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インチキ占い師?

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占い師は、佐々野のツッコミを無視して続けた。

「あなたは何かを探している」
「うん」
「そしてそれはとても大切な物だ」
「凄い、当たっているぞ、佐々木」
「佐々野です。・・・占い師に話しかける人は、たいてい困っていて、何かを探していて、それは
大切な物でしょうが。大切じゃない物はそもそも探さないし」

興奮する須磨子に対して、佐々野は冷めきっていた。
もともと、占いや神頼みは信じないタイプなのだ。
占い師は、佐々野を睨みつけた。

「お前」
「何ですか」
「占いを信じない者は地獄に落ちるぞ」
「聞いたことないよそんな話。何の宗教だよ!」

喧嘩腰になる二人の間に流れる空気を無視して、須磨子は占い師に尋ねた。

「私たちは、人を捜している」
「ほう、人を」
「その人は、私のとても大切な人なんだ」
「その人の特徴は?」
「とても才能のある人だ。優しくて、包容力があって、ワガママな私をいつも大切にしてくれた」
「その人の職業は?」
「作家だ。あと、劇作もするし、芝居の演出もする」
「なら下北・・・いや、池袋か・・・」

思わず佐々野が突っ込む。

「それ、占いじゃないよね?」
「作詞もするし、大学の教授もしていた。とにかく何でも出来るんだ」
「あ~、その人は売れっ子ですか?」
「仕事はひっきりなしで、途切れた事が無い。いつも忙しくしていた」
「ふむふむ」
「でも、仕事をしている時が一番楽しいんだ、と。それが口癖だった」
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