婚約破棄したら悪役令嬢の妹に転生していたことを知る。ヒロインに婚約者を差し上げたら、この国の第一王子から求愛されました。

hikari

文字の大きさ
13 / 14

夜会

王室主催の夜会。

フィリッパは姉のベアトリスと共に参加している。


思うのだった。

貴族として転生し、違和感を覚えた。

貴族は贅沢な暮らしをしている。

フィリッパは転生前は宝石やブランド品に興味が無かった。

というのは、宝石をつけていく場所が無かったからだ。

友達からの誘いもあったが、仕事が忙しくてそれどころでは無かった。

遊びとは無縁だった。

そして、彼氏はいない。

自慢では無いが、フィリッパは彼氏なし=年齢だった。

処女だった。


ブラック企業に勤務していた。

日々、残業だらけ。

収入はそれなりにあったが、それでもハードワークだった。

もっとも、IT企業はそれが当たり前だと思っていたからだ。


フィリッパはそれでも、その人生を選んだ。

仕事が楽しかったからだ。

日々、パソコンと睨めっこ。

それが良かったのだ。

残業後の達成感。


フィリッパは転生前に妹がいた。

妹とは確執を起こしていた。

それは、妹が反対を押し切り、派遣の男と結婚したからだ。

派遣は安定しない。

期間が満了すれば、容赦なく解雇される。

満了せずとも、会社の業績が悪くなれば、その時点でリストラに遭う。

勿論、派遣だから、社会保険も無ければ、賞与も無い。

あるのは雇用保険だけだった。


フィリッパは姉のベアトリスとは仲が良い。

ベアトリスは緑色のドレスに身を包んでいる。


ゲームの中のベアトリスは私服。

だから、ドレス姿のベアトリスというのはなんだか新鮮に思えた。


舞踏会では婚約者と踊ることになっている。

ベアトリスには婚約者がいない。

婚約者がいない理由は、次期マジョ家当主ということだ。

当主の夫となる人物が現れないのだ。

女性当主となると、結婚は難しくなる。


だが、ベアトリスは積極的に男性にアプローチかけていたのだ。

ベアトリスがマジョ家の後継者だということは原作には出てこない。

ただの『悪役令嬢』だ。

ヒロイン、シモーネの恋愛の邪魔をする役なのだ。


ちなみに、原作では残念ルートもあり、平民男と結婚してしまう話もある。

そう、それが他の攻略対象者とうまくいかなかったときにそのルートに入ってしまうのだ。

いわゆる、バッド・エンド。

ちょっとでも選択肢を間違うと、その平民男と結婚してしまうのだ。

幸い、ベアトリスはその平民男に言い寄られていない。


フィリッパとベアトリスは今、王宮にいる。

王宮にはグラントラル王国の王侯貴族が各地から集う。


皆、ドレスを着込んでいる。

前世の記憶が戻っての初めての夜会だ。


結局、アントニオはシモーネと結婚してしまった。


ちなみに原作ではアントニオとシモーネが結婚すると、ベアトリスが嫉妬してシモーネについて醜聞を喧伝することになっている。

いわゆる、負け犬の遠吠えだ。

しかし、今のところその様子はない。

あっては欲しくない。


そもそも、ベアトリスが悪役なのか……自体に疑問が湧く。

悪役令嬢の妹をやっていても、虐げられたり、いじめられたりしたことが無い。

それに、アントニオと悪役令嬢の妹が婚約していただなんて……。

どうやら、原作とは違う様子だ……。

となると、宿命転換がでいるかもしれない。

一縷の望み!!

もしかしたら、ベアトリスも婚約者ができて、結婚できるかもしれない!!

(わたくしの結婚はどうでも良いけれど、お姉さまの結婚だけは譲れないわ!!)


と、そこへフランシスコが現れた。

フランシスコ……攻略対象者の一人。

やはり、見た目はちゃあさんの世界そのものが反映されている。


「やあ、ベアトリスじゃないか。どうしたんだい、こんなところで黄昏ちゃって」

「あ……わたくし……その」

「学園卒業してから、様々な憶測が飛び交っているぞ。亡くなっているとか、婚約者が出た……とか!!」

「いやだわ、フランシスコ。わたくし、こ……婚約者なんかいませんわ!」

「ほうほう。じゃあ、今日は一緒に踊る人がいないんだな?」

「あ……はい」

「じゃあ、良ければ俺と踊らないか?」

「えええ!?」

「お姉さま、チャンスかもしれませんわよ」

背中を押す。

「あ……うん、フィリッパ」

「じゃあ、決まりだな。ベアトリス」

「でも……フィリッパが相手、いないじゃない」

「わたくしのことはどうでも良いですわ、お姉さま」

フィリッパはフランシスコの方へ向き直った。

そして続けた。

「フランシスコ様、どうか姉をお願いしますわ」

「ああ、フィリッパ!! 君は可愛いし、頭も良い。きっと良い男性が見つかるよ!!」

フランシスコも無論、フィリッパがアントニオと婚約をしていたことを知っていた。


と、そこへ!!

肩まである金色の髪、青空のような瞳、高く通った鼻に厚い唇の長身の男性が通りかかった。

うっすら柑橘系の香りがした。

なんと、グラントラル王国の王子でもあり、アウローラ女王の一人息子のパウロ・エンリケ王子だ。


ま、まさに!!

フィリッパは硬直してしまった。

パウロ・エンリケこそが隠しキャラだと言うことを思い出した。


「こ……こんばんは、王子殿下」

一応、挨拶をしておく。

「あ、フィリッパ侯爵令嬢。こんばんは」

と、そこで、パウロ・エンリケが足を止めた。

パウロ・エンリケは辺りを見回すと、口を開いた。

「かわいそうに……」

「何がですか?」

「こんな綺麗な人を捨てるなんて……許せない!!」


フィリッパは何のことだかさっぱりわからない。

「アントニオと婚約破棄になったフィリッパだよね?」

「そ……そうですが……」

「僕はアントニオとシモーネの結婚には反対だった」

「あ……はい」

「アントニオがきみに一方的に婚約破棄を迫ったみたいだね。許せないよ!!」

パウロ・エンリケは続けた。

「婚約破棄したってことは、今日は君はフリーだね?」

「あ、はい。そうですが」

「だったら、僕と踊りませんか?」

「え? 良いんですか?」

「パウロ・エンリケには婚約者はいないと聞く。

それは原作でも一緒だ。

「今夜はゆっくり楽しんでいくと良いよ」


舞踏会は始まった。

ベアトリスはフランシスコと踊っている。

フィリッパはパウロ・エンリケとそれぞれ踊っている。


パウロ・エンリケは王子だけあって踊りが上手だ。

アントニオとは比較にならない。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法

本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。  ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。  ……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?  やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。  しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。  そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。    自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。