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家路を急ぐ
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翌朝も天気は晴れ。
真夏の日差しが燦々と照りつけている。
やはり暑い……。
アレクサンドラは馬車に乗り込んだ。
「カイエン。どうしてあの宿屋の主人はカイエンの事を知っていたの?」
『山紫水明』の中でもそのような描写はあったが、なぜ宿屋の主人がカイエンを知っていたかについては書かれていなかった。
「それは以前、あの宿屋の主人も御者を務めていましてね。同業者の仲間だったんですよ」
「そうだったのね」
(なるほど、納得)
アレクサンドラはスッキリした。
馬車はひたすら街中を行く。
そして、街を抜けると、広大な穀倉地帯に出た。
やはり、人っ子1人いない。
いつ、魔物が出てきてもおかしくはない。
馬車はカツカツという独特のジョイント音を鳴らし、走る。
(馬も暑いだろうなぁ)
ひたすら南へ南へ一行は進む。
☆★☆★
二泊三日の旅を終え、一行はグラタナ邸についた。
「お疲れ様でした。お嬢様」
カイエンが馬車の扉を開けた。
「やっと着いたわ。長い旅だったわね」
(これが電車だったら、どれだけ早く着いたことか。電車が無いって本当に不便よね)
アレクサンドラは改めて電車のありがたみを知った。
アレクサンドラが一宮悠菜だった頃、鉄道好きの弟がいた。
冬麻だった。
(電車なんてただの移動の手段じゃない。なんであんなものに愛着を感じるのか転生後の今でもわからないわ)
バスもそう。
冬麻は電車だけでなく、バスの写真もよく撮っていた。
あの頃が懐かしくなってきた。
(当麻も今頃家庭を持って幸せにしているかもしれないわ。私は私の人生を楽しまないと。王太子殿下には婚約破棄されたけど、もっと素敵な人生が待っているに決まっているわ)
「カイエン。ありがとう」
「はい。アレクサンドラ様。では私はこれにて失礼します」
「カイエン、ありがとうございました」
トビーが頭を下げた。
「これから帰宅するわけだけど」
「どうしたのですか、アレクサンドラ様」
「どう……説明すれば良いのか」
(物語の中ではとくに叱責されるわけでもなかったけれど、やはり緊張はする)
何日かぶりに自宅に着いた。
それまではしばらく王宮で暮らしていた。
いわゆる同棲。
(ディアドラも一緒に住んでいるというのは原作と変わらないわね。というより、私がすべきことはディアドラとヒロインのリリーナとその恋人ジェフをギャフンと言わせてやるのよ。チャールズなんかとはくっつかないわ)
王宮での生活にすっかり馴染んでしまったため、実家での生活がまた不安だ。
「どうも、お嬢様」
執事のアンドレイだ。
アンドレイとは堀井さんの作品ではいつも統一されている。
堀井さんはアンドレイという名前がお気に入りなのだろう。
確かに執事にアンドレイという名前はよく合っている。
「初めまして。私は王宮よりアレクサンドラ様の護衛としてやって参りましたトビーと申します」
「どうも、初めまして。グラタナ家に仕える執事のアンドレイと申します」
「トーマス。トビーはとても頼りになりますわ。本当に宜しくお願いしますわ」
「了解です。お嬢様」
アンドレイは続けた。
「で、お嬢様。お戻りになったのは良いですが、王宮で何かあったのですか?」
「ええ。王太子殿下と婚約破棄になったの」
「王太子殿下と婚約破棄ですか。何でまた」
「うん。王太子殿下が浮気をしていたの。それ以上聞かないで、アンドレイ」
「わかりました。辛い気持ち、察します」
アンドレイは続けた。
「で、今後どうされるんですか?」
「長旅の疲れを癒やしたいわ」
「では、御主人様と奥様にこのことについて伝えておいた方がよろしいですか?」
「そうね。伝言お願いできるかしら? 詳細は私の方から説明するわ」
