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家族会議
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わたくしは今回の婚約破棄の事を父であり、ゲルソン伯爵当主であるクロードに告げようと思いました。
のみならず、義母であり、現伯爵夫人でもあるマルシマにも今回の事を話すことにしました。
しかも、婚約破棄の発端は義理の妹のオリヴィアなのです。
オリヴィアがわたくしを既に婚約の決まっていたエイブラハム様から引き離したのです。
血の繋がりの無い義母は「そんなはずはない」と言うに決まっています。
でも、肉親である父はわたくしの味方になってくれるに違いない。
わたくしは期待と不安が拮抗した中で、応接間へと向かいました。
「さあ、リンダ様。伯爵様と奥様がお待ちですよ」
促してくれたのは執事のトーマス。
トーマスとは執事に多い名前ですね。
コンコン
わたくしはドアをノックしました。
「リンダか。中に入れ」
父は部屋に入るよう促してくれました。
父のクロードは長く伸びた黒髪を後ろで束ね、口ひげを生やしている。
そして、黒の瞳にニンニク鼻で背も高く、体格も良い。
「お父様。わたくしはスミス公爵のエイブラハム様と婚約破棄をしました」
「なぬ?!」
父は片方の眉毛を釣り上げました。
「何でも魔法のできる私より、魔法のできない義妹のオリヴィアの方が可愛いから……だそうで」
「オリヴィアがエイブラハム様を略奪した?」
「それはあなたに魅力が無いからよ。リンダ」
義母のマルシマ。茶髪のショートヘアに緑の目。そして、オリヴィア同様、メガネをかけている。
魅力が無いですって!?
「そうだ。オリヴィアは謙虚なんだろうな。魔法ができないと認めるのだからな」
な、な、な、な、なんとお父様はオリヴィアの味方に!
「お父様。なぜオリヴィアを擁護するような発言を?」
「それはお前はどこか意固地になっているような気がする。なまじ魔法ができる余り、どこか傲慢になっていないか?」
なぜ……なぜオリヴィアの味方をするのです?
オリヴィアとは全く血が通っていないというのに。
「お父様。正気ですか? なぜオリヴィアを庇護するのですか?」
「それは簡単だ。お前の事はわたし自身が一番よく知っているからな」
お父様は立ち上がりました。
「私は傲慢になんかなっておりませんわ」
「言い訳無用!!」
お父様は激しく慟哭しました。
「そうよ、リンダ。あなたは昔から傲慢チキなところがあったわ」
とはいえ、初めて義母から『傲慢』と言われた。
「お母様が生きていた時はあんなに優しくしてくれたのに、どうしてお母様が亡くなった途端、人が変わってしまったのです?」
「問答無用! オリヴィアは私が心から愛するイザベラの一人娘なんだからな」
「ではお母様の事は愛していなかったのですか?」
「アイラの事はもう忘れた。過去の話だ」
わたくしは閉口してしまいました。
お母様の事は愛していなかったのでしょうか?
「普通なら実子を愛するはずですわよ、お父様」
「往生際が悪いわよ、リンダ。あなたは夫からもう愛されていないの」
「お義母様。わたくしはあなたが憎いですわ!!」
そう。
お父様はお母様が亡くなったたら、すぐにお義母様と再婚したのだから。
「リンダ! それにエイブラハム様はオリヴィアをお気に召したんですわよ。あなたは嫌われたの。全てはエイブラハム様が決めたことですわよ」
「そうだ、リンダ。お前はエイブラハム様に嫌われるようなことをしたのだろう?」
そんな……。わたくしはエイブラハム様に一方的に婚約を破棄されたのです。
オリヴィアがわたくしからエイブラハム様を奪ったのは自明です。
「さあ、リンダ。あなたはオリヴィアに罪をなすりつけないで、新しい婚約者を見つけたらどうなの?」
「良いですわ。わたくしはエイブラハム様を上回る素敵な方と結婚しますわ」
そうよ。そうに決まっていますわ。
塞翁が馬だって思いたいですわ。
「もう私はお前の顔など見たくもない! 身内と争った挙げ句、エイブラハム様と婚約を破棄したのだからな」
「だから、お父様、違うんです!」
わたくしは悪あがきをしようと思います。
「もういい。この部屋から……いや、この屋敷から出て行け!」
「そうですわね。こういう恥さらしは家から出て行ってもらいますわ」
イザベラは意地悪な含み笑いを浮かべました。
わたくしは唇を噛み締めました。
「そうだ。その代わりシンシアを側近としてつけてやる。二人でどこへでも彷徨うが良い」
何という……。
「シンシアを呼んできました」
とトーマス。
「はい、伯爵様」
「シンシア。リンダが我がゲルソン家の恥になるような事をした。リンダについて隣町に向かうが良い」
「はい、わかりました」
シンシアはハイトーンボイスで言いました。
「宜しくお願いしますわ! リンダ様」
「そうとわかったら、速やかに部屋から出て行ってくれ」
わたくしはシンシアと共に応接間を後にしました。
「リンダ様。話は全て聞いておりました」
トーマスはちょび髭を弄りながら言いました。
「私はリンダ様の味方です。御主人様が何を言おうと、やはり、オリヴィア様がリンダ様より婚約者を奪った事に変わりはありません。あまりにも理不尽ですね」
執事のトーマスだけが味方……。
わたくしはトーマスがいつにも増して頼もしく思えてきました。
のみならず、義母であり、現伯爵夫人でもあるマルシマにも今回の事を話すことにしました。
しかも、婚約破棄の発端は義理の妹のオリヴィアなのです。
オリヴィアがわたくしを既に婚約の決まっていたエイブラハム様から引き離したのです。
血の繋がりの無い義母は「そんなはずはない」と言うに決まっています。
でも、肉親である父はわたくしの味方になってくれるに違いない。
わたくしは期待と不安が拮抗した中で、応接間へと向かいました。
「さあ、リンダ様。伯爵様と奥様がお待ちですよ」
促してくれたのは執事のトーマス。
トーマスとは執事に多い名前ですね。
コンコン
わたくしはドアをノックしました。
「リンダか。中に入れ」
父は部屋に入るよう促してくれました。
父のクロードは長く伸びた黒髪を後ろで束ね、口ひげを生やしている。
そして、黒の瞳にニンニク鼻で背も高く、体格も良い。
「お父様。わたくしはスミス公爵のエイブラハム様と婚約破棄をしました」
「なぬ?!」
父は片方の眉毛を釣り上げました。
「何でも魔法のできる私より、魔法のできない義妹のオリヴィアの方が可愛いから……だそうで」
「オリヴィアがエイブラハム様を略奪した?」
「それはあなたに魅力が無いからよ。リンダ」
義母のマルシマ。茶髪のショートヘアに緑の目。そして、オリヴィア同様、メガネをかけている。
魅力が無いですって!?
