異世界探訪記

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猫の獣人

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 この世界には獣人と呼ばれる種族がいる。とはいえ、獣人というのは俗称だ。地の獣の特徴を持つ種族を纏めてそう呼ぶに過ぎない。実際にはそれぞれ別種の種族で、文化や生態がまるっきり違っている事も多いのだという。

 今回、取り上げたいのは、その獣人の中でも取り分け位の高い種族と呼ばれるネコモドキについてだ。それは、所謂、猫の獣人と呼ばれる種族だ。けれど、他の多くの獣人が獣扱いされる事を嫌うのに反し、彼らにとって猫に似ていると言われる事はこれ以上無い褒め言葉になるのだという。
 それは、この世界の猫が彼らの崇拝対象になっているからに他ならない。そして、より猫に近い容姿の者には猫の一番の特徴である、猫渡りの力の一部を授かる事もあるらしい。

 だけれど、それほど猫に近い姿のネコモドキはあまり見かける事がない。それは、猫に姿形が近付くほどに定住しなくなるからなのだという。猫の生態すらも、容姿が近付くほどに似るという事なのだろう。けれど、それは逆を言えば、猫の特徴が薄い者は定住している事が多いという事にもなる。
 そんな定住する者達を、猫に近しい者達は〝イエネコ〟と蔑み呼ぶ事もあるのだとか。



 そんな話を片耳に入れつつ、給仕をしている猫耳の彼女を見やる。そして、何とはなしに野良の方が家猫より上なのか、と取り留めのない事を思い笑みを浮かべた。
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