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SS 新しい家族
とある都の1日
しおりを挟む俺がこの国で主神となってから3年が過ぎようとしている。
大国主達のお陰で戻って来れた。そして天帝の準備してくれた肉体に、魔導騎士隊の精鋭20名を使ったお陰か、あの地獄の様な魔粒子ドーピングで2日も掛からずに終えられだ。ついに俺は受肉を果たした。
そう、毎日が幸せだ。
「都、おはよう。昨晩は満たしてくれてありがとう、愛してる」
「も、もぅ!サ、サリー!ほら、今日は学会でしょ?ご飯食べて着替える!」
「あぁ。今朝も美味そうだ」
「ふぁっ、おはよう皆」
「おはよう、カムイ。よく眠れた?」
「んー。起きたら都居なくて二度寝出来なかった。いつも言ってんじゃん、朝イチは俺とキスしてって」
「はいはい。俺だってそうしたいけど、朝ごはんの準備やらでゆっくりしてらんないの!ほらっ、座って食べる!」
「おはよう都、お。今日はテネー(コーンスープ擬き)スープとサンドイッチか!美味そうだ」
「おはようございますビクトラさん。今日は領主会議ですよね?ジャケットそこに準備してますから」
「あぁ、いつもありがとうな」
「いーえ!パンのおかわりは?サリー」
「都、俺はもういい。今日は昼前には戻るから」
「はい。気を付けていってらっしゃい。忘れ物は?論文、資料、メガネ、ペンケース、名刺入れ持った?ハンカチに塵紙は?」
「大丈夫だ。あ、忘れてた」
「?」
「行ってきます」
サラッとキスをしてくる様になったサリーに俺はいつも驚いてしまう。今までは喉奥まで蹂躙する様なキスばかりだった。そして後はお決まりのコースに突入で俺の仕事が全然捗らなかった。でも、この生活にも慣れて余裕が出来たようだ。良かった良かった。
「ルーナは?まだ寝てるの?カムイ、悪いんだけど起こして来てくれない?ついでにソレスとコルも!」
「えー!面倒くせぇなぁ」
「フルーツサンド」
「ちえっ、人使い荒いったらありゃしないぜ」
ぶつくさと文句を言いながら、カムイは2階に上がると「起きろクソ共」と大声を上げて3人を叩き起こしている。
「都、リャーレとアガットは王宮だったよな?」
「そうです。1時間前にはもう出勤されてますよ」
「そうか。あいつらが指導教官ねぇ?やれんのかね」
「大丈夫ですよ。お二人は人の扱いがお上手ですし、兄さんはかなり人当たりも良くなりましたしね」
そう、それまではリャーレさんとアガット兄さんはビクトラさんが領主をしていた西の領地で働いていたけど、サリーが治めていた南と併合されて、ユリウス領と名を改めた。広大な領地にはもともと南にサリーが作った学術エリアがあったからか、優秀な学徒達が集まっていた。そのお陰で人手不足は解消されて2人のしたい仕事ができる様になっていた。2人は魔導騎士に戻りたいと、今や指導教官兼大隊長、参謀となり頑張っている。
「お。やべーな、俺も行かなきゃな。都、悪いないつも飯作らせたり家事させちまって」
「いいえ、これは俺の楽しみの一つですから。元気に出掛けてもらう姿が見れて幸せですよ」
「可愛いな、お前はいつまでも。じゃあ行ってくる」
あれからビクトラさんは俺にキスをするのに躊躇いがなくなった。カムイを愛する様に俺を愛してくれる。ちょっと前まではそれすらカムイの為に無理をしているんじゃないかって思っていたけれど、もう2度後悔を残したまま死にたく無かったから、俺はそんな感情に目を瞑った。
けれど、彼等は心から俺を愛してくれている様で、時にカムイではなく俺を選んでくれる事もあって、信じられない程嬉しい変化だった。
「おはようなのだ」
「おはようコル。ほら、綺麗な羽が跳ねてる。おいで」
「うむ」
毎朝、何気ない事に涙が出そうになる。俺達の為に堪え続けたコルが、俺達の前で笑える様になった時には、俺とカムイでコルを抱いた。幸せで、嬉しくて、コルが可愛くて仕方がなかった。
「コル、今日の予定は?」
「教会で神学を教えるのだ」
「そう。頑張ってね?お弁当は?」
「フルーツサンドが欲しい」
「あるよ。沢山作ったから、お友達と食べるんだよ?」
「うむ。彼奴らと居るのは中々心地良い。都のフルーツサンドのおかげで話しかけられたのだ」
「そっか。良かったね、沢山お友達出来て。今度連れておいで」
「うむ。都、キスがしたい」
「え?どうしたの。珍しいね」
「したいのだ」
「うん。おいで」
幼児の様に甘える様になったコル。これまで我慢させてたから、沢山甘やかしてあげたい。でもっ!ルーナ達が残ってる!
