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29.優しい夜
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目が覚めると窓の外には大きな夕日が沈んでいた。ぐっすり寝てしまったみたいだ。
「起きた?」
横で寝転んでいた至君が俺に手を伸ばして頬を撫でる。コクリとうなずくと唇を撫でられた。
「うわぁああああああああっ」
俺は思い出した、すごいことをお願いして俺は至君に触ってもらった、そして俺も触った。あぁっ、ダメだ恥ずかしすぎる。枕の下に頭を入れて隠れた。布団が思ったより軽くて跳ね飛ばしてしまった。ただもう、至君の顔が見られない、恥ずかしすぎる。
「こんなエロい頭隠して尻隠さずがあってたまるか」
後ろから不穏な言葉が聞こえた。ガウンの裾がめくられてお尻を叩かれた。
「ひゃぁっ」
枕から顔をあげて至君を睨むと、肩を揺らして笑っていた。ガウンの裾を直してしっかりと布団で隠して至君に向き合った。
「ごめん、ちょっと取り乱した」
至君が両手を広げておいでと言うポーズをとるからゆっくりとにじり寄った。焦れた至君が強引に抱き上げて膝におろす。
「俺も今かなり浮かれてる。好きな子に許されることがこんなに嬉しいなんて思ってもみなかった」
俺のお腹にまわした腕にぎゅっと力を込めてこめかみにキスをされた。
「うっ…それは俺もだ」
俺が正直に言うと褒めるみたいに頭を撫でられた。
「透。順番が逆だけど。あれ見て」
そう言って指す先には丸テーブルがあった。オレンジのテーブルクロスに綺麗にセッティングされたカトラリー。花瓶に生けられた綺麗な花が見える。俺が寝ている間にセッティングされたみたいだ。
抱き上げられて丸テーブルの椅子に降ろされた。テーブルの上にはお揃いの時計が置いてあって至君がその一つを手に取る。
椅子に座る俺の手を取って床に跪いた。
「透。どうか、俺と番になって結婚して欲しい」
プロポーズだ。
至君は俺の手を取って恋うている。
「もちろん。俺の番で伴侶は至君だ」
至君は恭しく腕をとって腕時計を巻きつけた。もう一つの腕時計を手に取って俺に手渡す。椅子から下りて至君の手を取り、同じように巻き付けた。
あごを掬われじっと目を見ていると顔が近づいてきた。ゆっくりと目を閉じると唇に温かさを感じた。
「俺はまだ学生で収入無いから立派なもんじゃないけど。これは夏のバイト代で俺が稼いだ金で買ったんだ。正式な指輪とかは、ちゃんと働けるようになったら改めて贈らせて欲しい」
「ありがとう言葉だけでも充分だよ。すごくうれしすぎて、うれしい」
腕に巻かれた時計を撫でて至君に笑いかける。
ほどなくして部屋には料理が運び込まれた。昼に食べたコース料理みたいなオシャレな食事だった。手を合わせていただきますをした。至君は俺に箸を手渡してくれた。
まだ、フォークとナイフに慣れていないのを気遣われたみたいだ。至君も箸に持ち替えて食べていた。優しさがさりげなくてありがたい。
この人を好きで良かった。
二人で並んで歯を磨き。二人でベッドに入りおやすみを言い合う。当然のように至君の腕に守られて眠った。穏やかで優しい夜だった。
カーテンから透ける朝の光に目を覚ますと、向かいに至君の顔があった。何が面白いのか楽しそうにこちらを見て笑顔だ。
「おはよう」
答える代わりに唇にやんわりとキスをくれた。
「おはようのチューだね」
至君を引き寄せてぎゅっと唇を押し付ける。至君が笑い出すので俺もたまらず笑った。
「今日みたいな朝が当たり前になるといいね」
引き寄せられてしっかりと抱き込まれる。
「正直に言うと、まだ婚約とかって実感が湧かないんだ。夢だったんじゃないかなって」
そこまで言うとぎゅっと力いっぱい抱きしめられた。
「それは俺もだけど。まだ終わらせないよ。俺らは番うんだ」
