婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。

hikari

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第3話

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スポーツマンタイプと言えばカミーユ・アーサー・コルベール。

背が高くてスカイブルーのサラサラな髪、ルビーのような瞳をした爽やか系の好青年。

アントワーヌとは大違い!

カミーユは背が高いだけにバレーボールが得意。

「おはよう、クリスティアーヌ」

テノールのセクシーボイス。

「おはよう、カミーユ」

ここまでもゲームの通り。


確かカミーユってキャラはぁ。

「どうしたの? 今日ちょっと様子がおかしいよ?」

訝しげに思われているようです。

それもそのはず。

前世の記憶を思い出して、気づけばゲームのキャラに転生したのだから。

そして、登場人物の事を思い出していたわけで……。

「うぅうん。大丈夫だよ、カミーユ」

「それなら良いんだけどさ。体調悪い時は無理しちゃダメだよ」

「ありがとう」

そう言うとカミーユは去っていった。

カミーユ。

カミーユは確か……。

キャラクターデータとしてはモンブランのケーキが大好きで、嫌いな食べ物がきのこ。

それから、侯爵のご子息で兄がモンクになるために家を出て行ってしまったんだっけ。

だから、次期侯爵の当主はカミーユとも言われている。


「おはよう」

後ろでソプラノの声がした。

「あー、おはようロザリー」

ロザリー・アマンダ・スミュール。

ロザリーは親友。

このロザリーをかのコンスタン王太子はナンパをしたのです。

ふわふわな桃色の髪にエメラルドグリーンの瞳。

「あれ? なんか今日様子がおかしいよ」

ロザリーも怪訝に思っているようです。

「あ……あ……大丈夫よ」

と作り笑いを見せた。

「体調悪かったら、ゆっくりとした方がいいわよ」

「ロザリー、心配ありがとう」

心許せる親友とはいえ、前世の記憶がある……なんて言ったら、変人に思われるだろうなぁ。

「どうしたの? まごついて」

ロザリーは依然心配な様子。

ここは暴露すべき?

「ロザリー。取り敢えずお手洗いに来て」

「いいわよ」

私はロザリーをトイレに呼び出した。

ここなら誰もいない。

もし、誰かに聞かれれば精神病院に送られる。

「ロザリー。これから私の言う事、信じてくれる?」

「もちろんよ。私達、ずっと親友じゃない」

「精神病院送りにされるような事を言うけど、大丈夫?」

「私はクリスティアーヌを信じるわ」

私はロザリーに包み隠さず話すことにしました。


「実はね、私……転生者なの」

「転生って?」

「私、前世の記憶があるの。この世界、私が前世に遊んだ乙女ゲームの世界なの」

「何だかよくわからないけど……」

「ロザリー、あなただから言える」

「うん。絶対に誰にも言わない」

ロザリーは人差し指を口に当てた。

「ロザリー。やっぱりあなたは私の親友よ」

私はロザリーを抱きしめた。

ロザリーは信じてくれた。

そして、教室に戻ってきた。


「あ~、そうそう。貸した本返すの忘れてたわ」

ロザリーは『秘密の心』という本を鞄の中から取り出した。

「読み終わったのね?」

「うん。すっごく感動した」

ロザリーは読書家。
私も読者が大好きで意気投合した。

ロザリーは誰にも見つからないように本を返してくれた。


学園の決まり事は物凄くシビアで、金品貸借禁止。

驕ったり驕られたりする事も禁止。

だから、人目につかないよう、いつも本を貸していた。


なぜ、そのような決まり事があるのかイロイロ考えてみたけど、それって学園内で主従関係ができないようにするためだと思いました。

それもそうです。

王太子から平民まであらゆる身分の人が学園に来ているのだから。


「あれ? クリスティアーヌ。指輪が無いよ」

ロザリーは私の左手を見て言った。

「実はね……」

と言ってコンスタン王太子殿下と婚約破棄したことを言いました。

「そうだったの。でも、負けないで。クリスティアーヌならもっといい人に出会えるわ」

「ロザリー。ありがとう!」

コンスタン王太子殿下は何事も無かったかのように振る舞っている。

しかも、女に囲まれて大声で笑っている。

私は滑稽に思いました。


「王太子殿下も王太子殿下よ。女好き。ハーレムなんかして」

と言ってロザリーはコンスタン王太子殿下を指差しました。

本当にそう。

そして、学園内の女の子にラブレターを書いたり、「好き」と言ってみたりする。

本当に女癖の悪い男。


「おはよー」

そこに現れたのは頭脳明晰。聡明。美男子の三拍子揃ったガブリエル・アドン・アンジューだった。

「おはよー」

ブラウンヘアーの肩まで届くロン毛。紫の瞳を持つ色白な男性。

彼は王族に仕える兵士長の息子で、彼自身もまた王族に仕える事を志している。

確かガブリエルは好きな食べ物がイカ墨パスタで嫌いな食べ物がカニなんだっけ。

昔はカニが好きだったらしいけど、カニであたってから嫌いになってしまったとか。

そう言えば私も前世カニにあたってこの世のものとは思えない苦しみを味わったっけ?


「あれ? 何か今日様子がおかしいよ」

私はつばを飲み込んだ。

やはり、挙動不審に思えるようだ。

「具合、悪いの?」

「そう。何か今日クリスティアーヌの調子がおかしいのよ」

ロザリーが眉根を寄せている。

「大丈夫かい?」

「大丈夫よ。あははは」

またしても作り笑いを見せました。

「笑った顔が可愛いよ」

とガブリエルは言ってくれた。

やはりアントワーヌとは大違い!

ここまでもゲーム通り。
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