【完結】気づいたら異世界に転生。読んでいた小説の脇役令嬢に。原作通りの人生は歩まないと決めたら隣国の王子様に愛されました

hikari

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魔物に滅ぼされた村カナン

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一行はグラタナ領へ向かって歩いている。とにかく南へ南へ。

雨上がりはすっかり晴れて青空が戻ってきた。強い日差しもまた戻ってきた。


村から村へ丘陵地帯を歩く。


森の中を歩く。

森の中は魔物がいっぱい。少しでも気を抜けば、魔物は襲いかかってくる。

アトポスもいるかもしれない。


アレクサンドラたちは身構えた。


つつがなく森を抜けると、そこには魔物に滅ぼされたと思われる村が出現した。


魔物によって滅ぼされた町村がある事は知っていた。


当然、ここには魔物が住んでいるに違いない。

アトポスもまた例外ではない。


滅んだ村だから、当然人っ子一人いない。


しかし、村の中央部に墓場があった。

墓場は住民の墓場だろう。


周りは静寂に包まれている。

その静寂さがまた不気味なのだ。



3階建ての建物が目に入った。


そこには沢山の個室とベッドが並べられていた。

壁には絵画が飾られていた。


「ここには宿屋があったみたいね」 

アレクサンドラはすぐにそこが宿屋だとわかった。


「宿屋……か。そう言えば我々は今晩どこに泊まれば?」

とトビー。

「大丈夫です。この先にオルキスという街があります。オルキスに行けば泊まれる場所があるはずです」

と、カイエン。


その通り。

「こんな恐ろしい村にいたら、いつアトポスやバジリスクが出てくるかわからないわ。早く行きましょう」

馬車はスピードを速め、カナンを去った。


そして、再び丘陵地帯を行く。


どこまでも緑の大地が続く。

空は相変わらず快晴。


真夏の馬車の中は蒸し風呂だ。


(そうよね。物語の時代背景が中世ヨーロッパなんだから。エアコンなんてそんな贅沢品は無いよね。そもそも、移動自体が馬車一択。3日もかかるようなところなら、電車で30分位よね。それに、馬車なんか使わずに車だよね)

アレクサンドラこと一宮悠菜は実は車の運転が上手だった。

それが何よりもの自慢だった。

対して、自転車を漕ぐのは下手くそですぐに転びそうになる。


悠菜は横浜市保土ケ谷区から東京の六本木まで通っていた。

それでも、やはり3日はかからない。


(電車に乗ればどんなに早い事か。しかも、魔物が出たり、滅びた街が出たり、異世界そのものだわ)

「アレクサンドラ様。体調どうですか?」

トビーが心配そうにこちらを見てきた。

「ううん。大丈夫よ。私は暑さには強いんだから」

「そうですか。それなら安心です」


(でも、また一雨欲しいのが本音なのよね)

「それにしても暑い」

トビーは掌を団扇代わりに扇いでいた。




と、そこで何かが蠢いている。

「うわー!!」


カイエンが声をあげた。


な、なんと、数匹の魔物群れ……これはガーゴイルだとわかった。


皆は身構えた。


「カイエン! 離れて!!」

トビーとアレクサンドラは馬車から飛び出した。


(何の魔法が良いかしら? 相手の属性がわからない。一番無難なのは闇魔法、光魔法なんだけど……でも、『山紫水明の中庭』では確か炎魔法を!!)

アレクサンドラは炎魔法を使った。


(魔物群れにダメージを与えられたみたい)

そして、トビーが大きな炎の塊を出した。

魔物群れにとどめを刺した。


魔物むれはバッタバッタと空から降ってくる。


「あ、危ない!!」

と、アレクサンドラ。

最後の一匹が残っていた。

アレクサンドラは再び炎魔法を使った。


残る一匹も空から堕ちた。

魔物群れを倒した。


「油断は禁物です。まだまだ魔物は出るかもしれません」

(戦闘シーンは鮮明に描かれていたわね)

「でも、大丈夫よ。トビーがいてくれるから」

アレクサンドラはトビーを労った。


とりあえず、出てきたのがアトポスでなかったのが助かった。


魔物は同じ魔物でも属性か異なることがある。

先程のガーゴイルは風属性だった。


属性はそれぞれ、炎、風、雷、土、水とある。

風は炎に弱く、土に強い。

炎は水に弱く、雷に弱い。

水は雷に弱く、炎に強い。

雷は土に弱く、水に強い。

土は雷に強く、風に弱い。

他にも闇魔法、光魔法がある。


闇は光に弱く、風、炎、水、雷、土のエレメントに強い。

光はエレメントに弱く、闇に強い。


それぞれ、属性と相性がある。


先程のガーゴイルはたまたま風属性だったけど、ガーゴイル=風とは限らないのだ。


だが、アンデットは概ね闇属性で合っている。


気づくと空は茜色に染まっていた。

「かなり歩きましたね」

「そうね」

「さて。今夜はどこに泊まりますかね?」

カイエンが後ろを振り向いた。


「どうしよう……」

「この先にターナという街があります。ターナで一泊してみてはどうでしょう?」


「そうするわ」

一行はターナを目指して走っている。


(夕方になったら、少しは涼しくなったわ)

それでもトビーは汗をかいていた。

それもそのはず。

トビーの着ている鎧は鋼だから、熱を吸収する。


「トビー。暑くない?」

「暑いです」

(そうよね。それにしても、これでは熱中症になるわ)


夜の帳が降り、一行はようやくターナについた。

「これでようやく一泊できる」


「良かったわ」

夜になると、逆に寒くなってきた。

ターナの街は栄えていた。

しかし、夜ということもあり、辺りはひっそりと静まり返っている。


3人は宿屋に入った。

宿屋の主人は髭の長い中年の男性だった。

「あれ? カイエンさんではありませんか。お代はいりません。どうぞどうぞ」 

一体どういうことなのだろうか?

アレクサンドラにはよくわからなかった。
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