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春
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しおりを挟む「魔力は自然が生み出した力だ。そして、その力は我々も微小だが生み出し使っているんだよ?」
「はい」
「じゃあ新しい事を学ぼう」
フォンラードはフリンダルを膝に乗せると、床に魔法公式をペンで描いた。そしてそれとは別の式をフリンダルの手の平になぞり描くと、白と黒の魔力の塊が手の平に現れた。
「これが陰と陽の気だ。この二つを床の式の上に置いてごらん」
言われるがままにフリンダルは、初めて見る〈気〉を床の式の上にそっと置くと、振り返りフォンラードの顔を見上げ次はどうするの?と聞いた。
「見ていてごらん…次第に魔核となるこの式の上で属性が生まれるよ」
「…先生、この外側の式って風属性だわ!ペリウレウの属力辞典に書いてあった!」
「そうだ!そうだよフリンダル!すごいじゃないか!良くあの属性構成辞典を理解したね?僕等でも訳が分からなくなると言うのに」
「先生が教えてくれたでしょ?あの辞典を沢山読んで理解出来たら私にも魔力が見えるよって」
「あぁ!あぁそうだよ!そうだよフリンダル!正に今、君は魔力を見ているんだ。楽しいだろう?理解するというのは宝箱の鍵を開ける様な物なんだ…あぁ、やっぱり君はすごいな」
褒められて、そして何よりも大好きなフォンラードの喜ぶ顔を見てフリンダルは嬉しくなって抱きついた。
「先生、沢山教えて!私いっぱい不思議があるの」
「あぁ、私達と一緒に不思議を知ろう。フリンダル!」
「ふふふ」
「どうした?」
「やっぱり先生はグレース様のお使いだったのね?」
「えぇ?何だいそれ」
「内緒!私とグレース様の秘密なの!」
「ははっ、君は不思議が大好きだけど…君こそが僕等の不思議だ。フリンダル」
次第に緑に色付く魔力は渦を作り、その場でぐるぐるととぐろを巻く様に中心に集まると一つの球体になった。そして、フォンラードが風の魔力を指先で押しながら風属性の式にそれを押し付けた。すると、次は青い水属性の魔力が生まれ、先程の風属性魔力よりも大きな水の魔力の塊が式の中心に浮かび上がった。
「フリンダル、さあ手を出して」
伸ばしたその手を掴み、フォンラードは青く輝く魔力を外から二つ目の公式押し付けた。
すると、また中心から茶色の魔力。土属性の魔力が生まれた。
「次はこれを同じ様に3つ目の式に馴染ませてごらん?」
「こう?」
「あぁ。よく出来たね…見ていてご覧…生まれるよ」
公式は其々の魔力を中心に集めて収縮し始めると、ボコボコと混ざっては分裂して金色の魔力を生み出した。
「先生、これって」
「光の魔力だ。思った通り、君には魔力の適正があったね」
「適正ってなぁに?」
「この世界に、魔力を使える人間と使えない人間がいる。私は使えるが、メルやリアム…この教室の学生やスタッフの半数は使えない。それは適正が無いからなんだよ。まぁその適正と言うのも魔力操作に限った事だけどね」
「私!魔法が使えるの?」
「あぁ、そうだよフリンダル…だからこれからもここで学ぶんだ。
いいね?」
「うん!」
その声に、夫人はやはりこの子は特別なんだろうと思った。
それは夫人やフォンラード、学生達にとって特別と言う意味では無く、〈選ばれた〉人間としての特別なのでは?そう直感的に感じていた。
「さぁ、ここからは私がやろう」
フォンラードがフリンダルを膝から降ろそうとした時だった。
「いや、俺がやってやろう。相互直通線を引きたいんだろ?」
フォンラードが顔を扉に向けると、そこには腕を組み黙って二人を見ていたビクトールが居た。口元は穏やかな笑みを含み、ゆっくりと歩みを進めるとフリンダルの前にしゃがみ込みその瞳を見つめた。
「ほぉ…お前は月の子なんだな。通りで」
「?…おじちゃんだぁれ?」
フリンダルはフォンラードの首にしがみ付くと、少しチクチクと髭が当たるのも気にせずに頬をくっ付けビクトールをチラチラと見た。
「ビクトール!悪い!」
「良いさ。それよりこの子か…フリンダルと言うのは」
「あぁ、この子だよ。フリンダル、この人は私の友達でビクトールと言うんだ。魔力操作がとても上手いんだ。そうだなぁ、君から見たら魔法使いだと思うかも知らないね?」
「魔法使い⁉︎おじちゃん魔法使いなの?」
「…いや、俺は魔法を制御するだけた」
「?」
「まぁ良い…フリンダル。もし何かあった時、ここに居る誰と連絡が出来たら良いんだ?」
「え?連絡?…えと…先生でしょ?メルお姉さんでしょ?リアムお兄さんに、エルヒムお兄さん…後ヤン先生…ううん。皆んな!皆んなに連絡する!今日は遅くなりますっ、お休みしますって言わなくちゃ」
「ちっ…面倒だな。一人にしとけよ」
「先生…」
「はははは」
そのやり取りを聞いていた学生の一人が手を上げた。
「あ、あの!俺、拡張式の応用やってます!壁にこの式を貼り付けて誰でもそこに触れれば相互線を複数に増やし、魔力拡張できますよ!」
「ケルノ君、それは名案だ!」
フォンラードは立ち上がりケルノに近付くと、フォンラードの机の横の壁に今は使っていない一冊の本程度の大きさの黒板を掛けた。
「ケルノ君、ここに式を書いてくれるか?」
「はい先生。どうしますか?選択式にします?それともダイレクトにしますか?」
「そうだな…緊急になったらダイレクトの方が良いだろうから。ダイレクトにしよう…だが、出力は抑えて。550Mg程度が良いかな」
「了解です」
ケルノが壁に式を描いている間、ビクトールはフリンダルの
顔を見ていた。見つめられたフリンダルは若干の恐怖があるのか、
瞳の色が少し濃くなって行くのをビクトールは見逃さなかった。
青と緑の瞳…陰と陽の気をその身に宿す者が持つと言うが、こんな所に居たか。通りで6歳で物事をここまで理解する訳だ。
フォンラードめ、だから歴史についても造詣を深めろと言ったんだ。
この子は普通の子じゃ無い…人でも無いだろう。当然だ神の子だんだからな。
「フリンダル…君はフォンラードが好きか?」
「先生?大好き!」
「そうか。いつから好きになった?」
「いつから?」
「あぁ」
「最初から!」
「…そうか」
ビクトールは目を細め、フリンダルの頭を撫でると、
『お前はそのままでいろ』と言った。
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