのなんだのと疑われずに済みますので」
「……は? アビゲイルは元受付嬢でBランクだろ? パーティーに組み込んだのか?」
それからケビンはどういう経緯でドラゴンを討伐することになったのかイグドラで受けた依頼内容を説明していると、カーバインが頭を抱えながら深い溜息をつくのである。
「それでそんな大勢で押し寄せてきたのか……それにしてもピクニックって……お前くらいだぞ、遊び感覚でドラゴンを討伐するのは」
「いやぁ、嫁たちにもたまには外の空気を吸わせてリフレッシュしてもらおうかと」
「で、パーティーで何匹狩ったんだ?」
ケビンが絡んでいる以上、絶対1匹では済まされないと予測したカーバインは事前に驚かないように心構えをしっかりするのだった。
「パーティーもありますが、個人討伐もありまして……」
「お前の分か。お前はもうランクアップしないし、パーティー分だけでいいだろ」
「いえ、俺以外の個人討伐が……」
申し訳なさそうに告げるケビンを見たカーバインは、とてつもなく嫌な予感が頭をよぎる。
「……おい……まさかとは思うが……」
「ニーナ以外はドラゴンを1人で倒せちゃいました……」
「はぁぁ……お前、2Sランク冒険者を量産したのか……」
「あの……大変申し訳ないのですが……1人当たり2匹討伐させたので3Sランクになるかと……」
「……」
ケビンから告げられた内容にカーバインの瞳はハイライトを失い、呆然とするのであった。
そのまま回復を待っても良かったケビンであるが、カーバインの姿がいたたまれなくなり回復魔法をかけて強制的に再起動をさせる。
「お前を相手にすると現実逃避も許されないのか……そもそも何でそんなに狩れるほどドラゴンがいる? 元は鉱山なんだろ?」
「赤龍を統べる長がいまして、そいつが縄張りにして集落化していたんですよ」
「……おい、赤龍を統べる長って何だ? 嫌な予感しかしないぞ」
「カラードラゴンにはそれぞれ長が頂点にいまして、統率しているみたいです」
「お前……まさか……そいつに喧嘩を売ったのか?」
ただでさえ災厄認定のドラゴンであるのに、そのドラゴンを統率する長がいると聞かされてカーバインは気が気ではなかった。
「いえいえ、喧嘩を売ってきたのは向こうですよ」
「いえいえじゃねぇだろうが! 何処だ!? 何処にドラゴンの大群が飛来する!?」
長と呼ばれているドラゴンが怒り狂って手下のドラゴンたちを引き連れては、人間の国に襲撃してくると勘違いをしているカーバインへケビンは更に驚愕の事実を告げる。
「きっちり教育をしましたから襲ってきても今後は俺限定ですよ。今頃は巣で療養していると思いますしね」
「……は? 教育……?」
「ボコボコにしてやりましたから」
「お前……ドラゴンの長をボコボコにしたのか?」
「はい。そいつを殺しては赤龍を統率する長がいなくなり、種の中からバカが次の長の座に就くらしくて殺せなかったんですよ。古代龍がせっかく手に入ると思ってたのに」
「こ……古代龍……? お前……それ、お伽噺に出てくる龍だぞ……?」
「そうなんですか? でも実際にいますよ。数千年は生きられるみたいですから」
「嘘だろ……」
「少なくとも俺が知っているのは3人ですね」
「3人……? 3匹の間違いだろ?」
「ドラゴンの中には人に姿を変えられるやつがいるみたいですよ? 人の言葉も喋りますし」
「は? 人になる……? お前とうとう頭がおかしくなったのか?」
「いえいえ、【人化】っていうスキルで人になれるんですよ。現に紅の長は人化して襲ってきましたからね」
「おい! それがもし本当なら、そこら辺の人の中にドラゴンが紛れ込んでいるってことだぞ!」
「そうなりますね」
「『そうなりますね』じゃねぇだろ! 一刻も早く陛下に知らせなきゃいけねぇじゃねぇか。陛下だけじゃねぇ、各ギルドにも通達しねぇと大変なことになるぞ」
「知らせた方が大変な騒ぎになりますよ? 今までだって街中でドラゴンが現れたことはないでしょう? もしくはドラゴン並の力を持った人間が暴れたとか」
「確かに俺がここに住んでいる間は、そういった内容の話を耳にしたことはないが……」
