狼と人間、そして半獣の

咲狛洋々

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太陽の国 獣語

獣の商売(3)

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 リンに馬車に押し込められたナナセは質問責めにあっていた。ナナセも、答えられる質問には真摯に答えていたが、頭の回転の速いリンの質問はあちらこちらと飛んで、ナナセは質問の意図を理解するのに時間が掛かっている。


「で、なんで?」

「え?えぇと…何故この国に来たのか…そうですね。ここはロードレッドの隣で、夫を手っ取り早くロードレッドから離すには都合がよかったんです。それに、ギルマスの存在が大きかったですね」

「えー?ドーゼムぅ?何、あいつそんなに良い男かい?」

「え?それは、あ、はい、まぁ…そうですね?」

「違うよ!ナナセ君にとって、ドーゼムは色気のある良い男か?って事さ!」


恋愛の意味でか…なんだかなぁ。転生の話をしていたかと思えば、冒険者としてのスキルの話になったり、恋愛話しになったりと。飛ぶなぁ話が。着いていけないよ。


「いや、まぁ…私は夫が一番魅力的ですから、ドーゼムさんをそんな目で見た事はありませんね」

「へーー!そんなに黒狼は良い男なのかい?それに、何でロードレッドから離れなきゃならなかったの?犯罪でも犯したのかい?」


「いえ!そうではないんです。彼の本能の影響が強く出てしまって」


「ふーん。獣人の本能ねぇ?運命の番でもいたの?」


「!……ま、まぁ。そんな所でしょうか?」


うぅ、恥ずかしい。恋愛話は苦手なんだよ…こっちの心が丸裸にされる
様で嫌だなぁ。話変えたい…それより、騎士隊がこんなに居るなら私は
必要ないのでは?はぁ…クロウはいい子にしているかな。もう会いたく
なってきたよ。


「ねぇ!ねぇってば!ナナセ君、聞いているの?」


「あ、はいっ⁉︎すみません、なんでしたっけ。ファロが良い男か、ですか?」


「そうだよ。なんだって君は獣人と結婚したの?」


「なんだって、と言われましても。そうしたかったから…としか言い様がありませんが。彼だけだったんです…ちゃんと私を見て、考え、未来を想像してくれたのが。それに、私は彼の姿に弱いんですよ」


「どう弱いの?それに面白い考えだね。君は自分との未来を想像してくれたら結婚したくなるのかい?」

「いえ、そうではなくて。…えーと…この世界に来てから…私は…私と言う人間がわからなくなったんです。何がしたいのか、出来るのか、そもそも、どんな性格なのかさえ…見失っていました。しるべが欲しかった…それに…」


ナナセは思い返していた。
剣の道も、この世界では大きな役に立たなかった。
エルヒムに戦い方を教わり、実践を積んで今がある。けれど、ファロに出会って、恋をしなければ強くなろうとは思わなかっただろう。料理も、大した物は作れなかったけれど、ファロを繋ぎ止めておきたかったから試行錯誤した。

 私は、元の世界でどんな性格だっただろう?怒る事も、何かに執着する事も無い、面白味のない人間だった様に思う。ファロに触れ、笑い合って、共に戦い彼の為人ひととなりを知った。
彼に相応しい人間でありたいと願った。けれど、醜い本音と周囲のファロへの目が私を苛烈に、嫉妬に狂わせていた様に思う。


「それに?」


「あ…えっと…はい。うーん、自分の有り様を…時に自分では決められない事があります。清廉潔白でありたい、決断を他者には委ねる事はしない、真摯な人間でありたい…そう思って行動していても、それが裏目に出る…そんなジレンマが、私を追い詰めました…」

「そして本能や理性、外聞に世間の目、立場…それらに邪魔をされて理想を、信念を…幸せになる未来を描けなくなってしまったといいますか…」

「同じ様な中にあっても、ファロは…抗ってくれました。それ等には負けないと…彼の理想、築いてきた人間との信頼関係、棲家を失うとしても私の事を1番に考え、自分が傷付いても私を傷付けたくないと泣いてくれた。浮草の様な私を縛ってくれた…それだけで、全てを失っても、私は彼を守る為に生きようと思えたんです。そう思い続けたくて番にしてもらいました」

「まぁ、本音を言えば、彼の姿…美しいでしょう?あの腕で抱きしめられるだけで何も考えられなくなるんです。馬鹿みたいにドキドキするんです…もう何年も共に居るのに」


ナナセの言葉に、リンとサナは黙ってしまい我に返ったナナセは顔を赤らめ窓の外を向いて俯いた。

私とした事が!…惚気てしまった。あぁぁ、顔を上げられないじゃないか!なんなんだ、このリンさんって人。はぁ、仕事に集中出来ない‼︎救援信号だそうかな…。

すると、パチパチとリンは手を叩き叫んだ。


「ブラーーーーボーーーー!素晴らしいよ!ナナセ君」

「えぇ!えぇ!本当に!こんなにも愛情深い人がいたなんて!」

「やはり異世界は面白いね!本能は二の次と言う事だろう?僕は本能こそを第一に生きている。だから惑わされたりしない、やりたい様に生きてる!けど君は違うんだろう?何が君の第一なんだい?理性かな?理論かい?でも、結局の所、最終判断は本能なんだろう?」


「……あの、この話…護衛に必要ですか?いい加減、仕事をしたいな…なんて思うんですけれど。」


「あぁ!そうさ、この会話こそが僕がギルドに依頼した仕事だよ!護衛なんて外の騎士隊にやらせればいい!さぁ、もっと聞かせておくれよ、君の考えを!」


…嘘だろ。こんなのが後何時間も続くのか?駄目だ…このままだと頭がおかしくなりそうだ。


「…では、この答えが最後です。それ以降の私事への質問はお応えしません。良いですね?」

「えぇ⁉︎なんでさ!お話しようよ!」

「駄目です!私はちゃんと護衛というクエストを受領しています。ですので、護衛を致します!」


「なら、クエストの内容変を更申請をしよう!君は、僕の話し相手になること!」


そう言うと、リンはクエスト申請用紙に変更内容を記載し、刻印してしまった。ボンっとナナセの手にクエスト内容が刻まれ、ナナセは

目を瞑り天を仰いだ。

オーーーマイガーーーー!ファロー!助けてーーー!


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