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医師を志す
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長い長い冬が明け、ようやく春本番になった。
下級生の入学式も終わり、やっと2年生になった。
2年にもなると、通称「中だるみ」とも言われ、皆、勉学を二の次にしてしまう。
しかし、進路も概ねこの2年の内に決めなければならなかった。
春のやわらかな日差しが教室に差し込む。
教室のあちらこちらで雑談の嵐。
仲良しグループがそれぞれ輪をつくってくっちゃべっている。
朝は賑やかだ。
「おはよー!!」
深緑色した長い髪を二つに分け、小麦色の肌をした三編みをした女性が来た。
耳には黄金のピアスが揺れている。
友人のアシュリーだ。
アシュリー?
フィリッパはふと固まってしまった。
(待って! アシュリーの兄の名前はフランシスコ。同性同名? これってもしや、アシュリーは『願いは叶う♡あの人との恋』の攻略対象者、フランシスコ・ジャクソンの妹ってこと!? うんうん。深緑色の髪に小麦色の肌。兄のフランシスコによく似ている。これもまたちゃあさんのイラストを踏襲した感じよね)
フィリッパはアシュリーが乙女ゲームの攻略対象者のフランシスコの妹である……と直感した。
確かに、原作ではフランシスコに妹がいる描写は出てくる。
フランシスコは医師志望。
確か……妹、名前こそは出てこないが、その妹のアシュリーも医師を目指しているような事が書いてあった……。
「俺は兄妹で医師を志望しているんだ」
それを思い出した。
事実、アシュリーは医師を志している。
アシュリーが医師志望、フィリッパは医師か聖女か迷っていた。
そこで、一応、医学界に興味があるということでアシュリーと意気投合して親友になったことを思い出した。
ゲームをやっているときは、確かに医者との結婚は良いかな? と思った。
しかし、それでも転生前のフィリッパは相手が医師であろうと、弁護士であろうと、結婚を考えたことはほぼ皆無だった。
実際に、この世界でも、アントニオと婚約破棄してから結婚などどうでも良くなった。
姉のベアトリスなら、結婚は避けては通れない。
未来のマジョ公爵を産まなければならないから。
しかし、フィリッパにはそのような使命はない。
前世の記憶も相まって、独身でいた方が気楽だと考えるようになった。
事実、恋愛フリー。
茶会や夜会でも、どの殿方と一緒にいても、誰も何も言わない。
それが特権だ。
アントニオと婚約していた時は、四六時中アントニオと一緒に行動しなければならなかった。
今思えば、不自由。
ところが、婚約から解放されてみると、気楽なことこの上ない。
「ねえ、フィリッパ」
「どうしたの? アシュリー」
「フィリッパはもうそろそろ進路、決めたの?」
「う~ん、それなんだよね」
学園を終了すると、次は専門分野にそれぞれ進む。
聖女を目指すと、修道院が運営する聖女の学校に入ることになる。
医者を目指すと、医者の学校へ進む。
(事実、私が医師を目指すという理由で婚約破棄したんだから、もういいわ、医師になって仕事一筋になってやろうかしら。そんな人生も悪くはないわね)
「フィリッパはやっぱり聖女になるの?」
アシュリーが寂しそうな顔をした。
「うんうん。わたくし、考えたの。わたくしはアントニオ様と婚約破棄した理由はわたくしが医師として家庭に入らないこと。それは筆頭公爵の夫人としてあってはならないこと。だとしたら……」
フィリッパは指パッチンをしながら続けた。
「わたくしは医師になってしまった方が幸せなような気がするの」
「本当にそう思うの?」
アシュリーが訝しげに聞いてきた。
「決まっているじゃない!!」
そうでなければ、通りが通らない。
「じゃあ、医師の学校でもまた一緒になれるのね?」
「勿論よ!」
「でも、聖女は? お母様がフィリッパにとっての人生の師匠だったんじゃないの?」
「確かに、お母様は人生の師匠だわ。でも、それはそれ。貴族令嬢としてのたしなみとかそういう次元の話だわ」
「それと……。医師になったら、その後どうするの? お父様のように王室に仕えるの?」
「そうね。できればそうしたいわ!!」
「パウロ・エンリケ王子殿下の侍医が高齢だから、ひょっとしたら王室で侍医の募集があるかもしれないわね」
「そうね。で」
フィリッパは続けた。
「アシュリーは医師になったらどうするの? やっぱりお父様の診療所を継承するの?」
「診療所はお兄様が継承するわ。私はその助手みたいなものよ。聖女と違った形でお兄様をサポートするの」
「そうなんだ」
「うん」
そこへ、長身で体格の良い栗毛色のおかっぱの女性がやってきた。
ジュディ・クラークだ。
フィリッパは彼女にも心辺りがあった。
(ジュディは侯爵令嬢で、アシュリー同様、攻略対象者の兄がいたわよね? そうね。長身で体格が良いところ、栗毛色の髪。兄のセルジオそっくりだわ!!)
