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夜会
王室主催の夜会。
フィリッパは姉のベアトリスと共に参加している。
思うのだった。
貴族として転生し、違和感を覚えた。
貴族は贅沢な暮らしをしている。
フィリッパは転生前は宝石やブランド品に興味が無かった。
というのは、宝石をつけていく場所が無かったからだ。
友達からの誘いもあったが、仕事が忙しくてそれどころでは無かった。
遊びとは無縁だった。
そして、彼氏はいない。
自慢では無いが、フィリッパは彼氏なし=年齢だった。
処女だった。
ブラック企業に勤務していた。
日々、残業だらけ。
収入はそれなりにあったが、それでもハードワークだった。
もっとも、IT企業はそれが当たり前だと思っていたからだ。
フィリッパはそれでも、その人生を選んだ。
仕事が楽しかったからだ。
日々、パソコンと睨めっこ。
それが良かったのだ。
残業後の達成感。
フィリッパは転生前に妹がいた。
妹とは確執を起こしていた。
それは、妹が反対を押し切り、派遣の男と結婚したからだ。
派遣は安定しない。
期間が満了すれば、容赦なく解雇される。
満了せずとも、会社の業績が悪くなれば、その時点でリストラに遭う。
勿論、派遣だから、社会保険も無ければ、賞与も無い。
あるのは雇用保険だけだった。
フィリッパは姉のベアトリスとは仲が良い。
ベアトリスは緑色のドレスに身を包んでいる。
ゲームの中のベアトリスは私服。
だから、ドレス姿のベアトリスというのはなんだか新鮮に思えた。
舞踏会では婚約者と踊ることになっている。
ベアトリスには婚約者がいない。
婚約者がいない理由は、次期マジョ家当主ということだ。
当主の夫となる人物が現れないのだ。
女性当主となると、結婚は難しくなる。
だが、ベアトリスは積極的に男性にアプローチかけていたのだ。
ベアトリスがマジョ家の後継者だということは原作には出てこない。
ただの『悪役令嬢』だ。
ヒロイン、シモーネの恋愛の邪魔をする役なのだ。
ちなみに、原作では残念ルートもあり、平民男と結婚してしまう話もある。
そう、それが他の攻略対象者とうまくいかなかったときにそのルートに入ってしまうのだ。
いわゆる、バッド・エンド。
ちょっとでも選択肢を間違うと、その平民男と結婚してしまうのだ。
幸い、ベアトリスはその平民男に言い寄られていない。
フィリッパとベアトリスは今、王宮にいる。
王宮にはグラントラル王国の王侯貴族が各地から集う。
皆、ドレスを着込んでいる。
前世の記憶が戻っての初めての夜会だ。
結局、アントニオはシモーネと結婚してしまった。
ちなみに原作ではアントニオとシモーネが結婚すると、ベアトリスが嫉妬してシモーネについて醜聞を喧伝することになっている。
いわゆる、負け犬の遠吠えだ。
しかし、今のところその様子はない。
あっては欲しくない。
そもそも、ベアトリスが悪役なのか……自体に疑問が湧く。
悪役令嬢の妹をやっていても、虐げられたり、いじめられたりしたことが無い。
それに、アントニオと悪役令嬢の妹が婚約していただなんて……。
どうやら、原作とは違う様子だ……。
となると、宿命転換がでいるかもしれない。
一縷の望み!!
もしかしたら、ベアトリスも婚約者ができて、結婚できるかもしれない!!
(わたくしの結婚はどうでも良いけれど、お姉さまの結婚だけは譲れないわ!!)
と、そこへフランシスコが現れた。
フランシスコ……攻略対象者の一人。
やはり、見た目はちゃあさんの世界そのものが反映されている。
「やあ、ベアトリスじゃないか。どうしたんだい、こんなところで黄昏ちゃって」
「あ……わたくし……その」
「学園卒業してから、様々な憶測が飛び交っているぞ。亡くなっているとか、婚約者が出た……とか!!」
「いやだわ、フランシスコ。わたくし、こ……婚約者なんかいませんわ!」
「ほうほう。じゃあ、今日は一緒に踊る人がいないんだな?」
「あ……はい」
「じゃあ、良ければ俺と踊らないか?」
「えええ!?」
「お姉さま、チャンスかもしれませんわよ」
背中を押す。
「あ……うん、フィリッパ」
「じゃあ、決まりだな。ベアトリス」
「でも……フィリッパが相手、いないじゃない」
「わたくしのことはどうでも良いですわ、お姉さま」
フィリッパはフランシスコの方へ向き直った。
そして続けた。
「フランシスコ様、どうか姉をお願いしますわ」
「ああ、フィリッパ!! 君は可愛いし、頭も良い。きっと良い男性が見つかるよ!!」
フランシスコも無論、フィリッパがアントニオと婚約をしていたことを知っていた。
と、そこへ!!
