こんな展開知りません!

水姫

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婚約破棄

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酷く最悪な気分であった。初めてのパティーで浮かれていた私は会場に入ってすぐ前世というものを思い出したのだ。

「私悪役令嬢…」転生というものを一切信じていなかったが、何故自分が と思わざるを得ない。

~・~
思い出した前世で、十中八九ここは『あなたが望むなら』というタイトルの王道な小説の中だろう。確か、高等学園に入学するところから物語が始まっていた。天真爛漫な心優しいヒロインと呼ばれる存在に王子が心惹かれ始め、それをよく思わない私セルリアが嫉妬、嫌がらせをする。最終的には嫌がらせの度が過ぎ、王子に婚約破棄&国外追放を言い渡されてハッピーエンド。
~・~

「私は全然ハッピーエンドじゃないけどね…」溜め息が出そう。まぁ、前世を思い出した私がすることはただ一つ!極力関わらないようにする、これに限る。でも問題がある、私、既に王子の婚約者…。


パッパッパ~、パラパパ~。
自分の世界に入り込んでいると、ふいに王族の入場を知らせる音が鳴る。ふと視線を上げ、それから膝をつく。えっ?

何故、ヒロインが王子と並んで立っているのだろう。
あれ?会うのは学園のはずなのに。
私の知っている物語とは別物?
でも、名前も顔も、全部一緒…。うーん。


「セルリア!貴様との婚約は破棄する!そして私はクリュナと婚約する」物語は始まってもないのに…これは理由まで聞かないといけないやつ?嫌な汗が出るのを必死に抑え、発言の許可を得る。

「理由をお聞かせ願いますか」

「よかろう。貴様は街に出ると決まってクリュナに嫌がらせしていただろう!平民1人大事にできないやつに王妃の資格などない!」えっ?チョットイッテルイミガワカンナイ。あれ、でも、もしかして、もしかしなくても、私めちゃくちゃピンチなのでは⁉

「何故、私がクリュメさんに嫌がらせをするのですか?」チラッと王子の隣を見ると俯きがちだが口許が笑っているクリュメと目が合う。あー、ヒロインも転生者なのか…。

「私、何度もやめてくださいって言ったんですけど、全然やめてくれなくて、それで、怖くて、そしたら…」涙なんか一滴も出てないですし、王子、気付いて下さい!なんでこんな嘘信じるんですか…。婚約者として私と過ごした10年は…。

「…もういい、大丈夫だ。全部私に任せておけ」

「シア…」ナニこれ。

暫くの沈黙の後、「ふむ、決めた。貴様への罰は国外追放等甘いだろう。終身刑を言い渡す」おかしい…、そんなはずない!慌てて周囲を見るが、皆一様に見て見ぬフリ。誰も助けてくれない…。

「王子、私は無実でございます。街でクリュナさんに会ったことなどございませんし、仮に平民1人嫌がらせした程度で公爵令嬢である私が終身刑など…」

「聞く耳など持たぬ。連れていけ」王子!王子!そんな、嫌、何故ですか。


私は兵士に連れ出されるまま会場を出ると、そのまま別の部屋へと押し込まれた。冷たく、暗い、何もない部屋。扉には鍵がかかっていて、出ることも叶わない。

「お父様、お母様、お兄様……シア、どうしてなの」私の心が、音をたてる。
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