狼と人間、そして半獣の

咲狛洋々

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太陽の国 獣語

尽きない夢

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 あれから、獣人戦士達と一触即発の雰囲気になったが城外の獣人戦士
の殆どが重騎隊により掃討されており、援護が無くなった城内の獣人戦士の勢いは最初の三十分程度しか保たなかった。落ち着いて来た城内のボロボロになった王の間で、会談が再会された。その入り口ではナナセとファロが立って睨みを効かせている。


「ドーザ、やっとだね」

「あぁ、長かったな…長かった。」

「あの日の事、覚えているかい?」

「勿論だ。1日だって忘れた事などなかったさ…」

「「二人で、必ずこの国を豊かに、人と共に生きる未来を」」


リンとドーザは強く抱き合い、リンが笑って背中を叩くとドルザベルは
泣いていた。


「泣くなよ…王様だろ?」

「お前を…手放したあの日決めたのだ。お前を取り戻す時まで涙は流さぬと…」

「…僕は、君の元には戻らないよ」

「……そ、そうか…そうだな。お前にも伴侶ができたか」

「いや、僕は永遠に誰の物にもならない」

「な、何故…」

「僕はロードルー王の片腕だし、今の生活が気に入っているんだよ!それにね、僕にはやっぱり恋愛は向いていないんだな。ナナセを見ていて…僕はあんな風に誰かを想ったり、自分を捨てたりは出来ない」

「あの姿を馬鹿らしくも思ったんだけど…理想だとも思ったのさ。あんな風になれないのなら、想いを寄せたり、受け取ったりすべきじゃないってね…以前なら君を取り戻す為なら誰を傷つけ、裏切っても抵抗や罪悪感も感じる事なんて無かったんだけどね」

「そうか…あの者が私からお前を奪ったのだな」

「それは違うよ。彼が居なければ、大人になった僕等は…失う事を受け入れたまま未来を歩む事になってたよ」

「目の前の縋る手を払い除ける様な…そんな世界を作る所だったんだ」

「……」

「なぁ、僕等はさぁ恋人にも、夫婦にもなれないけどさ…永遠に相棒として生きていけるんだ。僕はそんな未来が楽しみで仕方が無いんだよ」


「そうか、失う訳では無いのだな」

「そうさ、これから始まるんだよ。僕等の新しい未来、尽きない夢の実現の為の日々がね」


そして、リンは胸をドンと叩くとバルコニーの先を見つめた。


「戦うだけじゃない、獣人が他者を助け、愛せる存在だと世界に知らせるんだ!救護や救助、運搬業に農業…獣人の可能性は無限大だっ!あぁ、楽しみだっ!まずはギルドや学校、病院を作ってさ…うん、獣人は生まれ変わるんだ!」






 リンさんとドルザベル王は何かを話しながら、時折私達を見ては笑っていた。どんな話にせよ、この国が新しい未来を歩み出した事は嬉しく思う。けれど、やっぱり私は彼等の独善的な考え方には付いて行けないと思った。私は、ファロやクロウを傷付けて成り立つ様な幸せなんて、あり得ないと思っている。だから、バシャ王子の笑顔が見れるまでは、あの二人を快くは思えないと思う。



「ファロ…私は間違っていたかな?」

「間違っているかどうかは、未来が答えるだろう。俺は、ナナセが間違っているかどうかは分からない。だが、間違ったなら共に間違いを正してやる。だから、想いのままに共に生きていこう」


「ファロ、私は…ファロを好きになった事だけだよ…正しかったと心から思えるのはさ。ファロ、ずっと側に居させてよ…」


ファロは入り口の扉を閉めると、ナナセを抱き上げ深く口付けをして、その深い青い目でナナセを見つめた。


「死ぬまで側に居てくれ、決して離れるな。もう、クエストも一人で受けないでくれ」

「それは、難しいんじゃない?」

「救援弾をギルドの窓から見た時…俺は…生きた心地がしなかった。他の誰にもナナセに触れさせたく無い、傷付けるのも俺以外は許さない」

「ははっ!凄い愛の告白だね、嬉しいよ…でも、ファロも…他の人のサポートは減らしてよ…本当は…嫌だったんだ。私以外の冒険者の戦い方を考えているの…私だけの動きを覚えていたらいいんだからね?ファロはさ」


「ちょっと!この会談ぶち壊す所だったんですよ!イチャイチャイチャイチャイチャイチャしてる場合じゃないですよ!」


ナナセとファロから放たれる生暖かい空気を払う様に、サナが書類を小脇に抱えてトテトテと奥の通路から歩いてきた。



「サナさん、調停は無事に?」

「はい、終わりましたよ!本当にもう、ナナセさんにはヒヤヒヤさせられっぱなしですよ!黒狼さん、ちゃんと手綱握っててくれないと困りますよ!」

「…お前達がナナセがクエストを受ける様に仕向けたんだろ。クロウと俺はナナセを失う所だったんだ」

「……え?嘘でしょ?私達が悪いんですか⁉︎」

「お前達が獅子の子を見捨てなければこんな事にはならなかったんだ」

「いや、見捨てるなんて事しませんよ!はぁ、もう、政治に向いてないのはわかりましたよっ!」

「バシャ王子が目覚めました、ナナセさん会いに行かれますか?」

「‼︎ 直ぐにでも!」











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