「はい、続きは明日ね。ちゃんとシャワー浴びて行くんだよ?」
「うむ」
朝は戦場。次から次へと送り出し、全員が家を出ても俺の仕事に終わりは無い。でも充実している。
「ふぁーーーむにゃ、おはよー都ー!俺の奥さん」
「おはよ、旦那様。よく眠れた?」
「眠れる訳ないじゃん!昨日サリザンドの日だったろ?もーヒヤヒヤして寝れなかったよ。都、そろそろあのプレイやめさせなよ」
「‼︎……ご、ごめん」
「都がいいなら良いけど、出来れば俺が安心出来るプレイにしてっ!」
相変わらずサリーのドSっぷりは健在で、昨日は色々開発されてやばかった。離れた部屋のルーナでこれなら……うっ!恥ずか死ぬ!気をつけよ。
「ルーナ、ご飯何にする?パン?サンドイッチ?フルーツサンドもあるよ。あと、おにぎりと卵焼きも」
「んー。スープだけでいいや。ごめんね都。折角作ってくれたのに」
「無理しないで、食べれる物でいいから。はい、どうぞ」
「ありがと、ダーリン!」
「ははっ!なんだよそれ、誰に教わったの」
「カムイ様だよ」
「全く」
穏やかに過ぎる時間。でも、もうそろそろ騒がしい一団がやって来そうだ。
「おはようございます都、今朝も変わらず美しい」
「おはよう、サリューン。よく眠れた?」
「全くです。今晩が待ち遠しくて、眠れませんでした」
俺達は何と事もあろう事に、10人と婚姻関係を持っている。ここまで来ると常識とか非常識とかどうでも良くなるレベルだ。そもそも、カムイはビクトラさん達3名と結婚していた。そしてオブテューレの麓で暮らしていたけれど、俺が戻った事でカムイは暫くこの体から戻って来れなかった。その間に、俺達は話し合ってカムイを、ラファエラを分離させる為に共同生活を始めた。いつからか、10人で生活するのが当たり前になった。
「なら陛下、ちゃんと仮眠を取ってしっかりお仕事終わらせて来て下さいね?途中で寝落ちされたら俺、スネますからね」
「‼︎わ、分かっていますとも。ちゃんと貴方が満足するまで、愛します。だから私にも慈悲を下さいませんか?」
「っとぉ!その前に、朝食です!トルケンさん、カナムさん、ウォーレン閣下もお食事どうぞ」
3名とお付きの人達がうんざりした顔でサリューンを見つつ席に着いた。
「あぁっ!私は都様のお慈悲が無いと食事も喉を通らないと言うのに。酷いではありませんか」
「陛下、おはようのキスです。今夜が待ち遠しいですね」
「は、はいっ!これで1日頑張れます」
チョロい。陛下ってば変わらず可愛い人なんだから。そう言いつつ俺も陛下には甘えちゃうんだよなぁ。夜は特に皆んな獣体で攻めて来るけど、陛下は人体でいつも抱きしめてくれるから安心するんだよねぇ。っと、何でカムイとソレスは降りて来ない?
「ちょっとー!カムイ、ソレスっ!食べ終えてくれないと片付かないよ!」
「んっ!まっ、まってっ、もうっ、終わるからっ!んんっ」
……朝っぱらから何やってんだよ!
