上 下
2 / 18

回想編 カルロスとの邂逅

しおりを挟む
王立学園の朝。

夏の日差しが厳しい教室の中はうだるような暑さ。

教室の中はいつも通り賑やか。

クラスメイトの会話が飛び交っている。

外ではセミがけたたましく鳴いている。




シャルロッテは暑さに強かったので、皆から羨ましがられていた。



その代わり寒さにはとことん弱い。



「おはよう、シャルロッテ」

茶髪の短髪ブラウンの瞳。

中肉中背。クラスメイトのカルロスだった。

「おはよう、カルロス!」

カルロスはシャルロッテの事を気にしているようだった。

というのも、いつも元気よく挨拶してくるし、事あるごとに目が合うからだ。


カルロスはストーム公爵家の令息で後継にあたる。

そのため、公爵家後継の教育を受けている。



王侯貴族には既に婚約者がいる人がいるが、カルロスとシャルロッテには婚約者はいなかった。


この学園にも既に婚約者がいる人が何人もいる。


友人のレベッカもそうだ。


「レベッカおはよう!」

赤髪の肩までかかる髪でルビーの瞳。親友のレベッカだ。

「おはよう、シャルロッテ」

その横では青髪の男性がいた。

婚約者のロバートだ。

「おはよう、シャルロッテ」

「おはよう、ロバート」

ロバートは長身で鼻が高く、イケメン。

しかも、18侯爵家の1つ、ハルヴァン家の後継。


貴族との結婚が既に決まっている。

しかも、4歳のときに両親の図りで既に婚約していた。

そして、学園卒業後に結婚する事になっている。


レベッカが心底羨ましかった。


レベッカはやはり、ロバートと仲睦まじい。

いつもくっついている。

「レベッカ、いいなあ。婚約者がいて」

レベッカは顔を赤らめた。


「うふ。でも、シャルロッテも可愛いから結婚できるよ」

その言葉に励まされた。

結婚に希望が持てた。


「シャルロッテにはエンリケがいるじゃない」

エンリケ。シャルロッテが片思いをしていた相手だ。


エンリケは魔法が得意。石化を解く事ができる。



近頃、石化される事件が相次いでいた。

アトポスが出て、石に変えられてしまうのだ。


そして、そのたびに、エンリケが行き、石化を解いている。



アトポスは主に森の中にいた。

だから、森には近づかないように、と言われていた。


しかし、エンリケは積極的に森に近づき、石化された人や動物を救っていた。



「あははは。レベッカったら。エンリケは片思いよ」

「でも、結ばれるって」

本当に結ばれるのだろうか?



エンリケはクラスの中でもモテモテなウェンディが気になっているようだった。


なぜなら、ウェンディがいないと

「ウェンディがいない」

と言っていたからだ。

エンリケを好きになるのは高嶺の花だと思っていた。


でも、レベッカがエンリケと一緒になれる、と言ったことで、何だか安心した。


とはいえ、リヴェンキルト王国で一番人気あるのはやはり、リヴェンキルト王国第一王子、ランスロットだった。


しかし、シャルロッテはランスロットにはそれほど惹かれなかった。

それは王子であり、何よりイケメンであるランスロットには既に婚約者がいる……と思っていたからだ。

だからこそ、エンリケが好きだった。

シャルロッテはそれゆえ、ウェンディにヤキモチをやいていた。


「ウェンディ。あんな人のどこが良いのよ。あんなペチャパイ女」

シャルロッテは細身にしては胸が大きい。そのためか、胸の小さいウェンディの貧乳がゆるせなかったのだ。

「あははは。餅なんか焼いちゃだめよ。大丈夫。ウェンディはモテモテだから、他のオトコのところへ行く。そうすると、エンリケはシャルロッテのところへ来てくれるかもしれないわよ」

それがよくレベッカとの間で交わされる言葉だった。



「そういえばエンリケで思い出した。昨日またアトポスが出たみたいよ」

「また? で、被害者は?」

「被害者は2人組みたい」

「アトポス怖いわ」

アトポスという魔物は蛇のような風貌をしているという。

「で、ランスロット王子殿下がたまたまそばを通りかかっていたみたいで、ランスロット王子殿下が石化を解いたみたいよ」

「すごいわ、ランスロット王子殿下」


「ねぇ、レベッカ」

「うん?」

「何でアトポスを退治しようとする人がいないのかしら?」

「退治できないみたいよ」

そう言えば、アトポスの声を聞くと石化させられる……と聞く。


アトポスの声は大きく、誰もその声を遮断できないらしい。


「アトポスの唸り声かしら?」

「そう。アトポスと目が合うと、威嚇されるみたいよ。そして、威嚇する時に唸り声をあげるらしい」

「アトポス退治は難しいわね」

「そうね。あのランスロット王子殿下でさえ退治できないのだから」 


アトポスが早くいなくなって欲しい。

シャルロッテはそう願っていた。


「あら。シャルロッテ。カルロスがお呼びみたいよ」

ふと、後ろを向くとカルロスがいた。


「カルロス、どうしたの?」

「シャルロッテに用事があって」


「う……うん」







「シャルロッテ。俺はシャルロッテの事が好きなんだ。きみはダンスがうまいし、何て言ったってそのえくぼが可愛い」


だけどシャルロッテはエンリケの事が好き。


しかし、カルロスもまたクラスではモテモテだった。


「カルロス? 私なんかで良いの?」

「勿論だ」

エンリケと比べるとまだまだだったけれど、それでもカルロスにはカルロスなりの魅力があった。


カルロスは魔法を解くことはできないものの、その代わり学業が優秀だ。


「カルロス……」


その日を境にシャルロッテはカルロスと交際する事になった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:100

兄のマネージャー(9歳年上)と恋愛する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:5

【BL-R18】敗北勇者への快楽調教

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:178

【R18】囚われの姫巫女ですが、なぜか国王に寵愛されています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,215

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:27,171pt お気に入り:294

処理中です...