悪魔で女神なお姉さまは今日も逃がしてくれない

はるきたる

文字の大きさ
9 / 41
第二章 恋せよ女神

8.課題の発表

しおりを挟む
「生徒会長、アリアドネ。

その可愛らしい見た目からは想像つかないほどの秀才により、類を見ない早さで上級生に。学園の生徒達のなかで最も"本当の"女神に近いと言われています。

しかし、アリアドネ様…通称アリア様はとっても謙虚な姿勢で高貴な美しさを物語って…」

「りょーちゃん、うるさい。」

「ハッ!私としたことが…!失礼しました。」


ありちゃんのことを丁寧に説明し始めたその女性、りょーちゃんさんは、ありちゃんに注意され狼狽えながら眼鏡を直した。

(前にりょーちゃんって言ってたのはありちゃんの妹のことだったんだ。)


すらりとした無駄のない佇まい、きっちりとまとめた黒髪。ありちゃんの甘い服装とは違う、シンプルなタイトワンピース姿の大人な女性。
ありちゃんと並ぶと、彼女のほうがお姉さまに見える。


「ちょうどいいや、皆に紹介するね。さっき私の名を呼んだその子は学園の新しい仲間だよ!」

また僕に注目が集まる。なんだか居心地悪く、僕は苦笑いで手を振った。

「アリア様が今紹介されたのは、下級生である見習い女神セレナの妹、千華。通称ちーちゃん。」

りょーちゃんさんは何故通称まで発表するんだ。
ていうか、お姉さまって下級生だったんだ。

「ちーちゃん!」

「は、はいっ!」

ありちゃんに突然呼ばれ、僕は思わず敬語になった。
あの時のありちゃんとは違う。話し方も会ったときと比べて少し子供っぽさが少ないし、どこか落ち着いた雰囲気もある。今は生徒会長のアリア様なのだ。

「ちーちゃんなら、きっとすぐに見習い女神の下級生に昇級するよ!頑張ってね!」

(見習い女神に昇級!?)

そんなこと初めて聞いた。お姉さまのほうを見ると、先程の蛇の目はどこへ行ったのか、口を尖らせてとぼけた顔をしている。

「お姉さまっ!?」

「…。セレナお姉さま、でしょぉ?」

(誤魔化したっ!?)

「ふふ、仲良しさんだね!私も仲良しなの好きなんだ~。」

ありちゃ…いや、アリア様は、僕たちの様子を見て楽しそうに笑っているけど、お姉さまがアリア様に向ける目はどこか冷ややかだ。

「ということで!私は今学期の第1回目の課題をお伝えします!」

ということでって、どういうことで?
話の繋がりが全然わからないが、"課題"という言葉に反応して、皆がアリア様の声に耳を傾けた。


「1回目の課題は…『恋』!!!」

「さすがアリア様、素晴らしい…。」


…いや、いやいや。
全くもって何がなんだかわからないんだが。
りょーちゃんさんの読解力すごくないか?なんで涙まで拭っているんだ。

「りょーちゃん、私は学園が決めた課題を伝えているだけだよ。伝書鳩さんなんだよー?」

あ、そうなんだ。
確かに講堂には教師と思われるような人は見当たらない。僕が知ってる教師像とここの教師が同じとは限らないが…。この集まりには来ていないようだ。

(学園のシステム、まだ全然わからないや。)


「アリア様がお仕事を立派にこなすお姿が素晴らしいのです…!」

りょーちゃんさんは、ハンカチを口元に当てながら未だ目尻に涙を光らせている。

「相変わらず意味不明な課題を出すわぁ。」

お姉さまもよくわかっていないみたいで少しホッとした。
女神にわからないなら誰にもわかるまい。

(!!)

シュルシュルと音をたて、魔法のように何もつけてなかったはずの小指に何か現れた。
白いリボンが巻き付けられている。

動揺してるのは僕だけで、周りはいきなり現れたこれが何のことかわかっているようだ。


「さぁ、みんな。いつも通り今日から1週間の間に、課題の意味を理解して行動できたらそのリボンはほどけるよ!早くリボンが取れるほど評価は高いからねー!」  

このリボンはそのためなんだ…。
でもこれ、何もしなくても引っ掛かったりしてすぐに取れちゃいそうだけど。

「簡単には取れないわよぉ。アリアの魔法は強力だもの。」


確かに試しに軽く引っ張ってもびくともしない。

(秀才というのは伊達じゃないってことか。)


「セレナお姉さまは、今まで何回か課題をやったことあるんですよね?」

「えぇ。」

「いつもコレなんですか?」

僕は自分の小指を見せて聞いた。

「違うわよ。その時課題を伝えた生徒会の上級生それぞれの魔法で印がつけられるのぉ。」

お姉さまによると、この学園は教師はめったに表に出てこず、上級生が下級生に指導をするというシステムらしい。
その上級生のなかで学園に選ばれたメンバーで構成された生徒会が、主体的に動くのだとか。

そして今回のように、生徒会は定期的に学園が決めた課題を伝える役目を負っている。


「姉も妹も関係なく、未来の女神であるならばいち早く課題の意味に気づけるはずだよ!」

姉も妹も関係なく…。
妹も未来の女神とやらに含まれるのは、さっきアリア様が僕に言った『見習い女神に昇級』という言葉でなんとなく察しがついた。

しかし、これは後でお姉さまにきっちりと説明してもらわなければ。


「今日の集会はこれで終わり!さぁ!恋せよ女神達!」

アリア様のかけ声で周りは一斉に動き出した。でも僕は座ったまま。まだ動こうとする気はない。

とぼけるお姉さまを逃がさないよう、腕を掴んだ。


「セレナお姉さま、説明してくれますよね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...