「そうだ。オリヴィアは謙虚なんだろうな。魔法ができないと認めるのだからな」
な、な、な、な、なんとお父様はオリヴィアの味方に!
「お父様。なぜオリヴィアを擁護するような発言を?」
「それはお前はどこか意固地になっているような気がする。なまじ魔法ができる余り、どこか傲慢になっていないか?」
なぜ……なぜオリヴィアの味方をするのです?
オリヴィアとは全く血が通っていないというのに。
「お父様。正気ですか? なぜオリヴィアを庇護するのですか?」
「それは簡単だ。お前の事はわたし自身が一番よく知っているからな」
お父様は立ち上がりました。
「私は傲慢になんかなっておりませんわ」
「言い訳無用!!」
お父様は激しく慟哭しました。
「そうよ、リンダ。あなたは昔から傲慢チキなところがあったわ」
とはいえ、初めて義母から『傲慢』と言われた。
「お母様が生きていた時はあんなに優しくしてくれたのに、どうしてお母様が亡くなった途端、人が変わってしまったのです?」
「問答無用! オリヴィアは私が心から愛するイザベラの一人娘なんだからな」
「ではお母様の事は愛していなかったのですか?」
「アイラの事はもう忘れた。過去の話だ」
わたくしは閉口してしまいました。
お母様の事は愛していなかったのでしょうか?
「普通なら実子を愛するはずですわよ、お父様」
「往生際が悪いわよ、リンダ。あなたは夫からもう愛されていないの」
「お義母様。わたくしはあなたが憎いですわ!!」
そう。
お父様はお母様が亡くなったたら、すぐにお義母様と再婚したのだから。
「リンダ! それにエイブラハム様はオリヴィアをお気に召したんですわよ。あなたは嫌われたの。全てはエイブラハム様が決めたことですわよ」
「そうだ、リンダ。お前はエイブラハム様に嫌われるようなことをしたのだろう?」
そんな……。わたくしはエイブラハム様に一方的に婚約を破棄されたのです。
オリヴィアがわたくしからエイブラハム様を奪ったのは自明です。
「さあ、リンダ。あなたはオリヴィアに罪をなすりつけないで、新しい婚約者を見つけたらどうなの?」
「良いですわ。わたくしはエイブラハム様を上回る素敵な方と結婚しますわ」
そうよ。そうに決まっていますわ。
塞翁が馬だって思いたいですわ。
「もう私はお前の顔など見たくもない! 身内と争った挙げ句、エイブラハム様と婚約を破棄したのだからな」
「だから、お父様、違うんです!」
わたくしは悪あがきをしようと思います。
「もういい。この部屋から……いや、この屋敷から出て行け!」
「そうですわね。こういう恥さらしは家から出て行ってもらいますわ」
イザベラは意地悪な含み笑いを浮かべました。
わたくしは唇を噛み締めました。
「そうだ。その代わりシンシアを側近としてつけてやる。二人でどこへでも彷徨うが良い」
何という……。
「シンシアを呼んできました」
とトーマス。
「はい、伯爵様」
「シンシア。リンダが我がゲルソン家の恥になるような事をした。リンダについて隣町に向かうが良い」
「はい、わかりました」
シンシアはハイトーンボイスで言いました。
「宜しくお願いしますわ! リンダ様」
「そうとわかったら、速やかに部屋から出て行ってくれ」
わたくしはシンシアと共に応接間を後にしました。
「リンダ様。話は全て聞いておりました」
トーマスはちょび髭を弄りながら言いました。
「私はリンダ様の味方です。御主人様が何を言おうと、やはり、オリヴィア様がリンダ様より婚約者を奪った事に変わりはありません。あまりにも理不尽ですね」
執事のトーマスだけが味方……。
わたくしはトーマスがいつにも増して頼もしく思えてきました。
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