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婚約 〜回想編〜

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ヴァレンティーナは幼少時より、婚約者が決められていた。

相手は水神の子孫で水魔法使い。


ワトソン家は雷神の血を引く侯爵家。

 許嫁いいなずけになった当時は水不足だった。

水不足で作物の値段は高騰し、井戸が枯渇していた。

各地では雨乞いの儀式も行われていたが、雨は一滴も降らず。

それどころか、暴風が吹く始末。


大雨が降れば、雷が鳴る。

その法則に のっとり、両家が婚姻を結ぶことになったのだ。

雨が降れば人々には安穏が訪れる。

もう二度と水不足にならないために……。


春の柔らかな日差しの下、ヴァレンティーナはジョージの部屋に呼ばれた。

ジョージとは仲睦まじく、誰もが二人の婚姻を期待していた。

ヴァレンティーナはジョージの笑顔に励まされていた。

ジョージは誕生日の毎にアクセサリーをプレゼントしてくれた。

嬉しかった。


トントン。

ヴァレンティーナはジョージの部屋をノックした。


「あ、ヴァレンティーナだな? 入っていいよ」

時々裏返る声。これがまた良かった。


ジョージは子供の頃、どんなに高い高音でも出せた。

それがジョージの自慢だった。

歌が上手かった。

歌を歌っては披露していた。

勿論、ヴァレンティーナの前でも歌ってくれた。


「失礼いたしますわ」

ヴァレンティーナはドアノブを回し、中に入った。

ジョージの顔がいつにも増して嬉々としていた。


「ジョージ様?」

「今日はね、ヴァレンティーナに大切な話があって呼んだんだ」

「はい、ジョージ様」

「ヴァレンティーナ。愛している。これは本物の愛だ。確かに政略結婚かもしれない。でも、俺は心の底からヴァレンティーナを愛している」

「わたくしも愛していますわ、ジョージ様」

「あれ~!?  ヴァレンティーナ、顔が赤くなっているぞ?」

ジョージはヴァレンティーナの両頬に手を当てた。

「あっ……」

「んも~。ヴァレンティーナってば。そこがまた可愛いよ」

ジョージは唇にキスをしてくれた。


ヴァレンティーナは本物の愛を確信していた。

「浮気……しないで下さいね」

「する訳ないじゃないか。こんな可愛い子を放っておけないよん」

と言ってまた唇に口づけをしてきた。


「んでな、ヴァレンティーナ。俺……実はな」

そう言って小さな箱を取り出した。

「これ、受け取ってもらえないかな?」

中からまばゆいばかりの光を放った指輪を取り出した。

「勿論です!!」

ジョージから貰うものは基本拒否しない。

「でも、これは特別なものなんだ」

「え!?」

「結婚。しよう!! さあ、手を出して!!」

「はい」

ジョージは左手薬指に指輪をはめてくれた。

「俺は一生に渡ってヴァレンティーナを愛する。この愛は本物。裏切らないよ」

そう言って頬に口づけをした。
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