肩まである金色の髪、青空のような瞳、高く通った鼻に厚い唇の長身の男性が通りかかった。
うっすら柑橘系の香りがした。
なんと、グラントラル王国の王子でもあり、アウローラ女王の一人息子のパウロ・エンリケ王子だ。
ま、まさに!!
フィリッパは硬直してしまった。
パウロ・エンリケこそが隠しキャラだと言うことを思い出した。
「こ……こんばんは、王子殿下」
一応、挨拶をしておく。
「あ、フィリッパ侯爵令嬢。こんばんは」
と、そこで、パウロ・エンリケが足を止めた。
パウロ・エンリケは辺りを見回すと、口を開いた。
「かわいそうに……」
「何がですか?」
「こんな綺麗な人を捨てるなんて……許せない!!」
フィリッパは何のことだかさっぱりわからない。
「アントニオと婚約破棄になったフィリッパだよね?」
「そ……そうですが……」
「僕はアントニオとシモーネの結婚には反対だった」
「あ……はい」
「アントニオがきみに一方的に婚約破棄を迫ったみたいだね。許せないよ!!」
パウロ・エンリケは続けた。
「婚約破棄したってことは、今日は君はフリーだね?」
「あ、はい。そうですが」
「だったら、僕と踊りませんか?」
「え? 良いんですか?」
「パウロ・エンリケには婚約者はいないと聞く。
それは原作でも一緒だ。
「今夜はゆっくり楽しんでいくと良いよ」
舞踏会は始まった。
ベアトリスはフランシスコと踊っている。
フィリッパはパウロ・エンリケとそれぞれ踊っている。
パウロ・エンリケは王子だけあって踊りが上手だ。
アントニオとは比較にならない。
フィリッパは姉のベアトリスと共に参加している。
思うのだった。
貴族として転生し、違和感を覚えた。
貴族は贅沢な暮らしをしている。
フィリッパは転生前は宝石やブランド品に興味が無かった。
というのは、宝石をつけていく場所が無かったからだ。
友達からの誘いもあったが、仕事が忙しくてそれどころでは無かった。
遊びとは無縁だった。
そして、彼氏はいない。
自慢では無いが、フィリッパは彼氏なし=年齢だった。
処女だった。
ブラック企業に勤務していた。
日々、残業だらけ。
収入はそれなりにあったが、それでもハードワークだった。
もっとも、IT企業はそれが当たり前だと思っていたからだ。
フィリッパはそれでも、その人生を選んだ。
仕事が楽しかったからだ。
日々、パソコンと睨めっこ。
それが良かったのだ。
残業後の達成感。
フィリッパは転生前に妹がいた。
妹とは確執を起こしていた。
それは、妹が反対を押し切り、派遣の男と結婚したからだ。
派遣は安定しない。
期間が満了すれば、容赦なく解雇される。
満了せずとも、会社の業績が悪くなれば、その時点でリストラに遭う。
勿論、派遣だから、社会保険も無ければ、賞与も無い。
あるのは雇用保険だけだった。
フィリッパは姉のベアトリスとは仲が良い。
ベアトリスは緑色のドレスに身を包んでいる。
ゲームの中のベアトリスは私服。
だから、ドレス姿のベアトリスというのはなんだか新鮮に思えた。
舞踏会では婚約者と踊ることになっている。
ベアトリスには婚約者がいない。
婚約者がいない理由は、次期マジョ家当主ということだ。
当主の夫となる人物が現れないのだ。
女性当主となると、結婚は難しくなる。
だが、ベアトリスは積極的に男性にアプローチかけていたのだ。
ベアトリスがマジョ家の後継者だということは原作には出てこない。
ただの『悪役令嬢』だ。
ヒロイン、シモーネの恋愛の邪魔をする役なのだ。
ちなみに、原作では残念ルートもあり、平民男と結婚してしまう話もある。
そう、それが他の攻略対象者とうまくいかなかったときにそのルートに入ってしまうのだ。
いわゆる、バッド・エンド。
ちょっとでも選択肢を間違うと、その平民男と結婚してしまうのだ。
幸い、ベアトリスはその平民男に言い寄られていない。
フィリッパとベアトリスは今、王宮にいる。
王宮にはグラントラル王国の王侯貴族が各地から集う。
皆、ドレスを着込んでいる。
前世の記憶が戻っての初めての夜会だ。
結局、アントニオはシモーネと結婚してしまった。
ちなみに原作ではアントニオとシモーネが結婚すると、ベアトリスが嫉妬してシモーネについて醜聞を喧伝することになっている。
いわゆる、負け犬の遠吠えだ。
しかし、今のところその様子はない。
あっては欲しくない。
そもそも、ベアトリスが悪役なのか……自体に疑問が湧く。
悪役令嬢の妹をやっていても、虐げられたり、いじめられたりしたことが無い。
それに、アントニオと悪役令嬢の妹が婚約していただなんて……。
どうやら、原作とは違う様子だ……。
となると、宿命転換がでいるかもしれない。
一縷の望み!!
