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聖女として生きる

聞きたくない知らせ

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ソフィアはおもむろにこう口にした。

「今しがたマリソン公爵より連絡がありました。リサと王太子殿下の結婚式が半年後に行われるそうよ」

それを聞いた刹那、ローサは辛くてやるせない気持ちになった。

ーーリサ、やっぱり王太子殿下と結婚するのか。

「そしてね、私達コーンウォール家も結婚式に招待されたわ。ローサ。あなたも呼ばれているわよ」

冗談では無い。なぜ略奪婚の結婚式に呼ばれなければならないのか? あの泥棒猫め。

「リサ。どうするの?結婚式には出席するの?」

気持ち出席などする気は毛頭も無い。しかし、出席する義理はあるだろう。なぜなら、リサとは姉妹だからだ。

それにしても、リサもリサだ。略奪婚しておきながら、元婚約者当事者を呼び出すのだから度胸が座っている。

「ねぇ、ソフィア。あなたは出席するの?」

「一応。呼ばれたからには参加しなければ。義理だとか人情だとかというのは大切にしなければならないから」

そうか……と思った。やはりこの流れだと結婚式への参加は必要不可欠になりそうだ。

逃げたい。しかし逃げられない。王太子もまた何を考えているのか? あの裏切り者カップル同士が神様の前で愛を誓うのか? 考えただけで虫唾が走る。神様も祝福などするはずがない。

「ローサ。辛いよね。私はローサの味方だから大丈夫。いつかあいつらには天罰が下ると思っているから」

その言葉に慰められた。そうだよ。きっと天罰が下る。いつまでも晴天は続かない。

「ソフィア、信じてる」
ローサはソフィアの両手を取った。

「挙式は夏よ。場所はサウスイースト寺院」

サウスイースト寺院は王侯貴族が挙式を行う寺院だ。そしてまた戴冠式等も行われる由緒ある寺院なのだ。

「リサ。裏切り者!」

結局リサはローサから婚約者を奪い取った。そして、王太子と結婚まで漕ぎ着けた。それによって姉妹間に軋轢が生じて仲違い。次期マリソン家の当主にあたる弟のヨハンの一存でローサはマリソナ邸から追放された。

しかし、情のある二番目の妹、アイーダが間に入り、母の実家であるコーンウォール邸に身を潜めている。

とはいえ、皮肉にもリサは自分の結婚式にローサを招待するという嫌味な事をしてくれる。否、見せつけなのだろうか?

勿論コーンウォール家の人方は結婚式に参加するであろう。そこで親戚一同がお呼ばれされるのだ。本音は結婚式など行きたくない。二人が仲良く並んでいる姿など見るに耐えない。

「無理に参加する必用も無いと思うけど」とソフィア。しかし、そうも言ってられない。他のいとこには何もなかったかのように振る舞いたい。ましてやソフィアの妹のマリアナも結婚式には呼ばれるでしょう。マリアナにもこの出来事は黙っておきたい。

「いいえ。出るわ。他の親戚の前で事を荒立てたくないから」強気でいく。負けない。リサがいかなる嫌がらせを仕掛けてきようとしても。
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