「カムイ様は朝からお元気ですなぁ」
ウォーレン閣下は、ほほほと笑いながらお茶を飲んで笑ってるけど、恥ずかしいったらありゃしない!もーー!
「そう言えば、ラファエラは元気にしていますか?」
「えぇ、精力的に市井に出て民の為に下層階級の仕事も進んでやっておいでです。主神代理としての役目もきっちりこなされて。頭の下がる思いです」
「そう、良かった。まさかねぇ、ラファエラが市井で民の為に同じ空間で教えを広げたいなん言うとは思ってもいなかったよ」
俺はウォーレンさんの為に昨晩から仕込んでおいた、参鶏湯擬きを皿によそって手渡した。
「どうもマルス神官の影響のようでございますよ?」
「え?マルスさん?」
「どうも私の予想ではあの2人デキておりますな!」
何でそんなにドヤ顔なのウォーレンさん。まぁ、マルスさんはあれから色々と俺達の為に骨折りしてくれて、ラファエラの側仕えの様にいつも側にいたからな。何よりラファエラが人の様に誰かを愛せる事が嬉しい。元々預言書だったラファエラ。俺が戻った事で人になりたいという欲求が生まれた様だった。
「そうですか。なら、ラファエラに会えたら伝えてくれます?とても嬉しいと。貴方が喜びを見つけられた事が何よりも嬉しいと」
「ええ、お伝えしておきますね」
俺は一通り家事を終えると席に着いた。そして腰を摩りながらお茶を飲む。
「で、如何ですかな?調子は」
ウォーレンさんは穏やかな顔で俺のお腹を見つめていた。
「サリー曰く、4ヶ月らしいです。まだ性別も、誰が父親かも分かりませんけど、順調の様です。ただ、後1ヶ月後には獣体が出来る可能性がある為夜のお勤めは今月までですね」
「都、今晩はやめておきましょう。貴方とお腹の子に何かあったら、私は何をしても後悔しきれませんから。ただ一緒に休めればそれで」
「ふふっ、もしもこれが前世の世界だったらその言葉を受けていましたが、どうもこの子は神核を持っている様なので魔粒子がかなり必要なんです。なので、この子の分も沢山愛してくれますか?」
カッと顔を赤らめたサリューンだったが、席を立つと俺の足元に跪いてお腹に耳を当てた。
「沢山貴方と、この子を愛します。全ての魔粒子を捧げても惜しくない程愛しているんです。ゆっくりお母さんのお腹の中で育ってくださいね、父は待っていますよ。貴方に会える日を」
誰が父親かなんて気にしないとこの世界の人は言う。誰が産んだかが重要で、それが自分の子でなくとも気にしないと言った。きっと、それは半分は嘘なんだろうと思う。貴族でもある彼等がその血筋を気にしない筈が無いから。でも、気にしいな俺を気遣ってこう言ってくれる事に喜びが溢れる。
「サリューン、この子に沢山の事を教えてあげて下さい。貴方程の王はどの世界、宇宙を探してもいないのだから」
「都、愛しい私の番。カムイと貴方は永遠に私の主です。側に居てください」
「えぇ、この体、神核を失うその日まで俺の全ては貴方達の物です」
この世界に、乾燥していて肌を焼き尽くす様な夏が来る。
いつかこの日差しの元、この子が獣体で駆ける事もあるだろう。
その時は教えたい。貴方の獣体、魔粒子を残せる奇跡を起こしたのはサリザンド、この国を豊かにしたのはサリューン。医療を発展させたのはルーナとソレス。経済を新しい体系で領地格差を無くしたのはビクトラ。神の世界を教え伝え、今も神がここで人々を守っていると人々に安心感を与えているのは、コル、ラファエラ、リャーレ、アガットなのだと。
貴方には目指す未来の導がこんなにある。それが逆に苦しめる事になるかもしれない。でも、いつだって彼等は貴方のその手を離さず抱きしめてくれるだろう。そして俺も、いつだって振り返れば側に居る。苦しくなったら帰って来れる家に俺はなるよ。
「会いたいよ。ハクト、待ってるからね」
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