サッカー部はモテない

ゴカンジョ

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2章

僕のポリシー

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「お前さ、それマジでカルトじゃん。だからやめとけって言ったのに」

 夜の自主練習用にゲンが予約してくれた市内のフットサルコートで偶然、中学卒業来の再会を果たした高階亨たかしなとおるは、僕の少し髪が伸びたボウズ頭を見て爆笑したのち、FH高校サッカー部の話を聞くや、「そら見たことか」とさらに大笑いした。

「雨降れだの声出しだの恋愛禁止だの、意味わからんことやらされて、それで練習は走りメインのシゴキなんだろ? おまけに一年はボウズって、完ぺきやばい宗教じゃん。ユウキお前、まだ続ける気かよ?」

 奥行きのない平べったい顔に、腫れぼったい一重まぶたとタラコ唇の分際で、高校で色気づいたらしくマッシュショートの髪にほんのり色を入れてやがるトオルは、見下すように僕の頭をゴシゴシとガサツにさすってきた。

 が、頑固な汚れも楽に落とせるくらい強くたくましい僕のタワシ頭には、高原の朝露にようにさわやかな汗の粒がびっしりぐっしょりついていたため、トオルは「うぇえ!」と呻いてすぐに手を放した。ざまあみろ。

 すでに日はとっぷり暮れていたが、駅からバスで十分程度のロードサイドに位置するフットサルコートは、思春期童貞高校生のリビドーみたいなムンムンとした熱気がこもり、立っているだけでも汗が噴き出してくる。

 トオルは僕とゲンが予約した前の時間枠で、高校の友達と一緒にフットサルをしていた。ちょうど帰り際のタイミングで、入れ替わりにコートに入ってきた僕を見つけると、トオルは仲間に「先行ってて」と声をかけてから、一人コートに残ったのだ。この時間、ゲンのコネのおかげで、特別にフルコートを二時間貸し切っている。だから今コート内にいるのは、ゲンを待つ僕とトオルの二人だけだった。

 中学時代のクラブエンブレムが入った赤いトレーニングシャツと黒のハーフパンツという、今の僕と同じ格好をしたトオルは、首からかけたスポーツタオルで手を拭きながら、コートに置かれているベンチに腰掛けた。

 トオルとの付き合いはゲンよりも長い。ゲンとは中学時代、地元のサッカークラブに入団した同期として知り合ったのが最初で、通う中学は別の学校だった。対してトオルは、小学校から中学校まで学校もサッカークラブも同じで、学校では何度かクラスが一緒になったこともある。一応、僕とトオルは幼馴染という奴だ。親友なんていう青臭いものではなく、ただの腐れ縁ではあるが。

 人工芝が敷かれた四面コートは六本の大きな照明灯に照らされ、周囲は高いネットに覆われている。コートからは街灯が等間隔に並ぶ片側二車線道路と、横断歩道を渡ってすぐに位置するコンビニが見える。コンビニの大きな駐車場の空きスペースでは、トオルのフットサル仲間らしい高校生の集団が、アイスやらジュースやらを飲み食いしながら、男女問わずワイワイキャッキャと談笑していた。

 ネットの向こうに存在する「キラキラとした青春の一ページ」から目を背けるように、自分のサッカーボールを適当にリフティングしている僕は「一年でボウズはオレだけだよ。これは強制とかじゃねえ、オレのポリシーだ」とトオルに言った。

「ポリシーって、何よ?」

「上っ面なイメージだけで、カッコいいだの何だのいいだすバカどもへの、俺なりの反抗の証だ」

 トオルは僕の言葉に眉をひそめると、「お前、やっぱまだ引きずってるのな」と苦笑いした。

「まあ、そもそもユウキがFH行ったのだって――」

「あと恋愛も禁止じゃねえよ」

 僕は座っているトオルに向かってふんわりとしたボールを蹴って、トオルが続けようとするのを遮った。

「FH高サッカー部に恋愛禁止ってルールはない。ただ、モテるためにサッカーやるなってだけだ。お前みたいにな!」

 僕はそう声を荒げると、糾弾するように「ビシッ!」とトオルを指さした。

「FHで一緒に全国を目指そう!」という僕の誘いを断ったあげく、サッカー部のない県内の私立高に進学したあと、校外でエンジョイ勢向けのフットサルチームを作って女子校との交流も深めるという、不埒な悪行三昧、充実の陽キャライフを送っているらしいトオルは、ベンチに座ったまま僕の蹴ったボールを両手でキャッチすると、余裕のニヤケ顔を浮かべていた。
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