神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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心の枷編

焦り

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今、朝議の間に皇帝サリューン、摂政ウォーレン、宰相補佐ザッカリー、内務大臣、外務大臣、財務大臣、法務大臣、学務総局長、魔道総局長、魔導騎士総局長、魔道軍部長、その他各部門、官吏の長が集まっていた。

「さて、定時報告と先日の議題の対応報告が全て終了致しました。これよりはグレース様も踏まえて皆様にご相談がございます。」

宰相補佐官のザッカリーが朝議の間から庭園へと繋がる扉を開けて、グレースを招き入れた。

「皆様、お疲れ様です。少しばかりお時間を頂きます。」

その場にいた者が席を立ち敬礼して、グレースを招き入れた。

「早速本題に入らせて頂きます。」

ここからはリャーレが順序立ててこれ迄の経緯を説明してくれた。そして、天界から齎された確認すべき点が伝えられた。

• サムオール家、オーランド家、ガーライドナイト家、フルフォンド家の婚姻を全て洗うこと

• テュルケット本教会に繋がる水脈の流れと信徒の色を確認すること

• 東部の神殿跡を調べること

これが全てではないが、この3点は崩壊のきっかけに大きく関わるだろうという啓示、そして異界の神ではこれ以上の情報を探す事が困難であるという状況も伝えられた。
予言とは別に、こちらも意識を外せ無い内容として魔粒子爆発の起爆剤となりうるポイント7000箇所の座標報告も開示した。

「なっ、7000箇所…。これは。」

皆、騒めきと共に対策をそれぞれの補佐官などと話し出した。
グレースは顔色を変えずに淡々と伝える。

「けれど、これらの一部がトラップである事も分かっています。だからこそ予言の解析が急務だと考えています。エルザード殿が何を考えこの様な事を企んだのか、、未だ闇の中です。それに、天界にもエルザードの魂は還ってはいないと聞きます。もしかしたら淀のどこかで復活を待っているのかもしれません。」

皆、どう一手を打つか慎重にならざるおえないな、と椅子に深く座り頭をもたげたり、後ろに倒したりと考え倦ねていた。

そんな中、出来ることを。と先陣を切った者が現れた。

「では、 この四家の事は我々法務が請け負いましょう。貴族の婚姻証明、情報は入ってきていますから。ただ、出来れば特務とも一部情報共有をお願いしたい。」

法務大臣カバラークが魔道騎士総局長へ頭を下げた。

「勿論です。醜聞など表に出ない情報も幾分かは入ってきております故、お力にはなれるかと思いますよ。」

細身ながら、精悍で一切の隙を見せない魔道騎士総局長はカイゼル髭を撫でながらグレースを見た。獲物を狙う藍色の獰猛な獣の目が、憎しみとも、見定めとも思える色を見せている。

グレースはテーブルの影で、グレースの横に立つビクトラの指先にそっと触れた。そしてグレースは声を落として尋ねる。

「ビクトラのお兄さんだよね?えと、ヤルダさんだっけ。」

張り付いた笑顔のままに、視線は面々に向けてビクトラの答えを待った。

「あぁ。だが現皇帝の叔父に嫁いで、家督は俺が継いだ。あの人の事は気にしなくて良い。面倒事が増えるだけだ。」

グレースは意外そうに目を見開き答えた。

「へぇ、珍しい。ヴィクがそんな風に誰かを無視する対応するなんて。」

「あの人はなぁ、何というか。エルザード様とテュルケット様への信仰と忠誠が強すぎたんだ。だからグレースにあんまり良い思いを持ってない。そもそも、兄貴は嫁にはなれなかったんだ。本当は。育成帯が無くてな。」

「育成帯?」

「あぁ。子供を妊娠するとそこで子供が育つんだ。誰にでもある。けど、稀に魔粒子核が強すぎたりすると育成帯を持たずに生まれて来る事があるんだ。皇族に嫁ぐには不適合だったんだが、予言に加えて魔粒子特性がSというのもあって大公に嫁入りした。」

「あのさ、あの人長男だよね?普通家督は長男が継ぐもんじゃないの?」

「予言だよ。500年前から決まってた。」

「…よくそれで傾倒できたね。」

「それが俺達にとっては当然の事だったんだ。」

それ以上グレースは何も言えなかった。
この世界には、ヤルダさんと同じ様にテュルケットを盲信してる人達がいて、その人にとって俺は排除したい対象なのでは無いか?
早く何とかしないと。醜聞や悪意といった類いは光の速さで広まって、気が付いた時にはどうしようもなくなっている事が多い。
でも、ここでテュルケットを非難したら火に油を注ぐ。俺の評価への対策とテュルケットの扱いを何とか纏めて決めないと。
気付けば手の平にじっとりと汗をかいていた。

早く何とかしないと。答えも出せずグレースは足元の脆さに焦りを募らせた。





















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