神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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閑話

名探偵S サリザンドのSはサタンのS

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 ある日の午後、帝都南部にあるセルギル元伯爵邸にサリザンドは

いた。この屋敷から変質した黒魔粒子が溢れていると報告を受けた

魔道隊員が急行したが、魔道隊でも解除出来ない制約と呪法があった

為サリザンドが呼ばれた。

「サリザンド、こっちだ!」

魔道隊隊長 熊人族のダリアンが警戒線の内側からサリザンドを

手招きした。

「いつからですか?黒魔粒子の漏出は…結構でてますね」

ダリアンは警戒線を解除してサリザンドを中に入れ、警邏隊に周辺

警備を指示した。

「一昨日から兆候はあった様だが、目に見えて溢れたのは三時間前だ」

鑑定用スコープを目に嵌めて、サリザンドは屋敷を見回した。

「外には精神系の制約は掛かってませんね。中の調査は?」

「いや、出来そうに無い。一度扉を開けた隊員が汚染した。」

「そうですか、その隊員は大丈夫なのですか?」

ダリアンは首を振って軽度汚染した隊員へ目をやった。

「三人…死んだ。」


変質した黒魔粒子によって魔粒子核がやられたか…しかし、魔道隊は

魔粒子の扱いに於いてはプロ中のプロが集まる部隊だ。なのに、手も足

も出せないとなると都に頼むしか無いかもしれない…ま、それは最後の

手段だ。


サリザンドは鞄から魔道具を取り出すと、魔粒子を流し込んで屋敷

全体を包むほどの大きな保護結界と浄化陣を創り出した。

自身にも変換制約と呪法を掛けて、白魔粒子の防御マントを羽織り

扉を開ける。


「なんとまぁ、これは凄い!」

これは凄いな、黒使いが暴走でもしたのか?

汚泥みたいだなこの黒魔粒子。このままだと魔獣が現れてもおかしく

ない。何かを守っているのか?あそこの黒魔粒子だけ球体になって

蠢いてる。何とも面白そうな事象ではないか!


 研究者魂に火の付いたサリザンドはサンプルを採取して、まずは

屋敷内の結界や制約といった縛りをさがした。

二階へと繋がる階段正面に飾られた一枚の肖像画に呪法を見つけ、

絵に魔粒子の流れを確認するレーザーを照射する。

鑑定用スコープに別のレンズを差し替えサリザンドは鑑定を始めた。


「ほう、これはまた古い呪法を使いましたね…時を停める止針、ですか?この呪法が掛かっているのは絵ですか…それに、あの球体はには…どれどれ。ハハッ‼︎」

「悪魔の吐息とは、こんな悪質な呪法を使うとは、どれだけの怨みを伯爵は買っていたのでしょうね?」

悪魔の吐息とは、魔粒子の変質の強制と破壊を齎す呪法の事であり、

呪法の発動が全て終わると、発動者に制約や呪法は戻り、術者をも飲み

込む禁忌の呪法である。

この呪法を使用したら最後。外部の魔粒子を取り込み腐らせ、術者が

呼吸をするだけで、周囲に腐食作用を齎し全てを溶解させる。

術者すらその腐食に耐えれず、身体の細胞が全て死滅しても呪法は

消えず呪いを増殖させてゆく。

「成程、あの塊は術者でしたか…では楽にして差し上げましょう。」

球体に近付き周りにぐるりと陣を描くと、サリザンドは指先を噛み切り

一滴の血を垂らした。

「さぁ、お仕事ですよ。スレイブ…出てきなさい。」

陣からは一体の羽の生えた鳥とも人とも言えぬ者があらわれた。

「サリザンド、たった一滴で何をさせる気だ!我は腹が減っている、お前の番の精を食わせろ。一口で一年はこの世界で働いてやってもいいぞ?」


サリザンドは制約をかけた鎖で男の魂を縛り上げると、黒魔粒子の塊に

放り込んだ。

ふざけた事を言う者だ。都の物を一雫だって与える訳が無いだろうに

懲りもせずに強請るとは…ヘドロにでも変えるか?