そうだった、俺は巻き付く至君の腕を抱えて笑う。
「楽しみだね。もう怖くないよ」
俺はもう怖くない。
「起きた?」
横で寝転んでいた至君が俺に手を伸ばして頬を撫でる。コクリとうなずくと唇を撫でられた。
「うわぁああああああああっ」
俺は思い出した、すごいことをお願いして俺は至君に触ってもらった、そして俺も触った。あぁっ、ダメだ恥ずかしすぎる。枕の下に頭を入れて隠れた。布団が思ったより軽くて跳ね飛ばしてしまった。ただもう、至君の顔が見られない、恥ずかしすぎる。
「こんなエロい頭隠して尻隠さずがあってたまるか」
後ろから不穏な言葉が聞こえた。ガウンの裾がめくられてお尻を叩かれた。
「ひゃぁっ」
枕から顔をあげて至君を睨むと、肩を揺らして笑っていた。ガウンの裾を直してしっかりと布団で隠して至君に向き合った。
「ごめん、ちょっと取り乱した」
至君が両手を広げておいでと言うポーズをとるからゆっくりとにじり寄った。焦れた至君が強引に抱き上げて膝におろす。
「俺も今かなり浮かれてる。好きな子に許されることがこんなに嬉しいなんて思ってもみなかった」
俺のお腹にまわした腕にぎゅっと力を込めてこめかみにキスをされた。
「うっ…それは俺もだ」
俺が正直に言うと褒めるみたいに頭を撫でられた。
「透。順番が逆だけど。あれ見て」
そう言って指す先には丸テーブルがあった。オレンジのテーブルクロスに綺麗にセッティングされたカトラリー。花瓶に生けられた綺麗な花が見える。俺が寝ている間にセッティングされたみたいだ。
抱き上げられて丸テーブルの椅子に降ろされた。テーブルの上にはお揃いの時計が置いてあって至君がその一つを手に取る。
椅子に座る俺の手を取って床に跪いた。
「透。どうか、俺と番になって結婚して欲しい」
プロポーズだ。
至君は俺の手を取って恋うている。
「もちろん。俺の番で伴侶は至君だ」
至君は恭しく腕をとって腕時計を巻きつけた。もう一つの腕時計を手に取って俺に手渡す。椅子から下りて至君の手を取り、同じように巻き付けた。
あごを掬われじっと目を見ていると顔が近づいてきた。ゆっくりと目を閉じると唇に温かさを感じた。
「俺はまだ学生で収入無いから立派なもんじゃないけど。これは夏のバイト代で俺が稼いだ金で買ったんだ。正式な指輪とかは、ちゃんと働けるようになったら改めて贈らせて欲しい」
「ありがとう言葉だけでも充分だよ。すごくうれしすぎて、うれしい」
腕に巻かれた時計を撫でて至君に笑いかける。
ほどなくして部屋には料理が運び込まれた。昼に食べたコース料理みたいなオシャレな食事だった。手を合わせていただきますをした。至君は俺に箸を手渡してくれた。
まだ、フォークとナイフに慣れていないのを気遣われたみたいだ。至君も箸に持ち替えて食べていた。優しさがさりげなくてありがたい。
この人を好きで良かった。
二人で並んで歯を磨き。二人でベッドに入りおやすみを言い合う。当然のように至君の腕に守られて眠った。穏やかで優しい夜だった。
カーテンから透ける朝の光に目を覚ますと、向かいに至君の顔があった。何が面白いのか楽しそうにこちらを見て笑顔だ。
「おはよう」
答える代わりに唇にやんわりとキスをくれた。
「おはようのチューだね」
至君を引き寄せてぎゅっと唇を押し付ける。至君が笑い出すので俺もたまらず笑った。
「今日みたいな朝が当たり前になるといいね」
引き寄せられてしっかりと抱き込まれる。
「正直に言うと、まだ婚約とかって実感が湧かないんだ。夢だったんじゃないかなって」
そこまで言うとぎゅっと力いっぱい抱きしめられた。
「それは俺もだけど。まだ終わらせないよ。俺らは番うんだ」
そうだった、俺は巻き付く至君の腕を抱えて笑う。
「楽しみだね。もう怖くないよ」
俺はもう怖くない。
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