(それにしても……攻略対象者の妹が全員女性で同学年というのも何という偶然。でも、フランシスコには妹がいる描写はあったけど、セルジオには妹がいるような描写はなかったわね……。)
「えへへへ。話、聞いちゃった。ねえ、フィリッパもアシュリーも医師志望なの? 実は私も医師志望なの」
(でも待って! セルジオは確か騎士団長希望だったような? 何でまた医師なのだろう?)
「ねえ、ジュディ」
「なあに? フィリッパ」
「ジュディのお兄様は確か騎士団に入団したのよね?」
「そうよ。今年から晴れて騎士団に入団できたわ!」
「お兄様が騎士団なのに、どうしてジュディは医師になりたいの?」
「私が医師になりたい理由は簡単よ。一度、病気で死にかけた時、医学で人を助けるって凄い!! って思ったの」
「それで医師に憧れたのね?」
「ええ、そうよ」
自分が医師に世話になったのをきっかけに医師への道を志すことは珍しくない。
事実、転生前の世界でもそうだった。
もっとも、フィリッパは医師になりたいなど一度も思わなかったが。
「じゃあ、みんな医学学校でまた一緒になれるのね?」
アシュリーが妙にハイテンションになった。
「「そうよ」」
「わ~い」
ハイタッチをし合った。
こうして、いつの間にか医学の道を志すことになったフィリッパ。
でも、医師になる人生もまたまんざらではないような気がしてきた。
下級生の入学式も終わり、やっと2年生になった。
2年にもなると、通称「中だるみ」とも言われ、皆、勉学を二の次にしてしまう。
しかし、進路も概ねこの2年の内に決めなければならなかった。
春のやわらかな日差しが教室に差し込む。
教室のあちらこちらで雑談の嵐。
仲良しグループがそれぞれ輪をつくってくっちゃべっている。
朝は賑やかだ。
「おはよー!!」
深緑色した長い髪を二つに分け、小麦色の肌をした三編みをした女性が来た。
耳には黄金のピアスが揺れている。
友人のアシュリーだ。
アシュリー?
フィリッパはふと固まってしまった。
(待って! アシュリーの兄の名前はフランシスコ。同性同名? これってもしや、アシュリーは『願いは叶う♡あの人との恋』の攻略対象者、フランシスコ・ジャクソンの妹ってこと!? うんうん。深緑色の髪に小麦色の肌。兄のフランシスコによく似ている。これもまたちゃあさんのイラストを踏襲した感じよね)
フィリッパはアシュリーが乙女ゲームの攻略対象者のフランシスコの妹である……と直感した。
確かに、原作ではフランシスコに妹がいる描写は出てくる。
フランシスコは医師志望。
確か……妹、名前こそは出てこないが、その妹のアシュリーも医師を目指しているような事が書いてあった……。
「俺は兄妹で医師を志望しているんだ」
それを思い出した。
事実、アシュリーは医師を志している。
アシュリーが医師志望、フィリッパは医師か聖女か迷っていた。
そこで、一応、医学界に興味があるということでアシュリーと意気投合して親友になったことを思い出した。
ゲームをやっているときは、確かに医者との結婚は良いかな? と思った。
しかし、それでも転生前のフィリッパは相手が医師であろうと、弁護士であろうと、結婚を考えたことはほぼ皆無だった。
実際に、この世界でも、アントニオと婚約破棄してから結婚などどうでも良くなった。
姉のベアトリスなら、結婚は避けては通れない。
未来のマジョ公爵を産まなければならないから。
しかし、フィリッパにはそのような使命はない。
前世の記憶も相まって、独身でいた方が気楽だと考えるようになった。
事実、恋愛フリー。
茶会や夜会でも、どの殿方と一緒にいても、誰も何も言わない。
それが特権だ。