「で、お部屋の方はどうされますか?」
「以前使っていた部屋を使うわ」
「そうですか。では、お連れ様の部屋は……」
「アンドレイ。既に亡きお爺様の部屋へ紹介して案内してあげて」
「わかりました」
「では、お連れ様。わたくしに着いて来て下さい」
「はい」
「じゃあ、私は自分の部屋へ行くわ」
アレクサンドラはトビーと別れ、自室へと行った。
家を出たのは今年の冬。
まだまだあの時は雪が降り積もっていた。
グラタナ領内は屈指の豪雪地帯。
一度雪が降り積もれば、1階が埋もれてしまう程降る。
しかし、アレクサンドラは雪国には慣れていた。
転生前、母親は新潟県の出身だった。
そして、年末年始になると、決まって新潟に帰省していた。
新潟の雪は半端なものでは無かった。
転生前の身長は153cmと小柄だった。
丁度、身長と同じ高さの雪の壁ができていた。
だから、雪が沢山降ろうと、吹雪になろうと特別驚く事は無い。
外は青空が広がっている。
強い日差しが窓から差し込む。
アレクサンドラは自室についてほっと一息ついていた。
「久しぶりの実家。で、お父様とお母様にどう説明すれば良いのかしら? そして、連れてきてしまったトビーについてはどうすれば良いのかしら?」
にゃん
アリスがベッドに飛び乗った。
「アリス。私、王太子殿下に婚約破棄されちゃった。これからどうしよう」
ニャン
「私ね、チャールズなんかとは絶対に結婚したくないの」
気づいたら猫に話しかけていた。
猫には人間の言葉は伝わらないけれども、気持ちでは伝わっていると思っている。
アレクサンドラは餌を取り出し、皿に置いた。
アリスはお皿に向かって一心不乱に餌を食べている。
「あー!! 絶対に、チャールズとだけは結婚したくないからね」
原作の中で片思いしていたバイロン先生と一緒になるんだ、と決めていた。
バイロン先生はオルソン侯爵家のご令息。それ以外に誰がいるというの?
真夏の日差しが燦々と照りつけている。
やはり暑い……。
アレクサンドラは馬車に乗り込んだ。
「カイエン。どうしてあの宿屋の主人はカイエンの事を知っていたの?」
『山紫水明』の中でもそのような描写はあったが、なぜ宿屋の主人がカイエンを知っていたかについては書かれていなかった。
「それは以前、あの宿屋の主人も御者を務めていましてね。同業者の仲間だったんですよ」
「そうだったのね」
(なるほど、納得)
アレクサンドラはスッキリした。
馬車はひたすら街中を行く。
そして、街を抜けると、広大な穀倉地帯に出た。
やはり、人っ子1人いない。
いつ、魔物が出てきてもおかしくはない。
馬車はカツカツという独特のジョイント音を鳴らし、走る。
(馬も暑いだろうなぁ)
ひたすら南へ南へ一行は進む。
☆★☆★
二泊三日の旅を終え、一行はグラタナ邸についた。
「お疲れ様でした。お嬢様」
カイエンが馬車の扉を開けた。
「やっと着いたわ。長い旅だったわね」
(これが電車だったら、どれだけ早く着いたことか。電車が無いって本当に不便よね)
アレクサンドラは改めて電車のありがたみを知った。
アレクサンドラが一宮悠菜だった頃、鉄道好きの弟がいた。
冬麻だった。
(電車なんてただの移動の手段じゃない。なんであんなものに愛着を感じるのか転生後の今でもわからないわ)
バスもそう。
冬麻は電車だけでなく、バスの写真もよく撮っていた。
あの頃が懐かしくなってきた。
(当麻も今頃家庭を持って幸せにしているかもしれないわ。私は私の人生を楽しまないと。王太子殿下には婚約破棄されたけど、もっと素敵な人生が待っているに決まっているわ)
「カイエン。ありがとう」
「はい。アレクサンドラ様。では私はこれにて失礼します」
「カイエン、ありがとうございました」
トビーが頭を下げた。
「これから帰宅するわけだけど」
「どうしたのですか、アレクサンドラ様」
「どう……説明すれば良いのか」
(物語の中ではとくに叱責されるわけでもなかったけれど、やはり緊張はする)
