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2章
デリケートゾーンの恥ずかしいお悩み扱い
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「よし、やるぞ!」
ガンギマリしたパリピのごときギンギンの太陽を、げんなりと仰ぎ見ている僕をしり目に、先陣中央に立つ同級生の源達也(通称・ゲン。蔑称・短足ゴリラ)が一言、気合を入れた。
身長百八十センチを超える雄々しい肉体を持つゲンは、かっちり七三に固めたツーブロックショートの前髪と、汗まみれのシックスパックにもっさりべっちゃり蓄えた超高校級のギャランドゥを震わせながら、サッカーのウォーミングアップ法の一つ「ブラジル体操」を始める。
「アーメフーレアーメフーレアァ~メフレッ! 武士は食わねどタカヨージっ!」
奇声を発したゲンが、片足ジャンプすると同時に、軸足とは反対の足を上げて膝を畳む。次に木の小枝を持った両手をサッと上に掲げてジャンプして、畳んだ足を横にぴしっと伸ばす。それを「イチ、ニ」のリズムで左右交互に繰り返していく。
ゲンの動きに合わせ、残りの一年生部員たちも同じように雨乞いの祝詞を唱えながらブラジル体操を始める。そして全員の発声とステップのリズムが一致することで、「ビキニパンツ一丁で股間をもっこりさせた一年生部員全員が、ブラジル体操をやりながら雨乞いをする」という、完全無欠に意味不明な挙動不審ムーブが完成する。
これぞ、FH高校サッカー部に連綿と受け継がれる伝統儀式「雨降れ」である。
一年生部員の中には、なんならこの儀式に面白味を感じているのか、張り切って機敏な動きを見せている者もいた。しかし、頭の中で「何やってんだオレ」というリフレインが止まらない僕は、当然のようにチンタラと適当に流す。
「おらキトーォッ! テメェこの仮性のカメアタマ野郎! もっと気合入れてやれや!」
男女問わず多くの野次馬生徒が見物する中、朝礼台のそばで一年生部員の様子をニヤニヤ眺めていた二年生の新キャプテンが、僕の「紀藤《きとう》」という平安貴族を思わせる奥ゆかしい姓を使ったデリカシーのかけらもない下ネタ野次を飛ばす。するとその周囲の面々がゲラゲラと大げさに笑った。
もちろん僕の苗字は「き」にアクセントがあるのだが、先輩は「と」にアクセントを置いている。これで女子生徒はみな僕の苗字から男性器を連想し、「紀藤と付き合うのはちょっとねぇ」とかクスクス陰口を叩くのだろう。
いや、そんな上っ面なイメージだけで人を見下すような女子は、当然こちらからお断りではある。僕という人間の本質をわかってくれる思慮深きスタイル抜群な黒髪ショートカット女子は、決してそんなことはしないはずだ。きっと彼女なら、僕に「そんなこと気にしないよ」と最高にステキな笑顔を見せてくれ、その柔らかな小さな手で僕の手をギュッと、
「シカトかよこのカントンのインポ野郎! キトーテメェ、一日中サンジューダッシュやらせっぞオラッ!」
僕の現実逃避がうっかりまだ見ぬ未来の彼女にまで発展したせいで、結果的に自分のヤジを完全に無視されたキャプテンが、いかついネイビーカットの頭に血を上らせ先ほどよりも症状が悪化した罵詈雑言を飛ばしてきた。
画像検索したってなかなか症例写真が出てこないであろうデリケートゾーンの恥ずかしいお悩み扱いされた僕は、これ以上あらぬ噂を立てられぬため、やけくそになってひと際目立つバカでかい声を上げる。
「アァーメフーレアーメフーレアァ~メフレッ!!」
僕の絶叫を聞いた先輩たちは、満足したように再びゲラゲラと笑った。
ガンギマリしたパリピのごときギンギンの太陽を、げんなりと仰ぎ見ている僕をしり目に、先陣中央に立つ同級生の源達也(通称・ゲン。蔑称・短足ゴリラ)が一言、気合を入れた。
身長百八十センチを超える雄々しい肉体を持つゲンは、かっちり七三に固めたツーブロックショートの前髪と、汗まみれのシックスパックにもっさりべっちゃり蓄えた超高校級のギャランドゥを震わせながら、サッカーのウォーミングアップ法の一つ「ブラジル体操」を始める。
「アーメフーレアーメフーレアァ~メフレッ! 武士は食わねどタカヨージっ!」
奇声を発したゲンが、片足ジャンプすると同時に、軸足とは反対の足を上げて膝を畳む。次に木の小枝を持った両手をサッと上に掲げてジャンプして、畳んだ足を横にぴしっと伸ばす。それを「イチ、ニ」のリズムで左右交互に繰り返していく。
ゲンの動きに合わせ、残りの一年生部員たちも同じように雨乞いの祝詞を唱えながらブラジル体操を始める。そして全員の発声とステップのリズムが一致することで、「ビキニパンツ一丁で股間をもっこりさせた一年生部員全員が、ブラジル体操をやりながら雨乞いをする」という、完全無欠に意味不明な挙動不審ムーブが完成する。
これぞ、FH高校サッカー部に連綿と受け継がれる伝統儀式「雨降れ」である。
一年生部員の中には、なんならこの儀式に面白味を感じているのか、張り切って機敏な動きを見せている者もいた。しかし、頭の中で「何やってんだオレ」というリフレインが止まらない僕は、当然のようにチンタラと適当に流す。
「おらキトーォッ! テメェこの仮性のカメアタマ野郎! もっと気合入れてやれや!」
男女問わず多くの野次馬生徒が見物する中、朝礼台のそばで一年生部員の様子をニヤニヤ眺めていた二年生の新キャプテンが、僕の「紀藤《きとう》」という平安貴族を思わせる奥ゆかしい姓を使ったデリカシーのかけらもない下ネタ野次を飛ばす。するとその周囲の面々がゲラゲラと大げさに笑った。
もちろん僕の苗字は「き」にアクセントがあるのだが、先輩は「と」にアクセントを置いている。これで女子生徒はみな僕の苗字から男性器を連想し、「紀藤と付き合うのはちょっとねぇ」とかクスクス陰口を叩くのだろう。
いや、そんな上っ面なイメージだけで人を見下すような女子は、当然こちらからお断りではある。僕という人間の本質をわかってくれる思慮深きスタイル抜群な黒髪ショートカット女子は、決してそんなことはしないはずだ。きっと彼女なら、僕に「そんなこと気にしないよ」と最高にステキな笑顔を見せてくれ、その柔らかな小さな手で僕の手をギュッと、
「シカトかよこのカントンのインポ野郎! キトーテメェ、一日中サンジューダッシュやらせっぞオラッ!」
僕の現実逃避がうっかりまだ見ぬ未来の彼女にまで発展したせいで、結果的に自分のヤジを完全に無視されたキャプテンが、いかついネイビーカットの頭に血を上らせ先ほどよりも症状が悪化した罵詈雑言を飛ばしてきた。
画像検索したってなかなか症例写真が出てこないであろうデリケートゾーンの恥ずかしいお悩み扱いされた僕は、これ以上あらぬ噂を立てられぬため、やけくそになってひと際目立つバカでかい声を上げる。
「アァーメフーレアーメフーレアァ~メフレッ!!」
僕の絶叫を聞いた先輩たちは、満足したように再びゲラゲラと笑った。
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