「つまり下手に騒ぎ立てて人化したドラゴンを刺激するよりも、現状のままでいた方が得策なんですよ。基本的に人化して人里にいるドラゴンは情報収集が目的みたいですから」
「……わかった。だが一応陛下にだけは伝えておく。何かあってからでは遅いからな。それで3人と言っていたが、1人は赤龍の長なんだろ? あと2人は何者だ?」
「1人は紅の長が言っていた蒼の長で会ったことはありません。もう1人は俺の嫁で白の長です」
「待て待て待て待て……嫁? お前今、嫁って言ったのか?」
「はい、そうですよ。クララ」
ケビンの呼びかけで立っていたクララが1歩前へ出てきた。
「俺の嫁で白種のドラゴンを統べているクララです」
「主殿に従属して嫁となったクララだ。ドラゴン界隈では白の長と呼ばれておるの」
「え……いや……えっ!? このべっぴんさんが古代龍なのかっ!?」
「そうですよ。こう見えて何千年も生きているみたいです」
「もう無理だ……俺のキャパを超えすぎている……」
「ちなみにクララがドラゴンだってことは内密にお願いします。変に騒ぎ立てられても困りますので」
「いや……それを話した時点で俺の頭がおかしくなったとしか思われん。どこの世界に人がドラゴンの嫁をもらうってんだ。酒の肴にもなりゃしねぇ」
「ということで、ランクアップの件をお願いします」
「……はぁぁ……受付に行くとするか……今日は早退だな……」
こうして1人では到底処理しきれない情報を与えられてしまったカーバインは、ケビンたちのランクアップ手続きを済ませるために受付へと向かうのであった。
受付に辿りついたカーバインへ嫁たちがギルドカードを提出すると、討伐履歴を見たカーバインや受付嬢が放心してしまう。
それを見た他の受付嬢も駆け寄ってきて中身を見ると同じく放心してしまい、その気苦労を理解できるのは同じギルド職員でギルドマスターであるアビゲイルだけだった。
「申し訳ありません、カーバイン。旦那様に関してはもう諦めていただくとしか……」
「いや……お前自身も充分おかしな討伐をしているからな? Bランク冒険者の単独討伐欄にドラゴンが2匹入っているんだぞ?」
「できれば見なかったことに……」
「できるわけねぇだろ。お前はもう規格外の仲間入りだ」
「当初はこのようなはずでは……」
こうなることがわかっていたのにドラゴン討伐戦において楽しくなってしまい、自分の実力を試したく1人で戦ってしまったことを後悔するアビゲイルであった。
その後、手続きは終わってニーナ以外は条件を満たしたということで3Sランクに昇格して、そのニーナはパーティーでドラゴンの討伐を成し遂げた冒険者としてSランクへ昇格する。
そしてウロボロスのクランランクとパーティーランクはともに3Sへと昇格して、前代未聞で初の3Sクランとして冒険者たちの話題となり、彼方此方でケビンたちを盗み見ながら規格外集団として認知されていくのである。
「ニーナも詠唱省略を覚えたらドラゴン討伐を単独で達成しような?」
「私は別にいいよ。今のままでもSランクには昇格したし」
「1人だけ仲間はずれなのはダメだ」
「ふふっ、じゃあケビン君がまた先生をしてくれたら私は頑張れるよ」
受付での用事を済ませたケビンたちは解体場まで足を運んで、ライアットとゴブゾウへ挨拶すると、ゴブゾウを見た嫁たちが「ブサかわいい」と言って以前のゴブりっちを知っている面々は驚くのであった。
だが、アリス的にはまだ欲しくなるレベルの可愛さではなく、アリス基準の審査を合格することはなかった。
それからライアットへドラゴンの素材を数匹卸すと呆れた表情をされてしまい、それが腑に落ちないケビンは意趣返しという名のお土産として赤龍を1匹、解体場にあるゴブゾウの家の隣へ飾ってしまうのである。
「これはお土産です。もちろんお土産なので解体不可で壊すことはできませんよ」
「ケビンの寄付する標本はアント以来だな……まぁ、邪魔だがありがたく受け取っておこう。他の冒険者たちも本物を1度は見てみたかっただろうしな」
こうして用事を済ませたケビンたちは、カロトバウン家の別宅経由で帝城へと帰るのであった。
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