婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。

hikari

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第2話

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両親と仲違いしたものの、辛うじて学園に通学される事が許されました。

コンスタン王太子殿下とは同じクラス。流石に気まずい空気になっています。


この王立学園は王侯貴族から平民までが通学しています。

そこに、クラスメイトのアントワーヌが現れました。

「クリスティアーヌ! おはよう」

「おはようございます」

このアントワーヌはダメンズ。一方的に言い寄ってきて、学園内どこでもついてくる。いわゆるストーカー。しかも、かなり粘着質。

いつもジロジロこちらを見てきて、ニヤニヤわらっているのです。



勿論圏外。

挨拶だけは義理でする。

坊主頭。何かこだわりがあるのでしょうか?

大してイケメンでも無いのに、鏡を覗いては無い頭を弄っている。

しかも、「僕ってイケているだろ?」などといつも独りごちているのです。

目も小さく、吊り目。

さらに、顔が痒いのかわからないけど、いつも顔に傷があるのです。

人伝に聞くにはズボンの中に手を突っ込んで人前で堂々と掻いているそうです。

しかも、掻いた手の匂いをかいでいるようです。

平民の癖して公爵の私に言い寄ってくるとはなんと図々しい男。

逆玉を狙っているのでしょうか?

勿論、恋愛対象外ではあるので、このアントワーヌとのエンディングは無い。

ただの脇役に過ぎないのです。


とはいえ、この男は空気が読めないのか何なのかわかりませんが、とにかく身勝手なのです。


「クリスティアーヌさん。その指輪可愛いね」

「クリスティアーヌさん、今日の髪型素敵ですね」

と言ってきたり、何かと自分に気を引こうとするのです。

そしてある日、髪の毛を切ったら、

「髪が長いほうが可愛かったよ」

などと言ってきたので、流石にウザったくなった私は

「私はそうは思わないけど」

とあしらってやりました。

そしてまた、

「クリスティアーヌさん、その服素敵ですね」

と言ってきたので

「あっそ」

と言ってやりました。


好きでもない男にほめられても嬉しくない。

「虫の居所が悪いのだろう」

そう思われていたのかもしれません。

私は冷たくあしらったけど、それでも執拗にベタベタとしてくるのです。



あまりにもウザくなったので、無視をするようになりました。

勿論、挨拶もしなくなりました。


そうなると嫌がらせをしてくるようになりました。


帰りの会が終わると、どこかで待ち伏せをして、ぶつかって来ようとするのです。

さらには「何かついているよ」と言ってきてはうなじを触ってきたのです。

流石にそれには参りました。

無視をされた。それは「無抵抗になった」と思われていたようです。

プラス思考というか、本当に自分の都合の良いように解釈しているのです。

迷惑な事この上ありません。

そして、私は少し折れて挨拶だけはするようにしました。


それでも嫌がらせは続いていますが……。


さらに始末悪いのはコンスタン王太子殿下と交際していた時はこう考えていたようです。

「フラレれば僕のところに来てくれるだろう」と。

婚約をした事を言えば

「婚約が解消すれば僕のところに来てくれるだろう」

もう自己中の極みです。

趣味も身分も全く違うのに、無理矢理仲良くなろうとする。

私はアントワーヌにどれほど悩まされていた事か。

教師に言っても嫌がらせが収まるのは一時だけ。

ほとぼりが冷めると再び嫌がらせ行為をしてくるのです。

かれこれ5回以上注意されているにも関わらず……。


コンスタン王太子殿下にも相談しましたが、根本的な解決にはなりませんでした。


しかも、この男、私のところに来る前までは他の女性に言い寄っていました。

その人は伯爵でした。

伯爵のシャーロットは「ノー」が言えない性格でした。

それゆえ、アントワーヌに翻弄されていたのです。


二人はよくチェスで遊んでいました。

アントワーヌは大のチェス好き。

シャーロットもまたチェスが好きだったのです。


他にも好きな食べ物が一緒だったり、趣味が一緒だったりで二人は意気投合。

シャーロットとアントワーヌは交際しているの? 疑惑まで浮上しました。

その位仲が良かったのです。


しかし、シャーロットはアントワーヌの事を心底嫌っていました。

チェスをしている時に、自分が負けそうになると台をひっくり返すというのです。

アントワーヌがキレやすいタイプだということは知っていましたが、まさかチェスの台をひっくり返すなど信じがたい出来事です。

しかも、いつも似通った話ばかりするので、一緒にいてもつまらない、と言っていました。

しかし、やはり「ノー」が言えないので、アントワーヌと仲良くしているのです。


しかしある日。シャーロットが学園を辞めてしまったのです。

シャーロットの父親は伯爵でありながら酒豪で暴力を振るうようです。

そしてシャーロットは度々父親から暴力を受けていたようです。

シャーロットが父親かの暴力を受けている事は学園内でも有名でした。

けがをしては傷を見せてくるのです。そして「父から暴力受けた」と言ってきたからです。


担任は父親の味方。

やはり、伯爵家当主なのだから、信頼度も高いのです。

伯爵家でもシャーロットは悪者呼ばわり。

侍女や執事も父親の味方。

「このままでは殺される!」

そう危機を感じたシャーロットは家を出て行ってしまったのです。

そして、学園へ退学届を出したのです。


シャーロットがいなくなったら、アントワーヌは私に言い寄ってくるようになりました。


シャーロット、戻ってきて!

何度もそう叫びました。


アントワーヌがいなくなると、次にスポーツ万能のカミーユが現れました。
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