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第二章 盾と剣
4 父親とは 〜ハリィの回顧録
しおりを挟む陰鬱とした内容となります。
苦手な方は次話よりお読みいただけると幸いです。
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私は元来身勝手な人間です。それを自覚していなかった所為でしょうか、私を助け此処まで導いてくれたアルバートを怒らせてしまいました。今歩く、この長い道の如く彼と歩んで来たと言うのに。
「ハカナームト神の祝福の元、聖騎士団、第1師団副師団長ハリィ•トルソン。上官の命にて黒騎士団への一時編入の為、登城許可を申請致します」
飢えた獣は、それが例え血を分けた親兄弟、子であっても喰らうと言います。まさに私の事で、いつの間にか私もフェルダーン家の親族の様に思っていて、私が彼等の犠牲になる事を厭わぬ様に、彼等もまたそうなのだと。まるでこの舐め回す様な視線を向ける門番が、己と私を同格かの様に思うのと同じく、私は浅ましい思い違いをしていたのです。
「クローヴェル神の御簾よりお出ましの黒騎士団総長より許可が降りました。正門よりお入り下さい。また、陛下より混じりの4の刻、太陽宮にお越し下さる様に御伝言承ってございます」
「畏まりました。私の加護神フェリラーデの祝福をお送り致します」
生命体として生まれたのは26年前のアルケシュナーの季節。生まれた時より兄であるロブソンと、同じ年齢の弟であるザックスの為に魔力を注ぐ事で、生きる事を許されていました。10歳の頃、私は魔力の全てを奪われ死門に打ち捨てられた。その時は、それが当然で、私が唯一出来る事なのだと思っていました。屋敷から運び出される際に見た物は、全てを失ったと、これで自分は終わりだと嘆く母の姿。今となっては、あの言葉が「持ち札」が無くなった、そう言う意味だったのだと分かるのですが、あの時はこんな消耗品の私の為に悲しんでくれている。我が子が死に行く事を嘆いていると思ったのです。勿論、母の愛がそれだけだったとは思いませんが。
「時の神シャナアムトの加護と祝福の重なる時、栄光を御身に捧げるべく参上致しました。聖騎士第1師団副師団長ハリィ•トルソン、本日より黒騎士団に編入させて頂きます」
「闇の神クローヴェルの影より其方を歓迎する。よく来てくれたハリィ!我、義弟よ」
義弟。兄弟とは何なのでしょうか?血の繋がらない殿下とは縁戚だと言う事以上の繋がりは無いのに。
死門より、意識を取り戻した私が最初に見たのは、浴室で私の体を洗うアルバートでした。その頃は私よりも体の大きな彼に恐怖を感じた物です。ですが、アルバートの不器用な優しさに少しづつ心を許す様になった……私の方が年上だと言うのに、まるで兄の様だと感じた物です。
人としての生活は衝撃ばかりで、初めてクッキーを食べたのは屋敷に来て2ヶ月程経った頃でしょうか?余りの美味しさに、毎日の様に無心した物です。今ではあの頃の影響か、クッキーは苦手な食べ物になってしまいました。そう、今では平気で甘美な嘘が吐ける様に、本音は苦く喉元にいつも留まっているのです。
「殿下の御力となれる様、誠心誠意お仕え致します」
「頼んだぞ!其方のフェリラーデ神の加護があれば黒騎士団は傷一つ負う事は無いだろう!いや、誠に第一の師団長には感謝しかないな!」
そう、感謝しかないのです。アルバートは、一見して粗暴に見えますが、その内面は繊細で緻密です。私がカルカートレーの系譜に入れる様手を回してくれたのも彼でした。フェルダーン家前当主であり、父君であるジャンバール公爵は大変厳しい方で、私の存在を知るや打ち捨てろと、騎獣用の綱で打たれそうになった。しかし、彼は私の知らぬ所で全て手を打っていてくれた。カルカートレーの次男である事が、私の命を繋いだのです。
「はっ!有難き幸せ」
「さて、ハリィよ。聖騎士団は魔獣討伐をして貰う訳だが、ヤーリスによる侵攻のどの辺りで魔獣を使うと思う」
「当然、先陣を切って出てくるでしょう」