アントニオと婚約していた時は、四六時中アントニオと一緒に行動しなければならなかった。
今思えば、不自由。
ところが、婚約から解放されてみると、気楽なことこの上ない。
「ねえ、フィリッパ」
「どうしたの? アシュリー」
「フィリッパはもうそろそろ進路、決めたの?」
「う~ん、それなんだよね」
学園を終了すると、次は専門分野にそれぞれ進む。
聖女を目指すと、修道院が運営する聖女の学校に入ることになる。
医者を目指すと、医者の学校へ進む。
(事実、私が医師を目指すという理由で婚約破棄したんだから、もういいわ、医師になって仕事一筋になってやろうかしら。そんな人生も悪くはないわね)
「フィリッパはやっぱり聖女になるの?」
アシュリーが寂しそうな顔をした。
「うんうん。わたくし、考えたの。わたくしはアントニオ様と婚約破棄した理由はわたくしが医師として家庭に入らないこと。それは筆頭公爵の夫人としてあってはならないこと。だとしたら……」
フィリッパは指パッチンをしながら続けた。
「わたくしは医師になってしまった方が幸せなような気がするの」
「本当にそう思うの?」
アシュリーが訝しげに聞いてきた。
「決まっているじゃない!!」
そうでなければ、通りが通らない。
「じゃあ、医師の学校でもまた一緒になれるのね?」
「勿論よ!」
「でも、聖女は? お母様がフィリッパにとっての人生の師匠だったんじゃないの?」
「確かに、お母様は人生の師匠だわ。でも、それはそれ。貴族令嬢としてのたしなみとかそういう次元の話だわ」
「それと……。医師になったら、その後どうするの? お父様のように王室に仕えるの?」
「そうね。できればそうしたいわ!!」
「パウロ・エンリケ王子殿下の侍医が高齢だから、ひょっとしたら王室で侍医の募集があるかもしれないわね」
「そうね。で」
フィリッパは続けた。
「アシュリーは医師になったらどうするの? やっぱりお父様の診療所を継承するの?」
「診療所はお兄様が継承するわ。私はその助手みたいなものよ。聖女と違った形でお兄様をサポートするの」
「そうなんだ」
「うん」
そこへ、長身で体格の良い栗毛色のおかっぱの女性がやってきた。
ジュディ・クラークだ。
フィリッパは彼女にも心辺りがあった。
(ジュディは侯爵令嬢で、アシュリー同様、攻略対象者の兄がいたわよね? そうね。長身で体格が良いところ、栗毛色の髪。兄のセルジオそっくりだわ!!)
(それにしても……攻略対象者の妹が全員女性で同学年というのも何という偶然。でも、フランシスコには妹がいる描写はあったけど、セルジオには妹がいるような描写はなかったわね……。)
「えへへへ。話、聞いちゃった。ねえ、フィリッパもアシュリーも医師志望なの? 実は私も医師志望なの」
(でも待って! セルジオは確か騎士団長希望だったような? 何でまた医師なのだろう?)
「ねえ、ジュディ」
「なあに? フィリッパ」
「ジュディのお兄様は確か騎士団に入団したのよね?」
「そうよ。今年から晴れて騎士団に入団できたわ!」
「お兄様が騎士団なのに、どうしてジュディは医師になりたいの?」
「私が医師になりたい理由は簡単よ。一度、病気で死にかけた時、医学で人を助けるって凄い!! って思ったの」
「それで医師に憧れたのね?」
「ええ、そうよ」
自分が医師に世話になったのをきっかけに医師への道を志すことは珍しくない。
事実、転生前の世界でもそうだった。
もっとも、フィリッパは医師になりたいなど一度も思わなかったが。
「じゃあ、みんな医学学校でまた一緒になれるのね?」
アシュリーが妙にハイテンションになった。
「「そうよ」」
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