こいつは異界の者だから、汚れ仕事をさせてきたがこうも自由奔放だと

扱いずらいな。都の前で出て来られても困るし…。仕方ない。

「おい、スレイブ。この魔粒子全て除去出来たならこれをくれてやる」

「ん?何をくれる。」

球体から半身を出し、サリザンドの手元を見るとそこには黒い角が一本

握られていた。

「おい!本当だろうなっ俺様の角を一本返すんだな⁉︎」

「…これはくれてやる、さっさと除去しろ。もし塊の中に魂があれば持って帰ってもいい。俺は結界の解除に向かうから戻ってくるまでに終わらせろ。」

ニヤリと笑うスレイブは魔粒子の塊に頭を埋めた。

サリザンドは絵に施された制約を解除し、屋敷の内部に他の制約などが

残っていないか確認に回った。


「はんっ!いつまでも俺様を縛れると思いやがって、角が戻ればあいつを頭から喰ってる、それまでの辛抱だ。」

スレイブは悪態を吐きながらどんどん球体の呪法や魔粒子を食い散ら

かしてゆく。


その様子を扉の外から眺めていたダリアンは固まっていた。

「嘘だろ!アイツ……異界獣?いや…悪魔を使役してるのか⁉︎」

魔道隊の面々も、サリザンドの技術を盗もうと様子を覗き込んでい

たが、高度な解除技術や呪法知識を見せつけられ、心折られていた。

しかも悪魔召喚まで行い、羨む以前に恐怖を植え付けられ、皆溜息を

吐く。



 二階の各部屋を念入りに調べながらサリザンドは考えていた。

三日前からの予兆、と言う事は最低でも四日前までは術者は生きて

いた、しかし伯爵は大分前にこの屋敷を売り払っている。

一体何の目的で術者はこの屋敷を死に場所に選んだのだろうか?

「まずは汚染物質の除去だな…」

廊下の手摺りに手を置き、サリザンドは汚染された魔粒子を喰らう

階下の悪魔を見下ろしニヤリと嗤う。

「俺は一度手に入れた物は消耗して消えるまで、永遠に手放さない主義だ、存分にに働けよ…悪魔め。」

「さて、この部屋には何かあるかな?……何だ、この陣。」

「…反魂陣。誰かを呼び戻す為か?」

サリザンドは奥の部屋からでるとスレイブに声を掛けた。

「おい、スレイブこっちへ来い。陣の中の残滓を読め」

二階を見上げたスレイブは面倒臭そうに舌打ちすると、空間移動で

サリザンドの目の前に現れる。

「あぁ?何だこれ。逆打ちかよ」

「逆打ち?反魂では無いのか」

「ちげーな。あの術者、闇堕ちした誰かを引っ張り出したかったんだろうな。」

「あぁ、悪魔召喚をしたかったのか。知識が足りなかったんだな」

「そうだろうな。誰を呼び出したかったんだろうな」

スレイブが陣の端を爪でキキッと引っ掻き崩すと禍々しい黒煙が立ち上

った。

「誰だ、我を縛るのは…」

スレイブとサリザンドは顔を見合わせ驚いた、其処には黒の翅を四つ

持ち、黒光する長い尾と真紅の髪を棚引かせた悪魔が現れた。

「あぁ、また面倒な。後が大変なのでサクッと調伏しとくか」

縛れホルトゥース現せラーナング奪えオルヴェーダ降せペドゥルドゥラ断罪せよアラガンデュラ  我が名サリザンドに従え、隷属せよ」

「異界の魔君 ルキフェル。この世界の理にお前は縛られた」

「我に降れ」

「‼︎」

唐突に呼び出されたと思えば隷属され、制約と呪法でルキフェルは

名も力も全てをサリザンドに奪われて絶句した。

「あーあ。マジかよ…こいつルキフェルかよ?お前、サタンにやられるぞ?」

「関係ないな…サタンは出てこない」

「何でそう言い切れる?」

サリザンドは鑑定用スコープを嵌めた左眼をスレイブに見せ嗤う。

「ここにいるからだ」

真紅の横目に六つの黒点、魔眼がギョロリとスレイブを睨んだ。

スレイブは悪魔なのに泡を吹いてその場に倒れ、ルキフェルは縛られた

身体をバタつかせもがいていた。





























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