私は、どうやってカルカートレーの系譜に入れたのかと質問した事がありました。彼は、私が死門で倒れて、屋敷に運び込まれるまでに教会に運んだと言いました。そして、唯一手元にあったカルカートレーの紋章の入った魔石から、名付けの儀、治癒、鑑定、加護卸と、貴族の子女が受ける全ての儀式を済ませてくれていたのです。そして、何故そんな事をしたのかと聞いたら、彼は「お前、相当魔力を持ってるな?殺されかけた程だ。その力、俺の為に使う」と言って不敵に笑っていました。
「何故だ?中盤から終盤の疲弊したタイミングを狙わないか?」
「殿下、魔獣を押さえ付ける事は並大抵の魔力では行えません。ヤーリスでは祝福が得られ難い。そうなると魔力量も我が国を大きく上回る事は困難でしょう。その為、ヤーリスに帰順しているモットルガーの戦士を終盤に投入する筈です」
それから約10年、アルバートの側には私が居て、私の側には彼が居た。多くの聖戦に参加して、彼に命を救われた事、救った事は数知れず。互いに背を預けられる存在だと認め合って来た。
「ならば、黒騎士団は左陣に配すか」
「いえ、聖戦の地となるフォートーン山の麓は、岩場は少ないですが、岩壁の上は狭く絶壁です。ですので配すのであれば騎獣を用いて、隊後方の上空でしょう。用いるのはグリフォンが宜しいかと」
「ふむ。だが、ヤーリスも上空に待機しておるのではないか?」
「ヤーリスもそう考えているでしょうから岩壁に挟まれた中央の上空、全体を見通せる場所を選択しているでしょう。では、その信頼に応えましょう」
そんな彼の信頼を、私は裏切ってしまったのです。今、私の心には重く容易には取り除けない重しが沈んでいます。ですが、今まで頂いていた恩を返す為、フローの為にも今回の聖戦、絶対に勝たねばなりません。
「後2日で、オーフェンタールの季節の加護が最も強くなります。その時の風は北西の風。上空気温は約マイナス18度か20度、天候予測は雨、その際の上空では雪もしくは霙。その為、ヤーリスの土地で育成可能な騎獣であるステュムパリデス、ハーピー、シムルグ、これらは向かい風、低温、立地による音の影響を受け、どれを用いても機動力は落ちると考えます」
「ならば……用いぬと?」
「用いはするでしょう。しかし、主戦力とはなり得ません。障害物を投下、魔法攻撃の妨害。と言った事は行うだろうと思われます」
「そうか、ならば編成を考え直すか」
「いえ、今編成し直せば現場を混乱させます。ですので、岩場の高さが右側面より高い左側面の上空から急襲します。そして、それは私が指揮致します。殿下は戦場を正面に後方上空にて待機して頂き、魔獣討伐後降下にてヤーリスの先陣急襲をお願い致します。その間に聖騎士と騎士の混成隊を左右展開し両サイドから挟み打ち致します」
「……ハリィ。其方、私を囮にするつもりか?」
「いえ、抑止力とさせて頂きます」
殿下の加護はクローヴェル神。闇魔法に嫌悪感を持つ者が多いヤーリスの兵は、必ず足を鈍らせる。それだけで戦況は大きく変わる。
「抑止力?」
「殿下の闇魔法でございます」
「成程。はっ!参った、ハリィ!其方黒騎士団に正式に配属転換せぬか?義兄弟で共に国を守ろうではないか!」
この程度の策で滅多な事を仰る。黒騎士団等と銘打っても、その実ただのお飾りに過ぎないのです。しかも、そこに配属を許されるのは王族の直系分家の貴族の子弟のみ。そんな所に入った日には、私は殿下を弑虐するのも吝かではありませんよ。私は1つでも多く武功を挙げねばならぬのです。邪魔しないで頂きたい。
「畏れ多くも殿下は次期国王となられる御方にございます。私が共にあれば、殲滅も躊躇わぬ故に多くの穢れをその身に受ける事となりましょう。私は聖騎士団にて、殿下の為に一つでも多くの武功を挙げたいと存じます」
殿下は、その金色の瞳をギラリとさせて私を見ています。その心には意に返さぬ私への怒りが見てとれますが、いずれ……フローの為に貴方様を利用する価値が有る時には、是非その軍門に降らせて頂きます。義兄様。
「そうかそれは誠、残念な事だ。して、妹は息災か?」
「当家の者からは、健やかに御過ごしと伺っております」
「何だ、其方等の冬の結はまだ解けぬか」
「申し訳ございません。私の力不足でございましょう……」
その程度の嫌味で、私が何か思うとでも思っているのでしょうか?全くもって、何の感情も湧きませんね。
「子でも居れば違うのではないか?」
大きなお世話でございますね。しかし、貴方様にもいずれ姪が出来ます。その際は、その御威光存分に頂こうと思います。
「えぇ、フェリラーデ神とシャナアムト神の時が重なる事あらば是非、欲しい物でございます」