もしかしたら、ベアトリスも婚約者ができて、結婚できるかもしれない!!
(わたくしの結婚はどうでも良いけれど、お姉さまの結婚だけは譲れないわ!!)
と、そこへフランシスコが現れた。
フランシスコ……攻略対象者の一人。
やはり、見た目はちゃあさんの世界そのものが反映されている。
「やあ、ベアトリスじゃないか。どうしたんだい、こんなところで黄昏ちゃって」
「あ……わたくし……その」
「学園卒業してから、様々な憶測が飛び交っているぞ。亡くなっているとか、婚約者が出た……とか!!」
「いやだわ、フランシスコ。わたくし、こ……婚約者なんかいませんわ!」
「ほうほう。じゃあ、今日は一緒に踊る人がいないんだな?」
「あ……はい」
「じゃあ、良ければ俺と踊らないか?」
「えええ!?」
「お姉さま、チャンスかもしれませんわよ」
背中を押す。
「あ……うん、フィリッパ」
「じゃあ、決まりだな。ベアトリス」
「でも……フィリッパが相手、いないじゃない」
「わたくしのことはどうでも良いですわ、お姉さま」
フィリッパはフランシスコの方へ向き直った。
そして続けた。
「フランシスコ様、どうか姉をお願いしますわ」
「ああ、フィリッパ!! 君は可愛いし、頭も良い。きっと良い男性が見つかるよ!!」
フランシスコも無論、フィリッパがアントニオと婚約をしていたことを知っていた。
と、そこへ!!
肩まである金色の髪、青空のような瞳、高く通った鼻に厚い唇の長身の男性が通りかかった。
うっすら柑橘系の香りがした。
なんと、グラントラル王国の王子でもあり、アウローラ女王の一人息子のパウロ・エンリケ王子だ。
ま、まさに!!
フィリッパは硬直してしまった。
パウロ・エンリケこそが隠しキャラだと言うことを思い出した。
「こ……こんばんは、王子殿下」
一応、挨拶をしておく。
「あ、フィリッパ侯爵令嬢。こんばんは」
と、そこで、パウロ・エンリケが足を止めた。
パウロ・エンリケは辺りを見回すと、口を開いた。
「かわいそうに……」
「何がですか?」
「こんな綺麗な人を捨てるなんて……許せない!!」
フィリッパは何のことだかさっぱりわからない。
「アントニオと婚約破棄になったフィリッパだよね?」
「そ……そうですが……」
「僕はアントニオとシモーネの結婚には反対だった」
「あ……はい」
「アントニオがきみに一方的に婚約破棄を迫ったみたいだね。許せないよ!!」
パウロ・エンリケは続けた。
「婚約破棄したってことは、今日は君はフリーだね?」
「あ、はい。そうですが」
「だったら、僕と踊りませんか?」
「え? 良いんですか?」
「パウロ・エンリケには婚約者はいないと聞く。
それは原作でも一緒だ。
「今夜はゆっくり楽しんでいくと良いよ」
舞踏会は始まった。
ベアトリスはフランシスコと踊っている。
フィリッパはパウロ・エンリケとそれぞれ踊っている。
パウロ・エンリケは王子だけあって踊りが上手だ。
アントニオとは比較にならない。
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