何日かぶりに自宅に着いた。
それまではしばらく王宮で暮らしていた。
いわゆる同棲。
(ディアドラも一緒に住んでいるというのは原作と変わらないわね。というより、私がすべきことはディアドラとヒロインのリリーナとその恋人ジェフをギャフンと言わせてやるのよ。チャールズなんかとはくっつかないわ)
王宮での生活にすっかり馴染んでしまったため、実家での生活がまた不安だ。
「どうも、お嬢様」
執事のアンドレイだ。
アンドレイとは堀井さんの作品ではいつも統一されている。
堀井さんはアンドレイという名前がお気に入りなのだろう。
確かに執事にアンドレイという名前はよく合っている。
「初めまして。私は王宮よりアレクサンドラ様の護衛としてやって参りましたトビーと申します」
「どうも、初めまして。グラタナ家に仕える執事のアンドレイと申します」
「トーマス。トビーはとても頼りになりますわ。本当に宜しくお願いしますわ」
「了解です。お嬢様」
アンドレイは続けた。
「で、お嬢様。お戻りになったのは良いですが、王宮で何かあったのですか?」
「ええ。王太子殿下と婚約破棄になったの」
「王太子殿下と婚約破棄ですか。何でまた」
「うん。王太子殿下が浮気をしていたの。それ以上聞かないで、アンドレイ」
「わかりました。辛い気持ち、察します」
アンドレイは続けた。
「で、今後どうされるんですか?」
「長旅の疲れを癒やしたいわ」
「では、御主人様と奥様にこのことについて伝えておいた方がよろしいですか?」
「そうね。伝言お願いできるかしら? 詳細は私の方から説明するわ」
「で、お部屋の方はどうされますか?」
「以前使っていた部屋を使うわ」
「そうですか。では、お連れ様の部屋は……」
「アンドレイ。既に亡きお爺様の部屋へ紹介して案内してあげて」
「わかりました」
「では、お連れ様。わたくしに着いて来て下さい」
「はい」
「じゃあ、私は自分の部屋へ行くわ」
アレクサンドラはトビーと別れ、自室へと行った。
家を出たのは今年の冬。
まだまだあの時は雪が降り積もっていた。
グラタナ領内は屈指の豪雪地帯。
一度雪が降り積もれば、1階が埋もれてしまう程降る。
しかし、アレクサンドラは雪国には慣れていた。
転生前、母親は新潟県の出身だった。
そして、年末年始になると、決まって新潟に帰省していた。
新潟の雪は半端なものでは無かった。
転生前の身長は153cmと小柄だった。
丁度、身長と同じ高さの雪の壁ができていた。
だから、雪が沢山降ろうと、吹雪になろうと特別驚く事は無い。
外は青空が広がっている。
強い日差しが窓から差し込む。
アレクサンドラは自室についてほっと一息ついていた。
「久しぶりの実家。で、お父様とお母様にどう説明すれば良いのかしら? そして、連れてきてしまったトビーについてはどうすれば良いのかしら?」
にゃん
アリスがベッドに飛び乗った。
「アリス。私、王太子殿下に婚約破棄されちゃった。これからどうしよう」
ニャン
「私ね、チャールズなんかとは絶対に結婚したくないの」
気づいたら猫に話しかけていた。
猫には人間の言葉は伝わらないけれども、気持ちでは伝わっていると思っている。
アレクサンドラは餌を取り出し、皿に置いた。
アリスはお皿に向かって一心不乱に餌を食べている。
「あー!! 絶対に、チャールズとだけは結婚したくないからね」
原作の中で片思いしていたバイロン先生と一緒になるんだ、と決めていた。
バイロン先生はオルソン侯爵家のご令息。それ以外に誰がいるというの?
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2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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