そう、2柱の交わる時フローを私の愛娘と呼ぶでしょう。
「恐れ入ります殿下、そろそろ陛下との謁見の時が近付いて参りました故、失礼させて頂いても宜しいでしょうか?」
「そうか、分かった。では今晩の晩餐は共に取れそうだな?」
押し寄せる吐き気を抑え込む事には慣れていました。ですが、ここ1年フローが側に居てくれた。意に沿わぬ相手との食事も、向き合う相手を彼女だと思えば乗り越えられた。ですが、今夜はそうもいきそうにありません。ならば、その間だけでも思い出そう。フローの愛らしい姿を。
王宮の聖餐の間では、中央に陛下が座り、その左隣は王妃、その向かいには殿下がお座りになっていて、殿下の並びには第2王子から第5王子までが着座されていましたが、妃嬪の席には王妃以外の妃は居ませんでした。
「では、祈りも済んだ。皆、頂こうではないか」
陛下の合図で、皆料理に手をつけ始めました。前菜に始まり肉、魚と続きます。私は既に膨満感に襲われて、グラスの水に口をつけながら思い出すのです。
「パパ、見て!爆発!」そう言いながら、初めて飲むと言っていた飲むと口内で泡立つメリルの果実水の入ったグラス。そこに口を付けたままフローは息を吹き、ぶくぶくと泡だてたかと思うとその泡が鼻に入ってしまったのかアルバートに向かってくしゃみをしました。アルバートの顔や服には泡や鼻水が付いてしまって、フローはあんぐりと口を開けたままでしたし、グラスの泡は立ち続け溢れ返っていました。そして、その時のアルバートは、何が起こったのか分からずポカンとした顔をしていた。今、思い出しても笑ってしまいます。
「ふふっ」
「「⁉︎」」
「ハリィ、其方が笑うなど珍しい事もある物だ。先程の話しが余程気に入ったと見えるが?」
ハッとして、私は慌てて陛下を制しすべく口を開きました。
「いえ、陛下。考えていたのです」
「ほう、我々との晩餐に考え事とな?」
「申し訳ございません。どうしても、明後日の聖戦の事を考えてしまいまして」
「して、何故それが面白いのだ」
「いえ、今回の聖戦にてもし……ヤーリスを吸収出来る程の痛手を与えられたなら、あの地の魔石は我が国の物と出来るのだろうかと。そうなれば、皇女殿下に差し上げられると思いまして」
ヤーリス。最高級の魔石が取れる国、きっとフローの耳飾りやブローチにしたら似合うでしょうね。フローの神力に染まったなら、どんな輝きを見せるのでしょうか?
「ほぅ、其方も雪解けを望むか!先程の話が其方を前向きにさせたのであれば、近衛騎士隊長の話しを進めるが良いか?」
「陛下、そのお話はどうかお忘れ下さい。皇太子殿下のご推挙をお断りしたばかりなのですから陛下の慰めだとしても、お受けするのは心苦しく、また私の様な者には不相応にございますから。それに、皇女殿下との事は、私だけでは溶けぬ雪でございますし。いずれ、その機会があった時、お渡し出来る物があれば良いなと思っただけにございます」
その時は穢れた魔人の赤黒く、くすんだ魔石に恨み言の一つでも込めてお渡ししましょう。
「ふむ、其方がマリーナとの結びをあるべき形に結び直してくれる事は、父として嬉しく思うぞ。だが、慰め等と卑下する物では無い。悪いのは……皇女があの様な娘となったのは偏に私と王妃の責任だ。すまなかったな」
本当にそう思っているのだろうか。全てを知って尚、外聞が悪いと婚姻を結ばせて。親として娘の幸せよりも体面を重視したのは、他でもない実の父親である貴方だ。私なら、決して自分の為にフローを不幸になどさせない。
「……時の神シャナアムトの後ろ髪を今更掴む必要もございません。今はただ、その御力が齎します瑞風に乗れる様、邁進するのみでございます」
「済まぬな……其方の失った物を思えば、結を解かせる事が良いのは分かっておるのだが、皇女を思うと……儘ならぬな」
「構いません、私は陛下の縁者となれた事だけで……望外の喜びにございます」
「そうか、そうか!其方は私の大切な息子なのだ、父と呼んでくれ。そしてその力、存分にリットールナの為に奮って欲しい!」
「はっ!有難き幸せにございます」
フロー。パパの心は今、真っ黒なんです。貴女の笑顔で、この穢れを祓って下さい。あぁ、貴女に今すぐ会いたい。
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